東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

遅れてガイア

ウルトラマンガイア』感想・第16話

◆第16話「アグル誕生」◆ (監督:北浦嗣巳 脚本:吉田伸 特技監督:北浦嗣巳)
 藤宮の元カノはハムスター(今カノは筋肉)。
 第3話に登場したのと同型とおぼしき金属生命体が地球に飛来し、それを迎撃するアグル。
 (なぜ藤宮はここに。なぜあんなに必死なんだ?)
 藤宮が積極的に怪獣と戦うとかオカシイ! と疑問を抱いた我夢は、金属生命体の降下予測地点に現在は封印されたアルケミースターズの施設がある事に気付く。訪れたその地でかつて藤宮の研究チームに居た稲森京子博士と出会った我夢は、稲森から藤宮がそこで、ある研究を続けていた事を教えられる……。
 4年前――アルケミースターズに所属していた藤宮は、ハムスターに話しかけたり同僚達と気さくに会話したり、まだ筋肉との対話には目覚めていなかった。
 そんな爽やかだった頃の藤宮が中心になって開発した光量子コンピューター・クリシスが稼働した日、暴走するクリシスの光の中で藤宮は青い光の巨人にアクセス。そして、破滅招来体の予言は成されたのであった。
 光量子コンピューターが予言した破滅の未来を回避する方法を探すアルケミースターズだが……ある日藤宮は、一つの解答に辿り着いてしまう。
 「試しに……削除してみたんだ」
 「何を?! 何をだい?!」
 削除項目:人類
 「このままじゃ、地球も人類も、本当に滅びる」
 悩める藤宮は、モニター上に映し出されたAGULの文字を目にし、再び青い光の巨人とアクセス。3年前にアルケミースターズを脱退すると、専用に譲り受けた施設で、かつての同輩・稲森京子博士をパートナーに、地球内部の監視を続ける。
 「僕は……本当の気持ちが知りたいんだ」
 「え?」
 「本当の、地球の意志が」
 近い将来、地球に破滅が訪れるならば、地球内部に新たな自然治癒力が生じるのではないか……青い光の巨人・AGULの中に人類を滅ぼす意思を感じ取り、人類は地球自身の治癒力によって滅ぼされるべき存在なのでは? と思い悩む藤宮の前に、遂に観測される地球の意思……?
 「アグル……俺に、おまえの力をくれ! アグルーーー!!」
 ・
 ・
 ・
 「彼は……その光の中に消えたわ。それ以来私は、一人で観測を続けているの」
 稲森博士と藤宮の回想を交差しながら、始まりの予言、我夢と藤宮の出会い(直後に藤宮は隠遁)、アグル誕生、が一気に語られるのですが……人類滅亡の危機に直面した天才科学者が苦悩の末に神秘体験を経てオカルトに転向するというのが生臭すぎて、個人的にはどうにもノれず。
 似たような状況でガイアとなっている我夢の場合、ファンタジックな要素とヒーローの希望の力、というスパイスによって緩和しているのですが(その上で、XIGにおける人間的成長により煮込まれている)、アグル誕生の秘密は、あまりにもダイレクトな印象。
 また、このエピソード自体が、映画の途中に挟まる真相解明シーンのような雰囲気と作劇なのですが、映画だったら2,3分でまとめるような回想を、エピソードの半分使う事で、詳細かつ劇的というよりも、間延してしまった感。
 「破滅を回避する為に地球自身が生み出した力が選んだ道が人類の排除ならば、俺がその代行者となる、或いはその真意をギリギリまで確かめる」という藤宮の現在位置はわからないでもないのですが、どうせそれを出自から明かすなら、藤宮自身に大魔王ムーヴで語らせた方が面白く、関係者から間接的に話を聞く、というのもあまり面白く感じませんでした。
 (アグルよ……地球の危機が運命なら、人類の危機が運命なら、地球の意志に沿っていく事が、人類に残された唯一の道なのか? それを導くのがアグルの力。……アグル! 再びおまえの力を!)
 金属生命体との戦いで弱った体で、施設に辿り着いた藤宮は、粒子観測用のプールにどぶんと飛び込み、我夢と稲森もモニター越しにそれを確認。
 (そうか……ここで藤宮は!)
 アグルとアクセスしてマッスルパワーを充填した藤宮は再びアグルに変身し、稲森博士とハムスターの無事を確認すると、迫り来る金属怪獣と激突。金属怪獣は偽アグルへと変身して激しい打撃の応酬が繰り広げられるが、大腿四頭筋スピンで偽アグルのチャージ攻撃をかわしたアグルは、連続攻撃からうにょんバスターでフィニッシュ。
 直撃した偽アグルが内側から木っ葉微塵となり、目つきの悪い偽物とはいえ、アグルの頭が派手に吹っ飛ぶ映像は、笑わせに来ているとしか思えない衝撃シーン(笑)
 「君は、僕らのために」
 「俺はアグルの聖地を守っただけだ」
 「アグル? それが君の力? 僕と一緒に戦おう」
 我夢が、「アグル」を問い返しているのは、やはり先日、さらっと言い過ぎて印象に残らなかったのか(笑) 若干、「アグル」の名称を出すタイミングに混乱があったのでは、というのも窺えます。
 「おまえは地球の意思に逆らっている」
 「人類を救うのが地球の意思だろ」
 「今の人類は、自然の頂点に立つには自己中心的すぎる」
 「ただ破滅招来体の犠牲になればいいっていうのか」
 「地球がそれを求めているなら」
 「君は人が死ぬ哀しみから目を逸らすのか」
 ガイアとアグル、同じ地球の力を得ながら、人類への対称的な視点を持つ我夢と藤宮の進む道は、果たしてこれから、どのような形で交わるのか。我夢は堤と合流し、ハムスターを見つめた藤宮は、救助された稲森博士と視線だけかわして去って行くのであった……。
 藤宮に対して稲森博士が向けているとおぼしき、手に入らないものへの憧憬、という同輩以上男女未満の感情を絡めつつ、藤宮の過去が割と淡々と明かされる渋い構成なのですが、あまりに渋すぎた印象。そこはスタッフも思うところがあったのか、冒頭とクライマックスを派手なバトルシーンでサンドイッチしているのですが、間に挟んだ肉が味付け不足な上に生焼けで、飲み下しにくい内容になってしまいました。
 過去シーンで一つ注目は、“昔の藤宮は我夢に似ていた”という事。
 ガイア/我夢と、アグル/藤宮、という対比構造がより明確にされましたが、14-15-16と、藤宮との対立構造の中でやや頭でっかちな展開が続いているのは気になるところで、上手く2クール目の展開が軌道に乗ってきてほしいものです。