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さっくり『ルーブ』

ウルトラマンルーブ』感想・第22-23話

◆第22話「異次元かあさん」◆ (監督:市野龍一 脚本:森江美咲)
 アイゼンテック社地下施設にジャイロが3つ揃った作用で、異次元空間から湊母が帰還。そして一緒にやってくる、怪・獣。
 クールタイムが終了していない兄弟に代わり、狼怪獣になって切れ味鋭そうな異次元怪獣に挑む美剣は敗北してしまうが、怪獣は突然姿を消し……毎度毎度の事ながら、大半の怪獣が「話の都合による障害物」でしかないのが、今作の残念なところ。
 湊家の面々はテンションの高い母に振り回され、ダメージを負いながらもサキは打倒ルーゴサイトの為の最終作戦の準備を進め……前回、ようやくウルトラマン引用の呪縛を逃れ、俺達は何かを取り戻したにも関わらず、物語の焦点が湊兄弟ではなく、天衣無縫な湊母と、健気に頑張る美剣サキ、に移ってしまうのもまた残念。
 遂に戻ってきた湊母に重点が置かれるのは当然ではありますが、それにしても、あくまで兄弟主観から母の暴れっぷりを描く手法はあった筈ですし、ここで兄弟を物語の軸に戻さなくていつ戻すのかと思うのですが、何故かそれが母とサキに奪い取られてしまい、非常にノリにくい事に。
 カミソリ怪獣の目的は、ルーゴサイト撃破の為に美剣が集めていたアースフォース、ならぬ地球のエネルギー――レイラインの力を吸収する事にあり、再び狼怪獣となって立ち向かう美剣だが、またも敗北。ルーブ兄弟が怪獣を倒すが、湊母は何故か兄弟からウルトラジャイロを強奪。気絶していた美剣からもジャイロを掠め取っていた母は、3つ揃ったジャイロを手にアイゼンテック本社に向かうが、地球にはいよいよルーゴサイトが迫っているのであった……で、つづく。
 なおアサヒは、別の可能性世界にある湊夫妻の娘、という可能性が浮上するも未だ正体不明。そんなアサヒをなんの躊躇いもなく娘として受け止める母、というのは良かったのですが……いきなりOPに参加していたり、残り4話で登場したキャラクターに対してスタッフが露骨に肩入れしすぎで、結果として主人公兄弟の存在感を食ってしまった、というのはやり過ぎであったと思います。
 『ルーブ』が家族の物語というのはわかるのですが、肝心の主人公兄弟のキャラが弱いので軸があちこに動き回って色々と迷子だったわけで、それが前回ようやく、ヒーローが迷走を終えてジャンプへ向けた加速に入ったのに、ラスト直前の重要なステップにおいて、またも今作の悪い所が出てしまいました。

◆第23話「滅びのクリスタル」◆ (監督:市野龍一 脚本:伊藤公志)
 開始5分でクリスタルにされたルーゴサイト、そのまま異次元に捨てられそうになるが、美剣がそれを妨害。
 異次元ポイ捨てなどという先延ばしの対処療法ではなく根本的な解決をする為、自らの生命力を起爆剤に、収束したレイラインのエネルギーを爆発させる事で物質化したルーゴサイトを地球ごと葬り去る決意を、美剣は改めて宣言。
 「悪いが、1300年前から決めていた事だ」
 自爆を覚悟した美剣は思い出の店でアサヒと鯛焼きを頬張り、この2人の関係もせめて半年じっくりとやっていたら違ったかもですが、一から十まで「お約束」と「ウケ狙い」の範囲内にしか収まらなかったのは残念。繰り返される美剣の女子高生コスプレも、今作全体に漂う内輪ウケ感を後押しします。
 「俺たちは、自分たちだけ助かろうなんて思ってない。……家族も地球も救う。だからクリスタルを」
 「根拠の無い自信に、宇宙の未来は託せない。それよりも地球もろとも爆破すれば、今なら確実に仕留められる」
 「そんな事はさせない」
 「俺たちが止めてみせる。……そして全てを救ってやる。もちろん美剣、おまえもだ」
 「……ならば! 力尽くで止めてみろ!」
 大のために自分を含めた小を切り捨てようとする美剣と、全てを守ろうとする兄弟、という互いのヒーロー性がぶつかり合う構図は悪くなかったのですが、「全てを救う」とか言い出す兄弟側の根拠が溢れるシスコン魂しかないのが大変ノリにくいところで、この衝突を盛り上げる為にも、前回はやはり母より湊兄弟の一押しに注力するべきだったのでは。
 ルーゴサイトの脅威も、ヒーローの見せる希望も、どちらも具体的に示されないので、何もかもが迷子。
 グルジオMAXに変身した美剣は、レイラインの収束する場所であるアイゼンテック本社ビルへと向かい、地球を、そして美剣をも救う為にそれを食い止めようとするルーブ兄弟。
 暴力を交えた交渉が不調に終わり、最終的には極を発動するとボルテックバスターで殴り倒して、ふー……仕方なかったんだ……と余韻に浸っていたら効いていなくて、グルジオ砲で逆に吹き飛ばされる姿が凄く間抜けなのですが、何が間抜けって、積極的な攻撃を仕掛けず終始手を抜いていたのはグルジオの方で、そのグルジオを止める力を兄弟が全く証明できなかった事なのですが、ラスト目前にこれで大丈夫なのか。
 変身の解けた兄弟を捨て置いてアイゼンテックに向かうグルジオだが、突如、強制変身解除。ルーゴサイトクリスタルがジャイロを奪って自らグルグルする事により、怪獣ルーゴサイトが顕現してしまい、どちらに転んでも地球滅亡待ったなし、でつづく。
 残り2話、紙芝居で雑に説明され、地球に近づいたと思ったらただの黒いモヤモヤで、登場5分でクリスタルに閉じ込められるという(ご家庭アイテムによるトンデモ装置というネタは好きですが……)、前代未聞の迫力の無さを誇るルーゴサイトは、果たして、ラスボス?らしい活躍をする事が出来るのか!