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ヒロイン・オーバーライド2018

仮面ライダージオウ』感想・第9-10話

◆EP09「ゲンムマスター2016」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:毛利亘宏)
 見所は、比奈ちゃん、ナンパされる。
 相変わらずの美人ぶりですが、正史世界では周囲の男衆がどいつもこいつもヒロイン属性持ちなので、壮絶な弾幕の削り合いみたいな事になっていたからな……!
 今回は! ゲスト出演で! 存分にヒロイン力(基本的に低くはない)を! 発揮する予定です!!(フラグ)
 「なぜ、オーマジオウが時の王者として君臨したか? 奴は、己の欲望のままに、自らが王である事を、疑わなかった。……何が言いたいかわかるか?」
 「まどろっこしいな、スウォルツ」
 「今まで王として擁立しようとした人間の、欲望が足りなかったってこと?」
 二桁話数を前にして、「面倒くさいからこいつにしておこう」というこれまでの魔王候補のリサーチ不足を確認しあうタイムジャッカーだが、実はオーラが、とっておきの王様候補を用意していた……その名は、檀黎斗。
 巨大企業体・檀コーポレーションを率いる檀は2018年、日本からの独立を宣言。メダルを投げつけて人間をミイラ怪人に変貌させる、という異能の力をTVカメラに見せつける。
 「すっごく興味深いよ。ちょっと行ってくる!」
 キラキラした眼差しで風雲檀黎斗城に急ぐソウゴ、興味があるのは「檀黎斗王」であって「ミイラ怪人」ではない、という安定した人の心の薄さ。
 アナザーライダー絡みに違いない、とゲイツツクヨミも後を追い、侵入した城内でミイラ怪人と軽く戦闘。
 「やっぱり強いねゲイツ。……君を俺の、王室直属の、騎士団長に任命する!」
 「……ふざけるなッ」
 初期設定を忠実に拾ってパーソナリティを強化しようとするのは毛利さんぽくはあるのですが、第5-8話で「仲間」(一般的に横並びの関係性)が強調された流れをぶった切る豪快な「上下関係」をダンクシュートで叩き込み、ニンニンジャー』『キュウレンジャー』に続いて、毛利さんと下山さんは、根本的なところで相性が悪いのではないだろうか、という疑念がますます膨れあがります。
 そこに出てきた檀はアナザーオーズに変身するが、謎の鳥メカに攻撃を受けるとそれを追い、更にその後を追いかけるソウゴ。ゲイツツクヨミは、アナザーオーズが落としたライドウォッチを拾って2016年に跳び、その間に檀に弟子入りしたソウゴは、ミイラ怪人に牢屋へ運ばれていく比奈ちゃんを完全スルー。
 2016年ではアナザーオーズを撃破する事が出来ず、2018年に戻ったゲイツを待っていたのは、檀の家臣となったソウゴの姿。突然やたらと喧嘩慣れしたジオウは怒りのゲイツに完封勝利を収めるが、芝居……?
 そして檀の妃候補として牢屋に閉じ込められた比奈を待っていたのは……
 「大丈夫?」
 「……あなたは?」
 「火野映司。誘拐された、国会議員かな」
 ごめん比奈ちゃん! 俺は既に捕まっていた!!
 一瞬たりとも気が抜けない、ヒロイン力による殴り合いという点は凄く『オーズ』ぽかったです(笑)

◆EP10「タカとトラとバッタ2010」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:毛利亘宏)
 「俺は、ちょっとのお金と、明日のパンツさえあれば、それでいい」
 囚われのお姫様ポジションをまたも奪われてしまった比奈ちゃん、いきなりの「ふんにゃーーー」発動で、映司くんをむしろ救出(笑)
 女性キャラを雑にか弱いお姫様ポジションとして扱う事を良しとしない小林靖子脚本のテイストを意識している、と思えばこれもまた『オーズ』らしくはあるのですが、こうなると映司くん(風貌に全く違和感なし)は2018年でも怪我して脱ぐのか。
 前回の完敗は芝居でなかったらしいゲイツ(一応、言い訳するなら2016年の戦闘で消耗していた……?)は、檀王に協力するソウゴは魔王の道を進み始めた! と噴き上がると戦いを挑み、何か考えがあるっぽい主人公に、急に短気を起こしたライバルキャラが突っかかる、というまるで劇的にならない直接対決2回戦がスタート。
 今作、初回以降は安易なジオウvsゲイツの激突を避ける形で展開していたのですが、前回-今回と結局、安易なライダーバトルに持ち込んでしまい、遡ってこれまでが「安易なライダー共闘」であった事になってしまうという、負のドミノ倒し。
 「知りたいんだ! いい魔王になる為に、魔王ってものがどんなものか!」
 そしてその原因となったソウゴの目的が、「命の大切さを知る為に、一度人を殺してみたい」みたいなレトリックなので、激しく頭痛がしてきます。
 別のシーンでのツクヨミの台詞から「自分の目で判断する」ことの大事さ、というニュアンスが含まれており、一線を越えそうになったら止めるからOKというエクスキューズもあるのでしょうが、話の都合で一般市民の監禁と拘束を見過ごす時点でもうNGだと思いますし、その手段として「仲間」に必殺キックを決める、が許されるとも思わず、真っ先に本人が一線を越えているソウゴを「いやそれ違うだろ」と殴ってくれる人が出てくるなら良いけど、そういうわけでもないのが辛い。
 加えて、「ツクヨミゲイツが魔王と判断したなら殺されても納得」→「俺はおまえが魔王だと思うから殺す!」→「やっぱ抵抗するんで、おまえが惨めに這いつくばれ!」と、実に支離滅裂。
 ジオウは戦闘に巻き込まれた一般人をかばい、別に悪人になったわけではない、とTVの前に向けて主張するのですが……
 「俺の大事な民に、なにしてくれるの」
 「おまえ……」
 いやそこ、感心する所じゃないぞ、ゲイツ
 ミイラ怪人に袋だたきにされていたゲイツは、なんとか全滅させるもエネルギー切れで変身が解けてしまい、ふぁいずアーマーを通して「猫舌の男は頼りない」成分でも注入されてしまったのか、前回-今回とやたらな弱体化。
 そんなゲイツを捨て置いて、もう魔王観察の用は済んだ、とばかり城に戻ったソウゴは比奈と映司を解放。
 「君、王様になりたいの?」
 「んー……なりたいっていうか、生まれた時から、王様になる気がしてた」
 「はは、面白い人だなぁ。王になりたいんだったら、覚えておいた方がいい。一人じゃ出来ない事があるってこと」
 「一人じゃ……出来ない事?」
 「……どんなに誰かを助けたいと思っても、一人じゃ助けられない、命がある。……だから俺は、たくさんの人と手を繋ぐ事にした。それで、政治家になった。いつか、この国の全ての人と手を繋いでみせる」
 原典のテーゼを掬い取りながらレジェンドがソウゴにヒーローの志を伝えていく――という今作コンセプトから当初想定していた作劇の上で、ライダーの力を持たない男がそれを実現する為に選んだ手段、が現実とリンクしてフィードバック可能なものである、というのはかなり良かったです。
 またこうする事で、レジェンドがおもむろに取り出すライドウォッチにも、“継承された魂の象徴”という物語的な意味がより強調されて、構造的にスッキリ。
 檀はアナザーオーズに変身するとソウゴに襲いかかり、それを食い止めようとする映司。
 「なんの力も無いお前に、何が出来るというのだ!」
 「それでも、掴んだ手は絶対離さない!」
 で、結局、原典に参加していた脚本家が参戦したらレジェンドの扱いが良くなっているわけですが……開幕2ヶ月はソウゴ達の重視期間だから仕方なかった、と捉えるべきなのかどうなのか(重視したと胸を張れるほど、キャラ固まってないですし……)。
 「火野さん!」
 やにわに駆け寄った比奈ちゃん、映司と両手を繋ぎ、というより、両手首を掴み、「装備:映司キャリバー(攻撃力+55)」から、アナザーオーズに向かってフルスイング(笑)
 え……と……比奈ちゃん……? というか、ひ、比奈さん……?
 所詮この世は弱肉強食、降臨した力の覇王の約束された勝利の一撃はアナザーオーズの顎を砕き、ひっくり返っている内にソウゴを助け起こした映司はオーズウオッチ2種を渡す。
 「悪い魔王は倒さないとね。それが、いい魔王の仕事!」
 城外にもつれ込んだジオウvsアナザーオーズに、ミニスカヒロイン枠は私のもの!とドラゴンキャッスルでオーラが乱入するが、そこにツンデレヒロイン枠のゲイツも参戦。ゲイツがアナザーオーズを引き受けている内に、え、ちょっと、正ヒロインは私じゃないの?! と油断してまるまる1話眠りこけている間にミステリアスヒロイン枠の座を失いそうになって慌てるツクヨが運んできたタイムマシンに乗り込んだジオウは、オーズウォッチの力でドラゴンキャッスルを撃破。そのまま2010年に跳ぶと、誕生したばかりのアナザーオーズに、オーズアーマーを発動して立ち向かう。
 「ハッピーバースデイ! 祝え! 全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え、過去と未来をしろしめす時の王者、その名も仮面ライダージオウ:オーズアーマー。また一つ、王たるライダーの力を継承した瞬間である」
 私はむしろ、12時の鐘が鳴るまでヒロインを美しく輝かせる存在さ、と満を持して約一ヶ月ぶりとなるマネージャーさんの朗読に讃えられたオーズアーマーは、原型をあまり崩さずに各パーツをメカメカしくしたアレンジが、割と格好良い。
 「同じ時代に、王は二人も要らない!」
 「私が王だ。頂点に立つ存在だ!」
 「それを選ぶのは、あんたじゃない!」
 「ならば誰だぁぁぁ!!」
 「俺だ!」
 え……
 「……て言いたいけど、違う!」
 さすがに良かった(笑)
 「ツクヨミゲイツ、この時代に生きる、全ての民だぁぁぁ!!」
 考えを改めてホッとしましたが、逆に先週時点では、「俺が俺を選んだから俺が王だ」なつもり満々だった事が白日の下にさらされたジオウは、存外まともなタカトラバッタせいやーーーでアナザーオーズを撃破。
 マネージャーさんから魔王の肥やし扱いされた檀は、「神をも超える王だ」という執着に囚われたままバタリと気絶し、前回あれだけアナザーウイザード素体の救済にこだわっていたソウゴが、檀については完全無視。
 檀の親子関係については『エグゼイド』本編に関わる問題(であろうと推測される)なので、アナザー世界とはいえ『ジオウ』では踏み込めなかったのでしょうし、ヒーローにも手の届かない所はあるしそこには責任を持たない、というのは『オーズ』(前半)らしくはあるのですが、仮面ライダージオウ』としては、全く統一感の無い事に。
 そして2018年に戻ると……
 「――思い出せ。俺は奴の仲間でもなんでもない。俺はオーマジオウを倒す為にこの時代に来た」
 色々グダグダになっていたゲイツが、このままでは最っ低墓場という重力の井戸の底に引きずり込まれてしまう……まずは三食昼寝付きの安穏とした生活が良くないのだと家出して山ごもりに向かう姿をオーラが見つめ、繰り返し持ち出される織田信長から次はてっきりタケル殿かと思ったらミカンの人が……で続く。
 ところで織田信長の「第六天魔王」は、手紙のやり取りにおける洒落みたいなものだった筈なので、日本史における「魔王」と呼ばれていた人代表みたいに扱われると2068年人のゲイツ@インテリは何を見て勉強したのだろうかと考えてしまうわけなのですが、こういったデフォルメ要素の強いフィクションにおける歴史上の人物の持ち込み方は難しいな、と思う次第(『ゴースト』本編でも織田信長の扱いは滅茶苦茶でしたが)。
 後編の後半10分ぐらいは割と面白かったのですが、何故面白かったのかというと、「先輩ライダーの薫陶によりソウゴが少しずつ成長していく」という、わかりやすい(そして期待に添った)構造を持ち込んだからであり、第8話までの『ジオウ』が、敢えて視聴者の期待するセオリーから外す作劇をしていた事を考えると、毛利さんと下山さんが全然違うものを書いてしまっているわけですが、方針の修正なのか、これから擦り合わせていくのか、今回が異色エピソードになるのか、どちらにせよ今回時点では随分と全体から浮いたエピソードになってしまいました。
 ウィザード編は下山さんの、オーズ編は毛利さんの、脚本家それぞれの良い部分が見える箇所もあったのですが、レジェンドの扱いが良くなったと思ったら、前回こだわったアナザー素体の救済要素が虚空の彼方に放り投げられるなど、あちら立てればこちら立たないのは相変わらずで、『ジオウ』という物語そのものが、作品コンセプトに振り回されているという現況から果たして脱出はできるのか。
 次回――技の覇王・コハナvs力の覇王・比奈! 世紀末に名を轟かす、真の覇王はどちらだ?! 生き残った方が、我が魔王最大の敵になる……!
 「……ああ我が魔王、楽しみにしているところ申し訳ないが、このプログラムはあまりにバイオレンスすぎるという事で2068年では発禁処分になっていて閲覧する事が出来ないんだ。……一本釣りされた亀の人がグランドピアノごと夢の島に埋められたり、鳥の人のメダルがドロドロのアイスクリームの中に沈んでいったり、桃の人が缶詰工場送りにされたり、医者の人がコタツと運命を共にしたり……とても日曜の朝には流せないだろう?」
 というわけで次回は予定を変更して、バナナの人とラップしながらお料理対決をお送りしたいと思います。