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ウルトラマンガイア』感想・第13話

◆第13話「マリオネットの夜」◆ (監督:根本実樹 脚本:長谷川圭一 特技監督:佐川和夫)
 超空間波動怪獣サイコメザード
 の字面が凄い。
 「電話だよ、タカシ……」
 夜のシャッター商店街を駆ける少年、フードを被り妖しい微笑と共に携帯電話を手にする少女、ゾンビのように虚ろな表情の人々の群れ……と、ホラー映画を思わせるような不気味な雰囲気を強調し、前回に続いて変化球な導入。
 そして、空には巨大なクラゲの姿が浮かぶ……。
 局の上層部と衝突しながらも、根源的破滅招来体の真実に迫ろうとクラゲ怪獣の取材を振り返る田端は、奇妙なノイズの中に外国と思われる暴動の風景が映り込んだビデオテープを受け取り……
 我夢の大学の友人は、失恋旅行で里帰り……
 田端・倫文といういつものスタッフと旅番組の取材に出た玲子は道ばたに佇む藤宮を目撃し……
 エリアルベースの我夢は、マイクロ波による微量の電波干渉を気に留め……
 それら全ての糸が寄り集まる場所は、山梨県・城岩町。
 路上で車のパンクを直す羽目になった倫文、先に町へと入った田端&玲子はそれぞれ、手に手にゴルフクラブなどを握った虚ろな表情の人々に取り囲まれ、携帯電話の着信音が木霊する中で、正攻法のゾンビパニックがサスペンスフルに展開。恐怖を引き立てる小道具として活用される携帯電話ですが、1998年というと、だいぶ一般化してきた頃になるのでしょうか。
 「玲子は街を出ろ。俺は俺のやり方で戦ってやる!」
 自らも脳を何かになぞられるような感覚を覚えながらも田端はカメラを担いで町に残り、外部と連絡を取ろうと走る玲子は精神汚染済みの警察官に銃を向けられるが、それを救ったのは玲子のおっかけ疑惑もある筋トレの使徒・藤宮博也。
 「……あなたいつか砂漠の街で」
 「奴らは人に興味を持っている。砂漠化した街もここも、その実験場所として選ばれた」
 実は長らく、第4話で人々の心に接触したのは青いウルトラマンだとばかり思っていたのですが、実際は波動クラゲだった模様で、複数形なのも含めて、ただの怪獣を超える存在感をジワジワ発揮。
 「奴らとか実験って……いったいなんの事?!」
 「君が知る必要はない。命がある内に逃げるんだな」
 「仲間がまだこの町に居るの! お願い助けて!」
 「無駄だよ。存在理由のない人間はいずれ消える」
 「……え?」
 愕然とした玲子の、恐怖の町から逃げ出したら出会ったのは通りすがりの変わり者(オブラートに包んだ表現)だった、という表情が素晴らしい(笑)
 田端は、携帯電話の着信音が鳴り続ける町でゾンビ軍団から逃げ回りながらカメラを回し、玲子は、気絶した警官の拳銃を手に入れた!(え)
 「もう頼まない。自分で助けるわ!」
 「せっかく助けてやった命を」
 「何様か知らないけど、一つだけ言わせてくれる?! 人の存在理由って誰が決めるのよ!」
 今回は、久々登場の田端さんを中心に〔KCB編〕といえる内容なのですが、環境テロリストへ向けたこの一喝により、玲子の個性がぐっと押し出されたのは良かったです。正直、容姿といいキャラクターの方向性といい、どうしてこんなに敦子と被っているのか……というのがあったのですが、我夢を介さない所で藤宮と絡んだのも、双方にとって使い道のある布石になりそう。
 ビルの屋上にバリケードを作って立てこもった田端は、ビデオテープの送り主であり、この町で唯一、正気を保っているが故に屋上にずっと隠れていた少年タカシと接触。少年を励ます内に「天国」という言葉に閃きを得た田端は、屋上に積まれていた電球を使って空に向けてSOSのシグナルを送り、それを町の上空までやってきていた我夢が発見する。
 「よーし……天からの助けだ」
 なんとなくですが、この台詞や、「天国」という単語からXIG/エリアルベースを連想する田端の心情には、どこか皮肉な響きが感じられ、天空要塞という設定そのものの格好良さや、精鋭集団としての特別性を高める一方で、エリアルベースは物理的以上に“俗界から切り離された”場所になっている面があるのかな、と思うところ。
 これはそこに属する我夢やコマンダーのキャラクター性も大きいのですが(特にコマンダーはベースの存在そのものと相互に影響を与えあっていて、その内、「アースフォースは本当にあったんだ!」とか叫び出しそうでやや心配になってくるレベル)、それに対して、どうやら懲罰人事で報道からバラエティに回されたらしい田端の、俗界の中でも特に俗な所からでも、地球に迫る破滅の真実に迫ってみせる、という地上を這う俗人の意地、みたいなものも感じます。
 地上では、拳銃片手に町に戻った玲子が倫文に首を絞められ、空には巨大なクラゲが登場。我夢はEX機から謎のパルスを放ってクラゲの存在を収束するとミサイルを発射し、炎上墜落したクラゲが新たなスケルトン怪獣になった事で、ガイアに変身。
 身軽に飛び回りながらガイアを苦しめるメザードは、洗脳した町民を足下に集める事でガイアに対する盾とすると、手を出せないガイアに触手を突き刺して激しく放電。
 一方、追い詰められた玲子は、渾身の右ストレートで倫文をノックアウト(笑)
 ヒ、ヒロイン力は……?!
 「怪獣! あっち行けー!」
 更にまさかの銃撃を行い、明らかに、梶尾さんより射撃のセンスが上です。
 ニューナンブの弾丸が意外と痛かったらしいメザードは、視線を玲子に向けると触手から光弾を放ち、あわや玲子が消し炭寸前、間に入って攻撃を防いだのは、青いウルトラマン
 闇夜を切り裂く煌めきとして物凄く幻想的に登場したアグルが、背後からの強い照明により半ばシルエットになった顔のアップに、コントラストも鮮やかな白輝の瞳で玲子を見下ろす構図が非常に格好良く、BGMもはまった名シーン。
 制作サイドとしても思うところがあったのかもですが、ようやく、アグル(考えてみると、配信の冒頭で我夢が口にしているので、色々面倒な事もあって、もうこだわらない事にしました(^^;)が「ふぉ?!」のイメージを脱却してくれて、大変良かったです。
 筋肉の脅威を感じ取ったメザードがガイアを捨て置いてアグルへと襲いかかるが、軽やかにそれを交わしたアグルは、飛翔したメザードの尻尾を掴んで振り回すと、トドメはウルトラリーゼントバスター。
 これ自体がサイコメザードの見せた幻覚ではないかという疑惑も浮かぶまさかのアグル完封勝利でしたが、メザードが木っ葉微塵に吹き飛ぶに際して、ガイアが咄嗟にダイビングする事で足下に居た町民達を爆風から守り、ガイアのヒーロー性を確保してくれたのは、素晴らしかったです。
 「……もう一人の巨人。奴も、俺たち人間の味方なのか?」
 「……絶対そうよ」
 KCBの2人は飛び去った青い巨人を見送り、我夢は何やら交信のあったらしい藤宮の言葉を噛みしめる。
 (せっかくの力を有効に使えない。それが我夢、おまえの弱さだ)
 サイコメザードの精神支配から解放された城岩町には救急隊などが到着し、それを見た我夢は笑顔で基地へと帰還。一方、今回の騒動を撮影したテープを手柄に報道部に返り咲きだ! と盛り上がる田端だが、命がけでカメラに収めた映像はノイズばかりで使い物にならず落胆。
 「……俺の努力……全て無駄だったのか?」
 「でもないと思うけど? ほら」
 玲子が指さした先ではタカシ少年が家族と無事に再会しており、笑顔で手を振る少年に手を振り返す田端。
 決して特別な力を持たない男が、その信念に基づく行動から1人の少年のヒーローになる(その少年にとっては、田端の存在はウルトラマンと等価である)というオチが大変素晴らしく、かつて宇宙刑事であった円谷浩さんが演じている、というのもメタ的には沁みます。
 第4話以来となる長谷川脚本はKCBを中心としたゾンビパニックで、無力な人々が次々と巨大な存在の毒牙にかかっていく姿が描かれる中、田端と玲子が「自分たちのやり方」で戦う姿を見せて抗い、溜めに溜めたところでヒーローが降臨するというカタルシスも気持ち良く、雰囲気は変化球ながら、ヒーロードラマとしては直球、というのが面白かったです。
 ……倫文は、強く、生きろ。