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なんとかまとまった(長い)

快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』感想・第42話

◆#42「決戦の時」◆ (監督:杉原輝昭 脚本:香村純子)
 町を歩いていた魁利は、国際警察の派手な制服姿で、オープンカフェでお茶しているノエルを発見。
 「今一人で出歩くのはお薦めできないな。またデストラに襲われたら危険だ」
 「おまえはどうなんだよ。その制服、めっちゃ目立ってんぞ」
 ノエルは無言で両手を広げ、明らかに率先した囮で、魁利もそれをわかっている様子ですが、そこにドンピシャリでデストラが登場し、2人はミサイルの雨をかわしながら変身。
 「デストラ、今度こそおまえを倒す!」
 「――気が早くてよ、坊やたち」
 だがそこにゴーシュも姿を見せ、高いところから援護射撃をしながら、まさかの直接参戦。
 「今日は私も遊んであげるわ」
 「一人じゃ勝てないから、仲間呼んだわけだ」
 「ドグラニオ様の期待に応える為ならば、私のプライドなどどうでもいい! ドグラニオ様のお側に控えるのではなく、あの方の意志を受け継ぐのだと!」
 敬愛するボスの期待に魂の炎を燃やすデストラは後継者レース参戦を高らかに宣言し、冒頭からあっという間に最高速度に加速して、銃弾と衝撃波の飛び交う2vs2のバトルが展開するスピード感が堪りません。
 「私には丸見えよ。坊やの全て」
 本日は背中に双眼鏡を収めたゴーシュはレッドを翻弄し(ところでゴーシュの、両腕で張り手しながら光弾を連射するアクションが結構好き)、カバーに入った銀は、ゴーシュに“何か”を見られてしまう。
 「……あら?」
 「しまった! 『ゲリ・ル・モンド』を使われた」
 「うふっ、面白いもの見つけちゃった~」
 「うわぁぁぁぁぁ!」
 大変楽しそうなゴーシュに対し、いつになく狼狽した様子で銀は慌てて切りかかり、この絶叫の余裕の無さが、常にない動揺に説得力を与えていて大変良かったです。
 冷静さを失った銀はゴーシュに軽々と弾き飛ばされて戦車を落とし、助けようとした赤もデストラに殴られてジャンボを落としてしまう。
 「コレクションを使わせてもらう」
 デストラは奪い取った二つのコレクションを金庫に収納し、今ここに、グットクルデストラVSG! が誕生する!!
 より重要なものの為にプライドを捨ててゴーシュの手を借りたデストラですが、新たなコレクションを融通してもらうわけではなく、かつて失敗した仕事をやりおおせる、という形でコレクションを入手する、というのがらしいアプローチ。
 デストラは未来予知によって赤の行動を先読みし、背後に回り込んだ赤が突き出す銃身を、仁王立ちのまま振り向きもせずに鷲掴みにする姿が、滅茶苦茶格好いい……!
 同じビクトリーのコレクション能力でも、敢えてどっしり構えて待ち受ける、という形でスーパールパンレッドとは差別化し、デストラの重量感を生かした見せ方で、後半に入ってもアクションのアイデアの豊富さが光ります。
 デストラは続けてサイレンストライカーの能力を発動し、重力操作で赤と銀を地面に押さえつけ、更に重力シールドによって両者の反撃を跳ね返す。
 ……そういえば、コレクションを人間に使えるように改造すると、逆にギャングラーは使えなくなるのでは? と想像した事もありましたが、特にそんな事はなかった模様。
 「貴様等は用済みだ。次は警察を片付ける!」
 ジェノサイドハンマーの一振りが引き起こした大爆発は、市街地の俯瞰となった画面の端から端までを紅蓮の炎に染めて更に広がり、周辺13地区を一撃で壊滅に追い込む。
 中盤、ステイタス・ゴールドの実力を見せ、共闘への説得力を補強する為にライオンがかなり派手な破壊活動を行っていたので、デストラさんがスケールダウンしないか若干の不安があったのですが、純粋に破壊規模で上回るという、力技に大満足(笑)
 「おのれデストラ……!」
 「これ以上、被害を出す前に、なんとしても倒さなくては」
 デストラさんも気付かないうちに爆発に巻き込まれていた警察戦隊は緊急対策に追われ、なんとか生き延びた魁利はジュレでコグレから手当を受けていたが、ゴーシュとの戦いでノエルが見せた焦りを聞くと、コグレも動揺を見せてそそくさと去ってしまう。
 そしてノエルは、どこかの非常階段で黄昏れていた。
 「ノエル、大丈夫か?」
 「……大丈夫じゃないかもしれないね」
 あのノエルが、心配するグッティに対して弱気を見せ、一度は忠誠回路の存在を疑った事もありましたが、ノエルがグッティを友達だと思っているのは、色々な意味で本気の本気の本気だったんだな……! という事が改めて伺え、第42話現在で胸襟を開けるのはグッティだけ! という現実が胸を抉りますがまあそれはさておき、引っ張り続けていた双眼鏡爆弾が予想以上の規模で爆発の気配を見せてきます。
 そうなると、快盗3人に双眼鏡について未だに説明していないのが不審ですが、「『ゲリ・ル・モンド』を使われた」という台詞から推測すると、見られた時点で、効果を説明する意味さえ無くなってしまうような代物なのでしょうか……とはいえ青黄への注意喚起は出来る筈ですが、もし2人の口を通して“赤に伝わってもいけない効果”となると、どんなえげつない代物なのか……納得のいく形で繋がってほしいものです。
 コレクション効果とはいえ巨大化要員なので退場は最終盤だろう、というのがメタ的には推測されたゴーシュですが、単純戦闘能力ではデストラに劣ると思われるも、双眼鏡の謎がキャラクターの強みになっていて格落ちを感じさせないのは、巧い位置づけ。
 両陣営は、デストラをどうやって倒すのか/デストラからどうやってコレクションを奪うのか、を考え込み……一つの結論に到達する圭一郎。
 「……コレクションを快盗に盗らせる」
 「……快盗に、協力を要請するのか?」
 「そっか! ノエルさんに頼むんですね」
 「頼む必要はない。快盗は必ず、コレクションを取り戻しに現れる」
 歩く動きを繋げながらシーン変わってジュレでは魁利も……
 「……しゃーない。警察に体張ってもらうか」
 「……奴らを囮にして、チャンスを待つという事か」
 「でもでも! デストラちょー強いんでしょ? 魁利がこんな怪我するぐらいだし、警察もそんな保たないんじゃ……」
 「大丈夫。あのお巡りさん達は、市民守る為ならなんだって出来ちゃうから」


失った大切な人を取り戻すために――
世界の平和を守るために――

 「俺たちはそこを……」「……我々警察は奴らを」
 「「利用する(んだ)」」
 相容れない二つの道を歩む両戦隊が、お互いの信念を認めはしないが理解する事で共通の敵に立ち向かう――あくまで互いを「利用する」という名目ながら、遂にここまで来たかという共闘で、紆余曲折ありましたが、一つのピークとして狙っていた場所に辿り着いたのかな、という気がします。
 一方、その輪から外れ、夜の闇に独り佇むノエルを見つけるコグレ。
 「『ゲリ・ル・モンド』を使われたそうですね?」
 「……すいません」
 包帯姿が痛々しいノエルは沈痛な表情で素直に謝り、凄いぞ双眼鏡!
 「だからパリの屋敷で、大人しくしてれば良かったんです」
 コグレは怒っているというよりたしなめる、といった感じで、思いの外、声音も心配そう。未だ本心と狙いが霧の中ですが、根っから冷酷非情の極悪人というよりも、「身内」と「それ以外」で明確な峻別があって、ルパン家の為なら心を鬼にして何でもやれる(だから、魁利達を「身内」に含めてしまわないように出来るだけ距離を取っていた)というタイプなのかもしれません。
 「身内」に手厚く外には非情、というのはそれこそギャング組織を思わせますが、ルパンコレクションを挟んで、ギャングラーの対となるのが、ルパン家であるのかも。
 「でも僕は、黙って見ているなんて出来なかった! これ以上、何かを失うのは……」
 「ですがコレクションを奪われた! 今回の失態が、更に大きな損失に繋がる可能性もあります。面倒な事態を避ける為にも……我々は、裏方で居るべきなんです。これ以上戦場に立つのは避けてください。いいですね」
 コグレは厳しい表情で去って行き、唇を噛みながら見送るノエル。
 ノエルが現ルパン家当主である可能性は未だ微妙に疑っているのですが、コグレの言い回しはやはり同輩へのもので、気心の知れた当主と執事、まで見るのはちょっと無理そうか……本人でなければノエルは当主とかなり近い関係で、取り戻したい人=当主、でないかとは思ってはいるのですが。
 あと以前に、8割方冗談でノエルがギャングラーだったらどうしよう、みたいな事を書きましたが、双眼鏡が見たのは、ノエルの中の金庫、という可能性もなくはないか。その場合、ルパン家=ギャングラーと分派した異世界人、とすると割と色々、収まる所に収まる感も。
 そして一夜が明け……
 『現在、92%の住民の避難完了。…………』
 デストラさん、すっかり怪獣扱い(笑)
 劇中のリアリティコントロールが難しくなる見せ方ではありますが、かつてない脅威の表現として、劇的さが整合性を上回ったと思うので、個人的にはあり。
 制服に身を包むパトレンジャー、快盗衣装を身に纏うルパンレンジャー、決戦に挑むそれぞれの姿が描かれ、挨拶代わりに日本支部めがけて放たれたデストラのミサイルを空中で撃ち落とした圭一郎たちは、警察チェンジ。
 「国際警察の権限において、実力を行使する!」
 「貴様等の命、ドグラニオ様に捧げる!」
 この戦いを高い所から見下ろしながら変身した快盗は、デストラが警察との戦いに集中している隙を突いて、解錠用のビークルを手に3方向から躍りかかる、が……これを読んでいたデストラさん、重力バリアーからの爆裂で、快盗と警察をまとめて吹き飛ばす。
 「警察を囮にするとはいい作戦だったが……ツいてなかったな、快盗」
 前回の意趣返しとなるイヤミに、ただの筋肉質ではないデストラの知性が窺えて、この台詞が最高でした(笑)
 「貴様等はここで死ぬだけだァ!!」
 「……ここで倒れてたまるかッ!」
 「……決めてんだよ。死んでも諦めねぇって!」
 両レッドを中心に再び立ち上がったW戦隊は、両サイドから猛然とデストラに挑み、それをビルの屋上から見つめて唇を噛むノエル。
 (快盗も警察も、己を曲げる事なく、ただ自分の願いの為に戦っている。それじゃあ僕は……)
 今回の冒頭やコグレへの発言から、これまで胡散臭さも色々あったけど、「黙って見ているなんて出来ない」から自ら前線で体を張ろうとしてきたのが高尾ノエル、という点に関しては一気に収束されたのすが、その上で、そのノエルが、コグレの忠告に従って、両戦隊を助ける事なく戦況を黙って見ているに留まっているという、どれだけヤバいのか双眼鏡。
 なにしろ初出が一桁話数、という物凄くスパンの長い伏線だった事もあってか、ノエルのリアクションを通して双眼鏡の不穏さをこれでもかと強調してきます。
 デストラは爆裂ハンマーを振り下ろし、台詞取りながら2周目で気付いたのですが、発動前にハンマーのピンを抜いていて、回数制の必殺技の模様。もともと手榴弾がデザインモチーフに入っているデストラですが、ラストバトルという事で出せるだけのギミックを詰め込んできます。
 この一撃により、戦況を見守っていたノエルも含めて一同まとめて吹き飛ばされ、変身解除。
 「随分粘ったようだが、いよいよ終わりか……ふふふははははははははは!」
 快盗が落としたマジックとジャイロのビークルを手にしたデストラは、腹の底からこみ上げてくる笑いを抑えきれず……極めて高い戦闘力に十分な頭脳も持ち合わせ、総じて有能ですが、詰めが、甘い。
 デストラの哄笑が響く中、地面に這いつくばりながらも、視線を合わせる赤と赤。
 ((まだだ))
 その瞳に宿る炎は、共にいささかも揺らいではいない――
 (あいつは絶対諦めない……!) (絶対あいつは立ち上がる……!)
 (あいつならどうする?!) (あいつならどう動く?!)
 両者の脳裏をこれまでの激突が駆け巡り、背中合わせだった2人は、向き合って同時に叫ぶ。
 ((あいつなら!))
 死力を振り絞っていち早く立ち上がった快盗赤は、背中を銃撃してデストラの注意を引くと、ルパンレッドへマスカレード。
 「おいデストラ! ――まだ終わってねぇぞ」
 「言うじゃないか。近付けもしないくせに」
 「どうかな」
 余裕のデストラはハンマーを投げ捨てるとビークルを右手に持ち替え、マグナムを取り出したレッドに対して重力操作で迎え撃とうとするが、走り出したレッドはジャンプするや空中で反転し、後方にマグナムを撃つ事でその反動により、デストラ目がけて空中を疾走する!
 「あんたのお宝、いただくぜ!!」
 慌ててデストラが発生させたシールドに空中で阻まれながら絶叫したレッドは、その体勢から後方にマグナムを連射する事により反動加速を繰り返し、至近距離からマグナムの威力ごと自分の体重をぶつける、という捨て身の連続体当たりにより、遂に重力シールドを打ち砕く。
 「貴様の狙いが金庫でない事ぐらい読んでいる!」
 空中で回転、着地と共にデストラの土手っ腹めがけてマグナムを構えるレッドだったが、一手早くデストラがバリアーを張り直し、二つの力が零距離でせめぎ合う。果たして、バリアーが砕け散るのか、ルパンレッドが焼き尽くされるのか――
 「デストラーーー!」
 だがルパンレッド圧倒的不利のその時、メインテーマ曲と共に横から駆け込んだパトレン1号の銃撃が、デストラの握っていた二つのビークルを取り落とさせ、素早くそれを拾った1号は、デストラの金庫を解錠。
 あの、朝加圭一郎が、自ら金庫を開けた……!
 アイコンタクトから互いの覚悟と能力を信じて行動する両レッド → ルパンマグナムを活用し、ルパンレッドが体当たりでぶつかっていくギリギリの攻防 → これまで散々、金庫など知った事か! と悪・即・轢しようとしてきた1号が、金庫を開ける事を優先する!
 両レッドの役割の逆転もさる事ながら、とにかく、パトレン1号が自主的に金庫を開けるに至る、という集約に震えました。
 この1号の行動に、倒れている4人の驚愕のリアクションが挟まれるのも、素晴らしい。
 長いスパンでは改造ギャングラーの5つ同時金庫開けが布石になっているのですが、組織の為にコレクションの確保を優先した事で片手が塞がったデストラが、重力スキルを使う為に愛用のハンマーを投げ捨てる事になった、という決定的な敗因が、慢心、そして力(コレクション)によって身を滅ぼす因果応報として、実に絶妙な流れ。
 またその行動の背景に組織人としてのデストラの在り方を置く事で説得力を増しつつ、この一連の流れそのものが、やがて滅びゆくであろうギャングラーの姿と、マクロとミクロの対応関係になっているのが、お見事。
 1号がサイレンストライカーを回収した事で重力シールドを失ったデストラに至近距離からのマグナムストライクが突き刺さって吹き飛ぶと、戦場に飛び込んできた金Xが宙に舞ったマジックとジャイロをキャッチし、
 「僕も信念を貫く!」
 倒れたデストラからビクトリーを回収する見事な火事場泥棒。
 そして、マグナム直撃でも即死はしないだろう、というルパンレッドからデストラさんへの厚い信頼(笑)
 三者の連携によりビクトリーとサイレン、二つのビークルは取り返され、立ち上がるもよろけたレッドを思わず支えて引き起こしてしまうパトレン1号(反射)
 「……その体で無茶な真似を! 俺が動かなければ、今頃おまえはバラバラになっていたぞ」
 「そん時はそん時だ。でも、あんたなら意地でも金庫明けると思った。……でしょ?」
 「…………ズルい男だ」
 「それが俺の売りなんで」
 パトレン1号、完全に、小悪魔に翻弄される硬骨漢となる(笑)
 「快盗が囮になって、警察が金庫を開けるとはな」
 「当初の作戦と、役割が逆転したな」
 敢えて、青と黄がパトレン1号寄り、桃と緑がルパンレッド寄りになる、という立ち位置が面白いのですが、透真は最近、指でVSチェンジャーをくるくる回すのが楽しくて仕方が無い模様。
 「……遅くなって、ごめん」
 互いの腹の内を明かして恨みっこ無しと並ぶ6人に、項垂れ気味にとぼとぼと歩み寄る金X。
 「……構わん! おまえは必ず来ると思っていた」
 最初に受け入れるパトレン1号が格好いいのですが、これまでの関係性を考えると、人間としてはまだ信用していないが、行動力は信用している、みたいな。
 「最後に出てきて、いいとこかっさらってくだろってね」
 「…………へへ…………へ……僕の事、よくわかってるね♪」
 照れ笑いのような声を洩らし、長い沈黙の後、おどけた調子でくるりとまわって両レッドの肩に手を置く金X、というのは、ノエルのだいぶ可哀想になってきた感じから、ちょっとした救済があって凄く良いシーンなのですが、なのですが……だからノエル、警察との距離感はあまり縮まってないからな!! いきなり肩に手を置かれた圭一郎は、むしろちょっと引いてるからな!
 ルパンレッドにすら手を払われ、皆が苦笑したところでデストラが再起動。撃ち込まれたミサイルの爆炎が晴れた時、そこに立っていたのは――
 「スーパールパンレッド!」
 「ルパンブルー!」
 「ルパンイエロー☆」
 「「「パトレンU号!」」」
 「スーパールパンX」
 この勢いならスーパーパトレン1号が来るか?! と思ったらU号だったのは少し残念でしたが、〔桃-S赤-緑〕〔X〕〔青-V赤-黄〕と並ぶと、Xの寂しさが自殺しそうなレベルに到達するので、まあ、仕方ないか……(笑) 組み合わせ的には、Xとグッティが合体してグットルパトンX(金銀ストライブ)とかになれれば解決だったのですが、実際の並びは並びでダイヤル担当の青黄が素のままの為に少し見た目が寂しかったり、なかなか難しい。
 「快盗も!」
 「「「警察も!」」」
 「ギャングラーには屈しない!」
 「「「「「「「終わりだデストラ!!」」」」」」」
 共通する究極の敵に対して7人一斉ストライクが炸裂し、巻き起こる激しい爆発。
 「まだだ……こんなもので私は倒れん」
 しかしデストラ、いまだ倒れず!
 「私は、ドグラニオ様を、絶望させるわけにはいかんのだ! ゴーーーーーシュ!」
 ここの言い方がまた格好良く、1エピソードに濃厚に詰め込まれたデストラさん成分が、ここまでの不足を補って余りある満足感。
 ゴーシュにより遂に巨大化したデストラに対してグッティが音頭を取り、並んだ7人が次々とビークルを起動。
 「走れ「走れ「走れ「飛べ「飛べ「飛べ」
 と音声が連続するのがこれまた格好良く、トリガーのアップでCMに入り、CM明けから主題歌に合わせて超越合体ムというのがもう、これぞ戦隊の醍醐味! と滅茶苦茶盛り上がる流れなのですが、合体するとこれまでと違う〔赤赤・黄緑・青桃〕という組み合わせのコックピットになり、
 「ええ?!」「あれ?!」「「なんでー?!」」
 「「……あん?」」
 素直に驚く黄緑に対し、怪訝そうに睨み合う青桃、というネタをぶちこんでくるのが凄い(笑)
 あとグッティ、私としては、そこは赤桃でお願いしたかったです!
 ……まあその場合、青赤、という意味不明な組み合わせが誕生する事になりますが!
 「今まで以上に、力を合わせる為さ!」
 「わかってんな、おまえら」
 「喧嘩するなよ!」
 両レッドが一同からブーイングを浴びたところで決戦が始まり、ミサイルの雨霰を交わしながらデストラに迫るVSXは次々と各種ビークルによる換装攻撃を叩き込み、遂に崩れるデストラ。
 「「今度こそトドメだ!!」」
 VSXにマグナムを持たせて一同コックピットの中でチェンジャーを構え、縦持ちで体の右側に回す警察と、横持ちで左側に回す快盗がシンクロする、という絵がまた格好良く、この一編にこれだけの“格好いい”を詰め込んできたスタッフは、ホントお見事。アクション監督の福沢さんもさる事ながら、今作パイロット版に抜擢された杉原監督は、内容の詰まったシナリオではすっかり安心して見ていられるようになり、メイン監督として大きく飛躍の1年になったなと。
 「まーだだ……貴様等は、この私が潰すぅぅ!!」
 ビークルのエネルギーを弾倉に詰め込んだVSXマグナムに対し、肩とベルトのピンが弾けたデストラはまさかのアーマーパージを見せて胸部から大胸筋ビームとミサイルを放ち、ただ消し飛ばされるだけではなく、最後の最後まで隠し球を残して抵抗する、というのがレギュラー幹部の最期として素晴らしい粘り腰。
 「「覚悟しろ! デストラ!!」」
 快盗と警察、二つの力を合わせて放たれたグットクルバーストは、ファイナルマッチョストライクを凌駕して突き刺さり、光の奔流に飲み込まれる寸前、敗北を悟ったデストラの姿がスローモーションになり
 (ドグラニオ様……申し、訳……ございま……)
 大爆発で消滅、というのは、愛を感じる、実に丁寧な死にっぷりとなりました。
 前回の感想で、本格的に敵対したと思ったら前後編で退場は物足りないような……と書きましたが、むしろ、前後編で倒せないともはや倒せなさそうな強さ! 戦いを通して見せるドグラニオへの忠誠! コレクション能力から最後の切り札まで1エピソード通して手抜きのない戦闘のギミック! と、出番と直接対決の少なさを逆手に取って「強さのピーク」で散る、そして、そんなデストラの「強さのピーク」を乗り越える為に、W戦隊の「共闘のピーク」が必要となるという構造を組み上げたのは、実にお見事。
 立ち向かう壁を高くしてこそ、それに打ち勝つヒーローの姿が魅力的になる
 その基本原則の持つ面白さが詰め込まれ、貫かれて見事に結実した一編でした。
 「永遠に……」
 「「「「アデュー!」」」」
 「「「任務完了」」」
 激戦を終え、さすがに直後に揉める気力もない両戦隊だが、数秒、背もたれに身を預けた1号が、いやいやいかんいかん、といった感じですぐに身を起こす小芝居がおいしい。
 そして異世界ドグラニオ邸では……
 「……下がれ」
 ゴーシュも下がらせた薄暗い部屋で、デストラの分も酒を注ぐドグラニオ様の姿が沁みます。
 「デストラ……おまえはいい右腕だったよ」
 亡き腹心と最後の杯をかわしたドグラニオは、底光りする瞳の奥で何を思うのか――。
 人間界では、ひとまずジュレで祝勝会。
 「おまえの席、ねーから」
 ……じゃなかった、今回は、席があって、良かったなノエル!
 快盗トリオもオレンジジュースで乾杯をかわし、和やかに、つづく……だが!
 次回――感動の展開から一転、咲也リストラ(え)
 作劇としては今回が「共闘のピーク」という感じだったので、次に待ち受けるのはてっきり「決別という転落」だと思っていたのですが、先にノエルに焦点が向くようで、いったいどうなる。
 大変満足度の高いエピソードでしたが、振り返ってみるとゴーシュが存外まともにデストラを手伝っていた事になり、単なる気まぐれなのか、それとも裏があるのないのか。仮に年明け、改造バイオデストラV3とか出てきてしまったら、デストラさんの最期への満足感をどう消化すればいいのか(笑) 後は年明けの決着より前に、ザミーゴに年内にもうワンインパクトは欲しい所ですが、散りばめまくった布石をどうまとめていくのか、とにかく走り抜けてくれる事に期待です。