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ハンマー無双

快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』感想・第41話

◆#41「異世界への扉」◆ (監督:杉原輝昭 脚本:香村純子)
 先日のお悩み相談(ザミーゴの事をノエルに打ち明けるかどうか案件)が良い結果に結びついた、と初美花に報告を耳打ちされてやにさがる咲也、かつての「生理的に受け付けないストーカー予備軍」「声をかけられるだけで鳥肌が立つおちゃらけナンパ野郎」扱い(そこまで言ってない)からすると脅威的な進歩といえますが、が……一定の友好度が確保される代わりに、それ以上は前にも後ろにも決して進めなくなってしまうと語り伝えられる伝説の「いい人」ポジション、恐るべし……!(合掌)
 「仲良くなれて良かったな」
 圭一郎は圭一郎で、実家から届いた梅干しの壺を魁利に押しつけてぐいぐいと好感度上昇をもくろみ、そんな4人の姿を微笑ましく見つめるつかさ、そして奥の厨房からは透真がそれをじっと見つめていた……。
 一方、異世界ではデストラさんがドグラニオ様直々の呼び出しを受けていた。
 「俺はな、デストラ。お前がまた暴れるのを、見たかったんだ」
 「は……」
 「しばらく考えてた。俺が手元に置いてなきゃ、今頃おまえがライバルどもを蹴散らして、この椅子を奪い取ってたんじゃねえかってな。どうだデストラ? いっぺん……考えてみないか?」
 ギャングラー上層部が不穏に蠢くそんなある日の事、パトロール中のつかさ先輩は、若い女性に道を教えている透真を目撃。
 ……あれ、そういえば…………
 「今日は口説かなくていいのか?」
 いきなり咳き込むレベルで笑いました。
 国際警察視点の透真=
 「いえーーーーーーーーーーーい!! 君も、君も、可愛いねーーー!! なんでも買ってあげちゃうぜ、いえーーーい!!」
 のままだった(笑)
 というかこれ第16話の出来事なので、まるまる半年、鉄面ふしだらシェフ認識であったという、風評被害の恐怖に改めて戦慄。
 「……ご心配なく。二度としませんよ」
 深々と溜息をつき、諦めの境地で弁解しない宵町透真容疑者23歳は、今回といいキャンプ回といい、職場を離れると国際警察関係者に対する本音が覗いて明確な距離を感じさせますが、そんな透真の心の扉を一定の隙間こじ開けた咲也の恐ろしさにも改めて戦慄します(笑) マッスルボーイ! マッスルボーイ!
 「法に触れない限り好きにしたらいい」
 苦笑しながら答えるつかささんも実にざっくりした距離感で、別戦隊とはいえ、40話台にもなって、メインキャラ同士がこの距離感、というのも強烈。
 「ただ……魁利君と初美花ちゃんへの影響を考えてくれれば」
 とはいえ、それとなく説教モードへ移行せずにはいられないつかさであったが、それを強い調子で遮る透真。
 「魁利から聞きました。……俺達の事調べたんでしょう」
 「それは……」
 「だから必要以上に二人の事を気に懸ける。俺の事は何を聞いたんです?」
 つかさは痛い所を突かれた事もあって目を逸らし……ここに、国際警察では〔婚約者に逃げられて転職した男-こんなにモテて楽しいの初めてだいえーーーーーい!!〕の点と点が繋がっていたという半年分の地獄絵図が現出し、荒川さんは本当に酷い事をしたけど、立ち上がりからフルスロットルで面白いな!
 「……別にいいです。どうせろくな噂じゃないでしょうしね」
 そうさ、どうせ俺はレオタードで踊り狂う男さ……!
 「嫌われたかな」
 背を向けて歩き出す透真の後を追いかけ、気まずい空気の中で声をかけるつかさ。
 「お客様としては歓迎しますよ。でも二人の事を思うなら、そこまでにして下さい」
 「どういう意味だ?」
 「深い意味はありません。……自戒を込めて」
 「自戒? ……仲良くなるのを反省する必要が――」
 取り戻したい大事な人との関係、その為に共に行動する仲間との関係、仮初めの場所で表向きは親しくなっている人々との関係……失った過去の時間は止まったままなのに、生きている限り“今”は変わり続けてしまう事に透真が誰より揺れるのは、彩を失った世界に独りで生きるぐらいなら一緒に氷の中で眠りたかったからでしょうが(本質的な、魁利や初美花との相違点)、それがより深くさらけ出される前に、そこに現れるデストラ。
 強襲デストラに対して透真を逃がした3号は戦闘開始。デストラ出現の報告が両陣営を飛び交い、いち早くかけつけた金Xだが、ハンマーで殴り飛ばされて変身の解けたつかさは、様子を窺いながら赤黄の到着を待っていた透真と一緒に、開いたゲートにミサイルの爆風で叩きこむという力技によって異世界送りにされてしまう(笑)
 能力と豪快さが巧くミックスされ、今回の好きなアクションです。
 「おまえまさか、僕たちを異世界に閉じ込めるつもりか?!」
 「そうだ! ドグラニオ様の前で、この私が直々に処刑してやる!」
 金Xの攻撃を鍛え上げた腹筋ガードで軽々と弾き飛ばしたデストラは、ハンマー連打で反撃を許さずに海へと落とし、デストラさん、強し。
 「死んだか。残る5匹を捕まえるとしよう」
 ただし、詰めは甘かった。
 一方、透真とつかさは青紫色の靄が立ちこめる異世界で目を覚ます。
 「……そうか。ここはギャングラーの世界。逃げるぞ、透真くん。私から離れるな」
 巻き込んだ形になった透真に謝罪して今後の方針を検討しながら、手の方はてきぱきと自身の負傷を治療する、というのが格好良く、つかさ先輩は歴代でもかなり、格好いい女戦士像を表現できているかな、と思います(プロの実力と矜持の持ち主、という点では『ボウケンジャー』のさくらさん路線といえましょうか)。
 「いざという時は、私を置いて逃げろ。奴らの狙いは私だ」
 「…………わかりました」
 今は無力な一般市民という立場上、頷く事しかできない透真ですが
 「……でも俺の存在も知られている以上、見逃してくれるとは思えませんが」
 と付け加えてしまう辺りに、国際警察に対して、お邪魔虫でありいっそ目的を叶える為の踏み台として切り捨てられない感情が育っている事が窺えます。
 「君は冷静だな。戦力部隊にスカウトしたぐらいだ」
 代わりにうちの緑色のを、ジュレに送ろうそうしよう。
 「は、冗談でしょう。……俺はただの料理人です」
 そこを構成員に見つかり、透真を逃がしたつかさは負傷を押して戦闘開始。足を止めてその戦いを見つめてしまう透真だが、構成員に襲われたところをつかさの投石に助けられ、ひとまず身を隠す事に。
 人間世界では、透真のスマホを拾った魁利と初美花が、水もしたたるいい男モードのノエルと合流し、デストラがW戦隊を直接異世界送りにしようとしている事を知る。
 「しかも、ジュレの透真くんとして巻き込まれた。つかささんの前では、快盗チェンジもできないだろう」
 「俺の時より断然やばいな」
 と映画ネタ?を挟み、魁利は、デストラにゲートを開かせたまま拘束しよう、という決死の作戦を提案する。
 異世界では多勢に無勢ながら生身で構成員をしのぐつかさだったが、足の負傷からピンチに陥ったその時、体重を乗せた体当たりで割って入り、つかさを救う透真。
 「透真くん! どうして?」
 「今あなたを見殺しにしたら……あいつらが……」
 厨房から、魁利、初美花、そして国際警察の面々を見つめる透真の視線は、いつしか警戒ではなく温かいものになっており…………えー……大変いいところの途中で恐縮なのですが、今回の冒頭に直接繋げる回想シーンではあるのですが、
 一人、足りなくありませんか?
 誰とは言わないけど、ほら、高尾とか、ノエルとか、アモーレの国から来た26歳の……僕だよ! コレクションも集めてギャングラーも倒す! 孤高に煌めく気高い僕だよーーーーーーー(フェードアウト)
 国際警察でデストラ登場の連絡を受けるのが今回ノエルの初登場シーンなので、画面構成がややこしくなる点を除けば、ここからノエルを省かなければいけない必然性、とまでのストーリー上の都合は無かったように見えるので、さすがにノエル、ここに居ないのは可哀想(笑)
 ……まあ、何もかも凍り付かせる、猛烈な地吹雪のような哀しい現実はさておいて、本編に戻ります。
 「透真くん! どうして?」
 「今あなたを見殺しにしたら……あいつらが……二人が……傷つく」
 「……大切なんだな。魁利くんと、初美花ちゃんの事が」
 それは透真が出来れば見ないふりをしようとしていたものであり、強制帰宅ビームでジュレに戻った時に突き立てられながらそれでも目を逸らそうとしていたものであり、しかし、土壇場での行動はそれを裏切り、こぼれた本音を耳にしたつかさの真っ直ぐな指摘は、透真にそれを思い知らせる。
 そう、宵町透真は、大平彩が居ない世界で、新たに大切なものを手にしてしまっている。
 勿論、大切なものが一つでなくてはいけないわけはないのですが、彩が横に居ない世界で、自分一人で他の大切なものを見つけてしまうのは透真にとっては認めがたい事であり、しかしそれを認めざるを得なくなる、とここをグイグイ攻めてくるのは、透真の特質が浮き上がってお見事であると同時に、一度は軟着陸の空気を作っておいて……という展開が待ち受けているのか、先行きに薄暗い雲がかかります。
 失った過去に縛られるよりも、最初は仮初めでも今そこに生まれたものを大事にして前を向けるようになる、という方が今作のテーゼらしくはありますが、どうまとめてくるかは本当に楽しみ。
 また、透真が直接、警察メンバーへの親近感を表明するのではなく、あくまでも魁利と初美花の為に動く、というのが、透真の保護者意識を示しつつ、感情のクッションを挟む事になり、距離感の調整が絶妙でした。
 「私が必ず! 君を帰してみせる!」
 二人は構成員の包囲を切り抜け、つかさの激しいアクション→透真の言葉、という動と静のメリハリもついて、良いシーンでした。
 人間世界では、つかさを探す圭一郎&咲也の前にデストラが現れ、さくっと異世界送りにされた二人はなんとそこで、まさかのザミーゴと遭遇。そしてデストラを拘束しようとするルパンレンジャーだが、ワイヤーをあっさり引きちぎられてしまう。
 異世界では再びつかさと透真が追い詰められ、弾き飛ばされたVSチェンジャーをキャッチした透真は、咄嗟にスタイリッシュ回避からのスタイリッシュ射撃で構成員を粉砕……してしまう。
 予告の映像と台詞から、つかさの危機に自前のチェンジャーを抜いてしまった透真が魁利と初美花を守る為に一人だけ自首、みたいな展開を予想してワクワクしていたのですが、つかさのチェンジャーでした、というのは納得の範囲で予告が巧い編集でした。
 ジャケットの裾をなびかせながらの透真のアクションが大変格好良いのですが、直後に、やっちまった……という顔になり、驚きに目を開くつかさ。詳しく問い質す前に増援が現れるが、更にその背後から赤と緑の閃光が走り、圭一郎と咲也が駆けつける!
 人間世界ではルパンレッドがミラクルマスカレードをする、が……予知を越える圧倒的なパワーーー!!
 こちらは予告からの予想が当たりましたが、敵幹部がトンデモ能力を正面からパワーで粉砕する、というのが好みの展開でちょっと気持ち良かったです(笑)
 黄銀もミサイルで吹き飛ばされ、赤はハンマーの一撃でがっくり膝を付き、パワーが全てを制すると思われたその時――
 「あんた、ツいてないね」
 デストラの背後に生じたゲートから圭一郎達4人が飛び出し、デストラはその銃撃を受けて体勢を崩す。
 「貴様等どうして……!」
 「さあな」
 「おまえ、人望ないんだよ」
 「なんだとぉぉぉぉ!」
 咲也にだけは、言われたくない!
 警察戦隊フル名乗りから戦闘に雪崩れ込み、奇襲を受けて圧倒的不利の状況からも、両手持ちのハンマーを正面の3号に叩きつけ、それをすかさず片手持ちに切り替えて横の1号に振り下ろす! というハンマーアクションが格好いい。
 そのパワーで警察戦隊を薙ぎ払うデストラだが、ダメージが残るルパンレッドが投げ込んだビークルを、両サイドから駆け込んだ青と黄がキャッチして金庫を解錠。
 「空っぽ?」
 「この強さでか?!」
 だがそこには何も入っておらず、セオリーを忘れずに情報を共有しつつ自然に青を参戦させながらデストラさんの株も上げる、とワンアクションに濃厚な要素が詰まっていて良かったです。
 「だったらここで倒すまで」
 デストラに連続砲撃を浴びせたサイレンXはグッティを1号に渡し、融合ストライク&スペリオルストライクのダブル必殺砲が炸裂。大爆発に消えたかと思われたデストラだが……
 「化けもんだな」
 「まだだ……ドグラニオ様の期待に応える為、私は、倒れるわけにはいかんのだ……!」
 デストラさんはダメージでよろめきながらも、ゴーレム2体を投げて撤退。
 度重なる激闘の消耗でつかさが気絶したのでXエンペラーとVカイザーが出撃し、本格的に出番の消えつつあるパトカイザーですが、なんかもう、色々、仕方ないのか(^^; 物語も終盤戦に突入し、幹部退場劇をやりそうな勢いなら、シナリオ的に今回は巨大戦無しにしたかったのでは感も窺えますが、せっかく巨大化したので、VカイザーからSカイザーにチェンジして1体、Xガンナーとマグナムロボでもう1体、を派手に撃破。
 「もうちょっとでデストラを倒せたのに……」
 「でも、みんなが無事だったから、それだけでも良かった」
 「……そうだね」
 ジュレに戻った快盗&ノエルの視線が向けられるのは、かましくてお節介でちょっと面倒くさい常連客のテーブルで……マグナム回・テント回・心配性回と積み重ねて、大切なものを取り戻す為に他の全てを切り捨てて裏街道を行く筈だった快盗達に、切り離せない今が生まれてしまっている事が、自覚/無自覚の差はありそうなれど示されるのですが、これまず間違いなく、この先に待ち受ける決定的な断絶の前振りっぽくて、凄く不穏。
 一連の事件を報告する警察では、異世界から戻ってこられたのは「楽しい玩具を取られたくないからさ」とザミーゴが嫌がらせで開いたゲートを利用しての事だったのが明かされ、問題はデストラさんの人望ではなく、ザミーゴの性格だと思います!
 「でも素人とは思えない構えでしたよね。アクション映画とか好きなのかな?」
 休日はレオタードを着込んでゲーセンでゾンビとか撃ちまくっているのかも! と透真に新たな風評被害が……で済むわけはなく、じっと考え込むつかさ。快盗の正体に関わる疑念の点も前半からあちらこちらに散りばめられていますが、そろそろ一気に繋がってほしい頃合い。
 そして異世界では、苛立つデストラの元に、楽しそうに笑いながらゴーシュが姿を見せていた。
 「コレクションを使えばいいのよ。そうすれば貴方に勝てる人間なんていやしない。どお、私が手を貸してあげましょうか?」
 よってたかって身内から追い込まれるデストラさん、次回――リタイア?!
 本格的に活動を開始したと思った2話でリタイアだと少々物足りない気はするのですが、今回の暴れっぷりは見応えたっぷりでしたし、次回どこまでやってくれるのか、楽しみに待ちたいと思います。そして、もしデストラさんが次回でリタイアだと年内残り話数をバラエティエピソードに使うとはさすがに思えず、デストラさん退場を何らかの形で引き金にして、快盗の正体バレ展開に持ち込まれるのか……?
 打った布石の数からいっても、そろそろそのぐらいやっても良さそうですが、聖夜に散るのは果たして誰だ!