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竜とグラビアと明かされる真実

電光超人グリッドマン』感想・第18-19話

◆第18話「竜の伝説」◆ (監督:石井てるよし 脚本:神戸一彦)
 「武史よ、憎悪の恐ろしさを人類に知らしめ、パニックに陥れるのだ!」
 中国で発見された5000年前のミイラが日本の考古学研究所で調査される事になり、その姿に世界に対する怨念を感じ取った武史は、強化怪獣メカバギラを研究所のシステムに送り込む事で、逆恨み同盟の一員としてミイラを復活させる!
 「うまく行ったぞメカバギラ。おまえが暴れれば、ミイラも暴れる。ふふふふふ」
 研究所にはたまたま、直人父のコネクションにより、ゆか・カナ・大地がケーブルテレビの社員(休日に、上司の子供の面倒を見る羽目になるもの悲しさよ)と共にミイラの見学に訪れており(直人と一平は塾のサボりがバレて自宅軟禁中)、次々とミイラに格闘戦を挑む、父部下と研究所の先生が凄い(笑)
 と思ったら、「カメラを回して!」と叫ぶ女子アナがもっと凄かった(笑)
 緊急生中継により甦ったミイラの姿がお茶の間に大写しとなる色々と箍の外れた展開から、Gコールを受けた直人はジャンクに向かうとアクセス・フラッシュ。
 グリッドマンは、全身に強化が施され、右目が赤く輝く義眼になっているのが格好いいメカバギラに挑み、ゆか達3人は迫り来るミイラから身を潜めて隠れるが……と今回も二つの局面を交互に展開。
 「ねえ、どうして私たちを追いかけてくるの? お姉ちゃんの事、お姫様だと思ってるんだよ」
 ミイラは、国を守る為に戦い姫と恋仲だったが謀臣に暗殺された英雄、という伝説(あくまでゆか調べであり、真実性は明確にされない)で背景を彩られており、ゆかにその面影を見ているのではと思わせる話運びなのですが、カナが言うと、おまえが生け贄になれと促しているようにしか聞こえません(笑)
 まあ、序盤やり過ぎたと思ったのか(或いは視聴者からの反応がフィードバックされたのか)、ここの所のカナは随分と腐れ外道度が下がって控え目になってはいるのですが。
 一方で、目の前で子供が襲われているのに生中継を優先してそれをカメラに収め続けるカメラマンとリポーターのクズ度の高さが、段々と『グリッドマン』の芸風になりつつあります(笑)
 あまりやりすぎると、風刺や戯画化を通り越して、“大人が信用できない世界”になってしまい、それは今作全体として望む所ではないと思われるので、そろそろカウンターが欲しいかな、という気もしますが。
 前回の戦いで消滅したゴッドゼノンはまだ復旧しておらず、グリッドマンは尻尾ブーメランに苦戦中。相変わらずBGM不足の戦闘にはバリアシールドが投入され、どうにかこの分割展開を盛り上げようという意識は見えるのですが、どうにもこうにもテンポの悪さを克服できません。
 「あなたが探してるお姫様は、私じゃないわよ」
 ゆかの言葉に反応したミイラの動きが鈍ると、それに連動して怪獣の行動も鈍るが、武史の呼びかけに応えて再び活性化し、つまり、武史のヒロイン力はゆかよりも高い、という論理的帰結。
 だがこの隙に一平が、ラフスケッチ段階だった新たなニューウェポンを完成させて送り込み、グリッドマンはドラゴニックキャノンを実装。大砲構えるグリッドマンと棺の副葬品だった竜の飾りを手に姫の想いを語るゆかが重ねられ、ドラゴンファイヤーであぶってからのグリッドビームで怪獣は消滅。キラキラミストにより研究所のシステムは回復し、ミイラは再び永遠の眠りにつくのであった。
 果たしてミイラは竜を操る英雄であり、ゆかの言葉はミイラに届いたのか……という点についてのファンタジーは持ち込まれず、事件はグリッドマンのキラキラミストにより(今作世界においては)物理的に解決し、“その瞬間”のミイラ側については描かない、というのは良いバランスでした。
 後日、ミイラの写真を見つめながら物思いにふけるゆかに直人と一平は明るく声をかけ、感傷的になっているゆかを励まそうとして明るく振る舞っているのか、単に乙女心を解さないだけなのか、それとも水面下でミイラに嫉妬を燃やしているのか、どれも非常に微妙なのですが、じゃれ合っている間にミイラの写真をばらまいてそのまま走り去る辺り、今日もさいてーポイントをゲットした!
 「直人と一平のどこに明るい未来があるの?!」
 が、塾をサボって軟禁中の実家を抜け出した後だけに、大変リアルです!
 ナレーション「静かに、永遠の夢を見ながら眠っていたミイラは、乾いた現代に、愛の強さを、伝えようとしていたのかもしれない。ゆかは甦ったミイラに、遙かな時を超えた、ロマンを感じていた」
 ミイラの最期から主題歌アレンジBGMを続け、ナレーションさんが綺麗に落とそうとするのですが、いったいぜんたい愛の強さはどこにあったのか、なんだかズレた感じで、つづく。
 大地凍死寸前、ドタバタ凶悪犯、と今のところ出来の悪いエピソードが続く神戸脚本回。Bパートの分割展開縛りは今作全体の構造上問題と思われ、今回の脚本・演出に限った話ではないですが、「一平のデザインをゆかがプログラム化して送り込む」という従来の段取りを無視して、一平が一人で新武装を送り込んでしまったのは、致命的失敗。
 3人組の役割分担の面白さが失われてしまっていますし、今作ここまでの積み重ねに反する事で、ニューウェポンの説得力そのものも著しく欠いてしまいました。新ギミック投入回の難しさというのはありますが、ゆかの正統派ヒロイン押しエピソードと、一平の閃きの部分も巧く繋がらず、残念。
 次回――《不思議コメディ》からの刺客現る!

◆第19話「セクシー婦警SOS!」◆ (監督:北村義樹 脚本:大川俊道
 「セクシーアイドルだったんですか? 美咲巡査」
 直人達の住む街の交通課に新たに配属された、人目を惹く美人(というにはちょっと苦しいような……)婦警・美咲麗子。ドジで運動神経も鈍くて自信を持てない自分を変えたい、と偽名に年齢詐称してグラビアコンテストに応募したところ、本人もまさかのグランプリに選ばれて雑誌『PUNCH BOY』にピンナップが掲載されてしまい大困惑。そんな彼女のお尻とミニスカに目がくらむ武史! 武史ーーー!!
 カーンデジファー様は、おまえをそんな子に育てた覚えはありません!
 女の色香に迷った所を、美咲とは対称的なベテラン婦警・藪下雅子(演:柴田理恵)にどやしつけられた武史は、グラビア雑誌を落として逃走するが、その中には秘密のメモが挟まれていた!
 「なに、秘密のメモを?!」
 「は、はい……怪獣のデッサンや、カーンデジファー様の秘密をメモっといたのですが……」
 メモるな(笑)
 という色々ハチャメチャな回で、ゲスト女優(藤代美奈子)の名前で検索した限り、アイドル企画回……というわけでも無かったようなのが、どう捉えていいか少々困惑します(ゲストキャラ中心の回なのは間違いないのですが)。
 美咲の予定をチェックした武史は、美容院ごとメモの存在を抹消してしまおうと復活火炎怪獣を送り込むが、美咲の存在が気に入らない藪下がわけのわからない難癖をつけて代わりに美容院に行っていた為、失敗。ところが、グラビアと同一人物だとバレるのを恐れる美咲にゆかが思い切って髪型を変える事を提案し、そこを狙って再びメカ火炎怪獣が送り込まれる事に。
 いっそ証拠隠滅の為に辺り一帯焼き尽くしてしまえと命じるカーンデジファー様に、「そこまでやると死傷者が……」とかなり今更な反論をする武史だが、洗脳ビームを撃たれてしまい、メカフレムラーが美容院のコンピューターシステムに侵入。パーマの機械が暴走を始めて直人母が巻き込まれ、美咲も美容院の中に閉じ込められてしまう。
 美咲を気にして美容院を覗いたゆかがこれを目撃してジャンク部屋に戻るとGコールが鳴り響き、直人達が事件に巻き込まれたり背後のカーンデジファー様に気付く形にしないと面白くないけれど、そうするとGコールがいつも後出しになってしまう、というのは今作の基本的な難点。……まあハイパーエージェント、ハッキングは素通しだし、モニターの中から凶悪犯に「馬鹿者め!」ビーム浴びせたりしないし、セキュリティとしては基本役立たずなので仕方ありません。
 炎であぶられるグリッドマンにバリアシールドが転送されるが、初対戦時は炎を押し返すのが印象的だったのから一転、盾ごと吹き飛ばされる、というのは強化怪獣として格好いい描写。
 「このままじゃグリッドマン、いや、直人が消滅しちまう!」
 そしてさらっと明かされる、ここまで明言されていなかった衝撃の事実。
 一方、美容院では直人母らが脳を茹でられて割と思い切り死にかけており、店内の美咲は右往左往。
 「君も警官なんだろ美咲くん! 頑張るんだ!」
 (意図的でしょうが)声が裏返るのが格好良くなりきらないものの、駆けつけた小金村はそんな美咲を叱咤し、もともと正義感と行動力の人とは描写されているのですが、いつの間にやら小金村が、家族以外のキャラでは“手本になる大人”のポジションになりつつあります。
 ゆか&一平は、ドラゴニックキャノンに変形機構などを加えたダイノファイターを転送し(今回はゆかがプログラムするので、ますます前回が浮く事に)、支援攻撃で怪獣の喉を破壊。グリッドマンは火を吹けなくなった怪獣に怒濤の反撃を決めて勝利を収め、美容院のシステム修復に成功する。
 これにより直人母らは九死に一生を得るが、苦しむ市民に離れた場所から声をかけるだけでさして役に立たなかった美咲(まあ、炎上しつつある店内で勇気を持って市民を励ました、と取れない事はないですが……)が「あなたのお陰で助かったわ」と感謝を受けて警官としての自信を得る、というのは、ギャグ調とはいえ感電を恐れずシステムに挑んだ例などが以前にあるだけに、劇的さが不足。人が“変わる”瞬間を切り取るクライマックスとしてのジャンプには物足りず、あくまで個人の心の問題とはいえ、ヒーローフィクションとしてはもう一押しが欲しかったところです。
 グラビア雑誌をちゃっかり拾っていた小金村は、アイドルと美咲の関係について問い質そうとするも、積極的にモーションをかけてくる藪下に引きずられていくのであった、でオチ。
 事件の発端となった問題のメモは、美容院での大騒ぎの際に雑誌の間からゴミ箱に落ちて一件落着、とされるのですが、武史視点だと全く落着していないし、そもそも悪の組織の秘密のメモが闇に葬られてしまったのなら世界にとっても落着していないしで、2話続けて、ナレーションさんが綺麗にまとめた事にしているけど凄くズレているような! というエピソードでした(笑)