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井上ゆかはまだ30%

電光超人グリッドマン』感想・第17話

◆第17話「孤独なハッカー」◆ (監督:石井てるよし 脚本:平野靖士)
 「すまない。夕べは直人達が外からアクセスしてきたのだとばかり思っていた。ハッカーの悪戯だと知っていれば……迂闊だった」
 ハイパーエージェント、不覚!
 「スニーカー」を名乗るハッカーによってジャンクがハッキングされ、サンダージェットのデータが盗み出されてしまう。うちのシマに手ぇ出すとはどこの組の鉄砲玉じゃ、と怒りに震える直人達が、今度来たら蜂の巣にしてやるけんのうとジャンクのセキュリティを強化、手ぐすねひいて待ち受けているとスニーカーからの再アクセスがあり、ひねくれた性格のハッカーが悪の道に入る前に救うのだ、とエージェントとしての職業意識に燃えるグリッドマンの発案で、アクセス・フラッシュするとスニーカーのパソコンに直接乗り込む事に。
 「私の名はグリッドマン。コンピューターワールドに逃げ込んだ、魔王カーンデジファーを追ってやってきた、ハイパーエージェントだ」
 直人達と同世代の少年であったスニーカーのPCモニターに姿を現したグリッドマンは、正気を疑う自己紹介を爽やかガッツポーズで行い、第1話を思い出す懐かしの強引さ(笑)
 「なんなんだこいつ……?」
 狼狽した少年は思わずモニターから距離を取り、そこで始めて、ハッカーの少年が車椅子生活である、と判明するのが上手い演出。
 結局、グリッドマンによる正攻法の《説得》は失敗するものの、戻ってきた直人はきっちりサンダージェットのデータを取り戻し、ゆかはゆかで、グリッドマンがスニーカーを攪乱している内に、スニーカーのリアル住所を引っこ抜いているのがエグい(笑)
 ……グリッドマンが間に入らなかったら、本気になった完璧超人がスニーカー宅のセキュリティシステムその他に侵入して自宅が自爆したり、何故かベッドの下から白い粉が出てきたり、銀行の預金残高が0になっていたかもしれないので、良かった、グリッドマンが居て、本当に良かった……!
 まずは腐れハッカー野郎の顔を確認して家族構成を調べ、場合によって(以下略)してやるかとリアル住所に乗り込んだ3人組は、スニーカー少年が姉に車椅子を押されるも外出を頑なに嫌がっているところに行き会い、交通事故で両足を怪我し、肉体的には治っている筈なのに、歩こうとする事そのものを恐れて引きこもり状態という、スニーカーことシゲル少年の事情を知る。
 一方、スニーカーがグリッドマンについて書き込んでいる掲示板を目にした武史が、これもIDからあっさりスニーカーのリアル住所を割り出すと偵察に訪れており、シゲルが3人と一緒に居る光景を目撃。
 (僕と同じ目をしている……同じだ……僕と同類だ……なのに)
 シゲルから世を拗ねるひがみ根性のオーラを感じ取る武史だったが、そんな根暗野郎が井上ゆかと半径2m以内の同じ空気を吸っているとは許せない! と嫉妬の炎で怪獣を制作。
 超音波怪獣ニセアノシラスを作り出してパソコン通信ネットワークのサーバーへと送り込み、パソコン通信を利用している人々を洗脳する事で悪のハッカー軍団を作り上げる!
 直接会って事情を知った直人は、スニーカーを細切れにして瀬戸内海の魚の餌にする考えを改め、グリッドマンとしてもう一度会いに行こうとするが(ところで今日の直人は、お肌の調子が悪いようで気になる)、Gコールを受けて緊急出動。
 Cワールドに乗り込むグリッドマンだが、超音波攻撃によって足の分子構造を変えられた事で足の先が石化してしまう大ピンチ。洗脳されたスニーカーの妨害によりアシストウェポンを送る事が出来ない、というのは、話と繋がったスペクタクルにもなり、代用品に送るバリアシールド久々登場、の上手い理由付けになりました。
 超音波光線を反射したグリッドマンが、続けて放った電光雷撃剣のダメージにより洗脳が解除され、スニーカーはモニター越しにグリッドマンの戦いを目撃。ハイパーエージェントの存在が世迷い言で無かった事を知ると、腰の辺りまで石化が進行し、もはや完全に身動きできないグリッドマンを助ける為の解凍プログラムを作成。
 一方、スニーカーによる妨害工作が止まった事で、ゆか達はプログラムが不完全ながらもアシストウェポンを送り込み、これも久々にゴッドゼノンが登場するのに納得のいく理由付け。微妙な動き(笑)のゴッドゼノンが怪獣を食い止めている間に、スニーカーから解凍プログラムが送られてくる、というネットワーク上の連携も面白く決まりました。
 プログラムが不完全な為に動きのぎこちないゴッドゼノン(名演)は怪獣の攻撃で消滅してしまうが、スニーカーが作成し、ジャンクを経由して送り込まれた解凍プラグラムで石化を脱したグリッドマンは、怪獣のビームを前転ジャンプで回避すると、その勢いのままグリッドマンキックを叩き込んで怪獣の角を爆砕する! というのは映像の迫力もあって、久々に盛り上がるアクション。
 グリッドマンは弱った怪獣をジャイアントスイングで投げ飛ばしてからグリッドビームで空中フィニッシュし、ここにカーンデジファー様の魔王ハッカー軍団計画は水泡に帰すのであった。
 「シゲルくん、君の協力を感謝する!」
 「あ、ああ!」
 「私は、足が必ず動くようになると信じて戦っていた。君も足は治っている筈だ。どうして自分の足で歩こうとしない!」
 「違う! 俺の足は……」
 「立ってみるんだ。シゲルくん!」
 爽やかガッツポーズ連打×二枚目声のグリッドマンに促されるも、立てないシゲル。
 「勇気だ! 自分の殻に閉じこもらず、自信を持つのだ。君の心を奮い立たせるエネルギーを贈ろう!」
 グリッドマンはシゲルの部屋にキラキラミストを送りこみ、あくまでこれはCワールドのシステムを直すだけのものでHワールドの人体に特別な効果は無い筈なので、グリッドマン自身が奇跡を起こすのではなく、ヒーローはあくまで背中を押すだけであり、ヒーローの戦いを目にしてそれを助ける為に力を貸した時、既にシゲルは自分の足で立ち上がる力を得ている、というのはバランスの取れた構成。
 「さあ、立ってみるんだ、シゲルくん!」
 勇気を出したシゲルは立ち上がり、直人や一平と外で元気にサッカーで遊べるように。ナレーションさんが綺麗に収めて終わりかと思いきや、カメラはその光景を目にして地団駄を踏む武史の姿をクローズアップ。
 ナレーション「だがたった一人、武史だけは……」
 「どうして僕だけが……どうして僕だけが…………どうしてなんだぁぁぁぁぁ!!」
 自室に戻った武史が絶叫して、つづく。
 ゲストのシゲルは、ハッキングスキルといいグリッドマンに心配されるひねくれた性格といい、明らかに“藤堂武史であったかもしれない少年”として配置されており、カーンデジファー様と出会う後先、グリッドマンが手を伸ばせたかどうかの後先、というちょっとした運命の悪戯が盛り込まれているのですが、そこから最後に、グリッドマンが手を伸ばせずに、グリッドマンの危惧通りに魔王の下僕になってしまった、“間に合わなかった少年”である武史に焦点を移してつづく、という手堅い作り。
 武史の場合、家庭環境や交友関係など、救済へ繋がる要素は序盤からハッキリしているのですが、類似のキャラを描く事で、改めて一度それを明示しておく、というメインライターらしい中継地点の配置。
 また、次回のニューウェポンを前に、ここまでのオプションパーツをひとさらいしておく、という意図があったのかと思われますが、ハッカーの妨害を受けている、という事で思い通りにサンダーグリッドマンになれない理由を作り、それを、グリッドマンを勝利に導けるのか、ハッカー少年の心を救う事ができるのか、という二つのスペクタクルと重ね、段階を経て勝利と救済に繋げる、というのがよくまとまったエピソードでした。