東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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久々『ジオウ』

仮面ライダージオウ』感想・第6話

◆EP06「555・913・2003」◆ (監督:坂本浩一 脚本:下山健人)
 いつの間にか常磐家にライドウオッチ飾り台が超無造作に置いてあるのですが、マネージャーさんから小包で届いたのでしょうか(もっと前からあって私が気付いてなかっただけかもですが)。
 2011年でアナザーフォーゼを倒したと思いきや、別のアナザーライダーの姿を見せた上で復活したフォーゼを取り逃がしてしまったソウゴとゲイツが2018年の常盤家に戻ってくると、そこに居たのは人相悪くて態度の大きい猫舌の男。
 「乾巧だ。流しでクリーニングをやってる。世界中の洗濯物を真っ白にするのが……俺の夢だ」
 15年後の半田さん、声が渋い……。
 ソウゴは、全く動ぜず話についてくる巧と共に、アナザーフォーゼと謎の男・草加の二人に狙われているとおぼしき女子高生・カリンをガードしようとするが、魔王様が女子高生のストーキングをしている内に、全ての謎を解くゲイツ(笑)
 アナザーフォーゼ/ファイズは、2003年に事故死したカリンを生かし続ける為に、天秤座の18歳の少女の生命エネルギーを集め、定期的にカリンに供給していたのだった。
 「おめでとう。歴史が変わって、今日からあなたが仮面ライダーファイズよ」
 第1話の必殺円錐キックの途中でファイズの変身が解除されて仮面ライダーの力がアナザーファイズに切り替わるシーンが挿入され……真理、死んだ? もっと抜本的に塗り替えられるのかもしれませんが、サービスやお祭りとしては不穏なだけで別に楽しくもなく、物語としては波及する影響が複雑すぎて想像で楽しむ余地を越えてしまい、どうもこの、「ライダーの力が奪われて歴史が変わる」という根本設定にノれません(“ベルトの物語”である『ファイズ』とは滅茶苦茶相性が悪い、というのも輪を掛けますし)。
 2018年では、草加がカリンを追っていたのは、アナザーフォーゼ/ファイズになった男・佐久間を止める為に、同じ孤児院――流星塾――の仲間として、カリンに頼まれていたからだと判明。ソウゴが巧から受け取ったファイズウォッチを託されたゲイツは2003年に跳び、ソウゴは再びアナザーフォーゼに立ち向かう。
 「あなたはだーれも救わないんだ?」
 「救うさ。仲間の為に奴が投げ打った、15年の歳月をな!」
 アクションと組み合わせながらのゲイツの変身は格好良かったのですが(ゲイツの変身ポーズは基本的に格好いい)、前回に続き、「仲間」というエピソードテーマを持ち込もうとする余りに、特に積み重ねが無いのになんでもかんでも「仲間」に集約してしまう、という典型的な悪いパターン。
 敢えてそれを裏付ける材料といえば、『ファイズ』本編で描かれていた流星塾の「仲間」の絆という事になるわけですが、エピソードテーマを担保するのが本編外のメタ要素というのはやはり好みではなく、作品コンセプト的にある程度『ファイズ』を踏まえるのは仕方ないにしても、もう少し今作の中で馴染ませてほしかったところ。
 特にそれをそのまま、ソウゴとゲイツの関係性に引き込むだけに、尚更。
 「あんたは、彼女を救ってなんかいない!」
 「おまえのやってる事は、彼女を苦しめているだけだ! だから……」
 「「俺達が、お前達を救う!」」
 ゲイツは両肩から携帯電話の突き出したふぁいずアーマーを身に纏うと、人気のある必殺キックだからかクリムゾンブレイクを完全再現し、それでゲイツの担当になったの……? 2018年ではジオウが宇宙ドリルキックを叩き込んで二人のアナザーライダーが同時撃破された事によりその力は失われ、カリンはキラキラ消滅。
 「死者の蘇生」という要素を『ファイズ』から持ち込んでいるのに、カリンが灰にならないというのは大変な片手落ちだと思うのですが、アナザーファイズが女子高生を襲った時も心臓が燃えず、(首の折れる音)寸前のネタだけやる(個人的にこういうのは悪ノリ認識)、というのは何とも中途半端。……もしかしたら、現在の自主規制で、人間が灰になるのは出来なかったのかもですが。
 何よりも仲間の為に行動していた草加は無言で去って行き、率直に巧と草加は、「オリジナルキャストが出てきた」だけのものにしかなりませんでしたが(低い方のハードル設定では予想通りではありますが)、15年前に死んでいるとはいえ、目の前で女子高生が一人、キラキラ消滅した(感覚的には、消滅させた)のを見た後で、いい話だったなー、みたいな感じでにっこり笑いながら草加の背を見送るソウゴの精神構造にはどうもついていきがたい。
 ゲイツはまだ、未来で重い背景持ちなので納得できなくもないですが、ソウゴはどうして、そんなにサバサバと現実を受け入れ、救いとしての死を人に与えて平然としているのか。
 下々の民草を救うのが王様だから、で言い抜けるには限界があると思うのですが、心の底から「王が救いをもたらした」と信じているならば、確かにマネージャーさんが魔王候補としてプロデュースしているのも納得ではあります。
 で、そんなソウゴの精神性を“強さ”として描くならば、もっとソウゴに焦点を合わせないといけないと思うのですが、過去キャストに一定の出番を与えなければいけない、という縛りが物凄く足枷になっており、その上で過去キャストのドラマも扱いも当然のように雑という(第4話のエム先生は悪くなかったですが)、脚本や演出というよりも企画そのものの問題点が、時速300キロで高速道路の壁に激突した感。
 もう一つ加えて、カリンを生かす為にパーツにされた女子高生達は消費されて戻ってこない気がするのに実行犯の佐久間の「15年の歳月」が救われたので万事解決感を出されてしまい、2003年のアナザーファイズが倒された時点で、それ以降の被害者は存在しなくなっているという事なのかもですが、どうにも色々と据わりが悪くて、ソウゴ達の醸し出すあっけらかんとした大団円の雰囲気が受け入れがたく感じてしまいます。
 まあ、作風としてそこは、深く考えないで欲しい、という事なのかもしれませんが、ならばそもそも「人の生死に関わるエピソードはやらなければいい」と思うわけですが。
 (仲間……)
 草加を見送ったソウゴからキラキラした視線を向けられると、ゲイツは顔をしかめてそそくさと立ち寄り、まあ君、過去で勢いで「俺達」って言っちゃったからな……。
 そして今回、2003年の公衆電話の陰でじっと待機していたのに朗読の機会を与えられなかったマネージャーさんは、締めのナレーションにだけ乱入。
 「かくして、フォーゼとファイズの歴史は塗り替えられた。……歴史はオーマジオウへとしっかりと前進している。次も更なるレジェンドが――」
 ドーナッツを、盗んでいた。
 で、つづく。