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中澤監督、帰還

快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』感想・第37話

◆#37「君が帰る場所」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:香村純子)
 「今からここらは、俺の縄張りヤドー! にゃー、あいたっ」
 高笑いしながら市民を追い散らすヤドカリギャングに突き刺さる、快盗カード。
 「勝手に決めんな」
 「おまえがヤドガー・ゴーホムか」
 「やあどうも。い?! なんで俺の名を。……そうか、貴様等が!」
 「世間を騒がす快盗さ――」
 「「「快盗チェンジ!!」」」
 古式ゆかしいやり取りから、ルパンレンジャー揃い踏み。
 「予告する。あんたのお宝、いただくぜ!」
 そこにパトレンジャーも現着し、マグナムを取り出したルパンレッドは、壁に隠れる構成員を次々と壁ごと吹っ飛ばし、改めてえっぐい威力。……初代アルセーヌは、この武器を何に使っていたのか、段々と心配になってきます(笑) ……ドイツ軍の戦車でも吹き飛ばしていたのか。
 構成員を盾にしながら逃げ回っていたヤドカリは、いよいよ追い詰められるとコレクションの力を発動。空間に穴を開けて繋ぐ事で奇襲をかける亜空間パンチがパトレンジャーを地面に打ち付け、続けて放たれた謎のビームに打たれた両戦隊は、不思議な力で高々と吹き飛ばされ……パトレンジャーはそれぞれの自宅に、ルパンレンジャーはジュレへと、強制帰宅させられてしまう。
 圭一郎(六畳一間の壁に習字による訓示だらけ)とつかさ(以前のイメージ通りのぬいぐるみ王国)の自室が初公開され、転がり込んだ部屋の中でハタと状況に気付く国際警察の3人。ルパンブルーとイエローもジュレの中に飛び込まされたところで我に返り(効果は大変限定されていますが、世界の法則に介入する系の超強力な能力っぽい)……えー……あー……なんか、一人足りないんですが。
 「なーっはははは! 俺の強制帰宅ビームは、邪魔者を自分の家に送り返せるんヤドー!」
 高笑いするヤドカリの肩に、背後から突き刺さる赤い閃光。
 「なんで?! 貴様は、ここに、いるヤドぉ?!」
 「さあな」
 ただ一人、その場に残っていたルパンレッドはヤドカリと激突し、予告されたサブタイトルの時点で、お笑いと見せかけて重そうと身構えてはいましたが、この時点で、すっごくきつい。
 「おうちに帰れー!」
 再び放たれる強制帰宅ビームだが、やはりルパンレッドには無効。
 対処に悩んだヤドカリは、コレクションの力を利用して自分自身にビームを浴びせる事で強制帰宅して逃走し、現場から強制的に引き離されてしまう、という厄介な能力にそれぞれ頭を悩ませる国際警察と快盗トリオ。
 「戦えないんじゃ、倒せない」
 「厄介な相手ですねぇ」
 「でも、なんで魁利にはビーム効かなかったんだろう?」
 「……さーね」
 まがりなりにも透真と初美花がジュレへと帰ってきた中、魁利一人だけは帰らなかった事、そしてその意味を魁利が理解している事直接の台詞にしないで見せてくるのが実に凶悪。
 「…………帰る家が無ければいいって事か」
 そんな魁利に鋭い視線を向ける透真は、考え込んだ末に“それ”を口にし、背を向けて足を止めた魁利の隠された表情が明らかになる寸前、間にひょこっと顔を出す初美花。
 「……それって……まさか」
 「「野宿生活?!」」
 奇抜な発想が国際警察とシンクロし、スムーズに場面を切り替えつつ、キャラクターの距離も取り込んだ絶妙な交わし方。
 「野宿じゃない。テント生活だ。テントに住んで、戦闘時もテントを背負っていけば、強制帰宅ビームを食らっても、現場から離れずに済む。……一応理屈は通ってる。テントが家なんだから」
 「既に、自宅は、引き払ったソウダ」
 念には念を入れた圭一郎の自宅は国際警察の寮だと判明し……まあ、単身者向けの一番安い部屋だったりするのでしょうが、国際警察の寮、六畳一間なのか……。
 そして背広にテントを背負った圭一郎は、しばらく住所となるふれあいキャンプ場で、全く同じ作戦を実行中の透真&初美花と出会う。
 「こんなところで何を?」
 「……まあ……仕事の一環だ。君たちもキャンプか。……魁利くんは?」
 「そ、それが! ……っと、魁利と、喧嘩して、追い出されちゃって!」
 初美花、その場の勢いで物凄い爆弾を投げ込み、目を丸くして(おまえ何言ってんの?!)という顔になる透真。前回、圭一郎×咲也の陰でつかさがかなり活躍していましたが、今回は圭一郎×魁利の陰で透真が端々で掘り下げられており、色々な表情を引き出しているのも良いところ。
 ある意味で、うっかり嘴無効体質だったかもしれない、と疑念の湧く初美花、喧嘩して同僚2人を秋空の下へ放り出す魁利が物凄く悪者になっているのですが、微妙に、積み重なる日頃の恨みが入っているのか。
 ルパンレンジャー、恨みは確実に3倍で返していくのが快盗の流儀です。
 初美花の爆弾発言のフォローに回った透真はその夜、事の次第を魁利に連絡。
 「魁利……」
 踏み込むか、踏み込まざるか、そもそも踏み込める関係なのか、悩んだ末に透真は踏み込まずに電話を切り、闇の中に独り呟く。
 「…………帰る……家か」
 そこに缶コーヒー持ってやってきた圭一郎が隣に腰掛け、がたいの良い男2人が並んで座ると確かに狭苦しくはあるのですが、腰を上げてすうっとベンチで距離を取る間合いが絶妙(笑) この空間の印象づけの上手さがまた、中澤演出の持ち味の一つでもあります。
 「喧嘩の原因は……なんだったのかな?」
 「……警察に相談するほどの事じゃありませんよ」
 いつも通りの落ち着きを見せた透真はさりげなくかわしてみせるが、食い下がる圭一郎。
 「……以前、荒れている魁利くんを見かけた事がある」
 国際警察が鹿ギャングをデリート(実際には分身)した事により、ルパンレンジャーの任務が失敗したかと思われたあの時――「終わりたくない」気持ちを抱えて絶望の一歩手前に追い詰められていた魁利の姿を引き合いに出され、同じ痛みに打ちひしがれた透真の表情も、険しくならざるをえない。
 「彼はなにか、大きな傷を抱えてるんじゃないだろうか?」
 「……知りません。俺はあいつの保護者じゃないんで」
 圭一郎への怒り、絶望の痛み、そして、恐らくはもう一つの感情を抱える透真は、苛立ちを抑制しきれずに立ち上がって背を向ける。そう……
 「この俺に缶コーヒーを飲ませようとは、これは宣戦布告か?! 全面戦争か?!」
 じゃなかった
 「……気になるなら、自分で聞いたらどうです」
 ささくれだつ透真は、なおも食い下がる圭一郎に向けて半ば吐き捨てるように突き放すが……
 「…………そうか。そうしよう!」
 相手は朝加圭一郎だった!
 圭一郎はリズミカルにテントの方に駆けていき、己の選択ミスに気付く透真。
 「…………しまった」
 の声にかぶせてシーン切り替わってジュレのドア、というのは、シリアスな流れなのに思わず吹き出してしまう面白さ。
 「えっ?!」
 「夜分すまない。お邪魔します!」
 強引にジュレに乗り込んだ圭一郎は背負ったテントを店の真ん中に広げ、既に飯ごうまで出ているのが凄くツボ。
 「急になんなのー、この実力行使」
 さすがに態度を決めかねてか、姿勢はしゃちほこばりながらも軽口を叩く、という魁利の演技も面白い。
 「君と話がしたいと思ってね……友人として」
 「え? ……友達になった憶えないんだけど」
 「一緒に旅行した仲じゃないか」
 圭一郎はにんまりと笑い、快盗達が(過去も含めて)その場を切り抜ける為の嘘や誤魔化しから次々と自ら罠にはまっていくというのが、単純に1エピソードの展開として面白いのですが、物語全体の構造を考えた時には、非常に痛烈。
 「何かあるなら、相談に乗りたい」
 喧嘩の原因を問い、真っ直ぐに自分に関わってくる圭一郎に兄を思い出した魁利は視線を逸らして背を向け、唇を歪めながらも言葉が出ない。
 「魁利くんの、力になりたいんだ」
 肩に手を置かれて思わず突き飛ばした魁利は、兄を失った“あの時”がフラッシュバック。
 「……魁利くん?」
 「……勝手にしろよ」
 魁利は圭一郎を置き捨てて奥に引っ込み……翌朝、ジュレに“出勤”してきた透真と初美花は、「また今夜来ます。 友人 朝加圭一郎」という恐ろしいメモを手に、力なくカウンターに突っ伏す魁利を発見する。
 「あいつ昨日ここにテント張ったんだぞ!」
 「え? ここに?!」
 「ヤバいもの見られないように、徹夜で見張ってたっつーの」
 国際警察では咲也が、初美花と一緒にキャンプをしたかったと嘆き、両者の作戦が被っている事を知ったノエルは困り、圭一郎は圭一郎で、別のショックを受けていた。
 「懐かれていたと、思っていたんだがな」
 「……まあ、おまえが踏み込みすぎたんだろう。……魁利君は、お兄さんとの間に問題を抱えているようだし」
 取りなすつかさと、ここで両者の情報が接合され、前回-今回は、初の共闘合体前後編だった第24-25話と密接に繋がっているのですが、つかさの立ち位置も効果的に。
 「何か聞いているのか?」
 「いや、具体的には。でもなんとなく、彼はそれで家を出て、ジュレで働いている。……そんな気がしてる」
 「…………そっとしておくべきなんだろうか」
 他人のデリケートな部分に無神経(無自覚)に踏み込んでおいて結果が良い方向に転がったからOK的な作劇が苦手、という話はしばしば書いていますが、ここではキャラクターが互いの距離感を図り、他人の内側に踏み込んでいる(踏み込もうとしている)事に自覚を持った上で、果たしてそれが良いのか悪いのかという「葛藤」と「選択」がしっかり与えられているのが、香村さんらしい丁寧さであり、香村さんを信頼できるところ。
 圭一郎×魁利を軸にしながらも、透真とつかさがそれぞれの立場と距離感から、魁利に対してそれぞれの「選択」をしている事が織り込まれ、加えてそこに、踏み込む側の「痛み」も示されているのが、実にお見事です(そう見ると、煙幕を張って引くか、裸で突っ込むかの二択ばかりのノエルは、やはり人付き合いが得意なタイプではない、と捉えた方がいいのか……ある意味、M)。
 「……おまえはどうしたいんだ?」
 その答が出る前にギャングラー警報が鳴り響き、街に再びヤドカリが出現。圭一郎はキャンプセット一式を背負ったまま変身し、パトレンジャー&パトレンX揃い踏み。もちろん1号はテントを装備したままでポーズを決め、冒頭からきっちりルパンレンジャーを名乗らせると思ったら、この為の仕込みか……!
 「国際警察の権限において、実力を行使する!」
 戦いが始まり、強制帰宅ビームを浴びそうになった2号を1号がカバーリングすると……狙い通りに、ビームは無効。
 「よし! 作戦成功だ!」
 亜空間攻撃に切り替えるヤドカリに対して1号は背中のキャンプセットで皆をガードし、一体全体、そこには何を仕込んであるのか(笑) そして何だか、そこはかとない既視感があるなと思ったら、あれだ、キャプテン・アメリカだ……!(笑)(背中シールド繋がり) という事はその背中のテントは、ヴィブラニウム製なのか。
 1号は次々と繰り出される亜空間殺法を身を挺して背中で受け止め、基本的にギャグの類ではありましょうが、背中の家で攻撃をガードする姿がヤドカリ怪人と相似となる事で、「戦い続けるヒーローはやがて敵対者と同一になっていく」という宇都宮P好みのテーゼが体現されているという飛び道具。
 自分に向けて放たれる射撃を亜空間を通す事で跳ね返すという小技(今回、ヤドカリギャングのコレクション能力の描写も秀逸)も使うヤドカリだが1号はそれもテントでブロッキングしてみせ、その戦いを高い所から見つめるルパンレンジャー。果たして、背中にテント一式背負ったまま乱入してもいいものなのか……万が一を避ける為にレッドが一人で参戦しようとするが、それに気付いた金Xは3人を制止し、パトレンジャーが反撃に出ている間にしれっと快盗チェンジ。
 ヤドカリの動きを止めたパトレンジャーの連携からバイカーによる轢殺直前、銀Xは滑り込みでコレクションの回収に成功し、相変わらず、快盗が視界に入っても1号の引き金に全く躊躇がないのですが、バイカーの一撃に巻き込まれたらその時はその時で仕方ない……ほら今、おまえ快盗だしな! という感じで、この2人の友好度、全く上がってないな……!
 まあそれはそれとして、桃緑が接近戦でヤドカリを押し込み、ダメージの蓄積でよろけながらも1号が銃を構え、画面手前をダッシュで横切る銀が滑り込んで回収、そしてデリート、というのは格好良い流れでした。
 吹っ飛んだヤドカリはゴーシュが巨大化し、1号のダメージが大きい事から、Xエンペラーが出撃。強制帰宅ビームを回避しながら戦い、お部屋公開を逃れたノエル、直撃したらどうなるかは見たかったです(笑)
 Xエンペラーは頑強な甲殻を活かしたヤドガーのスピン攻撃に苦しみ、眼下でよろめきながらも敵に向かおうとする1号の姿に溜息をついたルパンレッドは、グッティを呼び出して警察との合体を宣言。
 「ヤドガー倒さない限り、あいつ毎日押しかける勢いだからな。一気に倒す」
 警察戦隊がパトカイザーを発動した所に割り込んで強制的にVSXに超越合体し、1号の姿を見ていられないという感情に、実際迷惑かつストレスという建前の部分にも本気はありつつ、ある程度VSXを出さなくてはならない、という事情が透けて見える苦肉の策と行った感はどうしても漂います。
 強制割り込みはギリギリまだしも、先日、快盗との癒着良くない! と釘を刺したばかりですし、桃と緑が「てっとり早いからいいのでは」と受け入れてしまったのは、やりすぎだったかなと(まあ恐らく自分たちの意志で分離できない以上――と考えると怖いな強制超越合体――ギャングラー撃破の為に状況を受け入れるしかない面はあるのですが)。
 にしてもコックピットで1号と顔を見合わす反応見る限り、XもXで、戦闘中に気がついたら合体に組み込まれていたのか(笑)
 魁利のストレスに巻き込まれたヤドカリは、「じゃ、そういうわけで」とスプラッシュ&マジックの換装攻撃からビークルラッシュで滅殺され、そもそも奇抜なその特殊能力に端を発すると考えれば、このオーバーキルも恨み3倍返しの因果応報とはいえるのか……。
 「俺は二度と、家に帰れんのヤドーーー!」
 そして、断末魔のネタが、かつてなく重い。
 「永遠に――」
 「ん~」
 「「「ア」」」
 「任務完了!!」
 快盗達の声をかき消す勢いで叫んだパトレン1号は、次は貴様だといわんばかりにルパンレッドへ視線を向けるが、「あんたもアデュー」され、合体解除で快盗は逃走。通常合体時からの要素ですが、地上マシンと空中ジェットなので、警察がすぐに快盗(&グッティ)を追跡できない、というのは特性を組み込んだ巧い設定。
 国際警察4人組はジュレを訪れ、咲也をさらっとかわす初美花、だいぶ扱いに慣れてきました。
 「…………二人とは、仲直りしたみたいだな。……良かった」
 「……おかげさまでね」
 言葉を選びながらも声をかける圭一郎だが、固い声の魁利は目を合わせぬまま背を向けると仕事も放棄して立ち去ってしまい、その姿を神妙な表情で見送るノエル、透真、そして圭一郎。
 「……嫌われたな圭一郎。やっぱりそっとしておくか?」
 「……いや。めげずに見守るさ」
 懐かれていると思ってぐいぐい行くよりも、嫌われてもめげない方が、らしくはあり(面倒くさい善意でもあるけど)、ますます兄と重なる圭一郎の存在を無視する事も受け流す事も飲み込む事もできない魁利は拳を柱に叩きつけ、その背中と、木立を揺らす冷たい風の音が切り取られて、つづく。
 サブタイトルから予想通り、いっけんコミカルな敵の能力から「精神的に帰る家を持たない」魁利の内面が炙り出されてしまうという展開が凶悪でしたが、同時に透真が「自分はジュレに帰ってしまった」事に関して内心忸怩たる想いを抱えていそうなのが秘められたまま終わるというのがまた凶悪で、香村さんホントえげつない……。
 レストランでのやり取りの途中から透真の表情がはっきり険しくなり、それが透真と圭一郎の会話シーンで触れた「恐らくはもう一つの感情」なのですが、「魁利一人だけはビームが無効だった事の意味」が言葉にして明かされると同時に、「それを理解した透真の内心」が秘め隠される事になる、というのが実に手の込んだ構造。
 透真にとって、「ジュレを家だと認識していない魁利」に対して「彩と過ごしたあの時間(場所)ではなく、ジュレを家だと認識している自分」は痛烈な衝撃だったと思うのですが、ルパンマグナム回に続き、快盗としてのこの温度差がここからの展開にどう影響を与えてくるのか、楽しみです。
 一方、両者の間にクッションとして挟まった初美花はすっかり、ややこしい洞察とは無縁な天然うっかり和みキャラの位置に落ち着きつつありますが、果たしてそんな初美花が最終クールでもう一化けする隠し球を繰り出してくるというのは有るのか無いのか。
 そして、快盗達の重い立場と心情の陰に巧みに隠されていたのが、「任務の為なら家を捨てられる」男・朝加圭一郎の怖さ。
 あまり厳密に能力解釈すると齟齬が出る部分もあるかもしれませんが、「物理的にはジュレの自室に寝泊まりしていてもそこを決して自分の居場所と認めていなかった魁利の精神」と、「前日まで暮らしていた自室でも物理的には一晩泊まっているジュレの床でもなく、あくまで背中に背負ったテントを自分の家と認識できる圭一郎の精神」にはやはり対の存在として相通じるものがあって(その点で、透真と初美花が強制帰宅ビームを無効にできたかどうかは微妙だと思っています)、


 基本的にギャグの類ではありましょうが、背中の家で攻撃をガードする姿がヤドカリ怪人と相似となる事で、「戦い続けるヒーローはやがて敵対者と同一になっていく」という宇都宮P好みのテーゼが体現されているという飛び道具。
 ……て、あれ、段々笑えなくなってきた……?
 そんなわけで、表向きコミカルな要素を散りばめて賑やかに展開しながら、二重三重にえげつない構造が仕掛けられているという、ここ数話の今作らしい内容を『ジオウ』スポット参戦から帰還した中澤監督が見事な手腕でまとめ、単独で見ても、全体の流れで見ても、強烈な1話でした。
 VSX誕生から夏休みでやや緩んだ後、洩れ聞く売り上げ不振の影響もあってか、追加ビークルとの折り合いも含めてやや藻掻いている印象があった30話台ですが、前回-今回が、構造的に第24-25話の“先”のエピソードであった事を見るに、混迷期を抜けた、という感があり、後はこのままラストまで走り抜けてくれる事を期待。
 ……ところで全くの偶然だとは思うのですが、今回のサブタイトル「君が帰る場所」が無性に、『烈車戦隊トッキュウジャー』第42駅「君に届く言葉」(監督:加藤弘之 脚本:小林靖子)を思い起こさせてならず、帰りたい場所にせめて言葉を届けるトッキュウジャーと、帰る場所も言葉を届ける相手も持たない快盗(魁利)の姿も、なんだか対に思えてしまうのでありました。
 そういえば『動物戦隊ジュウオウジャー』も「家に帰る」物語であり、普遍的なテーマではありますが、もしかしたら近作における宇都宮Pの隠しテーマであるのかもしれませんが。
 では、今作における「家」とはなんなのか――が、今作としての「ヒーロー」の姿と繋がった時に、一つの答が見えるのか否か、いよいよ終盤戦へと突入する物語の行く末が楽しみです。
 次回――宇宙! ルパンX爆発! デストラ! ザミーゴ! パトレンX爆発! 傷だらけの国際警察! 戦車?! ジェット機?! 新換装! そして祝え! 全ライダーの力を受け継ぎ、時空を越え過去と未来をしろしめす時の王者、その名もルパンX:フォーゼアーマー!!
 予告の時点で山盛り過ぎてツッコミが追いつかないのですが、今回次回と、見るからに中澤監督を狙い澄ました物量戦で、中澤監督の確保を巡って、白倉Pと宇都宮Pの間でいったいどんな暗闘が繰り広げられていたのか、妄想するとドキドキします(笑)