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遅ればせながらルパパト

 一週遅れ。既に第37話も見たので、そう間を置かずに次の感想もお届け出来るかと思います。

快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』感想・第36話

◆#36「爆弾を撃て」◆ (監督:杉原輝昭 脚本:金子香緒里)
 「当たった当たったー! ははっ、うっかりには、気をつけるんだな~。はーっは!」
 何やらパソコンに向けて図面を引いているキツツキギャングのアジトに踏み込んだパトレンジャーだが、高い計算能力を駆使したギャングの嘴ミサイルを2号が受けてしまう。
 ノエルの制止を無視してギャングを追った2号だが、射撃の瞬間に“うっかり”鉄パイプを踏んで滑って転び、あらぬ方向へと飛び交った跳弾は1号にHIT!
 「すいません! うっかり、滑って、しまって……」
 「うっかりで済むか……! 死ぬ所だったぞ!!」
 それにつけてもやはり、圭一郎は咲也には厳しい(笑)
 まあ元来、圭一郎は警察官としてミスに厳しい性質なのでしょうし(うっかり誤射で市民に被害など洒落にならない……と考えるとやはり、前回冒頭の演出はNGだったと思うわけですが)、だからこそ咲也の「褒められて伸びるタイプです!」というのが活きる設計だったのでしょうが、この点に関してはどうも圭一郎は、咲也以外に見せる懐の大きさの印象が強すぎて、咲也にだけやたら辛く当たる縦社会の権化みたいになってしまっています(笑) まあそれはそれで、警察戦隊らしいといえばらしいですが……。
 謝罪の最中にも2号は“うっかり”引き金を引いてしまい、味方相手でもトリガーは軽いぜ!
 2号は3号にも頭をはたかれる羽目となり、想像するだに血も凍る恐ろしさ、うっかりミスを誘発する能力……。
 前回、LINEのグループから省かれていた現実などなんのその、冒頭からしれっと揃い踏みに参加していた金Xはギャングの残した設計図を発見し、一行はひとまず撤収。缶コーヒーを手に街の広場で黄昏れていた咲也は、営業中のサラリーマンから声をかけられる。
 「僕、褒められて伸びるタイプなのに、叱られてばかりで……」
 そんな貴方にこれがピッタリ、とサンプル配布中の怒りを鎮める効果を持つネックレスを受け取る咲也。
 「じゃあ後、二つ貰ってもいいですか!」
 ちゃっかりと3つ確保した咲也は、署に戻ると「疲れがバッチリ取れる」と称して圭一郎にネックレスを身につけさせ、流れでつかさにも渡そうとするが、「私は遠慮する」とばっさり断わられる(笑)
 ネックレスの効果を確かめるべく、「圭一郎が大事に取っていたモナカを食べたのはヒルトップ、と言っていたが実は僕」と白状し、それは普通に悪事だよ咲也……!
 「なに?!」
 鬼のようなオーラを背負って説教モードに入る圭一郎だが、ネックレスが点滅すると、その怒りがたちどころに雲散霧消。
 「……しかし、過ぎた事を怒っても仕方ない。ヒルトップ管理官にも、あやまっとけよ~」
 怒りから解放された圭一郎は爽やかに笑顔を浮かべ、効果を実感した咲也は自分でもネックレスをつけてみる。
 「……あ。でも僕あんまり怒んないしな~」
 この辺りが、深く物事を考える前に行動してしまう咲也らしいところですが、外そうとしたネックレスは何故か外れず、無理に外そうとして“うっかり”滑った手が、綺麗な裏拳として圭一郎に直撃。
 「おまえは何回うっかりすれば!!」
 激怒する圭一郎だが、それは再びパタッと収まり、その様子を目を丸くして見つめるつかさ。
 「今日はやけに穏和だな……」
 一方ノエルは、アジトから持ち帰った設計図のデータについてジムと検討し、ノエルがエンジニア頭脳で何もかも解決する事なく、ジムに出番と役割を与えてくれたのは秀逸な展開。ノエルから頼りにされてプライドに火の点いたジムは眼を光らせると覚醒モードで設計図を分析し、解明されたその正体は……
 「怒ったら爆発する爆弾?!」
 「つまり……怒れば怒るほど、爆発までの時間が短くなるのか」
 キツツキギャングが開発していたのは、人間の怒りの感情をエネルギーに変換して受信、ある段階まで蓄積した所で大爆発を引き起こす、という恐るべき装置であった。ジムとノエルは、爆弾兼受信装置と対になる、怒りの感情エネルギー送信装置の図面を3人に見せ、見覚えのあるその形状に驚愕する圭一郎と咲也。
 「ノエル…………すまん」
 上着の前を開けて身につけたネックレスをノエルに見せるシーンは、一端カメラをノエル側に向けた間合いも効いて、非常に面白かったです(笑)
 「どうしてそれを?!」
 「貰ったんです! 怒りが消えて……優しくなるって……聞いて」
 「疲れが取れるのは嘘だったのか?!」
 声が小さくなる咲也に沸騰する圭一郎を、慌ててなだめるノエルとジム。
 「駄目! 圭一郎くん……怒っちゃ駄目だ」
 その背後でつかさは少々呆れた表情になり、一連の署内のやり取りはコミカルかつテンポ良く進行。杉原×金子コンビは諸々の描写が若干過剰になる傾向がありましたが、今回は割と抑制の効いた中で台詞回しばかりでなく表情・仕草・間合いを用いて総合的に笑いを生んでおり、これまで積み重ねてきたキャラクター(と俳優)への信頼感が窺えて良かったです。
 今回限りでは何ともいえませんが、杉原監督が一皮剥けたのでは、とも思わせる好演出。
 「……怒ればギャングラーの思うツボだ。冷静にならねば」
 圭一郎は指を振り振り自分に言い聞かせ、正義の怒りが悪の養分になるという、ある意味、かつてないピンチ(笑)
 「今すぐそれを外せ!」
 実力行使に出るつかさだがネックレスは外れずに圭一郎の首を絞めるだけになり、ノエルとジムは装置の更なる解析から怒りエネルギーを探知して爆弾の在処を探そうとし、つかさは咲也がネックレスを貰った広場で、ギャングを直接締め上げる事を思いつく。
 「おまえたちは大人しく待っていろ。下手に怒ると、爆発までの時間が短くなる」
 切り捨てるような物言いと視線が大変厳しいつかさ先輩はつかさ先輩で、怪しげなサンプルを気軽に身につけてしまう男2人に、割と怒っているぽい(笑)
 ……まあ、いたずらに怒ってはいけない状況で、この2人を一緒に置いていくのもそれはそれでどうかという感じではありますが。
 つかさが国際警察を飛び出した頃、コグレからの情報でキツツキギャングを追っていた快盗トリオは、セールスマンの化けの皮を剥いで快盗チェンジ。
 「予告する。あんたのお宝、いただくぜ!」
 一方、おのが存在意義に悩む咲也は圭一郎たちの為にお茶を淹れてみるが、“うっかり”滑って転んで、熱々のお茶(というか湯飲み)が座禅を組んで瞑想中の圭一郎の後頭部を直撃。
 「……あっちーーーーーーー!!」
 むしろ、痛くはないのか、圭一郎。
 内部にお茶が入った状態で加速を付けて飛んだ湯飲みは一種の鈍器と化しており、あわや上官からの厳しい指導に耐えかねての殺人事件に発展する所でしたが、数々のギャングラーとの戦いの末、傷ついた圭一郎の頭蓋骨は既に硬質セラミックの強化骨格に変わっているのではないかと不安を覚えつつ、映像としては盛大な湯飲みの直撃は大変面白かったです。
 キツツキのうっかり作用もあるのだから大人しくしていた方がいい、とノエルによって椅子に座らされた咲也は、下がり続ける株価に、某Mさんのような気持ちになっていた。
 「……僕の目標は、戦力部隊に僕が居て良かった、って思って貰う事です。……なのに、こんなに、足を引っ張って……」
 図太く根明なポジティブモンスターとして大化けした咲也が真剣に打ちひしがれるのですが、振り返れば管理官の不興を買って自宅謹慎となった際も落ち込んでいましたし、暴走気味の時でも咲也の動機は基本的に
 「映画で戦力部隊の知名度を上げたい!」(あとモテたい!)
 「古武術を学んで近接戦闘力も上げたい!」(あとモテたい!)
 なので、戦力部隊に貢献できない自分自身に落胆する、というのは咲也の志と心情を巧くまとめてきました。
 その時、咲也への怒りを抑え込んだ圭一郎の「心頭滅却すれば……」の言葉をヒントにしたジムが、不自然に熱エネルギーの集中している地域を発見。
 「行くぞ咲也」
 「……でも、僕は……」
 「……おまえのうっかりなど想定の範囲内だ。ノエルは爆弾を止める方法を探ってみてくれ」
 咲也の本心からの呟きを耳にした圭一郎は敢えて咲也を連れて出撃し、ただ口やかましいだけではない、リーダーとしての懐の広さを発揮。一方、キツツキギャングと戦うルパンレンジャーはワイヤーで転ばせている内にコレクションを回収し、ブースト×3。
 咲也と圭一郎の問題はなんとなく解決しそうな流れだし、署を飛び出したつかささんがフェードアウトしたまま戦闘終了?! と不安になった所で3号が横から乱入してきたのはホッとしました。
 「国際警察が止めに入るとは、意外だな」
 「いつもはすーぐ倒そうとするくせに~!」
 「うるさい!」
 猛然と走り込んできたパトレン3号は獅子奮迅の立ち回りで3人の快盗を押しとどめ、爆弾の在処を聞き出す為に警察がギャングを倒すのを妨害する、という逆転現象で一ひねり。
 前回は、「コレクションの効果」なので、怪人の撃破/コレクションの回収では状態異常が回復しない(事でドタバタと警察の意味が生まれる)、という構図でしたが、今回はコレクションの効果(知力UP)を活かしているが「あくまでもハンドメイドの爆弾」なので、怪人の撃破/コレクションの回収では爆発を阻止できない、という形で、シリーズ作品の文脈をを踏まえつつ「問題の解決」を『ルパパト』のセオリーから外してくる、というのがバリエーションの作り方として面白い工夫。
 「私の完璧な作戦に気付くとは、褒めてやろう。しかし、私が爆弾の場所を話すわけがないだろう」
 「ま、そりゃそうか。余程うっかりじゃなきゃな」
 快盗レッドの言葉にハッとした3号は雄叫びと共にキツツキへと突撃し、前後一連のアクションが如何にもつかさ先輩本気モードという感じで、別行動ながら3号の見せ場がしっかりあったのも大変良かったです。
 めまぐるしい状況の変化についていけない快盗達が棒立ちになる中、キツツキに殴りかかった3号は嘴ミサイルを誘うとスライディング回避でシールド構えたイエローの後ろに飛び込んで盾とし、タイミングを合わせて背後から掌底を打ち込む事で、嘴ミサイルを反射。
 自らの能力に囚われてしまったキツツキは“うっかり”口を滑らせて爆弾の設置場所を口にしてしまい、これは悪役が作戦についてペラペラと説明する事へのセルフパロディ的なネタでもありましょうか。
 ジムが絞り込んだ地域で爆弾を探し回っていた圭一郎と咲也は、3号から連絡を受けて、近くにそびえるタワー構造部に設置された爆弾を発見。ノエルから、受信アンテナの破壊という爆弾の停止方法も伝えられるが、咲也の避難誘導ミスも手伝ってか、急上昇中の怒りエネルギー蓄積率は既に87%。
 「咲也! ここから爆弾の受信アンテナを狙撃しろ」
 「僕が?!」
 「……この距離では俺には無理だ。おまえにしか出来ない」
 タワーに昇っていてはもはや間に合わない、と圭一郎は長距離狙撃を指示し、「射撃が得意」とはいっても基本スキルすぎて皆得意、と過去作品でいうと『特警ウインスペクター』を思い出させる現象で埋没していた咲也の特技へスポットライトを当てる事に成功したのは鮮やか。
 「無茶ですよ! ペッカーの攻撃も受けてるし、またうっかり失敗するに、決まってます……」
 真っ正面から向き合う圭一郎に対し、視線を落とした咲也は情けなくこぼし、詰め寄った圭一郎が振り上げた拳に、すわ鉄拳制裁かと思わず目を閉じるが……眼前で止められた拳は、額を軽く小突くに終わる。
 「……え?」
 「……誰かに褒められたいのなら、まずは自分自身を信じろ」
 「先輩……」
 過去の戦いからも十二分に察せられるように、圭一郎はなんだかんだ咲也の能力を信頼しているわけですが、だからこそ自分を低く見積もって「褒められて伸びる」と他者に甘えるのではなく、戦力部隊の一員として「自分がどこまで出来るのかを自分で信じろ」というのは、権限に対する責任を重視する、圭一郎らしいエール。
 その上で、そんな自分を日々乗り越えてこそ(今回でいえば“うっかり”を乗り越えてこそ)、褒められるだけの価値がある。
 尊敬する先輩からの信頼を受け、より高いレベルで己を信じる事を覚悟した咲也は頷いて前へと進み――
 「警察チェンジ」
 真剣な表情での低い呟きでの変身も、それを背後で見守る圭一郎の姿もびしっと決まって、咲也史上、最も格好いい変身。
 個人的には未だ、咲也黒幕説は捨てがたい(笑)のですが、冒頭に触れたようにあまり活きていなかった「褒められて伸びる」要素と、埋没しがちな上にルパンマグナムの登場で完全に上書きされそうだった射撃スキルをまとめて拾い、エアロビ回を越える良いエピソードが回ってきて、良かったな咲也!
 一方、キツツキと激しく切り結ぶパトレン3号。
 「こいつを倒せば、うっかりが消える! そうすれば……咲也なら!」
 別行動中のつかさもまた、お調子者の困った後輩であると同時に、戦力部隊の同僚として咲也の能力を信じている、と示されるのが、二局の展開の中で手抜かりがなく、絶妙。
 一対一で奮闘するも分が悪く、銃を失い蹴り飛ばされて壁に叩きつけられる3号だが、キツツキが迫るその時、地面に倒れる3号をかばうように前に立ったのは、ルパンレッド。
 「……快盗?」
 「よくわかんないけど――後は任せな」
 やたらめったら「後は任せな」のところで声に力が入っている上に、顔だけ振り向きながらシルクハットを模したマスクに触れる気取ったポーズまでサービスして、よくわかんないけど、パトレン3号(つかさ)からルパンレッド(魁利)へのポイントがまた上がった!!
 何してんの魁利?! わかってやってるの魁利?! つまり年上派なの魁利ー?!(錯乱)
 ・・・
 (冷静になるまでしばらくお待ち下さい)
 ・・・
 ルパンレンジャーは三方からキツツキを囲んでブーストアタックでオーバーキルし、直後に放たれた2号の狙撃は見事に爆弾を停止。バイカーは精密狙撃には向かないのでは……というのは気になりましたが、まあこれはご愛敬か(^^;
 「咲也…………ありがとう。おまえが居てくれて良かった」
 「……それ! 最高の褒め言葉です!!」
 グッと来る気配を感じてかグッティが警察に出向いてしまった為、巨大キツツキに対してはルパンレンジャーがマグナムを巨大化。その両腕に青と黄のビークルを換装し……え、あれ、……ぐ、グッティ……?(涙)
 「いっけー! ルパンマグナムー!」
 「……いや。俺たちの力も加わった――ルパンマグナムスペリオルだな」
 販促の犠牲となったグッティの屍を踏み越え、やたら格好つけながら、シェフのお薦め・地中海漁師風パエリア~真心を添えて~みたいな事を言い出す青。
 ガトリングと丸鋸でキツツキを押し込むマグナムの巨大戦にパトカイザーも参戦し、レッドの指示でマグナムが解錠した腹の金庫にパトカイザーが回収した怒り爆弾を詰め込むと
 「うっかりの恨み、宇宙まで届け!」
 と警棒で大気圏外までホームランの上でマグナムの長距離射撃で消し飛ばす凄惨な爆殺で、割と恨みはきっちり3倍で返していく作風です(笑)
 そしてキツツキギャングは汚い花火の流星となり……
 「まーさーにー! ミラクルSHOT」
 国際警察日本支部を震わせる咲也の奇声。……なんと言っているか聞き取れなくて3回聞いてしまったのですが、ちょっと、エアロビもとい武突参流古武術が残っているぞ、咲也。
 調子に乗って圭一郎に小突かれながらも嬉しそうな咲也を見て、おどけながらも喜ぶノエル。
 「先輩を尊敬する後輩。無茶しがちな後輩を、信頼する先輩。んー、いい職場だね」
 だから僕にも優しくしてほしい、みたいにアピールしてくるノエルに、ジムとつかさも2人を微笑ましく見つめるが、再び滑って転んだ咲也が圭一郎にお茶をぶちまけ(今回は湯飲みは回避)、怒りの圭一郎が咲也を締め上げて、オチ。
 予告からは圭一郎の顔芸路線が若干不安を誘いましたが、総合的には抑制の効いた演出がなされ、咲也と圭一郎をメインに据えつつ、脇に回ったつかさにもしっかり活躍の場と可愛げを与え、咲也も咲也で圭一郎に食われる事なくメインとしてスポットライトに応える、とバランスが良くて面白かったです。
 大筋の繋ぎ回・振り切れたギャグ回・大筋の繋ぎ回・総集編、とじっくり熟成してきた感のある金子さん、5本めにしてベストといえる出来を見せてくれ、演出・脚本・キャスト、とそれぞれの歯車が噛み合った秀逸回でした。
 警察サイドは、後はつかさメインで良い回が1本欲しいところですが、4クール目に果たしてその余裕はあるか……。
 次回――戦えなければ倒せない!