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今日という日は明日の伝説

星獣戦隊ギンガマン』感想・第50話

◆最終章「明日の伝説(レジェンド)」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子
 「この星を、バルバンの思い通りにはさせない!」
 遂に巨大化してしまった地球魔獣を焼き尽くすべく、炎のアースを乗せて放たれるギンガイオーの銀河獣王火炎斬りだが……勿論、さくっと跳ね返される(笑)
 前半戦の圧倒的な強さが嘘のように最終回まで平常運転すぎるギンガイオーの危機を助けるべくお助けメカが駆けつけるが、そこに飛んできたのはゼイハブ自らが操る海賊城。
 「へへはははは! そこまでだぜギンガマン!」
 ギンガロボ軍団を上空からのビーム攻撃で退けた海賊城は、地球魔獣の頭部に、パイルダー・オン
 ……明らかにプロデューサーの影がちらつく演出なのですが、どうしてもやりたかったんですか高寺さん(笑)
 「ギンガマン! てめぇらには、返しても返しきれねぇ、3000年分の借りがある。これがその例だ。遠慮無く受けとりなぁ」
 海賊城とドッキングした地球魔獣は爪が鋭利になるなどより凶悪な姿に変貌し、操舵輪を操るゼイハブの傍らに、シェリンダ形見の剣が丁寧に置かれているのが一抹の悲しさを漂わせます。
 地球魔獣バリバルンガーZの猛威の前にギンガロボ軍団は次々と倒され、呆気なく跳ね返されてしまうも、久々に鳥頭ボウガンを使ってくれたのは、最終回として嬉しかったポイント。
 「みんな、魔獣を頼む! 俺はゼイハブをなんとかする!」
 この苦境を打開すべく捨て身の突撃を仕掛けたブルタウラスは、コーチ直伝の必殺スパイクを魔城に直接叩き込む!
 反撃により巨大化は解除されてしまうも、城を深々と断ち割ったアックスの剛撃により、魔城は爆発炎上。シェリンダ形見の剣は砕け散り、海賊旗は炎に包まれて燃え落ち、ゼイハブは城外へと投げ出され(恐らく生き残りのヤートットは城と運命を共にし)、遂に、独りだけの存在となる宇宙海賊バルバン。
 「この星を……! 守るんだ!!」
 一方、炎のアースをギンガイオーに宿らせ続けるギンガレッドは、激しく消耗しながらも何度でも立ち上がっていたが、そこに集う仲間達。
 「リョウマ、一緒にやろう!」
 「俺たち、ずっと一緒に戦ってきたんだからな!」
 「もう一度合わせよう、私たちのアース!」
 「今度は絶対うまく行くって! アースを信じようぜ!」
 スクラムした銀河戦士は再び5色のアースを重ね、外ではライノスとフェニックスがギンガイオーを支え、戦士と星獣、その想いを一つにして放たれた渾身のギンガ大火炎は、遂に地球魔獣を焼き尽くす……!
 前回ラストで軽々と山を平らげるインパクトは見せたものの、今作にしては巨大戦が面白かったvsダイタニクスと比べるとややあっさりした決着になってしまいましたが、地球魔獣とゼイハブ、どちらを最後の相手にするかといえば後者こそふさわしいとは思うので、取捨選択としては納得できます。
 また、魔獣撃破による汚染を防ぐ為に、毒素を浄化し焼き尽くす「炎」のアースが重要な意味を持つ、という話運びは、今作らしい丁寧な段取りから炎の戦士への鮮やかな収束。
 念願の地球魔獣を塵にされ、怒りに震えるゼイハブに振り下ろされる、黒騎士必殺の一撃だが、それはゼイハブに埋め込まれた星の命を砕くに至らない。……なんとゼイハブは、密かに星の命を右胸から別の場所に移し替えていたのだった!
 と、船長がいつまでも、他人に知られている自分の弱点をそのままにしておかない、というのも納得の展開。
 「アースを捨てたのはいいが、俺を倒すには腕が足りねぇようだな」
 星の命の場所を探りながら斧を振るうも、徐々にゼイハブに押し込まれていく黒騎士の危機に駆けつける、ギンガマン
 「てめぇらなんぞにこの俺は倒せねぇよ。俺がてめぇらをぶっ殺す!」
 「なに?!」
 「その前に……この星を壊して汚して、また魔獣を調達しなきゃなんねぇがな」
 「そんな事絶対にさせない! 行くぞ!!」
 「馬鹿が」
 海賊ビームが炸裂して5人も吹き飛び、怒濤のコンビネーションアタックを仕掛けてよろめかせるも、ゼイハブの反撃により頼みのナイトアックスが砕け散り、全員が変身解除にまで追い込まれてしまう。
 その頃、オタケビ山へと走る一台の車の中に、青山父子とボックの姿があった。
 「リョウマ……ハヤテ……ゴウキ……」
 「勇太……勇太が先に負けてどうする。リョウマさんたちは絶対勝つ。そう信じて応援するんだ。リョウマさん達に届くように、大きな声で」
 ラスト2話、ここに来て晴彦さんの存在が、割とおいしく、しっかりとキャラを使い切ってきます。
 「パパ……」
 涙をぬぐい、窓を開けて叫ぶ真ヒロイン。
 「みんなー、頑張ってー!」
 守りたいものがある限り、戦士は何度でも立ち上がる――いちはやく立ち直ったヒュウガは、満身創痍でよろめきながらも剣を抜くが、それを悠然と待ち構えるゼイハブ。
 「よぉし、てめぇから地獄に送ってやるぜ」
 こ、これはコーチが出てくるところだ!と拳を握りしめてドキドキしましたが奇跡は起きず、ゼイハブの一刀に貫かれて崩れ落ちるヒュウガ。トドメを刺される寸前、リョウマの火炎放射がヒュウガを救い(ダイタニクス復活前編の意図的な焼き直しか)、ハヤテ達が立ち向かっている間に兄弟は一時撤退。
 「俺は戦う! 戦ってゼイハブを倒す! 例えナイトアックスがなくても……例えアースがなくても…………俺はこの星を護りたいんだ」
 「兄さん……アースはあるよ。兄さんの中に、アースはある」
 「……リョウマ」
 「アースは星を護る力だろ。星を愛する心があれば、アースは生まれるんだ。星を護って戦っている限り、兄さんの中にも、大きなアースは生まれる筈だよ。……自分を信じるんだ。教えてくれたのは兄さんだろ」
 まるでアースの代わりに、己の命を燃やそうと(捨てようと)するかのようなヒュウガに対し、アースは決して消えてはいない、それはまた生まれてくる筈だ、とリョウマが諭し、ヒュウガの胸に去来する第1話のやり取り。


 「リョウマ、聞くんだ。おまえにも、大きなアースはある筈だ。自分を、信じていないだけだ」
 「兄さん……!」
 「おまえの力を、俺は信じてる」
 ヒュウガにとって、「(星を)守る為」ではなく「(ゼイハブを)倒す為」の戦士となる事を選んでアースを捨てたのは一種のスティグマのような意味を持っていたのかと思われ、勝利の為に自分を見限っていた(今作において象徴される黒騎士化であり、その行き着く先であるバルバン化の前段階にいた)ところのあるヒュウガを、崖っぷちで、引きずり上げるリョウマ。

「何もかも犠牲にして勝ったとしても、その後に何があるんだ。あなたの戦い方では、終わった後に、何も残らない!」
 ここにリョウマは、星獣剣を託して地の底に消えたヒュウガを、自らの行為を償う為に火口へと身を投じた黒騎士を、その手を握り、地上へ引き戻す、ギンガマンとしての真の“強さ”を示す。
 「リョウマ……」
 「……俺たちのアースで、ゼイハブを倒そう!」
 リョウマとヒュウガは固く拳を握り締め、ヒュウガが黒騎士を後継した事の意味(黒騎士はヒュウガとなりヒュウガは黒騎士となり、そしてリョウマはかつて救えなかったヒュウガと黒騎士を救う)が、重なり合う救済に着地するのですが、惜しまれるのは、「なぜナイトアックスなら星の命を砕けるのか」「なぜナイトアックスを使うにはアースを捨てなければならないのか」という理由が、物語の中に収まりきらなかった事。
 星獣と魔獣の関係を含め、諸々の理屈と繋がりを丁寧に物語内部で収めている今作においてナイトアックスはやや異質といえる存在なのですが、そこが綺麗に収まっていれば「アースを捨てる」「アースを取り戻す」事の位置づけもよりハッキリしてパズルの完成度が上がったのですが(個人的に思いついた解釈としては、ナイトアックスの原材料は「星の命」であり、その為にアースと反発する?)。
 「てめぇらもつくづく馬鹿な野郎達だな。奪って壊してこその星じゃねぇか。守る価値なんざありゃしねぇ」
 追い詰められたハヤテ達へ向けて語られる“星”をどう捉えるか、の違いで、ギンガマンとバルバンの対比に駄目押しを加えつつ、それに屈しない4人。
 「おまえには、絶対わからない……この星に、どれだけ大切なものがあるか!」
 「この星は、絶対守る!」
 「これぐらいで、負けないぜ!」
 「この星が生きている限り、私たちは戦う!」
 「だったら星と一緒に心中でもするんだな」
 そこに崖上まで辿り着いた勇太くんが思わず「やめろー!」と叫び、ゼイハブは無防備な青山父子へと砲口を向けるが、火を噴く砲弾をボックが頭突きで弾き返し、じゃなかった、火を噴く寸前に、駆けつける炎の兄弟。
 「ゼイハブ! お前は終わりだ!」
 裂帛の気合いと共に放たれたダブル炎のたてがみがゼイハブを包み込み、その業火は割と目立つ所(胴体中央)に隠されていたゼイハブの星の命を粉々に打ち砕く!
 「こんな馬鹿な……!」
 「ゼイハブ! 星を傷つけるおまえから星が離れたんだ! おまえを倒す!」
 「この星を守る為に!」
 大事なものを守る為、星と繋がり続ける者達の振るう力が、他者から奪い貪るだけの為に一方的に星から吸い上げている力を打ち破り、今ここに、OPイントロから満を持して、6人並んで銀河転生&騎士転生。

「ギンガレッド――リョウマ!」
「ギンガグリーン――ハヤテ!」
「ギンガブルー――ゴウキ!」
「ギンガイエロー――ヒカル!」
「ギンガピンク――サヤ!」
「黒騎士――ヒュウガ!」
「「「「「「銀河を貫く伝説の刃! 星獣戦隊・ギンガマン!!!」」」」」」」

――ギンガマン
それは、勇気ある者のみに許された
名誉ある銀河戦士の称号である


 ギンガマンの揃い踏みから、このナレーションで締めるここぞの流れは、最後まで大好き。


走れ! 地球せましと駆けめぐれ
走れ! 荒野ゆさぶる風になれ
ほえろ! ほえろ! ほえろ! ギンガマン

 「てめぇら全員、地獄へ叩き込んでやるぜ!
 「唸れ! ギンガの光!」
 ここまで来たら後は押し切るばかりと、主題歌をバックに黒の一撃からギンガの閃光のコンボが久々に炸裂し、トドメの炎一閃二刀流が遂にゼイハブを粉砕。ここに、銀河戦士達は3000年前にも成し遂げられなかった、バルバンへの完全勝利を成し遂げたのだった!
 そしてゼイハブが倒れた事により、森に設置されていたエネルギー吸収装置が無効化されたのか、石化封印されていたギンガの森が復活する……脇目もふらずに湖へと走る6人の眼前で湖底から甦るギンガの森の姿は、魔獣による汚染が食い止められ、再生していく環境の象徴のようにも見えます。
 「きっと星が、リョウマ達に返してくれたんだね、森を」
 「繋がってるんだよ、星と人は」
 長老やミハル、村人達から拍手で迎えられたギンガマン歓喜の絶叫と感涙をこぼしながら森へと走る姿にEDテーマがかぶせられ、エピローグパートへ。種になったモークは森に植え直され、さくっと復活。
 「みんな、また会えて、こんなに嬉しい事はないよ」
 大団円という事で、ここは非常にあっさりでした(笑)
 リョウマが勇太と追いかけっこしたり、ハヤテがミハルに寄り添われながら笛を吹いていたり、というのは通常ED映像と重ねたと思われ、ゴウキは約束通りに鈴子先生を森で案内し、一番盛り上がる
 緑の中で生まれた君と 星の巡りに呼ばれた君と
 のところで登場する鈴子先生、台詞は無いながらも安定したヒロイン度の高さ。
 「……もう……毎日会えないね」
 「……勇太、俺たちはいつも、ここに居るよ!」
 リョウマは爽やかな笑顔で勇太の頭を撫で、“いつもそこに居る存在”としてヒーローのエターナル性を確保しつつ(今作においてそれは、星そのもののメタファーでもありましょうか)、「少年とヒーロー」の関係を通して、どこか「別離」の要素が持ち込まれているようにも見えますが、これは「別離」というテーゼを大事にする後の小林作品を知っているので感じるのかもしれません。
 そこも含めて幾つか、後の小林作品で掘り下げられるテーゼの雛形かもしれないものが見え隠れする初メイン作品でしたが、ラスト、やがていつも思い出すものにはならなくなるかもしれないが、それでも、ヒーローは、「いつも、ここに居るよ」というのは、メタ的なヒーロー観としても大変美しく、気持ちの良い着地点でした。
 掴み取った平和な明日に向けて、勇太くんと6人は笑顔で走り出し、ちょっと弾けてみせるヒュウガ。
 「また会おうね、ボック」
 という、ドングリの言葉で、エンド。
 ……だいぶ頭が煮えてきたので、全体的な話はまた別項として、ひとまずここまで。