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いつの日も電光超人

電光超人グリッドマン』感想・第1-2話

◆第1話「新世紀ヒーロー誕生!」◆ (監督:曽我仁彦 脚本:平野靖士)
 極力クレジットを排す一方、今回の登場怪獣の紹介映像を除いてキャラクター類が一切出てこず、ケーブルの中をくぐりぬけるような主観映像が延々と続くという、かなり大胆なOPでスタート。
 視点は最後に現実世界に飛び出し、映し出されるのは巨大な自作パソコン、その名をジャンク。それを組み上げた主人公グループ――直人・ゆか・一平の3人組が健康的に描かれる一方、目元にかかる垂れた前髪と顔立ちに不釣り合いな大きすぎるメガネ、話しかけた相手にまともに視線を合わせられず、全身から根暗と対人コミュニケーション不全のオーラを放出するブレザーにネクタイの少年が、インパクト強く登場。
 「僕なんて居なくても、誰も気にしないんだ」
 まともに会話を成り立たせられず、ゆかに手紙(ラブレター?)を渡し損ねた少年――藤堂武史は、複数のパソコンとモニターを並べた自室で、パソコン上の怪獣に「ご主人様」と呼ばせて自己肯定しながら、手紙を「渡せなかった」を「受け取らなかった」にすり替えると、「あれは悪い女だ。何か拷問を加える必要があります」と怪獣に言わせ、ハッキングを開始。
 「僕の手紙を受け取らなかった罰だ」
 ハッキングの描写はマンガ的ながら、ちっぽけな自己の精神を守る為に、一方的な逆恨みから薄暗い犯罪行為に手を染める流れのリアリティが、実に凶悪。
 また武史が決して愉快犯的ではなく、針の振れ方次第では自己の消失に走りそうな生命力の弱さが台詞で示されているが故に、自己防衛の為に掴んだ歪んだナイフの切っ先が、他人を傷つける事をいとわない身勝手さとして発露している裏側に、深刻な危うさが見え隠れしているのも恐ろしさを漂わせるところです。
 ゆかの両親が経営する病院のコンピューターをハッキングした武史は、病院の機能を麻痺させてほくそ笑むが、頭上の黒雲から迸った青い光がパソコンに入り込み、突如としてモニターから放たれた電光に打たれて倒れると、画面の中に黒マントの怪人が。
 「悪意と憎悪に満ちた貴様の心、それに貴様が作った醜悪なプログラム。気に入ったぞ」
 「な、な、なんだおまえ?」
 「儂の名は、魔王カーンデジファー。貴様と志を同じくする者」
 こ、恋の逆恨み?!
 「コンピューターワールドに、悪のエネルギーを撒き散らすのだ」
 カーンデジファー様(やたらと語呂が良い)は、コンピューターワールドの破壊を手助けしよう、と告げると武史の作ったCGのモンスターを電脳空間の中における巨大怪獣として具現化し、井上病院の電脳仮想空間でで大暴れする怪獣の姿に高笑いで大喜び……だ、大丈夫かこの人?!
 ところが、Cワールドの破壊は現実世界にまで影響を及ぼし、何故かビームの走る手術室。直人の弟・大地がこれに巻き込まれ、ジャンクから病院のコンピューターにアクセスした3人は、電脳空間で暴れ回る怪獣の姿を目にする。
 「このままだと、大地はどうなるんだ。なんとかしないと」
 その時、電話線を伝って光り輝く何かがジャンクに入り込み、モニターから飛び出したブレスレットが直人の腕に装着される。そして、一平が描いていた3Dモデル――ジャンクの守護者・グリッドマン――がスマートな着ぐるみの姿を取り、カクカクとした動き(メモリ不足?)ながらも二枚目声で喋り出すのであった!
 「私はハイパーエージェント、グリッドマン。コンピューターワールドに、魔王カーンデジファーが逃げ込んだ。君たちの協力を要請する」
 「コンピューターワールド?」
 「なんのこった?」
 「君たちの声はこちらに聞こえない。キーボードを使ってくれ!」
 あ、なんか、面倒くさい人だった!
 「わかったわ。(キーボードを打つ)カーンデジファーって?」
 「説明は後だ」
 おい
 「今暴れている怪獣を止めなくてはならない。緊急出動だ!」
 正論は正論だけど困った人に、左手首に半強制装着されたブレスレットのボタンを押す様に言われる直人少年。
 「我々は合体しなければならない」
 「……合体?」
 「さあ、ボタンを押すのだ!」
 力強くガッツポーズで促してくるグリッドマン(君たちの声はこちらに聞こえない)。
 ……本当に、聞こえていないのか、凄く不安になってきました。
 「なんだかわかんないけど、それで大地が助かるなら」
 やや不安をあおるピアノのBGMをバックに立ち上がった直人がボタンを押すと、赤い光に包まれた直人は水色のぴっちりスーツに着替えてモニターの中に吸い込まれてしまう。そしてジャンク内部でグリッドマンと対面すると両者の間を光の線が繋ぎ、2人は合体。
 「戦闘コードを打ち込んでくれ! アクセスコードは、GRIDMAN!」
 いちいち爽やかにガッツポーズ決めるけど、面倒くさいぞこの人!
 少年少女が直接的にヒーローを支援できる、というところに面白さやワクワクがあると同時に、自然とヒーローチームを成立させているといえますが、これが東映ヒーローならハイパーエージェントは間違いなく胡散臭い枠なので、倫理観とかあれこれ心配です!
 ジャンクの中から勇躍飛び立ったグリッドマンは電話線を通って怪獣が暴れ回るコンピューターワールドに辿り着くが……小さかった。
 怪獣の鼻息に飛ばされそうになり、まったく太刀打ちできないグリッドマンの姿に魔王様が気付き、あわやぺしゃんこの寸前、ゆかが送り込んだプログラムにより、グリッドマンは巨大化(ポーズと演出は完全に《ウルトラ》シリーズ)。同じ大きさならこちらのものだと格好良く投げ飛ばすも早くもエネルギー切れを起こし、グリッドマンと連動したジャンクも激しく火花を噴き上げる。
 頭のカラータイマーが激しく明滅し、一気に消滅の危機に陥るグリッドマンだったが、強烈なドロップキック、角をへし折るチョップを繰り出すと、最後は必殺光線でなんとか怪獣を撃破。胸部から放つキラキラしたミストで破壊されたワールドを修復するとジャンクへと帰還、分離した直人も無事に現実世界へと吐き出されるのであった。
 ナレーション「電光超人・グリッドマンと、魔王・カーンデジファーとの戦いは、始まったばかりだ。これは、明日、君たちの周りで、起きるかもしれない、事件の、始まりなのだ」

◆第2話「アクセプターの秘密」◆ (監督:曽我仁彦 脚本:平野美枝)
 前回、EDに詰め込んでいたクレジットは、今回から一部OPに。
 「ふふふふふふ。今日もまた学校から、憎悪と悪意を抱えてきたか。今や貴様は儂の命令に従う奴隷だ。貴様のくだらん憎悪を、存分に発揮させてやる」
 「学校」のところに好きな単語を当てはめると、大変汎用性が高くて危険。
 カーンデジファーの光線を受けた武史はぼんやりとした表情で魔王様を崇め讃えるようになり、武史の人間性が引っ込んでしまうとちょっと面白くない気がするのですが、さてどうなるのか……まあ、年齢が年齢だけに(中学生?)、あくまで魔王に操られているという体裁にしておかないと、物語的な因果応報の観念からまずい、という配慮はありそうですが(第1話時点で相当洒落になりませんでしたが)、善玉サイドと悪玉サイドの対立構造にそれぞれ少年少女を配しているのが面白みである一方、気を遣う部分も増えそうではあり。
 「貴様のどす黒い憎悪が、怪獣を生み出すのだ。儂の望みを叶える為にな」
 「ふふふ、僕の怪獣……」
 なお「武史」と「直人」だと、私の中で前者の方が“主人公ぽい名前”のイメージの為(このネーミングは意図的な感はありますが)、今後感想の中で直人の事をナチュラルに武史と書き前違える事があるかもしれませんが(実は既に何回かやって直している)、そういう事情だと思っていただければ幸いです。あと「直人」と聞くと、どうしても某機動刑事を思い出すというのもあります!
 一方その頃、グリッドマンのHPを増やす為にジャンクのメモリを増強した直人達は、前回流されたグリッドマンの事情聴取を行い、グリッドマン(一平がCGに付けた名前なので本名では無いわけですが)は、別の宇宙・ハイパーワールドから魔王カーンデジファーを追ってやってきた、と事情を語る。
 魔王カーンデジファーとは「あらゆる次元をワープして悪事を働く伝説の悪魔」であり、コンピューターワールドは仮想の電脳空間ではなく、れっきとした多次元世界の一つであると判明。そしてCワールドは直人達の済む次元(便宜上、以下ヒューマンワールド)と密接に繋がっており、魔王はそれを利用する事でヒューマンワールドの征服を目論んでいるのであった。
 ヒューマンワールドでは実体を持たないエネルギーに過ぎないハイパーエージェントは、弟を守りたいと願う直人の強い心に反応して依り代に選び、合体してグリッドマンとなる事でカーンデジファーの作り出す怪獣と戦えるのだった!
 「俺たちは選ばれたんだ。――アクセス・フラッシュ!
 怪獣をヒューマンワールドに実体化させようとする魔王の陰謀により大学のコンピューターがハッキングされ、世界を守る使命感を抱いた3人組はグリッドマンと共に戦う事を決意。直人と合体して緊急出動するグリッドマンだが、大学のコンピューターの入り口でバリア(それは大学のサーバーファイアウォールなのでは……)に阻まれ、今回も今ひとつ格好良く決まらず。
 Cワールドにおけるバリア=現実世界におけるIDやパスワードの事に違いない、と閃いたサポート役のゆかと一平が、バリア破壊プログラムという名の不正アクセスを繰り返し、薄々そんな事になりそうな気はしたのですが、君たちのやっている事が武史のハッキングと一緒で、どんな顔で見ればいいのか。
 一方、怪獣は魔王の目論見通りに大学のコンピューターのプログラムを内部から改造し、次元の壁を歪ませてヒューマンワールドへの扉を開く事に成功。第2話にして怪獣が現実の脅威になりそうになるが、ようやくグリッドマンが突入に成功し、現実世界への淵でもつれあう両者、というのはなかなか面白い映像。
 またもジャンクが煙や火花を噴き上げるピンチに陥る中、根性出して怪獣を押し返したグリッドマンは連続攻撃で怪獣のトゲトゲを次々もぎ取ると、弱らせたところに必殺光線グリッドビームで大勝利。
 前回につづき、特にメリハリのない逆転劇(『ウルトラセブン』とか、初期シリーズぽい)かつ、打撃に強い設定の弾力怪獣の特色もこれといって活かされず、戦闘シーンの工夫は今後に期待したいです。
 また、合体すると直人の人格が飲み込まれる関係で、戦闘シーンが長いほど直人の存在が目立たなくなってしまい、むしろサポート2人の活躍が目立つ事になる、というのはちょっと厄介な構造に見える部分。
 前回の反応を見ると、直人は合体中の記憶を失っているようですが、某バロム・1の悲劇の再来にならないか、ハイパーエージェントの倫理観が大変不安です!(たぶん、「エージェント」が良くない)
 かくして直人達の活躍により魔王の陰謀は砕かれるが、現実世界に蜃気楼のように痕跡を残した巨人と怪獣の戦いを、入院中の直人の弟・大地が病室の窓から見ていた、でつづく。
 長らく、名前は割と聞くけど全く未見で気になっていた『グリッドマン』、放映当時(1993年)の衝撃度は図りかねますが、物語の根底にあるのは普遍的な“人間の悪意”であり、それを実体化するツールとしてのコンピューター、という劇構造は、現代の方がより突き刺さる状況設定であるかもしれません。
 逆に、突き刺さりすぎてフィクションの寓意性が薄れてしまい、個々の要素が凶悪になりすぎている面もあるかもですが、これからどう展開していくのか、楽しみに見ていこうと思います。