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戦う物理学

ウルトラマンガイア』感想・第6話

◆第6話「あざ笑う眼」◆ (監督:原田昌樹 脚本:川上英幸 特技監督:北浦嗣巳)
 冒頭にわかりやすく、これまでのおさらい。そして、正直全く把握しきれないでいたファイターチームの名前がテロップで次々と入り、志は志として、もう少しわかりやすく配慮を、という話が内部で出たりしたのでしょうか……?
 チームライトニングとチームファルコンの共同演習はスピード感の激しいドッグファイトで描かれ、ファルコンリーダーは少し年嵩で、ファイターメンバーの中では落ち着いた物腰の人物であるとキャラ付け(この後の、我夢とのやり取りでもそれが補強)。
 エース同士のバトルが佳境に入る中、地中に埋まった巨大な眼が発見され、演習は中断。
 「笑っていやがる……」
 「……え? どういう事だ?」
 直ちに分析に入る我夢だが、その眼は熱反応を持たない事から生命体ではないと思われ、しかし確かに実在し、更には周囲の岩石を空中に噴き上げる、という奇妙な能力を発揮する。
 前回に続き、陰影を強調したカットでカメラは我夢の額に浮かぶ脂汗をアップで映し、正体不明の存在を定義付けようとフル回転する我夢の頭脳はオーバーヒート。答を出せずに苦しみ彷徨う思考はいつしか、笑う巨大な眼の向こうに、幼年時代のトラウマを浮かび上がらせる……。
 「なんでも僕にはわかりますってつらしてやがってよぉ」
 「俺たちとは違うって、鼻にかけてやがるんだよ」
 周囲に馴染めなかった子供時代の記憶はやがて、巨大な眼をバックにほくそ笑む藤宮の姿に変わり……て、え、藤宮、そんなキャラでしたっけ(笑)
 前回の藤宮、
 〔公式デビュー戦を華々しく飾ろうと颯爽登場 → 必殺剣、決まったぜ! → ふぉ?! → 大ピンチに陥りガイアに助けられる → そのガイアが苦戦しているところに漁夫の利ビームで勝利 → 環境テロリスト宣言 → 一人で筋トレしているとたまに寂しくなるので、俺と一緒にプロティンを飲まないか?!と我夢を勧誘〕
 という流れで、むしろちょっと可哀想というか、部屋に戻って絶対泣いてる、みたいな感じで、我夢が敵意や敗北感を抱く要素はあまり感じられなかったのですが……まあ、少年期の記憶に関わる海岸で出会った藤宮に批難された事が、極限の頭脳と心理状態において、怪獣の視線を通してねじれた形で繋がってしまったと解釈できなくもないのですけど、我夢の陥った異常な心理状況、と受け取るにしても凄く雑な悪役的描写で、それはそれで我夢の中の藤宮観が心配になります(笑)
 アルケミースターズ時代、冷蔵庫に大事に取っておいたピーナッツモナカでも食べられた苦い過去とかあるのか。
 「僕のピーナッツモナカを返せ!」
 じゃなかった、
 「あの眼を攻撃して下さい!」
 苦悩する我夢は乱暴な結論に飛びつきファイターは攻撃を仕掛けるが、ミサイルは眼球の黒目部分に吸い込まれたかと思うと再び飛び出してファルコンリーダーを撃墜し、眼球は忽然と姿を消してしまう。
 「……震えてたね。自分が怖いからって、攻撃するように言ったの?」
 「…………わからなかったんです。あいつは、存在そのものが、不条理の塊で。姿形はハッキリしているのに…………科学的分析が、通用しない。わからないんです、僕には」
 自分の失態にいたたまれない我夢の姿と心理を強調する意図でか、無言のXIGメンバーに囲まれる我夢を中央に置き、遠めからブリッジ全体をカメラ固定で映して展開するのですが、斜め後方に仁王立ちのファイターチーム、台詞を言い終わると(舞台袖に該当する)自席に戻っていくオペ子Aさんなど、スポットライトの中央で苦悩する主人公とそれを取り囲む人々の批難の声、という舞台的な演出が過剰になりすぎて、あまりに芝居がかってしまった印象。
 「どんな相手だろうが、敵が出現したら戦いそして勝つ。それが我々の使命だ。今回の敵が、どんなに不条理な存在かは俺にはわからん! しかし、これだけは言っておく。怯える者にここに居る資格はない」
 ライトニングリーダーは防衛隊の一員としての心構えから我夢を叱責し、得意分野で立ち向かえない不条理に対する我夢の脆さと合わせて、独断専行や連携不足など、思考と責任感が先走って不協和を生んでしまう、という我夢の弱点を突いてきたのは良かったのですが(空気を読んで周囲に合わせる処世術の問題ではなく、我夢は基本的に、チームの中の自分、という存在をコントロールできていない)、演出の方が少々好みから外れてしまいました。
 ところで、ミサイル攻撃の最終的な命令責任はどう考えても、ポケットに両手突っ込んで無言を貫いているそこのコマンダーなのですが、一切フォローしないコマンダーは(ふふ……これでまた、減給処分かもしれないな……通販で予約していた新作のゴルフクラブ、キャンセルしないと駄目かな……)とか遙かなるフェアウェイの夢想に浸っているのか。
 同じく無言のチーフは(……これでまた、査定、下がるのかな……冬のボーナスで、新しい泡立て器が買いたかったな……)とそっと涙で瞼を濡らしているのか。
 負傷したファルコンリーダーに謝罪した我夢はエリアルベースを離れ、「地球を守るには、おまえは大胸筋が足りなすぎるんだよ我夢!」と嘲笑う藤宮の幻影に追い打ちを受け……どうもこの藤宮が、余りにもしっくりと来ません。
 大学の友人を訪れた我夢は、その言葉から眼球怪獣に関するヒントを得、出現予測地点をXIGへと連絡。飲み込んだミサイルをエネルギーとして地中の鉱石で肉体を作り出した眼球怪獣が地上に出現し、キャリーのピンチに我夢はガイアへと変身する。
 「もう、怖くない……おまえを恐れる理由など、何もない」
 物理で殴れるなら怖くないみたいな事を言い出した我夢はどすーーーん省略で飛行体当たりを仕掛け、これが量子物理学の勝利だ!(違う)
 不意打ちを起点に優位に戦いを進めるガイアだったが、眼球のキャプチャービームに捕まり眼の中に吸収されてしまう。眼球内部で嘲笑う無数の眼に囲まれるガイアだが、飛行による脱出で怪獣を内部から突き破り、ど派手に大爆発、で勝利を収めるのであった。
 結局、眼球怪獣の正体は最後まで不明なまま、我夢の不安を煽る存在として出現し、我夢がそれに打ち勝った時に消滅するのですが、古典《ウルトラ》のイメージを思い起こす、不条理怪獣でありました。映像的には、黒目部分ににゅるっと吸い込まれるミサイルと、最後の爆発シーンが印象的。
 ベースへ帰還した我夢はライトニングリーダーと食事を同席して半強制的に友好度を上昇させようとする進歩を見せ、ファルコンチームともハイタッチ。
 「勘違いするな。俺はおまえの心配をするほど暇じゃない」
 「そうですよね」
 (……くっ、なんだ、これは……? ただ一緒に食事をしているだけなのに、俺の中の何かのゲージが勝手に上昇していく……?!)「へらへらすんな」
 と、主人公の特殊スキルに飲み込まれていくライトニングリーダーであった……でつづく。
 あまり掘り下げを期待してはいなかった我夢の人間的問題を過去のトラウマに絡めてつつき、XIGメンバーとの関係性、我夢自身の在り方の変化、という要素を扱ってくれたのは良かったのですが、シナリオというよりも演出の方向性が肌に合わず、微妙な印象のエピソードになってしまいました。
 前半の舞台的なシーン構成の他、ラストシーンや途中の「賭け」を巡るオペレーター同士のやり取りなど、“間合い”を活かそうとした演出が幾つか見られるのですが、それが洒落た会話やキャラクターの魅力を引き出すというよりも、芝居の経験値やキャラの把握の問題により、現時点では高すぎる要求になってしまい、理想と出来上がりが大きくズレてしまった気がします。
 要求を引き上げないと上達が見えないのも確かですが、個々のキャラクターの表情をどう見せるかなど、芝居にもそれぞれの演じるキャラクターにも、全体的にもっと馴染むのを待ってから行った方が良いアプローチだったのかな、と。
 やはり序盤は、役者の拙さをフォローして面白さに変換するのは、脚本や演出サイドの領分だと思うので。
 次回――なんか、こんなプレシャスがあったような……(笑)