東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』感想・第32話

◆#32「決闘を申し込む」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:大和屋暁
 パトカイザーを一蹴した合成ギャングラーは、無理な接合の影響か人間大の姿に戻り、チャンスとばかりにコレクションに迫るルパンレンジャー。だが、合成ギャングラーは5つの金庫の解除キーが連動しており、単独では扉を開ける事ができない。
 3人はギャングラーの多彩な攻撃に苦戦し、快盗赤は快盗ブーストでスプラッシュ消火器を発動。
 「坊や、今日は楽しませてもらえそうね、うふふ」
 「なんかキモいんだよあんたは!」
 手をわきわきさせながら迫るゴーシュに対して水鉄砲を放つ赤だが、ゴーシュが双眼鏡のコレクションを取り出したのを見た金は、慌てた様子で全員を撤退させ、ゴーシュもまた、合成ギャングラーの調整の為にギャングラー世界へと帰還する……。
 国際警察では圭一郎らが完敗を噛みしめ、ジュレではノエルが合成ギャングラーの金庫を分析。5つの金庫を同時に開けなくてはいけない事をハッキリと確認。
 「つまり、もう一人誰かの協力が、絶対に必要なんだ」
 5つの金庫、というのは如何にも協力を余儀なくさせる為の仕掛けなのですが、魁利がグッティによる分身を思いつき、コレクション弱体化コレクションの効果により、グッティが力を発揮できない為に分身できない、としっかり潰してくるのは、今作らしい話運び。
 そしてノエルは、協力者として、国際警察に協働作戦を提案する――。
 「ライモンの時と一緒さ」
 「違う!」
 快盗と協力を取り付けてきた、と恩着せがましく(ある意味では国際警察の顔を立てつつ)話を持ちかけるノエルだが、治癒コレクションを奪取しなければ倒すのが不可能だったライオンの時とは状況が違う、と圭一郎は断固としてそれを拒否。
 「同じじゃない! 今度は倒す方法を必ず見つける」
 「……どうしてそこまで協力を拒否するんだい?!」
 双方、得はあっても損は無し、という態度のノエルに対し、圭一郎は噛んで含めるように問い返す。
 「……わからないのか。快盗どもがコレクションを取ろうとしたせいで、何度ギャングラーを取り逃がした! どれだけ被害が拡大したと思っている?! 我々戦力部隊まで、同じ過ちを繰り返せというのか」
 根本的なところで圭一郎にとって快盗はイリーガルな存在なので、「快盗が居た事で速やかにギャングラーを倒せた事もある」事実を肯定的に認めるわけにはいかないのですが、そうはいっても「倒す方法を見つけていない」現実を含めて、今回は心情描写が快盗サイドに寄っているので、圭一郎の譲れない一線が頑固で依怙地に見えるという作り。
 ただそれを、法の執行者の側の信念(しばしば現実がそうであるように、法の側の人間が一線を踏み越える事は十分にありえるわけで、だからこそより厳正な選択が求められる)と繋げる事で、前回のように“仕事の理”を過度に“個人の人の好さ”で塗り潰した上に道化役となってしまう事を回避しており、権限を預かる責任とはすなわち、力に対する自律である、という朝加圭一郎の芯が抑えられているのは良かったところ。
 こう見ると圭一郎には、情を解さない厳格な法理の守護者――融通の利かないマシンのような男、という一面が内包されているといえるのですが、そこで、冷静で機械的な男というだけでも、直情径行な熱血漢というだけでもなく、その二つの要素をブレンドしてみせたところに、朝加圭一郎というキャラクターの魅力があるのだな、と今更ながら。
 圭一郎とノエルは正面から睨み合い、説得を諦めたノエルは、快盗全員の自首を賭け、圭一郎に「決闘を申し込む」。
 「快盗の力を借りなければ、あの化け物は倒せない! 同じように、君の力が無ければ、あの金庫は開けられないんだよ! ……僕も快盗くん達も――本気だよ」
 ノエルの大胆な申し出に圭一郎は決闘を承諾し、採石場に場所を移して真っ向から向かい合う二人。
 (俺が手にした力は、人々の平和と安全を守る力だ)
 (圭一郎くん、負けるわけにはいかないんだ)
 同時に変身し、全力で激突するパトレン1号とルパンX。
 「ギャングラーを一刻も早く倒す事が我々の使命! それが未来の平和の為だ!」
 「そんなことない! コレクションを手に入れる事と、平和を守る事は両立できる!」
 両者は互いの銃を払いのけて接近戦にもつれ込むが、その頃、調整完了した合成ギャングラーが街に出現し、パトレン2号と3号、そしてルパンレンジャーがこれに立ち向かう。
 「警察と快盗が両立できる筈がない!」
 「出来る出来ないじゃない。やらなければいけないんだ! それが君とも、レッドくんとも違う、僕の選んだ道だぁ!!」
 二つの姿を持ち、二つの勢力に所属するXが、両取り発言をするとまさに上位互換、4つの力を全て使えるビッグ・ワン感が漂って危ないのですが、そのノエル自身は最初から、自分一人で何もかもしようとせず快盗と警察 を手駒にする の協力を得るというスタンスで動いているので、闖入したソロヒーロー化を巧く避けており、手堅い構成。
 そしてこうなると、ノエルは何らかの深い事情を知った上で、コグレ派(?)への牽制として戦力部隊にVSチェンジャーを横流ししたと考えて良さそうですが、果たして、ノエルが完全に口を割るのはいつの日か。あまり引っ張りすぎると、もっと早めに言って良かったのでは……? となってしまうので、良いタイミングを期待したい所です。
 ルパンレンジャーと2号3号が合成ギャングと死闘を繰り広げる一方、激しく剣を打ち合わせる銀と1号。
 「ルパンコレクションを取り返し、大事な人を取り戻す! そして、ギャングラーを排除して、平和な未来を実現する!」
 (……大事な人を取り戻す……?)
 ノエルの“本気”に、かつてのルパンレッドの言葉を思い出して動きを止めたパトレン1号に迫る、蒼い十字のXストライク。
 「そのどちらも、僕は諦めるわけにはいかないんだっ!!」
 勝敗を分ける閃光が迸り……物語の流れからは、ギリギリの状況(圭一郎との決闘)においてノエルの本音が引き出される――本気で相対しなくてはならない朝加圭一郎という存在――という構成なので、今回の叫びが限りなくノエルの本音と受け止めて良さそうですが、総取りを目論むノエルは、底抜けに好人物なのか、底抜けに欲張りなのか(笑)
 そしてここに来て、総取りしてこそ真のヒーロー? という観念が入ってきたのは、今作の今後の道のりに向けて興味深いところです。ノエルの動機がルパンレンジャーと完全に同じ、というのは若干、話を簡単にしすぎているようで気にはなるのですが、ここまで言って未だハッキリしないノエルの「大事な人」というのが終盤のキーパーソンになる可能性は高そうでしょうか(ルパン家の重要人物ではなかろうか、と推測していますが)。
 あと逆に、あまりにも快盗サイドに寄っているノエルが、快盗と方針の違いで対立する事になる、という展開もありそうかもとは。
 まあまだ、この流れならまず本音に違いない……と思わせて真っ赤な嘘でしたエボ、という可能性はなくもないですが、
 「やあみんな、僕の言う事、信じちゃったかい?」
 でも、個人的にはアリです(笑)
 ノエルか咲也には、あの邪悪なスマイルを、どこかで活用して欲しくて仕方がないようです。
 共同戦線か、はたまた全員逮捕か――決闘の決着を待ちながら合成ギャングを食い止めようとする5人だが、圧倒的なコレクションの威力に追い詰められ、トドメのギャングラー光輪が迫ったとき、それを横から弾き飛ばす1号と銀。
 「決闘は?! どっちが勝ったの?!」
 その問いには両者はしばらく答えず……やがて、いつもの気取った仕草で両手を広げるルパン銀。
 「さあ、ステータス・クインティプルの、金庫破りだ」
 「今回だけだ! 特別だからな」
 その言葉に胸をなで下ろした快盗赤は、マジックビークルをパトレン1号へパス。
 「……俺が押収すると思わないのか」
 「お巡りさん、そういう卑怯な事しないでしょ?」
 「行くよ、みんな!」
 前回、つかさ怒りの変身にパトレンソロOPを重ねたのは展開の雑さを誤魔化している感が強かったですが、今回ここで、立ち直ったギャングラーへ向けて5人が突撃するところで入るOP、は文句なしの格好良さ。そこから間髪入れず、怒濤のコレクション攻撃に立ち向かう7人を、広角カメラで収める使いどころも会心
 2号と3号の変則ショット(ここまで段取りを重ねるとつい5人だけに焦点を絞ってしまいがちなのですが、2号と3号も棒立ちにさせないのが行き届いた作り)でギャングの動きを止めている間に接近戦の間合いに潜り込んだ快盗&1号はビークルを構えて5方を囲み……この土壇場で
 「……ところでこれは、どうやって使うんだ?!」
 と1号が言い出さないか物凄くドキドキしたのですが、そんな事はありませんでした!
 5人は一斉にビークルを叩きつけて金庫の解錠に成功し、5人並んで5色の携帯電話型アイテムを手にするのは少々ネタっぽくも面白い絵でした(笑)
 「今度はこっちに付き合って貰うぞ」
 「勿論」
 「今回だけな」
 ルパンレッドの快盗らしい軽口を挟み、総員ビークルをセット。ここからは警察の気持ちです、ぼくは悪いかいとうじゃないよ(ぷるぷる)、とわざわざ金色になるX、そういうところが、圭一郎の神経を逆撫でしているのだと思うんですよ!
 7人は融合Xマジカルスプラッシュブーメラン全必殺ハイウェイデストロイ(謎の派手な背景路線)で合成ギャングラーを葬り去り、ゴーシュがお宝5連打で巨大化させると、グットクルカイザーVSX、再び降臨。
 今回もCGでうねうね動くVSXは、両肩上部のハードポイントにビークルを付け替えてギャングを追い詰め、トドメはビークルラッシュ光線で永遠にアデュー完了。さすがにやはり、人が入って動かせそうにないVSXはフルCG基本になるようですが、かなり前回の流用に見えましたし、今後も予算の都合で出番は限定されそう。
 かくして一気に5つのコレクションを入手し、ほくほく顔で回収していくコグレだが……
 「……あ、そういやぁ、前言ったゴーシュの双眼鏡、ノエルは知ってるみたいだったけど」
 魁利の言葉に一瞬で消える笑顔。
 「……で、どうなりました?」
 「どうって……どうも。無理矢理撤退させられたからな」
 「そうですか。……わかりました。ノエルくんに、早速確認します」
 コグレはコレクションを本に収めるのもそこそこに足早に店を出て行き、不穏、ひたすら不穏なのであった……というかノエル、「後で説明する」と言ってそれっきりになっているようで、まだまだ怪しい(笑)
 そのノエルは一人で洞穴を訪れ、決闘の決着を思い返していた。
 あの時――咄嗟に拾ったVSチェンジャーの銃撃でXストライクを打ち破った1号は、銀の眼前に銃を突きつけるまでするも「勝負あり」を告げずに敢えて銃口を逸らして隙を作り、銀に一本取らせていたのだった。
 「一つ借りだね、圭一郎くん。……メルシー」
 そして部署の窓辺に佇み夕陽を見つめる圭一郎は、ルパンXとルパンレッド、二人が口にした“本気”の共通点をいぶかしんでいた。
 (快盗どもの目的……ルパンコレクションを取り返すと、何が起きるというんだ)
 少しずつ近づいていく互いの距離の先に、口を開けて待っているのは、地獄か、はたまた、希望か……なんだかもう、潜入捜査どころか快盗と同じ立場に居る事を隠しもしなくなってきたノエルは、次回から国際警察では出涸らしのお茶を入れられてしまうのか?! 「あ、ノエルさんのおやつは、ピザの耳でいいですよね」とか恐怖映像が心を切り裂くかもしれない次回へつづく!
 前回のあまりの出来の悪さから、このまま警察戦隊が道化の役割を固定されてしまうのではないか、と大きな不安先行のエピソードでしたが、圭一郎の頑なさをマイナス寄りに描きながらも(快盗視点としてはおかしくない)、その頑なさの意味をしっかりと描き、ノエルの“本気”を見た圭一郎が、譲歩を選ぶ、というのも納得できる範囲で収まりました。
 こうなると前回の惨事が本当に勿体ない所ですが、「ノエルの本音(の一部)がさらけ出されるエピソード」である今回とセットだったと見ると、やはり前回の真の中心は、つかさではなくノエルだった、と考えるのが納得がいきます。今回、圭一郎を相手に本気をぶつける都合で、前回時点でノエルの心情をどこまで描くか、という線引きを悩んだのでしょうが、つかさの思いやりをわかりつつも、どうしてもコレクションを回収しなくてはいけないノエルの心情を掘り下げて焦点を合わせた方が、納得度が上がったような。
 そうすれば今回ノエルの言う「大事な人」への気持ちもより重く伝わったと思うのですが、そういったノエルの心理に煙幕を張りすぎた上で、本質的に狂言回しでしかないからと、つかさをおざなりに“ただのいい人”扱いしてしまった(それならそれで、その背景を肉付けしなかった)のが、前回の失敗の要因であったかな、と。
 今回の圭一郎は、イリーガルな快盗との共同戦線は言語道断というのを前提とした上で、「今度は倒す方法を必ず見つける」と正道を歩もうとする間に被害が拡大する可能性、という己の抱えるアンビバレントを認識しているのですが、そういう点では決闘に負けたという「理由」が与えられる、のは圭一郎にとっての「救い」という一面を持ちます。
 決着のシーンが先送りにされた時点で、実質的な勝者は圭一郎だった、というオチは見えましたが、最初から負ける気は無かっただろうといえ、ノエルの本気を受け止めてそれを選んでしまった圭一郎にとっては、ある意味では決闘を受けた時点で「負けていた」とはいえ、なれば「今回だけだ! 特別だからな」というのは、何よりも圭一郎自身への言葉とも取れるのですが、第1話において明示されていた――そして圭一郎自身が世界に対して常に抱えている――己(自分たち)の力不足から無法をのさばらせてしまう事への怒りと葛藤(無法と協力せざるを得ない状況、もこれに含まれる)をどう乗り越えていくのか、というのが圭一郎が向き合わなくてはならない課題なのかもしれません。
 以前にも書いたかもしれませんが、今作登場人物の中だと、既にそれを行っているルパンレンジャーの面々以上に、圭一郎こそ「力が欲しいか?」と親和性が高いのではと思う節があるのですが、正義を突き詰めていくとやがて悪と同一化する、というのは宇都宮P好みのテーマ性でもありますし、終盤、「圧倒的な正しい力」に飲み込まれた圭一郎を快盗が救う、なんて展開もあるかもしれない、などとは思ってみたり。
 そんなわけで、ノエルの本音(と思われるもの)が垣間見え、圭一郎の抱えるジレンマが浮き彫りになるエピソードでしたが、ノエルと圭一郎の手法的対立というのは解決しておらず、今回は“借り”と“譲歩”という形になったので、両者の衝突が最終的にどういう形に収まるのかは引き続き楽しみですし、今回、破裂から一気に決着まで持ち込まずにその手前で留めたのは、テーマ的な重みをしっかり与えてくれていて良かったです。
 「圭一郎先輩とノエルさん、どっちが正しいんでしょう?」
 「さあな。……二人にもわからないから決闘するんだろう」
 「え?」
 「……力尽くなら、正しいも正しくないもないからな」
 故につかさの、両者の葛藤をなぞりつつ、これが真の解決ではない事を暗に示す台詞は非常にクリティカルでした。
 ホント前回はどうしてああだったのか……とまたリピートしてしまいそうになりますが、改めて非常に面倒くさい戦隊の非常に面倒くさいエピソードを、さすがの構成力で大和屋×渡辺がしっかりまとめ、凄く面白かったとまでは言わないものの、諸々に納得は出来るエピソードで、ホッと一息。
 一定のカタルシスは描きつつも、まだまだ答までは遠い、という作劇も今作らしい抑制が効いていて良かったです。
 次回――まさかの、咲也より先につかさが逮捕?!(未成年者略取の疑い) 国際警察の明日はどっちだ?!