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こうにか『響鬼』

仮面ライダー響鬼』感想・第44話

◆四十四之巻「秘める禁断」◆ (監督:鈴村展弘 脚本:井上敏樹
 命を削った斬鬼の復活と加勢により響鬼らは一気にカニ軍団を打ち破り、トドロキは懸命なリハビリを開始。
 「ザンキさんにも、言われたんスよ。鬼になれなくても、鬼として生きろって。自分に克つのが、鬼の生き方だって。だから俺、また必ず、自分の足で立ってみせます」
 ヒビキがトドロキの“頑張りすぎる”気質に不安を抱く一方、明日夢は京介の元を訪れ、もう一回頑張ろうと声をかけるのは明日夢ならではのアプローチになって良かったところ。
 だが「いずれどちらか一人に弟子は絞るつもり」というヒビキと勢地郎の言葉を耳にして、ヒビキが自分をふるい落とすつもりだと疑心に囚われている京介は頑なにやさぐれ、かつてのクラスメイトといざこざを起こして、補導。
 …………これは、平成ライダー》ポイントを稼ごうとする深謀遠慮?!
 ある意味で京介は今、“未来”を買う事によって確実に明日夢くんより「仮面ライダー」に近づいている……!
 明日夢からの連絡で身元引受人となったヒビキは、師匠になると約束した以上は責任を持つ姿勢を見せるが京介はそれにも反発し、リハビリを続けるトドロキは日菜佳と距離を取ろうとし、人間関係が千々に乱れる中、これといった波乱要素が手元になく、出番の減っていく香須実さん。
 前期の路線が続いていれば、もう少し話数に余裕のある頃合いに、吉野からイブキ(或いは香須実)に縁談が持ち込まれてお見合い大騒動、みたいな事もあったかもしれませんが…………あったら、見たかった(笑)
 真面目な話としてはイブキさん、あきら騒動(シュキ討伐問題含む)のあれこれを、あきらが概ね自己解決してしまった事で、“イブキなりのヒーロー道”を劇的に見せる機会をスルーされてしまった部分があり、師弟関係に関してはヒビキさんからフォローが入って誤魔化されましたが、残り話数の中でねじ込まれるといいな、とは思っております(現在、ザンキさんに場を食われ中)。
 日菜佳に甘えられない、と一人でリハビリに向かっていたトドロキは派手に倒れかけたところをザンキさんに王子様セービングされ、ぎゅいーーーーーんと急上昇していく、何かのゲージ(サブタイトル……)。
 「……トドロキ。……俺の弟子になれ、もう一度」
 ザンキは腕の中のトドロキに告げ、再び「師弟」の関係になる事で、する方も見守る方も辛いリハビリが“修行”という行為に置き換えられる(事でトドロキにとって一つの救いになる)と共に、もはや己の死を受け入れているであろうザンキが、命の最後の一滴までを絞り尽くし、その生き方を間近で見せようとする行為もまた、師弟の教えとして鬼の道理の中に落とし込まれる事になるのが、前半から繰り返しスポットの当たってきた師弟関係も踏まえての、超絶格好いい落としどころとなり、前回今回、とにかくひたすらザンキさん格好いい祭り。
 ……あと脇道ですが、ちょっと思った事として、「格好つけたい」「弱みを見せられる」は恋愛対象へ抱く表裏の二面性だと考えているのですが、トドロキ×日菜佳がずっと、曖昧というか一進一退の関係が続いていたのは、
 トドロキにとって、
 弱みを見せられる(甘えられる)相手・ザンキ
 格好つけたい相手・日菜佳
 と結構明確に分かれていたからなのかな、と(笑)
 そんなわけでやはり、日菜佳が倒すべきは勢地郎より先にザンキさん。
 ザンキ-トドロキ師弟が復活していた頃、ヒビキの元には吉野から桐の箱が届き……これは、最近姿の見えないみどりさんが吉野の古文書と私の科学を融合して作り上げた超小型アー○・リアクター! これをつければ、アラ不思議、トドロキくんはアイアントドロキマーク3となって鋼の体で復活するわ!! え? 駄目? じゃあこっちの米国猛士から届いた第二次大戦中の極秘資料を元に私の科学が融合して生み出された超鬼人血清、これをトドロキくんに打ち込めばアラ不思議、キャプテン・トドロキとなって……
 ではなく、式神操作アイテムである翡翠の腕輪・陰陽管。
 ヒビキはそれを明日夢へと預け、簡単操作で炎の小鳥を召喚できる実演を披露し、街路樹を焦がす31歳。
 「俺はまだ死なん……絶対に」
 一方、ザンキもまた焚き火を前に何やら呪術を用いるとその体には黒い刻印が浮かび上がり……いずれも、シュキ編で広げるもそれっきりになるかと思われた“古来の鬼”の要素を拾い上げたのは、辻褄を合わせる意図もあったでしょうが、シュキ編とのテーマ的な繋がりも示される形に。
 渡された“力”の扱いに思い悩む明日夢くんは、体育の着替えの際に雑にそれを制服の間に隠すが、京介がそれを見ていた。授業をサボって学校を出て行く京介を目撃した明日夢は、陰陽管が盗まれている事に気付くと慌てて京介の家へと急ぐが、そこで目にしたのは、京介に絡んでいた元同級生が、火傷を負って地面に転がる姿。
 陰陽管、信頼の証にしても危険度に対して気軽に渡しすぎなのでは……? と思っていたら、どうやらこれ自体が“鬼の力”の比喩であり、かつてシュキ編で持ち込まれるも消化不良となった“己の中の鬼”の象徴として明日夢に、そしてそれ以上に京介に突きつけられるものとなる模様。
 果たして、陰陽管を盗み傷害事件を引き起こしたのは京介なのか? そして、明日夢は京介と真っ正面から向き合う事が出来るのか?!
 桐矢京介の登場により、否が応でもそのペースに巻き込まれて明日夢くんが走り出すのが後期『響鬼』の大きなポイントでありますが、鬼への道がどうなっていくのかとは別に、とにかく明日夢には一度、京介ときっちり正面から向き合って(なんならぶつかり合って)欲しいし、出来ればそれで“友達”になってほしいな、とは思うところであります。
 一方、響鬼威吹鬼斬鬼は本日も再生魔化魍軍団と死闘を繰り広げ、多勢に無勢で囲まれた末、倒れる斬鬼。辛うじて戦いに勝利を収めた後、斬鬼を探す威吹鬼は、川岸に素っ裸で転がっていたザンキを発見し……
 「――死んでる」
 ところがその夜、ザンキはトドロキの病室を訪れ……一体その身に何が起きているのか?
 衝撃の尻出し、迫り来るオロチを前に繰り広げられる少年達の問題と師弟の問題、盛り込みすぎて収まりきるのか不安になってくるところもありますが、ザンキさんの魅力ブーストもあり、上手くまとまってほしい盛り上がり。
 「教えた筈だよな? 鬼というのは、一つの生き方だと。常に自分に克つ、そういう――生き方だと」
 今回、陰陽管が示唆したものを考えると、常に自分に克つとはつまり、「強くなる」と同時に「強くなった自分をコントロールする」事の繰り返しであり、利他の精神を持ってそれを続けていけるのが“鬼”(今作における理想のヒーロー像)だと捉える事が出来そうですが、次回――実質シュキ編から続いてきた、ザンキウィンターフェス最終章。