東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   X/Twitter→〔X/Twitter/gms02〕

チョコとチャカは二文字違い

仮面ライダーガヴ』感想・第7話

◆第7話「仮面の下はどんな味」◆ (監督:杉原輝昭 脚本:香村純子)
 「俺は奴らを許さない! 母親ばかりか、恩人まで奪ったグラニュートどもを!」
 復讐の紅い仮面ライダーとなった絆斗のモノローグによって始まり、現在心配なのは、絆斗に生き別れの妹が居たりしないかどうかです!
 前回ラストにおいてグミの戦士の動きが中途半端になったのが気になっていましたが、今回がビルの屋上で休憩していたチョコの戦士に話しかけるところから開幕し、不満点をさくっと回収。
 直接の対話はもう少し引っ張るとばかり思っていたのですが、ありそうなイベント事は回転の早いスタイルがここでも発揮され、グミの戦士はチョコの戦士の武器に、見覚えのある若い衆がはまっているのを発見。
 (……ん? あれって、ゴチゾウ……?)
 (……やっべーー! あいつのアイテムぱくってんの、バレたか?!)
 チョコの戦士は咄嗟に武器を隠し、仮面の表面的無言を活かしながら、あまりにも予想外のファーストコンタクト(笑)
 「ねえ、君は……」
 「俺は、あんたの、後輩みたいなもんだ」
 窃盗疑惑についての追及を避ける為に力押しで言い抜けしようとしたチョコの戦士の発言により、互いを「改造された人間」と「改造されたグラニュート」と誤解する姿がコミカルに描かれ、仮面のもたらす情報の錯綜は、『アギト』などを思い起こすところ(第1話冒頭の印象もあり)。
 個人的な好みとしては文字の遊びは不要でしたが、この辺り、序盤からフルスロットルで情報を詰め込んでいる事に関する、緩和処置的な意味合いもありそうでしょうか。
 「悪いが、お互い詮索は無しでいこうぜ。わかるだろ? 秘密を知る者は少ない方がリスクが低い」
 ハードボイルドなチョコの戦士の言い様に、互いの誤解と隠したい事項が混ざり合った結果、カオスから生まれたミラクルが脛に傷持つ二人の相互不干渉協定を落としどころとする、奇跡の着地。
 多少の強引さはありますが(絆斗の方は、改造・変身・戦闘のハードな初体験の連続で、多分ちょっとテンションがおかしい)、ライダー同士が顔を合わせて、手を取り合うわけでもないが、険悪になるわけでもないのは、絶妙に不思議な間合いです(笑)
 「わかった。これ以上は俺も聞かない。チョコレートくんは、いい奴だね」
 「……チョコレートくん? 俺が?」
 うん、まあ、頭に書いてあるしな……。
 (チョコレートくんは……嫌だーーー!! 絶対嫌だ。でも本名も避けたいっ。もっと、いい感じの、ペンネーム的な……)
 SNSに仮面チョコダーと書き込まれるのを回避するべく、絆斗の脳裏をチョコに関係した単語が駆け巡り……
 「――俺の事は、ヴァレンとでも呼べ」
 祝・固有ヒーローネーム誕生。
 「……あんたは?」
 「――ガヴだ。アカはいらない」
 祝・固有ヒーローネーム誕生。
 私待望の“名付け”が行われましたが、まさか、面と向かって会話する時に不便だったから、は予想外に過ぎました。……まあ、名付けによる自己と他者の区分とは、そもそも他者が居て始めて成り立つものである、とすれば、論理的ではありますし、両者ともスタート地点から早い内に、互いが“一人じゃない”事を認識し合えたのは、幸運な出会いでもあったのかもしれない、とは。
 「じゃ、またどっかで会うかもな。ガヴ先輩」
 「ああ……また」
 かくしてグミの戦士あらためガヴと、チョコの戦士あらためヴァレンの初顔合わせは双方ドスもチャカも抜かずに終わり、
 ((……一旦これで様子見だな))
 とぼけた空気のまま終わるのかと思いきや、すれ違う二人のシリアスな呟きが重なって、最後にきちっと引き締めたのは、お見事でした。
 ストマック社ではニエルブがバイトくんの一人を追加改造する一方、幸果の親戚で、プール付きの豪邸に住まう宝屋敷の元を仕事で訪れるショウマだが、敢えなく戦力外通告
 人間プレート集めに勤しむ双子の元には、セクシー担当の工場長が顔を見せ……
 グ、グロッタ姐さん怖いーーーーー!
 双子より頭一つ高いのが怖いーーーーー!
 そこから顔の高さを合わせてくるのが超怖いーーーーー!!
 お菓子の家の魔女ポジションでもあるのでしょうが、根源的恐怖の象徴としての “黒くて”“大きくて”“覆い被さってくるもの”をグロッタが一人で示す見せ方はお見事。
 高圧的な身振りや大きな音を立てるわかりやすさよりも何よりも、顔の位置を合わせてくるのが一番怖いと思います!
 パイロット版において、やや駆け足で登場した感もあったストマック5兄妹ですが、順番に双子の前に現れて、双子のリアクションによってキャラを肉付けしていくのは、面白い工夫。
 「……いいわ。私がケツを叩きに行ってあげる」
 双子の言い訳を聞いたグロッタ姐さんがヒールを鳴らしてアジトを立ち去っていた頃、絆斗は酸賀の研究室でバイタルをチェックされており、辛木田絆斗改造作戦は順調に進んでいた……たぶん。
 繋ぎ役の連絡を受けたショウマはデンテのヤサに向かうと、さっそく発明品とお菓子の闇取引が行われ、ショウマがデンテから受け取ったのは、眷属ライダー隊が見聞きしたものを映像化できる優れもの機能付き特製スマホ(みたいな通信機)。
 デンテが新装備の提供者として便利なポジションに収まると共に、“二人のマッドサイエンティストの存在が並べられ、絆斗は(ガヴ先輩の背後にも胡散臭い奴が……?)と思い至り、デンテは(儂以外の作ったグラニュート戦士……?)と考え込むキャラクターの推察が描かれるのが実に手堅い。
 はぴぱれを訪れた絆斗とショウマとの接触も描かれ、ここまでを今回に盛り込んだのは若干くどくなった印象ですが――内心のショック描写はアバンタイトルのみに留めるのが美しかったと思うので――ショウマと絆斗の非対称な関係性など、それぞれの立場で見えるものが違う事を丹念に強調していき、そのズレがいずれ爆弾になるのは香村さんの得意方面なので、仕込みがどう機能していくかは楽しみです。
 絆斗が帰った後、眷属ライダー隊の報告を受けたショウマは、うまい話を持ちかけて芸術家の卵をプレートにしていくグラニュートの元へと乗り込み、スマホの機能で証拠映像を突きつけると、ピラニアっぽいグラニュートと戦闘開始。
 別口の失踪事件を追いかけ、一足違いでギャラリーを訪れた絆斗が戦いの余波で荒れ果てた内部の様子に困惑していると、そこに姿を見せたのはグロッタ。ギャラリー内部の様子に全く頓着しないまま真っ直ぐ椅子に向かって座り込むと高々と脚を組むマイペースぶりには思わず笑ってしまい、凄い勢いでキャラが立ってきました!(笑)
 混乱しつつも、身についたフリーライター仕草により情報収集のチャンスと名刺を差し出す絆斗だが、グロッタに鮮やかなハイキックを浴びて派手に吹き飛ばされ、気分はちょっと《牙狼》。
 「……あら、人間だったのねぇ」
 「おまえ……まさか、グラニュート?」
 「…………私たちのこと知ってるの?」
 「そうか……人間に、化けれんのか。……道理で目撃情報が少ねぇわけだ」
 態度を変えて立ち上がったグロッタに絆斗は怒りの眼差しを向け、ただイベントを起こすだけではなく、“そこで手に入った情報が、そのキャラクターにとってどんな意味を持つのか”がしっかりと描写されて、「情報の価値」への意識があるのが、作劇として信用のできるところ。
 ガヴがピラニア弾による遠隔攻撃に苦戦していると、チョコ眷属が自発的にベルトの中に入り込み、押し出された方は……あ、昇天した。
 カシラぁ、出入りの華はチャカですよチャカ! 奴らの腹の口を、もっと風通り良くしてやりやしょうぜーーとパキッとチョコガンマンなガヴが誕生すると、ピラニアと銃撃戦を展開。
 チョコ弾を浴びせると、弾着がグラニュートから噴き出す鮮血に見えるのが、なかなか際どい演出で、優勢を取ったガヴは、これがチョコの、命の瞬き! とチョコマウンテンからの貫通射撃でフィニッシュ。
 「グラニュートは……俺がぶっ倒す! ――変身!!」
 一方の絆斗はデバイスを床へと叩きつけ、発動ギミックの関係で膝をつくような姿勢になりながら、真っ直ぐに標的を見上げるその姿が、絆斗の在り方そのものを示すようで、シンプルながら格好いい変身ポーズ。
 対するグロッタは人間の姿のまま手持ちの棒をひねり、女王様スタイルからてっきり鞭にでも変形するのかと思っていたら、そのまま伸びて鋼鉄の棍となり、まさかの打撃系?! と思ったら、更に先から鎌の刃が飛び出してくるギミックが大変格好良く、これはグロッタ姐さんを応援してしまうな……で、つづく(笑)
 ……あ、この趣味に触れるのは久しぶりな気がしますが、私、大鎌のビジュアル大好き人間でして。
 まあゲームとかだと、あまり使い勝手が良くなかったりしがちですし、マンガとかだと、大鎌使いとか性格に難のあるキャラが大体、みたいな印象ですが!
 人間体のまま大鎌を格好良く振り回す殺陣が見られるなら、ヴァレン踏み台でいいかも……と私の中でグロッタの株価が急上昇していく中、創作に行き詰まる画家を励まそうとする幸果は地雷を踏んで頭からペンキをかけられて、次回――社長のターンとWチャカ!