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闇を切り裂き、光をもたらす

『パラダイス・ロスト』ざっくり感想

◆『仮面ライダーファイズ パラダイス・ロスト』◆ (監督:田崎竜太 脚本:井上敏樹
 人類の進化形・オルフェノクが、既存の人類をほぼ駆逐し、支配者となった世界――を舞台に繰り広げられる劇場版。
 《平成ライダー》劇場版の3作目で、『アギト』『龍騎』と続いた、本編を踏まえつつパラレルワールドやIFルートの世界設定を更に推し進め、ファイズ/乾巧が生死不明の中、真里・啓太郎・草加らは、人類解放を求めてオルフェノクに抵抗するレジスタンスに参加しており、人類滅亡寸前! 当たり前のように持ち出される銃火器! 世紀末TOKYOでは手榴弾は紳士のたしなみ! MAY DAY! MAY DAY!
 な具合で、冒頭、スマートブレイン社にカチコミをかけたレジスタンスが街中でサブマシンガンを乱射しても、通勤中の会社員やカフェでお茶している家族連れなどが気にも留めない異質な――常識の変わってしまった――世界の描き方が印象的な、色々と思い切った一作でした。
 体調と時間の余裕がなくて、じっくりとメモを取ったりは出来なかったので、以下、印象に残ったところをかいつまんで(※本編及び今作ネタバレを含みます)。
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 ……たっくん、バイクに轢かれる。更に、引きずられる。
 そして、もう一度轢かれて、記憶を取り戻す。
 海堂はあまりにも海堂で安心できる、今作のオアシス的存在。
 なんの説明もなく、頭から上だけがカプセルに入った状態で登場する村上社長?! 社長ーーー?!
 まあ本編でどういう扱いになるか不明瞭な時期の制作だと思われるので、劇場版らしいハッタリ存在としては、このインパクトは良かったと思います。
 劇場版らしいハッタリといえば、鶴オルフェノクの飛行形態は良かった。
 ……良かったが、えげつない死に方をする結花。
 更にえげつなく食い殺される海堂。
 酷い死に様を曝すゲストヒロイン。
 巧復活よりも前に、劇場版ライダーの踏み台となって醜態をさらしながらざっくり灰にされる草加ーーー!
 ……『龍騎』から2年続けて、本編に先行して登場人物を皆殺しにしていく映画なのが凄い(笑)
 仮面舞踏会のシチュエーションは良かった。
 力強くバズーカを撃つ真理の姿に、成長したな……となんだか感慨を覚えますが、そんな真理を主導的立場に置くレジスタンス、その実態は流星塾と同様、「真理の事が可愛くて仕方ない同盟」なの?!(会員は皆、少女真理の写真を財布に挟んで携帯しています)
 レジスタンスの扮装は“わかりやすさ”重視ではあるのでしょうが、銃火器を使ったドンパチシーンの迫力やもっともらしさの不足は、映画としてこういうところで勝負するのは辛いな、とは正直。
 わかりやすさ重視といえば、生き残った人間たちが身を寄せ合うようにして暮らす街が、戦後のバラック街なり闇市のイメージそのまま、といった感じなのは、もう一ひねり欲しかったかなと思ったところ。
 また、オルフェノクの支配するその“外側”は、現実の社会ほぼそのままなのですが、その二つの空間があまりにも断絶しすぎていて、個人的には同じ世界に存在しているものと消化しづらく、できれば映像的には、その境界部分を描いてほしかったかなと。
 この辺りだいぶ曖昧な表現になっているので、本格的に山中の隠れ里みたいな設定だったのかもしれませんし(鬼ではなく、人が異界に追いやられている転倒した世界のニュアンスはあるのでしょうし)、二つの世界の断絶が明確だからこそ、その境界を越えて世界を結びつけるものとして、繋がれる手と手を劇的にする狙いはあったのでしょうが。
 ただ、一つの映画の中としては、移行空間が欲しかったなと。それが無いので、場面が違うサイドに切り替わると、いちいち別の作品のように感じてしまったのが、個人的に物語に入り込みにくい部分でした。
 後、記憶に欠落があるので実際に世界の認識が断絶しているのですが、巧が復活すると、恐らくは視聴者サービスも兼ねて、巧・真理・啓太郎の間で「本編のノリのやり取り」が始まるのも、少し前に草加が灰になったばなかりなのですが……と、ちょっとノリにくかったところ。
 世界観にしろ、空間にしろ、人間関係にしろ、ちょくちょくそういった、TV本編との連続性と、TV本編との断絶、が入り交じっているのは、やや苦手なタイプの作りでありました。映画の制作タイミングと、私が本編視聴済みの20年後に見ている事で生まれているズレもあるでしょうし、構造的には、ポストアポカリプスな『ファイズ』世界に、本編『ファイズ』世界の巧が転生してきた、みたいなものを面白がれれば良かったのでしょうが、それをスムーズに呑み込む機能が私の中に無かったみたいな感じで。
 『ダンバイン』最終盤のような惨死ラッシュの中、ギャグみたいな薬でまさかの変身からオルフェノク撃破を成し遂げた啓カイザ、これ、ギャグみたいな流れから肩を叩いた拍子に砂になって崩れ落ちたら凄く嫌だな……と思ったら、自分が死ぬ代わりにベルトを殺す啓太郎(笑)
 この劇場版のノリを持ってしても、啓太郎は殺せない(殺してはいけない)キャラだったようで、凄いぞ啓太郎。
 個人的には、この映画で一番衝撃的かつ面白かった離れ業でした(笑)
 オートバジン大好きなので、ほどほど見せ場があって良かったです……と思った途端に、オートバジーーーン?!
 巨大オルフェノク(?)のキル数が凄い事になっていますが、今作の一番面白かった見方はやはり、リアルタイムで劇場に行って阿鼻叫喚、でしょうか。当然ではありますが、映像も広い画面でこそ映える見せ方が多いですし。
 巧(ファイズ)と木場(オーガ)が人類とオルフェノクの未来を賭けて死闘を繰り広げる中……真理、檻神輿(笑)
 境界を越え、世界を変える者として、真理の想いに応える決意を固めたファイズは、鞄ブラスターを開封する事で全身の血行が良くなり……序盤から劇場版のキーアイテムとされていた「帝王のベルト」よりも、最初から主人公が持っていた(そしてゲストヒロインが確保していた)装備の方が強い!
 ファイズに敗れた木場オーガは、最後は真理をかばう形で死亡し、まあ木場さんはだいたい、木場さんでした。
 社長! 社長ーーー!!
 そして……巧の伸ばした手を掴んだ真理(なお囚われ真理の拘束具が、恐らくは意図的にベルトめいた扱い)は檻の中から外へ踏み出し、数千のオルフェノクの中をただ真っ直ぐに進んでいく二人の先にあるのは、光か、闇か――。
 「巧……どこに行くの?」
 「さぁな。行けるとこまで、行くさ」
 は、本編の主要テーマと繋がって、良い結末でありました。
 映画全体としては、個人的にノリやすい作りではなかったですが、ベルトを殺す(ある意味、「世界のルールを破壊する」)啓太郎、から先は、だいぶ面白かったです。