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狂気山岳にて

仮面ライダーX』感想・第8話

◆第8話「怪?! 小地球・中地球・大地球」◆ (監督:折田至 脚本:長坂秀佳
 ゴッドの鉄腕アトラスが、新エネルギー資源調査隊員を次々と襲撃し、アトラスをモチーフにした怪人が、地球を投げて攻撃してくるイデアが物凄い(笑)
 霧子がこの事件を藤兵衛に伝える随分と雑な登場と導入で、連絡のつかない敬介に代わり、追加の調査団に加わる事になる藤兵衛と霧子。
 直近で7人が死んでいる山の中に、子供と、山を舐めきったミニスカートの女性を送り込む気の狂いっぷりで、物語が進めば進むほど、やはりこの日本は世界地図上に存在させていてはいけないのでは……? とゴッド機関の気持ちがわかってくる困った仕様です。
 一行がゴッド工作員に襲われたところに駆けつけた敬介が華麗な背面回し蹴りを見せると調査団に加わるが、そのバイクには既に、アトラスの目である、季節外れの巨大なカブトムシの姿が(アトラスオオカブトからの発想でしょうか)。
 ゴッド総司令から調査団全員の抹殺を命じられた鉄腕アトラスは、姿を目撃した登山者を鎖鉄球・アトラス小地球で爆殺し、これを見せる機会は他にもあったと思うのですが、何故かモブの惨殺シーンをねじ込んだ結果、立て続けに7人が不審死した山をカジュアルに訪れる登山カップが誕生してしまい、命の価値が軽すぎる……!
 ちなみに鉄腕アトラスは、歩兵風ヘルメットを被っている為に今見るとちょっとガシャドクロ(『忍者戦隊カクレンジャー』)を思い出すデザイン。
 これまでの秘密主義はどこへやら、霧子は敬介に、涼子とは連絡を取り合う仲で涼子に頼まれて敬介を守っていたと打ち明け、父親や婚約者姉妹の突飛な言動に振り回される敬介、藤兵衛と出会っていなければ今頃、山中に庵を結んで悟りの道を目指していたかもしれません。
 そんな二人を、白いマントを羽織り、火焔型土器のような赤い兜を身につけた謎の影(格好いい)が見つめ、話の流れからすると中身は涼子なのですが多分そんな事はなく、諸事情で強引な展開が続く中、演出の方もどうも乱暴さが目立ちます。
 川を見つけて休憩中、少年の背中に張り付いていた巨大カブトムシを霧子が発見。そこ飛んできた矢(合成が上手く行かなかったのか、驚くべきスピード感の無さ)を敬介が払いのけると、山中とは思えない紫ワンピース姿の涼子が藪の中に姿を消し、まるで改造人間のような効果音で岩から飛び降りる藤兵衛(笑)
 「油断するな!」
 奇襲を受けての混乱の中、再び飛来した矢が……霧子に、刺さった!
 「しまった!」
 体の中央に矢の突き刺さった霧子が、ブルース調アレンジのOPイントロをBGMにスローモーションで顔面から川にダイブする体当たりの演技で倒れ、あまりの展開と演出に思わず笑ってしまったのですが、何これ。
 血まみれの矢を握りしめたまま霧子はがっくりと力尽き……わざわざ敬介から離れて川に向けて倒れ込むので、どかーーーーんと大爆発するのではないかと身構えていたのですが、人間……だった……?
 「……殺した。……霧子さんを涼子が殺した」
 付近を揺るがす轟音と共にアトラスと工作員が出現すると、怒りの敬介は問答無用でセットアップして立ち向かい、Xライダー!
 「アトラス大地球!」
 だが、逆立ちする事で地面を揺るがすトンチのような攻撃を用いてきたアトラスは、続けて「アトラス地球投げ!」を放ち、直撃を受けたXは思い切り崖下へと転落……今作のくったり人形は、くったり感が凄くて、いちいち衝撃映像になりがち。
 完敗を喫し、気を失った敬介は藤兵衛の喫茶店で目を覚まし……え、そこまで戻るの。
 調査団は調査を一時中止して帰還に成功した上、参加者の中から死人が出たなど日常茶飯事とばかり「また二、三日の内に出発する」事になっており、いったい何が彼等を死に駆り立てるのか。
 そこにいったいどんな栄光が待っているというのか。
 再調査を前に食料品の買い出しに向かった団長息子と助手がアトラスの強襲を受けると、それを阻止するライダーX。
 「やめろ! やめないとこのロープに、電流を流すぞ!」
 某後輩みたいな事を言い出すXだが、実行前に再び地球投げを受けると格闘戦にもつれ込み、物陰から銃撃を受けたアトラスが逃走して、翌日――霧子の死や前日の襲撃などまるで存在しなかった事のように、さしたる武装もしないまま子供連れで山へと入る調査団……新聞種にもなっているし、当初は政府認可のプロジェクトのような印象だったのですが、どちらかというこれは、一攫千金を狙うトレジャーハンター案件なのでしょうか。
 某県の山中に、新エネルギー資源が?! プレシャスは早いもん勝ちだもんねー、みたいな。
 そう考えると、序盤に小地球で爆殺されたカップルの存在も、調査団(政府公認とは一言も云っていない)と同類の山師だったとして一定の納得が。
 山中に見つけた炭焼き小屋で話を聞こうとした調査団(有志)は再び飛来する矢に襲われ、またも姿を見せた涼子を追う敬介。
 「涼子さん……?」
 「敬介さん、今は何も聞かないで。……きっと……こんな事のあったのを、笑って話せる日が、きっと来ると思います」
 霧子が死んでいる時点でどう考えても無理だと思うのですが、敬介が気絶から目を覚まして以後、霧子の死を改めて確認しないまま周囲に悲しみの影も形もなく物語がどんどん進んでいるので、やはり霧子はアンドロイドで、「あんな事で私が死んだと思ったの?!」とか言いながら高いところから再登場するのかもしれません。
 涼子に促された敬介はアトラス部隊の襲撃を逃れるが、それがきっかけで涼子は身内から疑惑の目を向けられる事になり、ゴッドの女とかダークの女とか、ノワール風味で影のある女性キャラがファムファタールを演じて物語を二転三転させようとするのも舞台から転がり落ちるのは、長坂作品としては『キカイダー01』の二の舞に。
 再び山中を進むも迷子となった調査団(命がけの冒険に、今日も旅立つ者がいる)の前で、道の真ん中で仁王立ちする不審者極まりない炭焼き小屋の老人がアトラスの正体を現すと、鼻から矢を飛ばす隠し芸で霧子殺害の真犯人と判明し、激怒する敬介と3回目の激突。
 「セッターーッ!」
 ライドルホイップに刺されたアトラスは、少年の身柄を押さえると鼻息アローで始末しようとするが、少年をかばった涼子に、矢が……刺さった!
 息も絶え絶えの涼子の正体は、困った時の国際秘密警察の調査員であり、神教授に近づきゴッドに潜入していた事を敬介に打ち明けると、アトラスの急所を教えて息絶え…………と思ったら、そういえば私サイボーグだった、と思い出し、サイボーグだったから毒蛇が効かなかったのか、それなら何故メドウサは毒蛇を放ったのか、もうあの回の事は忘れて欲しい、と潜入捜査の為にゴッド機関に忠誠を誓った際に改造手術を受け、総司令がスイッチを管理する自爆装置を埋め込まれている身である事を語ると、裏切り者として処分され敬介の目の前で非業の爆死を遂げるのであった。
 涼子がツバ広の帽子にシックなワンピース姿だったのは、退場回なので衣装は綺麗なものをという配慮と国際スパイ要素を融合した為かと思われますが、結果として山歩きには気の狂った格好が、でもサイボーグだから大丈夫、と整合性が付けられ……付けられ? 霧子アンドロイド説を唱えていた身としては姉妹の正体が逆だった事になりましたが、パイロット版の霧子はどう見ても「涼子の協力者」というより「神教授の協力者」だったので、二人の退場処理にともなって初期構想を逆に使った、と言われたら信じます(笑)
 ……これはもし神啓太郎がラスボスだった場合、
 「どうだ敬介、今からでもこの私に従うというのなら、このアンドロイド涼子とアンドロイド霧子をおまえにやろう」
 「ハイ、私ハ、ゴッド科学班が造ッタ、水木涼子ノアンドロイドデス」「ハイ、私ハ、ゴッド科学班が造ッタ、水木霧子ノアンドロイドデス」
 みたいな地獄が待ち受けているのかもしれないとドキドキします。
 「涼子ーーーーーー!!」
 真実を知った直後に恋人が金属片と化し、絶叫と共に膝を突く敬介。
 「涼子……君の言葉は無駄にしない」
 シーン変わると、敬介の怒りを、早回しで爆走するクルーザーで示すのは格好良く、アトラスと4回目の対決に挑むXは、クルーザージャンプから大回転で、地球投げリターン!
 アトラスの必殺攻撃を破ると接近戦に持ち込み、ライドルスティック!
 涼子&霧子を退場させる役回りとしてせめて強敵感を出したかったと思われる鉄腕アトラスは、大地球による地震から鼻息アローと多彩な技を繰り出してくるが、再びの地球投げを空中ポールダンスキックで跳ね返したXは、涼子の言葉を胸に弱点の左肩にXキックを叩き込み、凄絶な死闘に勝利を収めるのであった。
 ナレーション「父の死、霧子の死、そしてまた新しい一員に、恋人涼子の死が加えられた。しかし神敬介の日記に、悲しいという文字は許されない。敬介は戦わなければならない。巨大な敵・ゴッド機関の陰謀と、そして姿を見せぬゴッドの総司令。そして、怪しい第三の怪人は、何者なのか」
 恋人の復讐を果たしたXが納刀よろしくライドルをベルトに差して顔面を輝かせると速攻でナレーションが入って余韻を許さぬまとめに入り、敬介の日記帳に死者の名前が連ねられるのは当たり前のように扱われると、激情をバイクに託して走り去るその姿を、ショットガンと日輪シールドを構えた謎の怪人が見つめて、つづく。
 パイロット版に抜擢された長坂さんは残念ながら今回で降板との事で、なにはなくとも“涼子と霧子に始末をつける”為のエピソードでしたが、ここまでの話数と使われ方から“劇的に辻褄を合わせる”のは難しすぎる為か、“とにかく殺して退場させる”が目的となっており、導入から道中の起伏まで、強引な展開の目白押し。
 演出面でもう少しフォローできたのでは……? と思うのですが、まるでスピード感が無い(凶器の迫力が無い)映像の吹き矢に始まり、回避した少年の体に適当に乗っている吹き矢、鼻息で飛ばされる吹き矢……と、だいたい吹き矢が悪い気がしてきましたが、8話に渡ってレギュラーを務めた主人公の恋人とその妹を殺害した凶器鼻息で飛ぶ吹き矢は、空前絶後でありましょうか。
 色々と駄目そうな感じの調査団長は後半やたら情緒不安定気味になると、最終的には一同揃って棒立ちのまま物語から取り残されて場の緊張感をズタズタに破壊し、演出・脚本の双方で、無理を承知の投げ遣り感さえ漂ってみえましたが、まあ、長坂『X』としては打ち切り最終回みたいなものではあり……個人的には、パイロット版の方向性のまま突き進んだ『X』も見てみたかったところではあります。
 果たして、新エネルギーとはなんだったのか。その先に待ち受けていた栄光とは。深山に青年の慟哭が響き渡るも、まだ見ぬお宝を求める者たちの血を吸い続ける山はなにも応えず、次回――登場アポロガイスト