東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

良心回路がスパークするアイツ

ウルトラマンブレーザー』感想・第10話

◆第10話「親と子」◆ (監督:越知靖 脚本:植竹須美男
 これまで妙に曖昧にされていたゲント隊長の妻子が物凄くあっさり登場し、写真とか指輪とか花とか、変に思わせぶりで婉曲な見せ方にしていたのは特に意味があったわけではなかったのかと、ちょっと困惑。
 ……大丈夫ですかこれ、週末レンタル家族じゃないですよね……?
 たまの休日、日帰りの家族旅行で山梨県は鬼涌谷を訪れるヒルマ一家だが、そこでは今、怪獣の卵の疑いがある奇妙な岩石が発見・調査されており、多くの野次馬が群がる目の前で、まさにその外殻が割れると人間より一回りほど大きい怪獣が出現。
 調査に加わっていた防衛隊の歩兵が攻撃を仕掛けると、赤いブレーザーメダルが反応を示すイメージ映像を挟みながら、その親と思われる巨大な怪獣が地中から出現し、お父さん、仕事!
 ……と思ったら、隊長は自分の所属を家族に隠していた事が明らかになり……え、本当に大丈夫ですかそれ、週末レンタル家族じゃないですよね……?
 過去になんらかの事件で生死の境あたりを彷徨って(ブレーザー拾得事件?)、家族を心配させない為に後方に配置換えしてもらった事にしているとかなのかもですが、今回限りにおいてはその辺りの事情に一切触れないまま、目前に巨大怪獣が迫る中で、家族に対して所属を誤魔化す為にぼやぼやしたムーヴに終始する隊長を見せ続けられるのが、かなり苦しい展開に。
 また、ちょっとしたコミカルな要素のつもりだったのかもですが、そんな重要事項が数少ない隊員と共有されていないのも痛い穴で、緊急連絡時の注意事項として隊長が伝えていないなら大問題だし、副隊長の伝達ミスだったらそれもそれで大問題だし、今作の緩さにしても、ギャグで片付けるには雑にやりすぎました。
 目つきの悪いトサカ怪獣(ちょっとガメラ似)の成体が動き出す中、幼体を電磁ネットで拘束した防衛隊は、幼体に近づく成体を迎撃する作戦を立て、怪獣が実際に近づいている中、「付近の一般人を避難誘導させてから攻撃指示を出す」のではなく、「攻撃指示を出してからようやく避難誘導を開始する」のもだいぶ頓珍漢で、あちこち粗が目立ってノリにくいAパート。
 アースガロンが飛来して親怪獣に全砲門一斉射撃を浴びせると、親怪獣が子怪獣を守る姿が悲壮感たっぷりに描かれ、輝きを増していく赤いブレーザーメダル。それに反応するかのように、家族と共にのんびり、物凄くのんびり避難中のゲントの左目が青く輝くと望遠視力で子怪獣の姿を捉え、その腕に生じるデュエルディスク
 「ええっ?!」
 ゲントが左腕を隠しながら退避の足を速める中、どうもハッピートリガーの気のあるヤスノブが、今回の悪役らしく超ニコニコしながら第二次攻撃を仕掛けようとするが、親怪獣の放った溶岩熱線の直撃を受け、メインカメラをやられて形勢逆転。
 一方、ゲントは息子から、子供を守ろうとするあの怪獣を攻撃するのは正しい事なのか? を問われ、ここまで、「人類の文明圏を脅かす巨大生物は問答無用で排除する」スタンスであった『ブレーザー』世界へのアンチテーゼを取り込んでくるのですが、“人類文明を守る防衛隊の理屈”は道理として認めた上で、感傷に基づく“あの親子を排除するのは正しいのか?”を子供の口から言わせるのが、凄くげんなりする話運び。
 これなら、100%子供の感情に基づく問いかけに対して、ゲントが親としてどう向き合うのかを正面から描いてくれた方が良かったと思うのですが、「防衛軍の道理は理解しているが、それはそれとして“純真な”子供」という、凄まじく話に都合の良い存在を主人公の身内に設定してしまったのは非常に残念です。
 これまでの『ブレーザー』の積み重ねでいけば、「子供を守る怪獣を攻撃するのが正しいのかどうか?」を判断しうるのは「親子怪獣は人類の文明圏を侵さないかどうか」であり、以前の山怪獣の時は過去の記録からその履歴を紐解いていたわけですが、今回は怪獣出現後は全くそういった調査分析の要素を排除し、その可能性が検討されないままに、“親が子を守る姿は種族を越えて尊い”と言わんばかりの見せ方を重ねていくのは、物凄く違和感。
 アンチテーゼをぶつけるならぶつけるで、『ブレーザー』の作法に基づいてやってくれるのならともかく、アンチテーゼを持ち込む為に『ブレーザー』がここまで築いてきたスタイルを無視する、のはいただけないエピソードでした。
 後、知らぬ事とはいえ、少年が素朴な怪獣親子擁護をしている背後では、お父さんの同僚2人が(約1名、笑顔で先に殴りかかったにしても)殉職しかけています。
 これで部下を二階級特進させるのはさすがに気まずいゲントは、逃げ遅れた人が居ないか確認すると理由をつけて妻子(奥さんの表情を見るに、やはり似たようなシチュエーションで一度死にかけた過去とかありそう)と離れるとブレーザーに変身し、怪獣の溶岩弾攻撃を八つ裂き虹輪皿回しバリアーで防ぐと、起用に冷凍旋風を浴びせ、なんか、グングンとスキルが増えています。
 低温状態で動きの止まった怪獣をウルトラの槍で貫こうとするブレーザーだが、子怪獣の姿を目にすると、ブレーザーブレーザーを止め、鎮まれ俺の右手……! と地面をのたうち回る一人芝居の末、迫り来る防衛軍ミサイル攻撃の雨を、ウルトラ遠吠えで全て撃墜。
 「どういう事? ……ブレーザー……」
 今回も間一髪で殉職を免れたヤスノブが呆然とする中、ブレーザーはウルトラの槍を分解して作り出した光の繭玉に親子怪獣を包み込むと地中に封じ、主題歌ピアノソロアレンジで、なんかいいシーンみたいに見せるのですが、うーん……。
 でこの、親子揃って串刺しよりはマシでしょ……? な処置についてゲント息子に「今日のブレーザーは良かった。今までで一番良かった」と言わせるのも、個人的には凄くいやらしく感じ、次回予告から不安は抱いていたのですが、脚本・演出の出してきた色と、全く感性の合わない一本でありました。
 ……一つ、今回のエピソードの描き方から、ブレーザーはもしかすると、ウルトラ族の「子供」であるのかもと思い至ったのですが、もしそうならば、これまでにないアプローチとなって面白いかな、とは。