東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

新章開幕

仮面ライダーV3』感想・第41話

◆第41話「あッ! 人間が溶ける! ヨロイ元帥登場」◆ (監督:折田至 脚本:海堂肇)
第39-40話に続いて初代『仮面ライダー』の流用脚本という事で、脚本は海堂肇名義(元エピソードの脚本は、伊上勝)。
ナレーション「世界征服を計画する秘密組織デストロンは、ナチスドイツで研究されたという、移植手術などの手法で、昆虫や動物の機能を持つ改造人間を作った。これはその一つ、アルマジロの怪人、ガルマジロンである」
 もはやネーミングパターンに全く特徴が無くなった新たな怪人の誕生シーンで始まり、紫色ベースにやたらカラフルな皮膚の色と、頭部が完全に人間のフォルムを残した上で、生身の目出しなのが凄く怖い。
 アルマジロ強制収容所の囚人たちを毒性のウロコを投げつけて次々と溶かしていき、そこに現れるヨロイ元帥……この人、扉、くぐれないのでは。
 ……あ、なんとかくぐった。
 鴨居に頭をぶつけそうな人、みたいになっているヨロイ元帥は、ドクトルゲーよりもむしろカニっぽいカニアーマーと、鉄球ハンドの組み合わせがなかなか格好良く、風見志郎をつり出す為に収容所からの脱走者を利用する計画を立てる。
 そうとは知らぬ志郎は、黒い革ジャンに白マフラー姿となると、デストロンの行く手を爆発で阻み……いや本当に爆発で阻み、V3となって仁王立ち。
 「デストロンの諸君! 大事な生き証人は私が預かる!」
 救急隊員に偽装して、脱走者の身柄を確保しようとしていた戦闘員たち、白衣を脱ぎ捨てるとマスクも被ってからV3に襲いかかるところに、デストロン鉄の結束を見ます(笑)
 (この平和な街、この平和な社会を破壊し、思うままに支配しようとするデストロン。奴らの暗い密かな動きを、誰も知らない。だからこそ、俺は戦うんだ。気の毒な、この家族の為にも)
 脱走者の男は病院で妻子と再会し、前作から完全に地続きのスタートにより、説明する必要が無い要素、としてこれまで省略されていた部分を志郎のモノローグで補い、少年ライダー隊が大暴れを繰り広げた跡では説得力が弱いのは否めませんが、4クール目と新展開の導入としては前回ほどの違和感の無い作りに。
 その夜、病室に忍び込んできたのは、志郎のレーサー仲間で親友、タカギ・ユウスケ(犯人)。
 海外でのレーサー修行から帰国し、藤兵衛に話を聞いて駆けつけたと説明するタカギ、予告で力強く正体が明かされていなければ、限りなく透明になって旅だった佐久間ケンの代わりに現れた助っ人という誤解が生まれた可能性もゼロでは無かった気がしますが、ライダーである事を強調する為に、ヘルメットを被ったまま病室へ入り込む物凄い胡散臭さでは、駄目だったかもしれません。
 ヘルメットを外すと、頭髪もっさもっさだったタカギに気を許す志郎だが、今度こそデストロンの襲撃が行われて病室から遠ざけられている間に一家がさらわれてしまい、タカギと共にそれを追跡。
 だいぶアグレッシブな友人が落とし穴に落ちたのを追ってアジトへ飛び込んでいくと、そこでヨロイ元帥と初顔合わせ。
 「俺の名は、デーストロン大幹部、ヨロイ元帥だ!」
 「ヨロイ元帥? ……新しい大幹部か!」
 「おまえの相手は……」
 ヨロイ元帥が視線を向けた先にいたのは、共にデストロンと戦う筈だった親友・タカギであり……あ、騙したまま、「俺の美学に反するが……」と後頭部にバイクを叩きつけたりするわけではないのか。
 「タカギユウスケとは昔の名。今の名は……デーストロン怪人・ガルマジロンだ!」
 「ガルマジロン? ……タカギが? ……馬鹿な」
 顔のマスクを剥ぐようにして友人の姿がアルマジロ怪人へと変わると、冷静さを失った志郎は久々に落とし穴に落とされるが、そこに現れたのは人間の姿のタカギ。
 「デストロンには、デストロンの理想がある。デストロンが世界を制覇すれば、皆の生活は、今よりずっと豊かになる!」
 「掲げた文句は立派だが、しかし、それによって豊かな生活が出来るのは、ほんの一部の幹部だけじゃないか! それ以下の大多数の者は、今あのヤマシタさんが、やられたように、奴隷にされて、働かされる。挙げ句の果てに、能率が落ちれば死刑だ! ……そんな世界はまっぴらだ」
 理想的な独裁を信じるタカギと、それは大多数の人々の自由と尊厳を踏みにじる支配にしかならないとする志郎の対立が描かれ、散々デストロンの大量殺戮者としての姿を描いてきた後ではタカギの何言っているのか感が物凄いのですが、「自身の正義を信じて他者を踏みにじる事に痛痒を感じない人間」「自分だけは常に豊かな側に居られると信じている人間」……エトセトラエトセトラがSNS上で身近に可視化されている現代に見ると、普遍的な理念の衝突という以上に生々しさが伴うのは、決して他人事ではない自戒も含めて複雑な気分にさせられるところ。
 逆に、仮面アルマジラーとして一緒に戦わないか、とタカギを勧誘する志郎だが、そこに、くりぬいたシルエットの内部に炎を灯す演出でヨロイ元帥が登場。
 変身したV3はさっくり落とし穴から脱出すると、放置されていたヤマシタ一家を放置して外へ飛び出し、戦闘員を千切っては千切っては投げ、あ、物陰から足を出されて転んだけど千切っては投げ……しているところに、岩壁をくり抜いて掘られた巨大な石仏の膝の上にアルマジロが!
 親友との戦いを拒むV3だが、裏切り者として粛正されることに怯えるアルマジロは背中のトゲをV3へと突き立て……先日、『ウルトラマンブレーザー』でガラモンがやっていた記憶(笑)
 「タカギ! 今一度言う! 目を覚ますんだ! 昔のおまえに戻れ!」
 「やかましい!」
 猛烈な攻撃を受けるV3は辛うじて大ジャンプで回避するも、石仏の上からくったり人形となって投げ落とされると、両の瞳が緑に輝き、脳裏にダブルライダー先輩からのメッセージが響き渡る――。
 「志郎! 悪いのはドグマの心だ!」
 「そうだ、悪いのはドグマの心だ!」
 パッシブスキル《悪いのはドグマの心だ!》を発動したV3は、無言で怒濤の反撃を開始すると、70年代特撮名物・割り切りの早い必殺技により、最後はV3回転フルキックを躊躇無く叩き込み、壮絶に弾け飛ぶアルマジロ
 「志郎! 俺は……俺は……」
 抱き起こしたタカギは意味のある言葉を残せないまま事切れ、その亡骸を抱え上げたV3は哀しみを胸にその場を無言に立ち去っていくのであった……。
 第39-40話は、3クール目の締め、仮にも大幹部の退場編として脚本の流用に無理が色々出たものの、今回に関しては、新章の始まりに『V3』ではスキップしていた部分も含めて基本を振り返る構造が割と巧く収まり、なかなか面白い一本でした(ベースとなったエピソードの出来もあるでしょうが)。