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早めにさっくりカクレンジャー

忍者戦隊カクレンジャー』感想・第45-46話

◆第45話「慌てん坊サンタ」◆ (監督:小林義明 脚本:曽田博久)
 深夜の空き巣騒動でカクレンジャーが捕まえたのは、自称「ちびサンタ」。
 日付を間違えて23日にやってきた自称サンタクロースの少年は、無実の罪を主張してプレゼントの箱を開いてみせるが、そこには妖怪オオムカデの謀略により毒ムカデが混入しており、このままではサンタの国は、クリスマス緊急謝罪会見からSNS大炎上、ヤ○コメでの罵詈雑言の嵐によりありもしない事を散々書き立てられた末、大量の訴訟を抱え株価大暴落の果てに不渡りを出して、サンタ一同、路頭に迷ってしまう!
 ちびサンタ容疑者の言い分を信じたカクレン一同は、その危機を未然に防ぐべくネコ丸でサンタの国へと飛んでいき、当時のキャラ人気などが反映されていたのかもですが、展開の主導権を握る関係でサスケ一人が妙に物わかりが良くなっており、その時その時の都合に合わせて物語の「正解」を選ぶ存在、になっているのは物足りない流れ。
 レッド補正といえばレッド補正なのですが、5人のメンバーが居る事で生まれる、キャラクター間のアヤや積み重ねがこれといって活きず、ただサスケが「正解」のルートを選ぶ形になってしまっているのは、今作終盤に来て、キャラ造形の残念なところです。
 あと、小林監督らしいといえばらしいのですが、こうらくえん遊園地でアトラクションに乗りながら、ちびサンタの話を聞くのは、どうにもこうにも説得力に難が(笑)
 厳重に守られたサンタ城へ潜入した忍者たちはサンタ軍団の攻撃を受け……途中からカクレンジャーもサンタに紛争してのドタバタ潜入劇となり、長老サンタ(演:大月ウルフ)は、だいぶ悪役っぽかった(笑)
 長老サンタの号令により予定より早められる発送開始だが、ちびサンタが体を張って毒ムカデの混入を証明するとサンタ軍団の風向きが変わり、長老もまた毒ムカデに操られていた事が判明。
 ニンジャマンを騙してネコ丸を奪い、サンタの国を逃げ出したムカデサンタだが、カクレンジャーはその後をツバサ丸で追い、
 「あ! ツバサマル!」
 ……え、ニンジャマン、ツバサ丸は師匠に入らないの……?
 以前の三太夫解説によると、現在の姿形は鳥ながらツバサ丸も元人間(三賢人の一人)の筈ですし、三神将の一角として、ニンジャマンに呼び捨てにされる筋合いは無さそうですが、実は喋ると、物凄く気さくな人柄なのか……?
 本当は凄くいい人で、カクレンジャーニンジャマンの扱いにも心を痛めているけど、無敵将軍と隠大将軍の圧力に屈し、「おまえ余計な事しゃべんじゃねーぞ」と厳命されて心で涙を流しているのか……?
 三神将には三神将の上下関係の存在とパワハラ疑惑が浮上する中、サンタの国での潜入工作が失敗した妖怪オオムカデが正体を現し、アメフト×ムカデは、インパクトのあるデザイン。
 ターボラガーばりのキック力でムカデボールを叩き込んでくる妖怪に苦戦するカクレンジャーだが、ニンジャマンがムカデボール返しで汚名を返上すると、ニンジャマンを加えてのカクレンジャーボール(これは良かった)で反撃し、アメフトムカデは巨大化。
 雪が舞う中での巨大戦で、いつものトラウマワードで怒り爆発からいつもの合体コンボでオオムカデを撃破すると、サンタの国とプレゼントは元の姿を取り戻し、冒頭で空き巣とムカデ被害にあった一家の団らんシーンが描かれて、つづく。

◆第46話「新春まんが地獄」◆ (監督:小林義明 脚本:曽田博久)
 見所は、少年が落としたマンガを拾うと制止を無視して勝手に読み始めた挙げ句、内容が気に入らないとゴミ箱に放り捨てるニンジャマン
 ……君、子供好きだったのでは……?
 孤独で漫画好きの少年が、妖怪ムジナの描いた『カクレンジャーの最後』(微妙にアメコミ風)を読み始めるとムジナの妖術が発動。マンガ空間の中に飲み込まれたカクレンジャーは謎の刺客の襲撃を受け、何故か変身不能となったサイゾウと、それを守る鶴姫が、次から次へと場所が変わる魔空空間展開に突入し、監督は『宇宙刑事ギャバン』のメイン監督だった小林義明という、完全なるセルフパロディ
 「ある時は、剣の鬼! ある時は上海のスパイ。ある時は、槍の達人。またある時はアマゾネス。そしてある時は、ロス市警。しかしその実態は――妖怪ムジナ」
 七変化ならぬ六変化を見せて、定番の多羅尾伴内パロディも盛り込むと、ムジナは妖怪漫画界の水木しげるを自称(衣装は楳図かずおですが……)。
 スーパー変化を完全に妨害されて窮地に陥るカクレンジャーの耳に、マンガを読んでいた少年の声援が響くと、前半はサイゾウ(&鶴姫)メインで進んでいたのに、何故かサスケが逆転のきっかけを作るだいぶよくわからない展開で、ムジナの武器(Gペン)を奪ってマンガ空間を破壊したカクレンジャーは、マンガ妖術の打破に成功。
 少年と一緒に声援を送っていたニンジャマンが合流すると、サスケの啖呵の後にサイゾウが啖呵を追加して「人に隠れて悪を斬る!」も担当するのですが、酷い目に遭うばかりで特に活躍していないので全く話の流れが噛み合わず、完全に意味不明な事に。
 ……逆説的に、ただ叫べば盛り上がるわけではなく、しっかりと段取りを踏んで物語を積み重ねてこそ劇的に跳ねうる、というのがよくわかりますが、脚本段階ではもう少しサイゾウ逆襲のターンが存在して少年との繋がりもあったけれど、アクションシーン重視で大幅に削られた結果、崩れかけのあばら屋のようになってしまったのでしょうか。
 途中、変身不能のサイゾウを他の4人が身を挺してかばうシーンも、サイゾウだけが変身できない理由が不明(おみくじが大凶だったらから……?)なので劇的にならず、同期『ブルースワット』ばりの事故度。
 マンガ刺客軍団との戦いはアクション的には魅せましたが、絵としては数話前のゴースト軍団とまるっきり被ってしまった為に二番煎じの印象が強くなったのに加え、振り返ってゴースト軍団はどうしてあんなトンチキ仮装大会だったのか……と考えてしまうのも余計なノイズに。
 青二才ノルマから巨大戦はざっくり終了すると、少年にはニンジャマンの手を通してカクレンジャーからの感謝の色紙が届き……孤独で友人がなく、想像に耽溺するのを好む少年でも、誰かを救う事が出来る姿を肯定的に描いたともいえますが……コミカル描写がいきすぎて明らかにおかしな感じの母親による抑圧的な家庭環境など、少年の抱える周辺問題にこれといった前向きな「変化」が描かれずじまいだったのは、ヒーローフィクションの機能が発揮されずに残念でした。
 前回今回とニンジャマンが人間大のドラマに関わってくるのは、オーダーもあるのかニンジャマン登場後の曽田脚本回で重視されている要素なのですが、その割には、「ツバサマル」発言・終始、粗忽な困ったさん目線で接するカクレンジャー・子供への雑すぎる対応と扱いの不安定さが目に付く事に。
 小林監督がパイロット版以来の参戦だった影響もありそうですが、ニンジャマンの肉付けは嬉しい一方、キャラクターとしての統一感が弱いので肉付けの意味が薄くなってしまい、『ファイブマン』以来の《スーパー戦隊》参加となった曽田先生も、サッカー回が出色の出来だったのを除くと、どうも冴えません。
 また、エピソードに絡めてキャラクターとしての描写を増やす一方で、巨大戦における「青二才」→「怒り爆発」の機械的な描写は相も変わらずな事が悪目立ちしており、要素と要素を繋げて物語の歯車を噛み合わせる為の仕掛けが不足。
 宇宙漂流刑だけでも1000年経過しているので、今更そうそう「変化」する人格ではないとしても、登場から10話ほど経っても何も「変化」が生まれないのなら、究極「なんのためにカクレンジャーと出会ったのか?」となってしまい(カクレンジャー側への影響もほぼ皆無ですし)、思い切ったデザインや、三神将とカクレンジャーの間を埋めるピースとしては面白いものの、3号ロボとして扱うにはポテンシャルが勿体なく、追加戦士として扱うには登場が遅すぎたと、なんとも中途半端な存在になっているのは、つくづく残念です。
 ……これは私がちょっと、ニンジャマンの立ち位置の良さに期待しすぎた部分もありそうですが、今見ると、もっと使い出があったのではないか、と思うキャラクター(放映当時はまだ、現行追加戦士フォーマット確立前でありますし、当時の模索の中のキャラクターではあり……約15年後に、系譜の進化形としてゴセイナイトを生んでいると言えますが)。