東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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雲の忍道

忍者戦隊カクレンジャー』感想・第31-32話

◆第31話「見たか!! 新将軍」◆ (監督:小笠原猛 脚本:杉村升
 「許せ、鶴姫。おまえたちがどうあがいても、この世はやがて妖怪のものになる。……カクレンジャーは邪魔になるだけなのだ」
 「……お父様……」
 ニンジャホワイトもまた白面郎に完敗し、変身解除した鶴姫にトドメの刃が迫ったその時、霊毛ちゃんちゃんこ、ならぬ、忍法道中合羽が飛んできて白面郎の視界を塞ぎ、三太夫は鶴姫を連れて逃走。
 一方、川落ちしたサスケ達は、事前に手配済みだった忍犬少年により川から引っ張り上げられており、ひたすら青春を弄ばれ続けるカクレンジャー
 「どういうことなのいったい!? 答えて、答えて!」
 「はははははははは! 鶴姫、その答は簡単よ。軍師白面郎、つまりおまえの父親と三太夫は裏でつるんでいたというわけよ」
 鶴姫が三太夫を問い詰めているとジュニアが姿を見せ、とうとう茶番劇を、敵から指摘されてしまいました(笑)
 まあそこから、白面郎らの目的は、土壇場でオヤジを裏切って妖怪組の跡目を奪う事に違いない、と考えてしまうのが“悪”の発想でありますが、茶番の指摘から真の目的を(多分)取り違える事によって物語の焦点を「茶番か否か」から動かす役割を果たして、本当にジュニアは作品貢献度が高い。
 刀を抜いてジュニアの口封じを図る三太夫は、壮絶な気合いで忍法を放つがジュニアの妖力の前に敗れ、駆けつけたサスケらの目の前で、ぐさっと刺される仁義なき急展開。
 前半戦のあれやこれやから打って変わったシビアさで、やはり第二部は広島死闘編に波長が近づいているようですが、白面郎戦でダメージを負っていたにしても、これを鶴姫が木の陰から見ているだけの形になってしまったのは、ヒーローとしてはいただけなかったところ。
 「許せねぇ! 今日こそ貴様を倒してやる!」
 「望むところだわ。おまえ達も大魔王様復活の、引き出物にしてやるわ。来い!」
 おまえらの首がオヤジの出所祝いじゃぁ、とジュニアは血に濡れた日本刀を放り捨て、ガリ前後編をきっかけに何かのたがが外れたのか、割と刺激的な鮮血描写が続きます。
 久方ぶりに5人揃った事で放たれたオーレカクレンジャーボールは、貴公子ドクロの妖怪忍法ピッチャー返しに軽々と打ち返され、カクレンジャーの方が大爆発。するとそこにサイドからツバサ丸が飛んできて、いきなり雷鳴剣ヒカリ丸をアーリークロスで放り込み、脈絡のないマジックアイテムを手に二刀流を発動したニンジャレッドがアーミードクロを瞬殺するという、
 〔再会を果たした5人の合体技 < 突然飛んできた個人用マジックアイテム
 な、もう少し配慮の欲しかった現実。
 深手を負い巨大化した若頭ドクロは、ユガミ博士の開発した妖怪ガンにより超忍獣と互角以上の戦いを見せるが、瀕死の三太夫が超忍獣を合体させよと絶叫し、
 「「「「「五神合体! 隠大将軍!!」」」」」
 ツルは潔く頭部、クマが胴体、サルとオオカミが左右の腕、ガマが下半身となる隠大将軍へと合体し、バンクの合体完成ポーズが、ロボットアニメ風。
 1号ロボにあたる無敵将軍が重装甲系だったので、てっきりその強化発展系になるのかと思っていたら意外とスマートだった大将軍(バリエーション分けとしては自然ではありましょうか)、色も、白黒(紺)ベースで渋くまとまっていた無敵将軍に対してカラフルで、特にバストアップ映像では左から〔赤・黄・青〕と、いわゆる玩具カラーが並ぶのが、特徴的。
 三太夫が満足げな笑顔を浮かべる中、左右の連続パンチで巨大ドクロを叩きのめした大将軍は、更にツバサ丸と合体することで空飛ぶスーパー隠大将軍と化し、若頭ドクロと空中戦に突入。大回転回し蹴り(これは格好いい映像)で若頭をはたき落とすと、忍法・急降下爆弾パンチでフィニッシュブローを叩き込み、やたら狼と猿が目立つのでありました。
 「馬鹿な……私がやられるなんて……父上ぇぇぇぇぇーーー!!」
 若頭の最期は、爆発エフェクトの締めに、口にバラを咥えたドクロ、とちょっと遊び心の利いたサービスが入り、残る封印の扉は目からビーム……で、あっさり壊れた(笑)
 結局、人間か妖怪かハッキリしないままユガミ博士は落ちてきた扉の破片に押しつぶされて生死不明となり、瓦礫の間から血まみれの手が伸びる、妙にブレーキの切れた流血映像が続きます。
 儀式の魔力で石化していた人々は元に戻り、すんでのところで大魔王復活を阻止するサスケ達だが……地面に倒れた三太夫は既に虫の息。
 「鶴姫……みんな……」
 「しっかりして三太夫!」
 「わしは……もう、駄目やけん……」
 を、いつもの笑顔のまま言ったのは、良い芝居でした。
 白面郎の真意を問うサスケ達に向け、カクレンジャーを哀れんで延命のチャンスを与えたのは確かだが、人間を裏切ったのもまた真実と告げた三太夫は、5人に打倒大魔王の発破を掛けると視線の先に白面郎の姿を捉え、
 (殿……これで、いいんですね……)
 と、号泣する5人に囲まれながらも、ビルの上に無言で立つ白面郎の方にこそ視線を向け手を伸ばして事切れるのは、三太夫の持つ、誰の為の、なんの為の忠心かを示しきって、忍びに徹した良いシーンでした(自身の死さえも利用してサスケ達を焚き付けていると捉えると、更にニンジャP+120点)。
 三太夫自体は、当初は出鱈目で仙人のような立ち位置のジョーカーキャラだったのが話の都合で長官ポジションに収まると、機械的にサスケ達がその指示に従うようになるなど物凄くどうかと思うキャラクターですし、鶴姫はともかくサスケ達まで三太夫を慕っていたみたいな展開はどうにも無理はあるものの、この最期のシーンは、役者さんの好演も相まって印象的なものとなりました。
 大きな犠牲を払いながらも若頭ジュニアの呪術を阻止し、大魔王の出所を阻んだかに思われたカクレンジャーであったが……何故か封印の扉がモドレコされて復元されると、大魔王様、歩いて出てきた
 「とうとう私は甦った。聞けカクレンジャー! これでこの世は私のものになったのだ!」
 最後ちょっと走ったのかもしれない大魔王は、哄笑をあげるとドクロ城と共に姿を消し、その復帰に喝采をあげる妖怪たち……フェードアウトするかと思われたくノ一組も出所祝いのモブ的に再登場し、軍師白面郎を従えて玉座に座った大魔王は、地上に妖怪王国を作る為に人類殲滅を宣言する。
 (三太夫……お父様が人間を裏切っているなんてやっぱり信じたくない。そうでしょう、三太夫?)
 鶴姫が見上げる空に浮かんだ三太夫の幻は、その背を押すかのようにニッカリと笑い、鶴姫を励ます男たち。
 三太夫の最後の言葉からも、白面郎は目的があって妖怪の軍師を演じているのかと思われますが、今回は冒頭に出てきただけで姿を消してしまい、ジュニアの追い落としにせよ大魔王復活の手助けにしろ、表だっては何もしていないのは、存在感としては残念だったところ。
 話の筋からすれば、封印の扉を破壊した筈なのに大魔王が復活したところに関与していそうではありますが、果たしてその行動の、帳尻は合うのかどうか。
 三太夫を生贄に捧げる事により、前後編で退場が回避されたのは良かったですが、引き続き、不穏な地雷ではあります(笑)
 「大魔王を倒し……鶴姫の親父さんを助け、世の中の平和を守る為に、力を合わせ、戦ってゆくんだ」
 サスケたちがあくまで、鶴父を信じたい想いを貫くのは気持ちよく(ただ、仮に行動の真意は人間の為でも、その目的の為にサスケ達をいいように使っている可能性は未だ大変高いですが……)、三太夫、ジュニア、ついでにユガミ博士、と複数回登場した顔出しキャラクターがまとめて退場し、大魔王復活により戦いが新たなフェーズに入ったカクレンジャーは、隠大将軍を前に誓いを新たにして、つづく。
 ……ところで今、カクレンジャーの中で無敵将軍がどういう扱いになっているのかが、大変気になります。

◆第32話「ナメんな顔泥棒」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:藤井邦夫)
 前作ではクジャク編で好き放題やっていた藤井先生が、ここで今作初登板。
 眼鏡がおしゃれな大魔王が、人類を恐怖のどん底に陥れるべく、妖怪ヌッペフホフを出撃させた、残暑厳しいある日の事――ハロウィン対応でカボチャを被ったヌッペフホフが次々と人間の顔を奪っていき、顔を無くした匿名性により自制心と倫理観を失った人々が暴徒と化して世の中けっこう大パニックに陥るのは、風刺性のある展開。
 アイスキャンディー売りを仮の姿とする当のヌッペフホフは、奪った顔を額縁で飾ってコレクションとして眺めており、久方ぶりに変質的な人間体が登場するなど全体的に1クール目に近いノリなのは、脚本をオーダーしたタイミングの問題でしょうか……?
 (※当時助監督を務めていた竹本昇監督のツイートによると、もともと第23話として撮影されていたが、りんどう湖ファミリー牧場回(放映第25話)の放映を一週早める都合でスキップされ、新規撮影分を加え再編集されて今回の放送になったとの事)
 ヌッペフホフを探すカクレンジャーは、妖怪に会って顔を舐め取ってもらい、漫画のお姫様のような顔にしてほしい、と願う少女と出会い、サイゾウと少女が共に顔を舐め取られてしまう。
 「無い! 俺のモテモテの顔が無い!」
 二枚目気取りのサイゾウは大ショックを受けるが、念願かなった少女が、のっぺらぼうと化した顔に漫画のような目鼻を描いてはしゃぎ回る映像がかなりのホラー。そこから突然の豪雨により、絵の具で描いた顔がドロドロに溶けていくのが、またホラー。
 この一件で少女は反省し、サイゾウと少女、お面同士での情緒的なドラマを真っ正面から描く荒技など挑戦的な演出には面白みもあり、1クール目にこれが出てきていたら、癖のある一本として光ったかもですが、なにぶん大魔王様の出所後一回目のエピソードなので、どうも困惑が先に立ちます。
 退場者続出の少々血なまぐさい展開が続いていたので、ここで楽しく忍術バトルを一つ挟んでおきたかったのかもですが(『カクレンジャー』といえば英字擬音のイメージがありましたが、実際にはかなりTPOに応じて使い分けしており、今回久々の使用)。
 既に顔を失ったサイゾウがジライヤに化ける事で妖怪をおびき出す作戦が成功し、青の正方の陣で斬られた妖怪ヌッペフホフは巨大化。
 挿入歌に乗せて大将軍推参すると、すかさずツバサ丸と忍法スクランダークロスして、回し蹴りからの急降下爆撃パンチにより瞬殺するのであった。
 最後は自分の顔を取り戻した少女ともども砂浜で一同青春ダッシュし、死闘編の後の箸休めな一本。