『仮面ライダーＶ３』感想・第１０話
◆第１０話「ダブル・タイフーンの秘密」◆ （監督：田口勝彦 脚本：内藤まこと／佐伯俊道）
「ライダーＶ３は死んだのだ！ 諦めろ！ 俺たちの計画は、着々と進行している」
レーサー地獄部隊、生きてた。
デストロンが、レーサー地獄部隊を用いて極秘で運送されていた人工衛星用の核物質を強奪していた頃、藤兵衛＆少年ライダー隊員３人は純子とシゲルを捜し回っていたが、デストロンの作り出した霧の迷宮にはまった末、濃霧の中で見つけた洋館に助けを求めると、顔半分の焼けただれた不気味な男に出迎えられる、突然の洋館ホラー展開。
薬を盛られた一同は眠りについた……かと思われたが、この立花藤兵衛、そんじょそこらの悪の怪人とは、くぐってきた修羅場の数が違う！
と寝たふりをしていた藤兵衛が男に躍りかかったのに続き、その薫陶を受けた少年ライダー隊員たちが秘密道具で洋館の男を拘束し、我ら少年ライダー隊、死して屍拾うもの無し、死して屍拾うもの無し！
思わぬ反撃を受けた男は怪人レンズアリの正体を現すと……落とし穴のスイッチをぽちっとな（笑）
……まあ、割とヒーローでもあっさり引っかかるので、落とし穴は仕方ありません。
「今こそ、日頃の訓練の成果を試す時だ」
結局捕まってしまった一同だが、藤兵衛は弱気になる隊員たちを励まし、いいかみんな、これ以上の拷問に耐え切れないと思ったら、左の奥歯に仕込んだアレを起動するんだ！
幸い、油断した戦闘員から牢屋の鍵を奪い、牢破りに成功した一行は緊急脱出ミッションをスタートし…………バイク、どこ行った。
前編から一転して、少年ライダー隊に大きくスポットを当てての、スリラー＆アドベンチャー（しかも純子とシゲルは捕まっているので、活躍するのは一般モブ隊員！）となり、デストロンの陰謀劇さえ放り投げ気味にされるのですが、風見志郎がＡパートにはワンカットしか登場しないなど大胆な構成で、何かスケジュール上の都合があったりしたのか、少年ライダー隊の活躍にこのぐらいの需要はあったという事なのか。
ライダー隊の脱出劇を描写の中心に据える一方、戦闘員の服を拝借して人間還元液（と多分、強奪された核物質）を入手する志郎の姿が差し挟まれ、とうとう通風口からアジトの外へと脱出した少年ライダー隊が目にしたものは……
「あ、純子さんだ！」
「シゲルくーん！」
荒野で十字架に磔にされ、すっかり火あぶりの準備が整った同志姉弟の姿であった！
磔からの銃殺で片付けずに、しっかりと藁を積み上げてあるところに、デストロンの並々ならぬこだわりを感じます。
洋館で不覚を取った気はするけれどライダー隊の脱出劇は全て監視カメラでお見通しだったのだ、と主張するレンズアリは、皆殺しを宣言してレーサー地獄部隊を呼び出し、ようやく、バイクのターン。
「おまえ達は」
「タイヤの下敷きになるのだぁ！」
「地獄部隊やれぃ！」
初対面の印象こそ最悪だったものの、気がつけばすっかり仲良しのアリとヒトデだが、レーサー地獄部隊は既に志郎の入手した薬により人間に戻っており、火あぶりを阻止。
「一流のレーサーばかり狙うとは考えたなデストロン！」
「ぬぅ、地獄部隊が裏切るとは！」
「な、何故だ？！」
「――悪は長続きせん！」
レース用の防塵マスクを外して志郎が正体を見せる動きに合わせて主題歌インストが流れ出すのは文句なく格好良く、種を明かした風見志郎は得意の高笑い。
少年ライダー隊が敵の目を引きつけている間に好き放題していた事になりますが、少年ライダー隊では、仮面ライダーの為の囮になるのは名誉ある行為とされており、死後、ライダーＳ字勲章が授与されます。
正気に戻ったレーサー部隊には、その場からライダー隊メンバーを乗せて脱出する役割が与えられ、綺麗な離脱から、変身・Ｖ３！
ハリケーンにまたがったＶ３に対し、ヒトデ溶解液とアリフラッシュの仲良し合体技が放たれると、突っ込んでくるハリケーンの前でちょっとビックリするような爆発が起こり、手前のレンズアリがいっけん無意味にフェンスを持ち上げているのは、視界の失われたＶ３に対する、止まれのサインかなにかだったのでしょうか……？
結局、そのまま突っ込んでくるハリケーンの目の前にフェンスを落として慌てて横に逃げるような形になっていて、ちょっと不安を誘う昭和特撮映像。
息の合ったダブルジャンプを見せた怪人コンビを追ったＶ３は再び漁港でのバトルに突入するもアリの熱線攻撃に苦しむが、２６の秘密の一つ、エネルギーが倍増するダブル・タイフーンのレッドランプパワー（つまり火事場の馬鹿力）が発動し、Ｖ３の脳裏に一文字隼人の録音メッセージが響く。
「いいか志郎！ 決め台詞は、俺はまだ５０％だぜ――だ！」
赤熱する筋肉に促されるままに、ノーガード戦法でアリの熱線をリターンしたＶ３は錐揉みキックで勝利を収め、地獄レーサー部隊の処理には気を遣ったのに、逆転手段がいつもの雑なＶ３になってしまったのは、勿体ないところでした。
「おのれライダーＶ３め、レンズアリの仇は、必ず取る！」
残るカミソリヒトデが姿を見せると主題歌インストバトルとなり、ちぎれてもちぎれても右手のドスを再生するヒトデとの激しい攻防から、膝！ 膝！ 膝！ そして再びＶ３錐揉みキックで決着となり、今までで一番、特に何もしなかった怪人なのでは、カミソリヒトデ。
最後は、行川アイランドといえばやっぱりフラミンゴ！ と皆でショーを見物し、志郎だけはバイクで走り去るヒーロー仕草で、つづく。
