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『王様戦隊キングオージャー』感想・第3話

◆第3話「我がままを捧ぐ」◆ (監督:上堀内佳寿也 脚本:高野水登

 かつてこのチキューに――不世出の天才と呼ばれた医師がいた――
 野獣の肉体に天才の頭脳――
 そして神業のメスを持つ我が儘な女は――
 ある日をもって忽然と姿を消した。自らの寿命を悟った巨象のごとく人知れず――静かに――
 今となってはその存在さえ疑う者すらいた
 女の名はH――
 すべては伝説となっていた……とさ

 (※すみません、最近、コミックDAYSで全話無料公開中の『K2』(真船一雄)を読んだ影響です。今読んだら、狂気の部分も含めて随所にヒーロー物の文脈が盛り込まれたスーパー医療ヒーロー物として見事な出来で、ヒーロー作品好きな方には、割とお薦め。劇画系なので得意不得意が出る画風かとは思いますが、マンはガ上手いので読みやすいですし、しばらく読んでいると、一人先生が滅茶苦茶格好良く見えてくるようになるので!)

 さて第3話にしてOPが入り……見づらい。
 主題歌のリズムに合わせる事を重視し、本編同様のガチャガチャ感を遊び心のある映像にしているとはいえますが、文字情報があまりに読みにくく……特に、ゲストキャストのクレジットが一時停止しないと視認できないレベルなのはどうなのか感。
 お洒落を重視したら機能性の下がった建築物、みたいな印象で、メンバー揃ってから映像が変わりそうな部分は幾つかありますが、クレジットもその内、部分的に修正されそうなような。
 まあ別に普段から、一時停止してクレジットを事細かく確認しているわけではないのですが、それはそれとして、最初から“読ませる気の感じられない”クレジットには、好意的ではないスタンス。
 冒頭、広大な海の向こう側に、巨大な花を模した建造物が見えてくる画は面白かったですが、その後すぐに、どこかの世界遺産みたいな映像が続くのは、物凄い違和感(笑) 昔の特撮で割とある、火災や爆発のシーンを、他の作品から借りてきたみたいな。
 今作における、新機軸と問題点がせめぎ合う部分でありますが、もう少し、映像の誤魔化し方はクオリティが上がってほしいところ。
 ゴッドカマキリに拉致されたギラとヤンマは、美と医療の国イシャバーナの女王、ヒメノ・ランとご対面し、
 「いってぇ……ホントだ、脚が、いて――」
 下心丸出しで怪我をアピールするも無視されるヤンマと、ごく自然にメイドが用意した台の上に乗ってギラを見下ろすヒメノ、は面白かったです(笑)
 「私はあなたに興味があるの」
 執事のセバスチャンにより手錠をかけられたギラは、王宮の天井から吊されるとゴッドクワガタの引き渡しを要求される……愛でる為に。
 「じゃあ! しょうがねぇな。渡せタコメンチ」
 「意味がわからん。ただの我が儘娘じゃないか!」
 「あぁ? ヒメノちゃんになんて口聞きやがる」
 「さっきからなんだ!」
 「あぁ?!」
 「まさか……惚れてるのか?」
 「…………ははははっ! そんなんじゃねーしー!」
 露骨に動揺したヤンマは、作り笑いから声を張り上げ……感情表現が、雑。
 折角のおいしいネタを、小学生みたいな質問をするヤンマと、小学生みたいなリアクションを返すヤンマで消費してしまい、軽く目眩がしてきます。
 セバスチャンが、「何かと交換というのはいかがでしょう?」と妥協案を出すが、「この国の全部が私のお気に入り」なヒメノはそれを拒絶。ラクレスに突き出すと脅しをかけられたギラは、これ幸いと喜ぶと、(え? 何あいつ、日曜朝9:30には詳細を説明できない病気なの……?)という目で見られるが、突然、レインボージュルリラを出したらクワガタと相談してやると言い出し、何がどうしてそうなったのかさっぱりわからなかったのですが、私の目には見えないシーンが、どこか次元の隙間に転がっているのでしょうか。
 一方、第3話にして集会風景が描かれたバグナラクは、だいたい山賊の根城だった。
 「人類を殺せ。己が死すとも殺せ」
 「100人死んでも101人殺せば、問題なし。ぬふふふふふ……」
 え、そ、その計算、合ってるの……?
 巨大な空洞を埋める無数の卵から次々と生まれてくる兵隊たち……みたいな描写でもあれば別でしたが、これまで地上の三国がどれも広々と描かれていたのに対して、バグナラク側が大変狭苦しい画で描かれた為に、地上の5王国と地下帝国の人口比がとても心配です。
 地下空間の窮屈さを印象づける意図だったのかとは思うのですが、バグナラクの脅威を示す為には逆効果になったかなと。
 「死を恐れるな。地球の秘宝、三大守護神を手にし、地球を我らが埋め尽くすのだ」
 デズナラク様は炎の前で兵隊を煽り、何かこの発想に覚えがあるな、と思っていたのですが…………あれだ、
 「違う。戦う為だ。たとえ地球上の昆虫が絶滅する事になろうと、最後の一匹まで戦い続ける」
 『重甲ビーファイター』だ(笑)
 繁殖・特攻・自決、それこそが昆虫魂! と檄を飛ばすデズナラク様に応えて、フンコロガシ怪人が今回の巨大化要員に名乗りをあげ、進撃目標は、イシャバーナ。
 そのイシャバーナでは、国土視察中のヒメノが突貫で広大な花畑を作らせたり、美観を損ねると民家を吹っ飛ばす姿を目の当たりにしたヤンマが、上っ面で推していたアイドルの裏アカを見つけて百年の恋も冷めました、みたいな態度にいきなり変わって目が白黒。
 少なくとも顔見知りではあり、他国の王なのだからそれなりに人となりも知っている筈なのに、むしろ今まで、外面に騙されてただけなの? と、物凄く薄っぺらい男に。
 確かに民家を吹き飛ばすのはトンデモですし、例えば今後も、女性の外見に弱いキャラを貫くならそれはそれですが……要するに2回続けてギラが〔他国の王のやり方に文句をつける → 信念としての行動であり実はそれで上手く回っていました〕となるのを避ける為にヤンマを生贄に捧げる非常に雑なやり口で、今回ヤンマが見せるリアクションが一から十までギラを引き立てる為の道具扱いなのが、大変残念でした。
 ヒメノが、ギラの情報を基に用意させたレインボージュルリラはギラのお気に召さず、今回これっきりで特に拾われないのですが、私が覚えていないだけで、第1話か2話で出てきた単語でしたっけ……?
 幼少時のギラにとっての極上の食べ物(見た目は、樹液キューブスープ)だそうなので、貧しいギラにとっての思い出の味で、それをくれたのが若き日のラクレスとか布石アイテムになるのかもですが、それにしてはあまりに唐突に湧いて出てきたので混乱します。
 ギラは再び手錠をかけられ、ヒメノは車椅子の娘を伴った父親から医療ミスをなじられ、国王自らに難癖をつけて慰謝料を無心する一般市民(しかも毎月やってるらしい)って心が強すぎて、混乱がますます加速。
 セバスチャンは、特殊メイクで老執事を演じている大卒3年目の25歳(就職時に名前もそれらしく改名)と判明し、ますますヒメノへの印象を悪化させるヤンマ。
 「無茶苦茶だな……なんであんな超絶我が儘女が王様やれてんだか」
 「お二人はまだ、ヒメノ様の全てをご覧になっていない」
 そこへバグナラク襲来の報が入るとギラとヤンマは剣を手に取り、先に前線に出ていたヒメノは、泥水をかぶる事を厭わず、車椅子の娘を救う。
 「走って逃げて。足は治ってる。私が治療したんだから」(ギュッ)
 そう、「本当に治療が必要なのは、あなただ」(父親に剣を向けながら)……じゃなかった、
 「でも!」
 「我が儘になればいいじゃない」
 「え?」
 「……あなたの望みは、誰でもない、あなたにしか叶えられない。夢も、未来も、我が儘から始まるの。そして世界を、あなたの思うままにしてやりなさい」
 ヒメノはすっくと立ち上がり、夢を未来を見据えた正面と、泥だらけの背中が対比になっているのは、良い見せ方でした。
 「我が名はイシャバーナの女王、ヒメノ・ラン! ただ我がままに、我が道を征く!」
 セバスチャンから王者の剣を受け取ったヒメノはバグ戦闘員に刃を向け、この台詞の時の声音は格好良くて良い感じ。
 「散る事を知らぬ花! その気高きを知るがよい! ――王鎧武装!」
 作り物っぽい背景に作り物っぽい衣装(特に今回は、市民もドレスなど盛装多め)を合わせると、どうしても舞台劇に寄ってしまい、変身ヒーロー物は従来どちらかというと、異物を現実の風景に混ぜ込む形で発展してきた傾向がありますが(悪のアジトなどを除く)、ここで敢えて、ヒメノへのフォーカスを実写よりも舞台風な見せ方にしてきたのは面白いアプローチで、これが続いて面白いかはさておき、演出としてはようやく、ここまでやってきた事が一つ形になった感じ。
 ……結果的にはちょっと、前回の総長と、変身シーンに差がつきすぎた感はありますが(笑)
 ヒメノはカマキリオージャに変身すると、凄まじい剣技でバグ戦闘員を蹂躙し……どう見ても、総長より強かった。
 「ゴッドクワガタをちょうだい! この国の全部が私のお気に入りなの。誰も死なせない」
 「はーっはっははは! 貴様の我が儘、付き合ってやろう!」
 前半の一見我が儘台詞を拾うと3人乗りのキングオージャーとなり、黒の王様はラクレスと密談している間に国の守護神が巨大ロボの足になっているのかと思うと、ほぼギャグ。
 帰りの移動手段が心配になります。
 巨大フンコロガシの装甲に苦戦するキングオージャーだが、前回のダンゴムシハンマー同様、唐突に出てきたカタツムリを黄が手懐けるとカタツムリバルカンで蹂躙し、跳び上がった(なぜ)フンコロガシに連続カマキリキックを浴びせると、トドメはカマキリ踵落としで粉砕するのであった。
 今回もただの巨大戦要員として吹き飛んだバグナラク怪人ですが、前回に続き、クライマックスバトルでキャラクターソング(?)が流れ出し、序盤の統一した手法にするのか、或いはEDテーマ代わりの処刑ソングフォーマットでいくのか。
 「ヒメノ様の事、わかっていただけましたか」
 ……すみません、全然わかりませんでした。
 あくまで戯画的な表現としてツッコむべき場所ではないのかもですが、爆破した家の代わりは用意されていました、とわかりきったオチの上で、いうまでもなく「家」って家屋だけではない筈なのですが、そこにあったものを粉々に破壊しておいて、金で黙らせるのを、いい話風に描かれても、大変困惑します。
 まあ、国家による土地の買い上げをちょっと短縮してやっただけなので、国がそれで回っているならそれで良いのかもしれませんが、この事例を見るにこの国、ヒメノの我が儘センサーにキャッチされると貧困層から一発大逆転チャンス! があるわけで、平民階級が真っ当な労働意欲を維持できないと思うのですが……実際、詐病によるたかりを働いて身を持ち崩している人物が出ており、イシャバーナの闇だけが深まったような。
 ヒメノを始め上流階級の暮らしぶりは豊かそうでありますが、いったいイシャバーナは、他国に何を輸出して外貨を獲得しているのか。
 医療先進国……少年が引っ越す立派な家……若く新鮮な臓(以下略)。
 それから、たかり屋の父は娘の足が治っている事を知らず、事業に失敗して食うに困った父親の為、病気が治っていないフリをしていたのは娘の方であり、真実を知った父親は立ち直りました……はどうも説得力に欠け(気づいていない分、純然たるクズ度が高いというか、明らかに最初に金を与えたら癖になってしまっているので、イシャバーナの国家的体質が生んだ闇であり)、これならむしろ、娘をだしに国から金をせしめていた悪い父親が、そのせいで娘が死にかけた事による劇的な体験から本気で反省し、それを広い心で許してやり直す為のチャンスを与えました……ぐらいの方が、まだ説得力があった気がします。
 というか、父親が視聴者に対して好感度を稼ぐ要素が一切描かれていない(娘は「父親の為」という潜在的要素がある)ので最後に心機一転を描かれても気持ちよさに繋がらないわけで、娘の詐病を知らなかったとするならば、倒れた娘を助けようと敵襲の中に飛び込んだところ(視聴者に対して見せる「父の良心」)を、親子揃ってヒメノに助けられる、とかでも良かったような。
 シリーズ初参加にして初メインの脚本家、『リュウソウジャー』以来のシリーズ参加となるパイロット版監督、『キョウリュウジャー』以来のシリーズ参加となるプロデューサー、背景などにCGを駆使した撮影……と新しかったりお久しぶりだったりの影響も出ていそうですが、あれこれ歯車が噛み合っておらず、話を組み立てる計算が行き届いていない感が強め(シーンや会話の成り行きが唐突になりがちなのは、その辺りの影響が出ているのかなと)。
 「あの女は我が儘だが、それに救われる者も居るのだな」
 邪悪の王ギラは、ヒメノをおもしれー奴認定し、第3話にして早くも、「“民を想う”無罪」の傾向が出てきているのも、不安材料。
 そして、ギラと対比する為だけに、ヒメノ擁護派一転非難派に雑に鞍替えしたヤンマは全く台詞が無く、酷い。
 「怪我人は全員城へ。私が治療します」(ギュッ)
 ドレスを脱ぎ捨てハイテク白衣風味に着替えたヒメノが、スーパードクターHとして神業のメスを振るおうとしたその時、突然ゴッドカブトが飛来すると市街地に砲撃し、つづく。
 てっきり隠し球かと思っていたカブトムシが早くも普通に出てきましたが、予告を見るにあっさり乗り逃げされそうで、
 「あれ~? ノせられちゃったでござる~?」
 の檀正宗ルートに突入しそうなラクレスの明日はどっちだ! どうなるラクレス?! 頑張れラクレス!