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停滞『イナズマン』

イナズマン』感想・第17話

◆第17話「謎の対決! ふたりの渡五郎!!」◆ (監督:塚田正煕 脚本:上原正三
 ナレーション「渡五郎とそのメンバーは、年一度の休日を、伊良湖岬で過ごしていた」
 「そのメンバー」とは何か。
 「年一度の休日」とは何か。
 もはや「少年同盟」を存在しなかった事にでもしたいのか(OPにバッチリ唄われていますが……)、冒頭、伊良湖ビューホテルにおいて70年代名物ポリネシアンショーと一緒にぶち込まれるナレーションが意味不明すぎて困りますが、渡五郎はいつの間にか大学を辞めて、年休1日の秘密結社の総帥になっているのでしょうか(笑)
 ロケ地が愛知県は渥美半島の先端と、遠地の為に撮影に参加でもできなかったのか、大木姉でない方の女性同志が大木弟と共に同伴しているのも大変違和感がありますが、ショーの最中に新人類から電話で呼び出されたキャプテン五郎は、一人外出。
 浜辺で気配に向けて投石すると、写真バンバラが姿を現し、どこかバドーの怪ロボット感もありますが、フィルムとカメラレンズを組み合わせたようなデザインが、なかなか秀逸。
 「帝王バンバは、おまえも母親同様、我ら新人類帝国のために働いて貰いたいとお望みだ。ふふふ……」
 「というと無理矢理俺を」
 「場合によってはな」
 「これが俺の答だ」
 新人類帝国への解答はただ一つ! チェストーーー!! と殴りかかる五郎だが、写真バンバラの特殊能力・タイムショックにより、動きを封じられてしまう。
 「五郎よ、おまえの時間は一枚の写真のように定着した。時は止まったのだ。ふふふふふふ」
 不覚を取った渡五郎の三面図から3Dプリンタよろしく本物そっくりのコピー五郎が作り出されると、写真バンバラが自らそれに憑依する事で、にせ渡五郎(目つきは悪くない)が誕生。
 「渡五郎に瓜二つじゃ。シャシンバンバラでかしたぞ。さっそく、V計画を実行するのだ」
 「……まず、迷惑行為動画をアップします」
 じゃなかった、
 「……まず、現金輸送車を襲います」
 雷神号に乗った(外見だけそっくりなマシンを作った? と思ったら、この後、どんどんよくわからない扱いに)にせ渡五郎は、警備員をアサルトライフルで撃ち殺し、輸送車から多額の現金を強奪。
 シーン切り替わると、検問に引っかかって逮捕された渡五郎は無罪を主張するが、車に積んであったライフル銃について問いただされると目をそらしてだんまりを決め込み、罠にはめられた本物の五郎なのか、にせ五郎によるなんらかの奸策なのか、見ている側も混乱します(笑)
 写真バンバラに時間停止されていた間の記憶が無いという事なのか(その間に、後部座席に銃を放り込まれた?)、犯行時刻のアリバイを証明できない五郎はドナドナされていき、新人類帝国へのスカウトの為に五郎を人間社会から孤立させようとする陰謀は今作初参加となった上原先生らしい仕掛けではありますが、あまりにもディテールが雑。
 ……また、写真バンバラの能力が強すぎた為、五郎を社会的に追い詰めて戦力に組み込もうとする手間をかけるよりも、さくっと抹殺するのが最善手だった気がしてならず、仕掛けを成立させる為の筋書きに大きく説得力を欠いてしまいました。
 (そうか……新人類帝国の狙いは、俺を凶悪犯に仕立て、人間社会から追放させる事にあるんだ)
 逃亡者となった五郎は密かにホテルへ戻るが、今度は子供を雷神号ではねた、ひき逃げの容疑をかけられてしまう。毎度ながら手の平の柔軟な丸目たちからも疑いの目を向けられた上に、ひき逃げ現場に落ちていた車の部品が雷神号の損傷とぴったり一致し、犯人はおまえだ!
 ……五郎が警察に捕まっている間に帝国が回収した雷神号をひき逃げに用いたのならば一応の辻褄は合うのですが、これ以上なくわかりやすいアイコンとして用いられている雷神号そのものが特殊なマジックアイテムなので、もし帝国に好きなようにされているならエピソードの主題になるレベルの大事件なのに、そこに全く焦点が当たらないまま進むので、物凄く消化しにくい展開。
 「……からくりが解けたぞ。もう一人の俺がいるんだ」
 殺気立つ町民に囲まれた渡容疑者は意味不明な供述をすると、真犯人を自分の手で捕まえてやると逃走。バラバンバラ回以降、渡五郎の精神を揺さぶるエピソードが続くのは作品の路線とはいえるのですが、さすがに繰り返しすぎて、新鮮味も不足。
 山狩りから逃げ回っている最中、怪我した少年の手当をして五郎が善人アピールをするのもツボバンバラ回に似通ってしまい、新たな脚本家が参加するも、シンプルな爽快感を削り、無私のヒーロー性への懐疑を盛り込んだエピソード群に、早くも行き詰まりが感じられます。
 最終的に、にせ五郎と本物五郎が取っ組み合いとなり、何故か二人揃って市民に取り押さえられ(目が点)、少年の眼差しが真実を見抜き、怪我の手当に引き裂いたシャツが動かぬ証拠となり、サナギマンと写真バンバラは砂浜で激突。
 変転したイナズマンは、タイムショットより素早く動く身も蓋もない回避手段から逆転チェスト、そして超力稲妻落としにより、写真バンバラは五体バラバラにチェストされるのであった。
 イメージ映像で語りかけてきた帝王バンバは、イメトレ済みの次の作戦が動き出しているとイナズマンに告げ……なんだか、「偽ヒーローが子供を轢く衝撃シーン」がやりたかっただけ、みたいな冴えない出来でした。