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ジャージでなければヒーローじゃない

『ひろがるスカイ!プリキュア』感想・第2話

◆第2話「ヒーローがおうちにやってきた!?」◆
(脚本:金月龍之介 演出:佐々木憲世 作画監督:爲我井克美/宮谷里沙)
 カバトンとショベルボーグを撃退するも、街中で注目を浴びてしまったソラを思わず家まで連れて行くましろだが、どう説明したものかあたふたしていると泰然自若として訳知り風な祖母に迎え入れられ、持つべきものは、ブルジョワの友達と訳知り風なその親族!
 「その、不思議なペンはなんなんだろう……? プリキュアって、なんなんだろう? それに……」
 変身アイテムは、最初ペンぽいなと思ったら、その認識でいいようで……ペンライトとマイクを兼ねている、といったような発想でしょうか。
 異世界の存在と転移について認識が共有されると、疑問は多いがとにかくプリンセスを元の世界に戻す事が最優先とするソラだが、プリンセスが急に泣き出してパニックに陥ると、慌てず騒がず「粉ミルクなら、あるよ」と言い出す トゥルー・ヒーロー ましろ祖母。
 げっぷも出したプリンセスが落ち着くと、おむつだってあるよ、と微笑み、ここは、この時空のカラフルポイントなのか。
 「出会いに偶然はない。人と人が巡り会う事、それはいつだって必然、運命……物語の始まり。わかる?」
 思わせぶりな言い回しで孫娘と異世界からの来訪者を置き去りにした祖母は、元の世界に戻る方法が見つかるまで、二階の空き部屋を使って良いと一方的に告げ、持つべきものは、ブルジョワの友達と訳知り風なその親族です!
 超重要なファーストミッション〔やねとふとんをてにいれる〕を達成したソラは、この恩義は身命を懸けるに値する、とましろに対して膝を付いて騎士の忠誠を誓おうとするが、「お友達から、お願いします」でひとまず落ち着き、買い物先での典型的な異世界ボケとツッコミを挟んで、ソラは〔ぬののふくをてにいれた〕!
 持つべきものは、おおらかなスポンサーです。
 「ソラちゃんは、どうしてそんなにまでして、ヒーローになりたいって思ったの?」
 「……本物のヒーローを見てしまったから……でしょうか」
 幼少期、迷い込んだ森で命を救われた体験から強い憧れを抱いた“あの人”のようになりたい……その一心で、今日も筋トレ、明日も筋トレ、一に体力、二に体力、筋肉はヒーローを裏切らない、とトレーニングを繰り返してきたソラの過去が明らかになり、ブタに千切られた手帳がソラの大事なものであったと改めて知るましろ
 そこに、こちらはこちらで異世界に一人で取り残されている(?)のか、ハンバーガー屋で強盗を働いていたカバトンと遭遇すると、その様子を屋敷から遠見の鏡でチェックしているお祖母ちゃんは、視聴者に向けて怪しげな事を隠す気がありませんでした(笑)
 「なぜ、あの子を選んだのです? プリンセス・エル。……いいえ、今は、エルちゃんでしたね」
 この前に、そういえばどこの誰かどころか名前さえ知らなかった件により、赤ん坊の口にする言葉から「エル」と仮名が与えられ、それに対する祖母の反応から、名前どんぴしゃり、少なくとも祖母は赤ん坊の出自について知っている事がここで示されるのですが、流れが若干わかり辛く感じ、「そういえば名前を知らない」→「仮の呼び名をつけよう」のくだりは、重要度からいっても、もう少し前後に起伏をつけて描いて欲しかったかな、とは。
 恐らく、両親からの呼びかけを反復して頻繁に「える~」と口にしている、という事なのかとは思われますが、特に意味の無い赤ん坊の発声、喃語の類と思っていたので(一般的に一歳児となると、もう喃語の段階は過ぎるようですが)、そこからあっさり名前を取る、というのはちょっとピンと来なかったもので(まあこれは私の感覚的部分が大きいところかもですが……後、普通に「えう~」と聞こえていた)。
 「……未熟です。憧れのあの人の背中は、遙かに遠い。でも! ……でも今は、ヒーローの出番です!!」
 ミサイルが街を破壊し、人々は逃げ惑い、自分はまだ、あの時憧れた“理想のヒーロー”にはほど遠い……だがそれでも、今は「ヒーロー」が必要なのだ、と決め台詞がきちっと切り替えスイッチの役割を果たして、マイクを取り出したソラは、ひろがるチェンジ。
 前回に続き、ましろにより体の震えについて触れられるように、ここでのソラはまだ、己の追いかける理想としてのヒーローを「演じようとしている」ように思えますが、その未熟さにソラが自覚的な上で、プリキュアの力が、“想いを少し後押しする力”として描かれているのは、好みな部分。
 現時点だとのソラのこの、“ヒーローであろうとする事”をどのぐらいの肯定度で扱っていくのか見えないので少々先走りすぎかもしれませんが、プリキュアの変身モチーフが、ある種「役割を演じる」存在であるアイドルなのは、(商業的な要請が第一でしょうが)今後の物語の中での繋がりを期待したいところ。
 重めの揺らぎを叩きつけてほしいタイプの主人公ではあるな、と。
 天高くはばたくキュアスカイは、ましろナチュラルにお姫様だっこしながらペットボトルミサイルをひらりひらりとかわしてみせると、「気をつけて」の一言にヒーローゲージがぎゅいーーんと上昇。
 迫り来るミサイルを鉄拳で弾き飛ばして敵の懐に飛び込むと、怒濤の連続パンチを叩き込み、暴力で制圧する事に一片の躊躇もなくて素晴らしい(笑)
 更に飛び蹴り、そして、自販機ボーグとっておきの2Lペットボトルミサイルを空中で受け止めると、大・回・転プリキュア返し(あ、伊上メソッド……(笑))で投げつけたところから、フィニッシュはプリキュア拳法スカイチェストーーー!!
 ショベルボーグが消し飛んで元の自販機に戻ると街の被害も修復描写が入り、特にフィールドが展開されるような事もなく怪人が純粋に物理で破壊しているように見えたのでちょっと強引ではありますが、つまり、プリキュア拳法スカイチェストが炸裂した瞬間、ランボーグに注ぎ込まれた逆転キュアチェストエネルギーの作用により、対象ランボーグの誕生とそれにまつわる事象が無へと巻き戻される超局所的な時間の逆流現象が発生しているのである!
 ……1970年代の東映ヒーローは、よく事象を変換したり因果律に干渉していたので、プリキュアにも、多分、出来る、筈。
 (キュアスカイ……凄い!)
 それじゃあ貴様をザブトン状に折りたたんでカツ丼のように煮込みながら、じっくりと情報を聞き出してやろうか、とキュアスカイが質問を拷問に変える視線を向けると、早くも追い込まれ気味のカバトンは尻餅ついて撤収し、ましろはソラに、貯めていたお小遣いで買うつもりだった新しい手帳をプレゼント。
 「どうして……?」
 「本物のヒーローを見ちゃったから、かな?」
 は綺麗に繋がり……それをずっと、祖母が監視していた。
 ここまでやると特撮名物・謎カメラのパロディっぽくもありますが、寸前までのいい話が一瞬で台無しですお祖母様!!
 「物語の始まりね」
 「える~!」
 この赤ん坊がヤバい、で終わった第1話に続き、このお祖母ちゃんがヤバい、で第2話は幕を閉じ、一昔前の《スーパー戦隊》ぽいというか、とにかく〔敵・バトル・ヒーロー〕の3点セットをハイテンションとハイテンポで見せていった第1話に対して、基本的な状況を作って落ち着ける為の第2話、となりました。
 もっとさくさく、変身へのルートを突き進んでいくのかと思っていたましろは、今回時点では、異世界からの来訪者を我が家に居候しているヒーローと受け入れるまでに留まり、友情を芽生えさせつつ“弱さの理解者”にして守られ系ヒロインの立場に終始しましたが、今後、そんなまひろの転換がどう描かれるのかは、楽しみです。
 一つ良かったのは、ましろを安易に“赤ん坊係”にせずに、むしろ小さい弟の面倒を見た経験のあるソラの方が慣れている、としたところ。
 状況の落着に関しては、完全にジョーカーであるお祖母ちゃんに任せてしまう楽をしましたが、視聴者に対しては堂々とジョーカーです宣言をしているので、都合のいいところだけ前に出てくるとか、不自然に情報を握り潰すとか、ジョーカーキャラ定番の地雷を踏まずに、うまく使ってくれればと期待します。
 次回――ヒーローの証明、それは顔芸……?