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『ウィッチブレイド』ざっくり感想6(完結)

「運命とは、最もふさわしい場所へと、あなたの魂を運ぶのだ」

 第21話「誓」。
 自身に迫る限界を悟った雅音は鷹山に梨穂子を託し、死を前に透明になっていく雅音の姿がじっくりと描かれて、異能バトルアクション物としては及第点とは言いづらい作品ですが、この終盤、主人公の心情の掘り下げはなかなか見せてきます。
 雅音を救う方法が無いかと導示のラボに向かった鷹山はそこで、シャイニングウィッチブレイドに反応してアイウェポンが異常な動作を起こしている事を知り、かつての部下たちとその対策に追われる事に。
 強引に同行した斗沢は、ジャーナリストとして胸に持ち続けていた正義感をぶつける役回りとなり、ウィッチブレイドが「運命」や「宿命」の具現である事がより明確に。
 雅音との協力関係が確立して以降は、割と胡散臭さが抜けてスッキリした斗沢ですが、和銅さんを破滅させるのは、斗沢の仕事になるのか……?
 (あんたは私を、殺す……私が死んでも、あんたは残る)
 まりあが全てを手に入れる為の“力”を求める一方、その力を自ら捨てる事が不可能だと思い知らされた雅音は、据わった瞳でウィッチブレイドを睨みつける。
 (私は死ぬ。だけどあんたも連れて行く。一緒に……地獄まで)
 迫り来る死の恐怖に怯え、生の可能性にあがきもがいた末に、雅音が真に戦う相手、打ち倒すべきものを見定める、この流れは好み。
 「ちきしょう、ボケやがる……おし、もう一枚!」
 間接的に示される涙と共に斗沢の撮った写真が印象的に示されて、演出も気合いの乗った一本でした。

 第22話「告」。
 「鷹山がリコの父親だったの」
 「マジかよ?!」
 「安心でしょ」
 あ、あ、あ、安心かな……?!
 なし崩し的に許された感の出ている鷹山、エクスコン流出とその被害に関しては、震災関連の特別法によりお咎め無しとされましたが、そもそもその震災に関わっているし、バレたら後ろに手が回りそうな事は他にも色々やっていそうだし、人型の生き物に対して躊躇無く銃を撃てすぎだしで、今作世界の法倫理がどうなっているかわかりませんが、導示を巡る今後の情勢次第では、普通に、懲役10年とか有りそうなのですが……。
 後、いきなりこの情報の飛び込んできた斗沢からすると、「知っていたにせよ知らなかったにせよ、実子を6年間放置してぬけぬけと大会社の役員をしていた男」って、震災関連の事情を鑑みた上でもなお、安心と正反対なのでは……?!
 ここ数話、和銅さんが醜態を曝すほどに相対的に鷹山の株価が上昇するトリックが用いられているのですが、その鷹山と並べると、最近すっかり落ち着いてしまった斗沢が真っ当に見えてくるマジック(笑)
 斗沢に関しては、穴を埋める為に飢えを満たそうとするギラギラした部分が急に削られた感じはあるのですが……10話台前半に、玲奈-梨穂子-雅音-鷹山のラインに焦点を当てた事で、手が回りきらなくなった感はあり(一応、第16話が現在地への導線になってはおりますが)。
 意を決して梨穂子に別れが近い事を告げる雅音だが、和銅の繰り出したアイウェポンがその身に迫り、ウィッチブレイドを巡る戦いはいよいよ佳境へ――。

 第23話「乱」
 海も泳げるアイウェポン。
 最後はやはり、合体巨大化してほしいところですが……無理……か?
 「瀬川! おまえまさか最初から鷹山のスパイだったのか?!」
 「いえ、今乗り換えただけです」
 「あいつはああいう奴だ」
 ここ数話、和銅に黙々と従っており(たまに煽っていましたが)、さすがにちょっと痛い目を見る可能性も出てきたかなーと思いもしましたが、なんか、泳ぎきったぞ、瀬川(笑)
 は虫類顔は狙ったデザインでしょうが、なかなか印象深いキャラクターになりました。
 雅音に限界が迫る中、東京には3800の暴走アイ・ウェポンが迫り、ウィッチ・ブレイドを巡って起きた巨大災厄を土台に始まった物語が、再びウィッチ・ブレイドを巡る巨大災厄でクライマックスを迎えるのは綺麗な構造となり、大体、導示が悪い。
 それが何かを成し遂げる為に必要な力だと信じて(「子供が玩具を欲しがる」のと同じニュアンスだと示唆あり)ウィッチブレイドを手に入れようとするまりあ……は、折角モデルチェンジしてファーザーを抹殺したのに、その後、待ちの姿勢になってしまった事で存在感が薄れてしまったのは、残念。
 2クールアニメとしては使い切れなかったキャラクターの存在がちらほら見える今作ですが、雑居ビル組では、日常賑やかしに終始したナォミさんが、自ら筮竹を叩き割ってみせたのは、最終回直前にとても良かったです。
 今作全体の中でも、ツボに刺さったシーン。

 第24話「光」。
 最終回は久方ぶりの前期OPとなり、砂浜ではしゃぐ梨穂子のイメージ映像にはやはり《平成ライダー》風味というか、これは長石多可男だな、と(笑)
 東京を舞台にウィッチ雅音と暴走アイ・ウェポン軍団との戦いが始まり、夜戦の中に輝く光源(最終的な誘蛾灯)であり、雅音と梨穂子の「約束」の場所として、最後の最後で東京タワーが効いたのは、上手かったところ。
 戦闘データを取ろうと現場に近づきすぎた末に、アイ・ウェポンにくしゃっと潰されて始末の付けられた西田の最期は、ちょっと富野作品ぽい(笑)
 (ママか……。……もしかしてあなたたちも……。……そうね。……それもいいかもね)
 まりあ率いる“娘たち”も壊滅し、タワーに群がる数百のアイ・ウェポンを見つめながら雅音はウィッチ・ブレイドの力を解放し――鷹山と梨穂子の目の前で、ウィッチ雅音、アイ・ウェポン軍団、そして東京タワーが光に包まれて消滅。それを見届けた梨穂子の元には第16話で拾った貝殻が届く……と、ラストは少し幻想的でふわっとした着地となり、生者も死者も等しく胸に抱くグレート・マザー的概念として世界に溶けた、といった感。
 そしてそれはそもそも、闘争を求めるウィッチ・ブレイドが持つ、もう一つの面であった(その二面性こそがグレート・マザーであり)のかな、と。
 序盤は、名有りキャラの何人が生き残る事が出来るのか……と思って見ていた今作、最終的には、主人公+「死なないといけないキャラ」だけが退場する、という形に落ち着きましたが、それ故にクローン・ブレイド装着者などは「死なないといけない」箱にさっくりと収められて「救済」の要素が描けなかった面はあり、雅音も肉体の死を乗り越える事は出来ず、「摂理を乗り越えはできないが、一発ぶん殴って道を曲げる事ぐらいはできる」といったバランスでありましょうか。
 そこで主人公が自発的に一発ぶん殴りに行って自らの誓いを果たしたのは、良かったところです。
 最終回、児童福祉局の人・警部・編集長・玲奈(イメージ)、とオールキャストへの意識が見えただけに、出来れば船長も出して欲しかった(笑)
 まあ出すと、逃げようが無いか鷹山の出番を奪うかの二択だったので……ラストシーン、鷹山の代わりに船長と犬が梨穂子に寄り添う事になってしまいますね!
 さすがにそれは、鷹山に酷いと私でも思いました。
 ……特別、鷹山が嫌いなわけではないのですが、なんというか「小山力也ボイスに騙されないぞ」という気持ちが、必要以上に身構えさせます(笑)
 そういう意味ではこの最終回ちゃんと、「父親」の感情を鷹山が見せる意識があったのは良かったな、と。
 主体がそちらに行った関係で、終盤の斗沢がスッキリしすぎて月並みなポジションに収まってしまったのは割を食ったかなと思うのですが(取捨選択としては正解だったと思いますが)、片付けるものは大体片付けた最終回、一つ惜しいところがあるとすれば、斗沢に一枚、写真を撮るシーンはあげて欲しかったな、とは。
 まあ、第21話のラストでそれはやった、という扱いだったのかもですが、斗沢にはヘリに乗り込むよりも、カメラ構えて欲しかったのはあり。
 ああ後もう一つ、アイ・ウェポンの合体巨大化が無かったのが心残りといえば心残りで、それやれば、明らかに意識していたであろう怪獣特撮が出来たわけですが、まりあの存在感が更に薄く……いや待って、あおいとあさぎを取りこんだまりあがコアになって合体遺伝子獣ネオまりあイ・ウェポン(お腹のところにファーザーの顔が出てくる)になれば…………この辺りにします。
 それから今気付いたのですが、男性ヒーローがラストにエターナル・ヒーロー化する(どこかへ「去って行く」)エンディングの、女性版が今作におけるグレート・マザー化である、のか。
 必ずしも消滅(遍在)エンドが好きなわけではないですが、「母」と「変身ヒーロー」、二つのテーゼが繋がって、個人的には、ある程度スッキリ。
 出来として、良い部分とそうでもない部分のムラが大きく、割り切った作りも目立つ作品でしたが、最終盤の展開は引き込まれましたし、最近インプットが偏り気味だったり、一つの物語の“終わり”までを見る機会が減っていた事もあり、あまり触れていなかった媒体(アニメーション)で、コンパクト(2クール)にまとまった作品を最後まで見る、のは脳に良い刺激となって、お薦めして下さった橘まことさん、ありがとうございました!