東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

だいこんらん

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』感想・第36話

◆ドン36話「イヌイヌがっせん」◆ (監督:田崎竜太 脚本:井上敏樹
 会社でもみほちゃんの事ばかりを考え、上司にさえ怒鳴り散らす雉野が喫茶どんぶらに呼び出されると、そこに待っていたのは「雉野つよし様をはげます会」。
 雉野の機嫌を取ろうと懸命に取り繕ってねぎらうはるかと猿原だが、家庭の話題を出して虎の尾を踏んでしまうと、やにわに立ち上がった雉野は虚ろな表情でどんぶらを去って行き、「お供があれでは心許ない」と、桃鬼猿はその後を追う事に。
 妻のあるサラリーマンが色々あって落ち込んでいると言い出したら、家庭の話を持ち出すのは不用意なのでは、の発想が出てこないのは、女子高生と 社会不適格者 風流人ゆえでありましょうか。
 とぼとぼ歩く途中、犬塚の釈放を知った雉野は、僕の報奨金はどうなるの?! じゃなかった、二度と社会復帰できないようにちゃんと東京湾に沈めておけば良かった! と憤ると、通りすがりのネコ塚を目にして後を追い、尾行そして尾行。
 またどこかで見たような食堂に入り込んだネコ塚は、料理に満足せずに自ら厨房に足を運び(そこはかとなくコピー元の性質を残している、ないし影響を受ける事を裏打ち)、唐揚げや野菜炒めを作っては、居並ぶ客、そして店内を覗き込んでいた雉野に強制的に料理を食べさせていき、失意の雉野つよし、焼きそばで窒息死の危機! に助けに入ったのはタロウ。
 「……不味い。あんた、腕が落ちたな」
 その隙に店外に逃げ出した雉野は、みほ/夏美の姿を目にし、ソノニは犬塚の獣人化を目撃し、地獄の焼きそばパーティから逃げ出したはるかは、芝居の練習をしていた夏美と接触
 『美女と野獣』の野獣を演じたい「売れない劇団員」を名乗る夏美の前に、次々とお金持ちのパトロンが現れる井上敏樹好みのぶっ飛び系の描写が続き、ツルの獣人が悪さをしていたのか、元来の倉持夏美がこういう人なのか、飛躍がありすぎて現時点ではいまいち判然としない(どちらに描きたいのかちょっと見えてこない)のですが、ハードボイルド気取りの男と、ファムファタール気取りの女と思うと、似合いのカップルであったのか……?
 ジロウが、地元野菜のパワーで急速に回復していた頃、夏美の前にソノニとソノザが立ちはだかり、獣人と人間界を繋ぐ扉の場所を聞き出そうとすると、戦闘開始。
 画面の上下を潰し、横長の画面比を作って決闘シーンをパロディするのはよくある見せ方ですが、更にその上下を青い炎であぶって“女の戦い”みたいに見せたのはもう一つ面白く感じず、先がまだハッキリしないので、とりあえず演出でそれらしくあおっておけ、といった気配も感じます。
 ソノニと一当たりした後、またも大ジャンプでその場を離れた鶴野夏美は、今度はタロウと遭遇。
 「聞きたい事がある。雉野つよしは、おまえを「みほちゃん」と呼んだ。どういう事だ? おまえは、雉野の奥さんなのか」
 「みほは夏美の夢だ」
 「夢?」
 「前に言ったろう。ツルの獣人は、物語を紡ぐと」
 そこにネコ塚が通りすがり、不可殺の獣人だが、コピー元が眠りの森から人間界に戻れれば倒すことは可能、と情報追加。
 ネコ塚はタロウへと襲いかかり、「遊んでみるか」とツルも参戦し、正体を現したツルの獣人は頭部デザインがとんがり頭の他は、特に見た目から女性形という事もなく、雉野と犬塚の死相がますます濃くなっていきます。
 「桃井タロウ! おまえはこんな奴らに倒されるべき、男ではない!」
 何故かそこにソノザが乱入するとドンモモに加勢し、
 「ソノザ……なんだ今の台詞は?! ソノイじゃないのか?!」
 「今のはソノイからの伝言だ」
 これ以上エンカウントによって友好度を上げることなく、冷たく研ぎ澄まされた宿敵の関係で居たいソノイによりメッセンジャーにされたソノザだったが、渡されたメモの文言が難しくて、獣人へ啖呵を切る事には失敗。
 とにもかくにも2対2の戦いとなると獣人は撤収するが、その戦いを見つめていたサイレン男(食堂から繰り返し登場するのですが、目撃者として不可解なだけで面白くは感じられず)が相次ぐ緊急事態へのストレスから救急鬼へと変貌し、ドンブラ招集。
 もしかしてこれで、森から犬塚召喚される……?
 と思ったらドンブラスターはネコ塚の元に現れ、結構、適当な精度でした(笑)
 一度かけたら離さない割にアバターチェンジの対象についてはアバウトなドン家の呪いによりイヌブラザーとなったネコ塚が戦場に到着すると突然、「お供たち、名乗るぞ」とドンモモが宣言し……今更ドンブラザーズで、劇的に持ち込まれるチーム名乗りとかあまり期待はしていませんでしたが、それにしてもこの札を唐突に切って、というよりも「捨てて」、正規のイヌが居ないところでフル名乗りをやってしまいます&イヌのところにノイズが入ります、は、特に面白くないを通り越して悪ふざけ感。
 この手の「敢えてやる」は作り手サイドの自己満足に陥りがちですが、本当に、「敢えてやる」だけの面白さはあったのか……は個人的には疑問であり、「《スーパー戦隊》の様式としての“名乗り”に徹底してこだわる(事で“戦隊の模倣”を成立させる)一方、名乗りの形そのものに多彩な崩しと変化を入れる事で、“型破り”を示していた」『ゼンカイ』を継承した手法も二番煎じとなり、良くも悪くも『ゼンカイ』がその手法にこだわる点を作風に昇華していた(にも拘わらず終盤、“模倣”の要素が消化されなかったのが未だに『ゼンカイ』についての心残りなわけですが)のに対して、今作のこれはどうにも、捨て札を見せつける為の露悪的側面が強く出てしまったなと。
 原典主題歌のフレーズをひたすら叫びまくる救急鬼も内輪ネタの掛け算になってしまっている感が強く、今作の抱え持つ危ういバランスが、個人的にはアウトの方に転がる見せ方であり、ところどころのカメラの回転なども含めて、全体的に演出が空回りとなった印象(後々、あれはそういう事だったか……という場面は出てくるかもですが)。
 復活ジロウが駆けつけるも、救急鬼の放ったファイヤーに取り囲まれて苦しむドンブラザーズだが、ドンモモがゴールデンモモタロウからの二段階アバターチェンジで祭の王者に化身すると炎の輪を翼の旋風で吹き飛ばし、派手な射撃から「桃源郷を見せてやる」で、悪鬼退散。
 ……「おまえの緊急事態はここからだ」は面白かったです(笑)
 巨大化した救急鬼はグランド鬼ライナーと化し、烈車型の鬼とトラドラオニタイジンが激突。
 「見せてやろう、極みの力」
 車両部分を破壊したオニタイジンが、御神輿フェニックスを召喚してパーツ入れ替え変形を行う事によりトラドラオニタイジン極が誕生すると、四速歩行のビクトリーフォームに変形した救急鬼ライナーを銀河統一ドンブラファンタジア極による一斉レーザー放射で焼き尽くし、一人はコピーでも究極合体! というのも、セオリー外しの狙いが“戦隊としての面白さ”から脱線しすぎて横転してしまった感じで、あまり面白くは思えませんでした。
 究極大勝利の後、戦場から離脱したネコ塚の前には何故か犬塚が現れると、サングラスを取り返してアバターチェンジ。
 「俺はこの世に……俺だけでいい」
 一瞬の交錯でネコ獣人を撃破した犬塚はその場を立ち去っていき、迷いの森から如何に脱出したのかについては全く語られず……大丈夫ですか?! ちゃんと、説明されるんですか?!(井上脚本は時々、そういうところ吹っ飛ばしたまま進みますからね……)。
 今後の布石もあるのでしょうが、これならドン家の呪いで犬塚が迷いの森から強制召喚脱出して、→ 名乗り → オニタイジン極 → ネコ塚撃破、としてくれた方がスッキリしたかな、という展開でありました。
 偶然に次ぐ偶然の出会いは毎度の事とはいえ、それが“都合の良さを越える面白さ”として跳ねきらず、ここ数話の濃厚な面白さと比べると、ちょっと息切れ、という感じのエピソードでしたが、魔性を垣間見せる夏美・ドンモモを攻撃するツル獣人、とこれまでヒロイン街道を爆走していたツルの女にネガティブキャンペーンが発生した結果、『ドンブラ』の真ヒロイン(みほちゃん)は幻想の中にしか居ない! のが、見ている側にも突き刺さってくる事に(笑)
 その幻想が、「つよしの理想」ではなく「夏美の夢」なのが一ひねりでありますが、夏美の事を恋人として理解していたつもりの犬塚翼に向けて跳ね返ってくる「……だが……みほは居ない! ……存在しないんだ。……元々な」の刃も鋭く、犬塚が真実だと思っている倉持夏美の姿もまた、ちょっとずつ違う景色の一つに過ぎない、のは『ドンブラ』的であり。
 次回――年の瀬も近づく中、いよいよテコ入れ幹部が登場し、なれあいを断ち切れ!
 そう、岡本太郎も言っていた。