『人造人間キカイダー』感想・第29話
◆第29話「カイメングリーンは三度甦る」◆ (監督:永野靖忠 脚本:長坂秀佳)
三部作という事で、今回もここまでのあらすじが説明され、
ナレーション「ジローの愛を確かめようとしたミツ子の行為が、マサルを危機へと追いやったのだ」
そ、そうでしたっけ……?!
ミツ子がマサルよりもジローを優先したのは確かですが、「マサルを危機へと追いやった」のはむしろ、その光景を面白おかしく語り聞かせて、純真な小学生の心を踏みにじった半平だったのでは(笑)
そこを明言してしまうと半平に関する帳尻合わせにも限度が生じるという事だったのか流れ弾でミツ子さんが背後から撃たれていた頃、東京までマサルを追っていった海綿怪紳士、蝶ネクタイ・手袋・ハンカチが緑色なのがお洒落。
海綿紳士に追われるマサルが逃げ込んだ交番の警官もアンドロイドマンの変装で、追い詰められたマサルは、デスクライトを利用して、アンドロイドマンを惨殺。
姉さんにも……! ジロウにも……! もう、頼らない……! 僕は一人で、ダークの野郎どもを見殺しにしてやる……!!
マサルの中の光明寺流忍者の血が覚醒を始めていた頃、マサルを探すジローとミツ子は都心部の旧光明寺家に辿り着いており、ナレーションに引っ張られて秋波を送り出すミツ子さんと二人きりで、なんだかジロー、気まずい。
「お父様……女が好きな人の事を、弟以上に心配してしまうのは……いけない事なの?」
ミツ子の脳は熱暴走を始め、光明寺は実の息子と知らぬままマサルを救い、マサルは通りすがりのお嬢様に助けられて海綿紳士を振り切り、家出少年と勘違いされる事に。
登下校に車で送り迎えされる良家のお嬢様(演じるのは、同期の『超人バロム・1』で序盤のヒロイン役だった斎藤浩子さん)は、「大人はわかってくれない」と運転手付きで家出を宣言してマサルを振り回し、高原で青春ダッシュを決める二人だが、そこに現れるお邪魔虫。
しつこくしぶとい海綿グリーンに二人は追われ、途中で転んだ少女をちゃんと助けたマサルくん、偉い。
君の父親はその状況で、平然と一人で逃げたからな!
海綿グリーンの操るサボテンに二人が囚われたところでギターが響き、雄峰をバックにサイドカーで走ってくるジローは地方ロケならではの画で格好いいのですが、今作これまでの実績から、牧草地っぽく見えるけどサイドカーで走り回って大丈夫な場所なのかな……? と、不安になります。
ジローの大暴れによって海綿部隊は逃走し、特にマサルくんのメンタルケアをしないままチェンジして走り去ったキカイダーと、場所を変えて湖畔で激突。
キカイダーの飛び蹴りによりまたもバラバラになった海綿は姿を消し、ジローは勿論、マサルくんを見失っていた。
マサルを探し、精進レークホテルで聞き込みをするジローだが、お嬢様をパトロンにしてダークと全ての人造人間を鉄くずに戻してやると野心に燃えるマサルとはすれ違い。
だがお嬢様はそろそろ、家出ごっこに飽きてきていた。
「あんたの住んでた昔の家、行きましょ今から」
「子供の世界を探すんじゃなかったのか?」
「それは明日からの話」
好き放題に振る舞うお嬢様の言動が今作ここまでには無かったテイストで面白いアクセントになっていますが、運転手はいつの間にやら海綿紳士にすり替わっており、運転手さん、物凄く今回の被害者。
再び危機に陥るマサルと少女だが、半平が絡んできて忍法・笑劇時空が発生した隙に逃げ出し……脱ぎ捨てられた赤い靴の中から、良心回路の設計図を発見する半平。
今回凄いのは、良心回路の設計図を巡る三部作だった筈なのに、紆余曲折の末にお嬢様の足下に辿り着いていた設計図が、ここまで全くサスペンスの材料として機能していない事。
一応、ジローの抱えるテーゼの掘り下げには使われているものの、扱いとしては、いわゆるマクガフィン(登場人物の動機付けなどに用いられ、物語を進行するのに重要な役割を果たすが、それそのものには意味が薄く、他のものと置き換え可能な場合もある作劇上の小道具)に落ち着き、今回はその機能が「設計図」から「マサル」にスライドした事で物語上の役割を終えていた図面は、海綿の攻撃で炎上。
元光明寺家で全員が合流すると、なんかまた凄い所(木の上)に立っているジローがギターを奏で、不死身の海綿グリーンとこの3話で5回目の激突!
悪魔の笛に、炎の輪に巻かれるスペクタクルも加えて危機に陥るジローだったが、火勢が勢いを増すと笛の音をかき消した事で、スイッチオン。
仕切り直し早々の回転アタックからマウントで殴りつけられ、大車輪投げによりバラバラになった海綿グリーンは、そのままの状態でオールレンジ攻撃を仕掛けるが、デンジエンドを受けるとあっさりと絶命し、どうやら、合体→破片→一撃死、のアーマー製だった模様。
3話連続の登場にして、満を持してのメイン回のサブタイトルも格好良かったのですが、実にざっくりした最期となりました。
「もし僕の良心回路が完全なのものになったら、僕は人間以上の機械になってしまう。僕は少しでも人間に近いところにいたいんだ」
完全なる精神=人よりも神に近い存在である事がジローの口から明確に語られ、やはりこの物語で一番の危険人物は、神の象りである人の身を以てして、人の象りである人造人間を神に近づく存在にしようとする、光明寺博士ではないのか(まあ、次回作時空では、既に作ってしまっていた事が明らかになり……)。
大団円の空気を出して笑顔で近づいてきても、僕のメンタルはズタズタなんだぞ! と姉とジローの手を撥ね付けたマサルくんは、さあ、一緒に大人たちの世界から抜けだそう! とお嬢様との逃避行を望むが、そのお嬢様は既に父親と連絡をつけており、所詮は、気まぐれに弄ばれただけに過ぎないのだと思い知らされて、更なるトラウマを植え付けられるのであった……。
青春のはしかを体験したマサルくんは姉の胸に飛び込み、光明寺博士を探す、戦いの日々は続く!