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せんてんのこい

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』感想・第35話

◆ドン35話「おりがみのうた」◆ (監督:田崎竜太 脚本:井上敏樹

 ――「我ら役者は影法師、皆様がたのお目がもし、お気に召さずばただ夢を、見たと思ってお許しを」
 (『真夏の夜の夢』/シェイクスピア

 前回までのあらすじ担当が雉野、な開幕早々の右フックで、はぁ~、スッキリスッキリ。
 「いちいち文句を言うな!! いつもお前が正しいわけじゃないんだ!!」
 「目上の者を呼び捨てにするな!!」
 「お前は金もないのになんでランチを食べてるんだ! また俳句で払うのか! それが人として正しい生き方なのか!」
 犬塚翼を警察送りにはしたものの、なにやら情緒不安定な雉野は発作的に桃鬼猿を立て続けに怒鳴りつけ、猿原は、結構なダメージを受けていた。
 (一番長かったなぁ……私への批判が)
 我に返った雉野がどんんぶらをそそくさと立ち去った頃、警察署では犬塚の取り調べが行われており……
 (イケメン……指名手配に松竹梅があるなら、これは――松ね)
 ゆり子おばさんは凄くダメな感じに進化しつつ、誘拐された回のネタを繰り返す事により出番が少ないなりにキャラクターの連続性が保たれており、展開に多少の飛躍があっても、人物が繋がっていれば物語はある程度まで飲み込んでいけるのがテクニック。
 夏美の行方について問われた犬塚が、その所在を警察に告げていた頃、みほを失い精神の安定を欠く雉野は、みほ/夏美とばったり遭遇。雉野の事を全く覚えていない夏美に強引に迫っていたところを通りすがりの警官に取り押さえられ、1名様、留置場入ります。
 「何故おまえが?!」
 ……どうして、指名手配犯と一緒の牢に入れるのか(笑)
 警察の雑な仕事はともかく、これにより強制的に話し合いの場が持たれる事となり、「次に出会ったらどうなるのか」を真っ正面から即座にねじ込んでくるのが腕力。
 「俺を売った報奨金はどうした? もう貰ったのか」
 「別に、お金が目当てじゃない! 僕は……みほちゃんが……」
 「わかっている! ……恨んではいない。おまえの気持ちも、わかるしな」
 1年越しの再開にヒートアップしてしまったものの、さすがに自分のやり方にも難があった自覚は出てきたのか、殊勝な犬塚の態度に、雉野もぎこちないながら若干の軟化を見せ……
 「……半分……あげましょうか、報奨金」
 が出てくるのもまた雉野の素と思われるのがまた、求める何かの為なら一線を越えてくる人間性の恐ろしさを引き立てます。
 「いや……俺はいい。全部好きに使ってくれ」
 やや間の抜けた調子のBGMと共に、ひとまず隣に腰を下ろしかける雉野だが…………気付いてしまった。
 「あ! もしかして、あれですか?! あの……みほちゃんの代わりに、お金で我慢しろっていう!」
 単に怒る、とか単に叫ぶ、とか以上に、ふとした拍子にスイッチが入る、ある種の躁鬱の転換のような不安定ぶりが見事に表現されていて、前回ラストからの、雉野さんの振り幅が凄い(笑)
 思えば雉野にとってみほちゃんは、自身のありようを肯定してくれる存在――今作のメカニズムでいえば、祀り上げを行ってくれる存在――であり、その喪失により発現するカオスというのは、世界に祟りを為す、今作における“悪”概念の象徴といえるのかもしれません。
 「違う!」
 「ふざけるな! みほちゃんを返せぇ!」
 あっという間に火種に着火すると、それは両者の間で吹き上がる炎と化して留置場内での取っ組み合いに発展し、他人と積極的に争いそうにはとても見えなかった雉野だけに、改めてその変貌ぶりが際立ちます。
 「みほちゃんは居る!」
 「居ないんだ! わかってくれ!」
 「居ますよね?!」
 止めに入った警官も巻き込んだ一騒動の後、夏美の存在が確認された犬塚は、警察から思わぬ話を聞かされる――
 「最近似たような事件が多発していてね。行方不明になった者が、戻ってくると、まるで人が違っている、というような」
 「人が……違う……」
 「そう、獣人になるの」
 ゆり子が犬塚の取り調べに関わっていたのは、誘拐事件の際に獣人と接触していた為であり、狭山刑事の一件などから獣人の存在を把握し、その真相を突き止めようとしていた警察は、指名手配を取り消す代わりに獣人の情報を得る為に夏美を観察してほしい、と犬塚に捜査への協力を要請する。
 「いいだろう。望むところだ」
 元より夏美に起こった異変を調べる気だった犬塚が、暴力的・気まま・折り紙、といった獣人関連の情報を得て釈放される事になる一方、ソノザは充電&自己修復中だったムラサメを回収し、久々に用いられた傘の、画面への入り方は田崎監督ぽい見せ方。
 「わぁ~、人がいっぱーい。うちの竹藪の雀みたいだぁ」
 不意打ちで上京したルミちゃんは、寒風吹きすさぶコンクリートジャングルの片隅で、わら半紙より薄い都会の人情に埋もれて死にかけていたジロウを発見し、ジロウに対する、繋がっている縁と繋がっていない縁の対比が、大変えぐい。
 ……まあ、処刑発言で最初に縁をぶったぎりに行ったのジロウだったので、自業自得といえば自業自得ではありますが……。
 思えば、何かと自分の活躍をアピールしたがるジロウが、密かにタロウを助けて誰も知らないところで死にかけているのは皮肉な話であり、タロウ同様、荒ジロウの属性は昭和ヒーローに近い事も窺えます。
 「この世は舞台。人はみな役者」
 夏美は屋外ステージでシェイクスピアの『お気に召すまま』の一節を演じており、あくまで個人の漠然とした印象なのですが、今作の土台というか基盤というか、作品コンセプトにおけるイメージソース――作品の道筋の指標、とでもいいましょうか――の一つみたいに捉えていたので、劇中に直接盛り込んできたのはやや驚きましたが、そこに戻ってくる犬(同棲再開直後に外泊……?!)。
 修羅場がフルスロットルで四輪駆動を続ける中、犬塚は“夏美”に、あの日の続きとして指輪を渡し、歓喜の抱擁をかわす二人を遠目に見つめるソノニの姿が横から画面に入ってきて、凄く久々に、悪役っぽい出方!!(笑)
 「おまえは愛が知りたいと言っていたが、あの男に興味があるのか?」
 ソノイも同様の悪役ムーヴを見せ、ひとまず、衣装・髪・瞳の色は、今回も元通り。
 「……ああ。あの男は、茨の道を歩んでいる。いずれ、傷だらけになるだろう。そして、愛という名の、血を流す」
 ソノニの不吉な予言を知る由もなく、犬塚と夏美はひたすらちいちゃいちゃし、夕食を終えた犬塚は、差し入れを持って囚人と面会。
 「出来ればあんたとは会いたくないんだが。すぐに面会は終わり、意味が無いからな」
 へそを曲げた囚人に平謝りの犬塚は、獣人とは何か、についてを問い、囚人が守護人として起居している独房はもともと獣人と人間の世界を繋ぐ扉であり、「ドン・モモタロウを育てた罪」によりその扉を封印している、と明言。
 「ドン・モモタロウを、あんたが?」
 犬塚の脳裏には、高笑いをしながら身内を撃つドンモモの記憶がまざまざと甦り、よりによって何故フレンドリーファイアを繰り返していた序盤ばかり? と思ったのですが、ドンモモ=桃井タロウとは知らない上に、タロウともそこまでの関わりが無い犬塚の立場からすると、出会った当初のインパクトが未だ根強いのか、と納得。
 またここで、おじいさんとしては育てたのは「桃井タロウ」だが、罪状としては「ドン・モモタロウを育てた罪」なので、犬塚にドン・モモタロウ=桃井タロウの情報が伝わらないのは、丁寧な台詞回し。
 「あんた、育て方を間違えたようだな」
 「もし獣人が人間界に現れたとしたら、獣人は、新しい扉を開いたという事になる」
 「それは……どこだ?!」
 私は別に節穴ではない! 囚人システムに不備はない! と力強く宣言した囚人は答を与えぬまま面会を打ち切り、脱力した犬塚が帰宅すると部屋には夏美の姿はなく、机の上に残されていたのは――折り紙のツル。
 一方、分厚い参考書を抱えながら、青春とは何か? について激しく悩んでいた青年が、赤い鳥類顔で学帽のような頭飾りを付けた超獣鬼へと変貌。
 高速鬼も電磁鬼も既に使っており、他に「青春」に強くこだわるモチーフというとどれになるのか……と思ったのですが、「青春」をシリーズを繋ぐ一つの主題に置いていた80年代曽田戦隊の集大成といえる『ライブマン』で納得。
 青春爆発ファイヤー(『ライブマン』、作品見る前は主題歌のこのフレーズが強力だったのですが、いざ作品を見てみると、このフレーズを忘れるぐらいの超濃密な内容だったりして凄まじい)する超獣鬼を前にドンブラ一同勢揃いし、
 「青春スロウ!」
 ってなに……と思ったら、強制砂浜ダッシュ(もどき)から、近い! 爆発近いよ!のコンボ技でした(笑)
 原典『ライブマン』名物を華麗にかわしたドンモモは、「光の速さで片付けてやる!」と御神輿フェニックスを召喚し、

 マシン空間光に乗って アバターチェンジで飛んでくる
 桃と神輿が一つになって マゲに輝くMマーク
 赤い太陽 仮面に燃えて すっくと立ったドン・モモタロウ
 この世に縁を持つ男
 強く優しいドン家の王子
 あれは(あれは!) あれは(あれは!)
 あれは僕らのモモタロウ モモタロウ

 なんか急に『星雲仮面マシンマン』(1984)のイメージが脳裏に浮かんだのですが、発作的なもので意味は特にありません。
 ゴールデンドルフィーンしたドンモモは、唐突な二段階アバターチェンジによりゴールデントッキュウモモ1号となり、トッキュウ1号のスーツに御神輿アーマーを身につけた姿で扇子を展開。
 相変わらず、急に突っ込まれてくる過去作要素でこんなバージョンもあるよ、と見せていた頃、ルミちゃんに甲斐甲斐しく看病されていたジロウにも召喚礼状が届くが、ヒーローとして立ち上がったジロウは、ルミちゃんの抱きつきヒロインムーヴを受けて、ノックダウン!
 「おまえの姑息な技は、通用しない」
 その間に、全くわけのわからない理屈で青春スロウを打ち破った金モモは、青春を乗り過ごした鬼に頭突きからの跳び蹴りをお見舞いすると、元に戻ってカタルシスモモウェイブ。
 「どこだここは? 青春の暗闇? 出せ! 出してくれ!」
 「抱腹絶桃――フェスティバル縁弩」
 見えた、おまえの終着駅。
 巨大化した超獣鬼は、まさかのマゼンダオマージュでハンドガンとエルボーガンを次々繰り出すが、金オニタイジンのオミコシールドがその破壊エネルギーを全て吸収すると増幅反射、からドンブラユートピアが炸裂して、めでたしめでたし。
 元に戻った青年は太陽に向かってダッシュしていき、明日に生きるぜレッツジャンプ!
 一方、戦い終わって夏美を探し求める犬塚は、その夏美が大口開けてアノーニを吸引している衝撃映像を目撃し、アノーニの悲鳴は、「アノーニー!」。
 そこに狭山ネコが乱入すると餌(アノーニ)を巡っての獣人同士の争いが発生し、やはり「夏美」を演じていたに過ぎなかったツルの獣人は、犬塚の姿に気付くと大ジャンプで逃走。残った狭山ネコはアノーニを吸い込み、狭山に躍りかかったイヌブラザーは、アノーニとともに狭山の腹に開いた異空間の中に飲み込まれていき……どことも知れぬ鬱蒼とした森の中で目を覚ました犬塚は、ネコ獣人本来の姿と、アノーニ捕食シーンを目撃。
 薄暗い森の中を彷徨う犬塚はやがて、行く手に次々と現れる折り紙のネコと、植物の蔦によって縛り上げられて懇々と眠る沢山の人間を目にし、ズルリ、ズルリ、とぶら下げられた人間が舞台ならぬ森の上から次々と降ってくるのが完全に死体の見せ方で、幻想的なスキャットも合わせ、極めて気色の悪い童話風ホラーとでもいった悪夢の情景が、本気で嫌な感じ。
 犬塚はそこに、狭山、そして夏美の姿を発見し、夏美を救出しようとして折り紙のネコに妨害されている内に蔦に動きを封じられると、現れた獣人によってネコの折り紙を喉の奥にねじ込まれてしまう。
 (こいつ、俺を、コピー……するのか……)
 これまで鶴野みほの情報だけであった、獣人による人間のコピーが劇中で初めて描写され、犬塚翼の姿を写し取るネコ獣人。
 …………つ、つまり、俺が、ここ数日、いちゃいちゃして、指輪まで渡した夏美は、一皮剥くと、こ、これ、なのか……?! と、衝撃の真実を深く考える間もなく、犬塚翼はがっくりと意識を消失し、確かに、愛という名の血を流す!
 そしてラーメン屋を訪れた犬だけど猫塚は素手でチャーシューを貪り食い、店内でひとしきり暴れると、机に向かって折り紙を折るのであった。
 「にゃ~~お」
 おりがみのもりではネコたちが唄い、犬塚と夏美の運命や如何に……?!
 前回、溜めに溜めた爆弾を破裂させたと思ったら、そこから怒濤の展開で物語に引きずり込まれ、今回も濃厚かつ面白かったです。
 特に、早くも雉野と犬塚を接触させて、今後、硬軟どちらに転がしてもいける筋道を立てておく手腕は、実に鮮やか。
 DONDON修羅場が揺れるあおりを受けて、二話連続ジロウはほぼ寝ているだけだったり、猿はともかく鬼が物語の片隅に追いやられているなどありましたが、ウサギの着ぐるみが火を噴くのは最終クールのお楽しみといった感じでありましょうか。
 次回――人と獣人と脳人と鬼と、桃井タロウが斬るべき因果は、果たして。