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今年三人目のタロウ

人造人間キカイダー』感想・第15-16話

◆第15話「キンイロコウモリ呪いの陰」◆ (監督:北村秀敏 脚本:伊上勝
 冒頭から山岳地帯でアンドロイドマンと戦うキカイダーに襲いかかる、ダークロボット・金色コウモリ!
 地獄大使みたいな頭部をした金色コウモリにより、空中高くから崖下に突き落とされたキカイダーがバラバラに四散したところで性能テストと判明し、いつにない戦闘からの導入、背後に響く不気味なギルの笛の音、は面白い掴みとなりました。
 そして、テスト終了と共にすくっと立ち上がるアンドロイドマン部隊(笑)
 雰囲気出しの為にテスト用キカイダーに倒されたフリをしていただけだったアンドロイドマンが後片付けをしていると、墓参りに向かうのに何故かチャップリンコスプレの半平(出番ここだけ)が近隣を通りすがり、今日も今日とて車の故障で立ち往生。
 半平のキャラクター性も含めて、この“お約束”が“許せる”ものになっているのは今作の強みといえますが、ダークのアジトから作戦ファイルを盗み出した謎の男が、半平がキカイダー(テスト用)の生首にビックリ仰天している内にその車を盗んで走り出し、アンドロイドマンに前後を囲まれたところに響くギターの音色。
 男を助けて戦うジローの立ち回りにナレーションを重ねて、ここまでの『キカイダー』、の基本事項をおさらいする趣向で、「世界征服の野望に燃える秘密結社ダーク」は「世界各国の優秀な科学者を集めて、恐るべき、無敵のアンドロイドを次々と作らせていた」と、オーソドックスもオーソドックスですが、ダークの活動目的と行動指針について、劇中で初めて明言。
 ナレーション「ギルの電子音から逃れた時、ジローは、いまひとつの姿になれる。それは正義の戦士・人造人間キカイダーだ!」
 結構な勢いで斜面を転がり落ちたジローは、チェンジ・スイッチオン! 1・2・3!
 ナレーション「人造人間キカイダーの目的は、ダークと戦う事。そして、いまひとつ、彼の生みの親ともいうべき、光明寺博士の行方を探すことなのだ。その光明寺博士は――」
 光明寺家の門前をうろついていた。
 どころか、室内に入り込んでいた(笑)
 ナチュラルに《鍵開け》スキルを発揮している光明寺ですが、家の中を見て「長い間人が住んでいない様子だが……」とあるので、1クール目後半ぐらいからミツ子とマサルが暮らしているのは、都心の別邸か何かでありましょうか(光明寺が電話番号を記憶していたし)。
 ミツ子とマサルの逃走劇要素を光明寺博士の捜索要素にすり替えた点については、その場その場の成り行きに都合のいい描写を優先している事もあってか設定の混乱が見受けられますが、家に近づく気配に気付いた光明寺が姿をくらませた事で、親子はまたもニアミス。
 若干、被害妄想の傾向もある(ダークに追われているのは確かなのですが……)光明寺とすれ違いになったミツ子&マサルは、土足の足跡がクッキリと残るほど床にほこりが積もり、何年放置されているのかわからない布団を前に、平然と今夜はここで休もうとのたまい出し、相変わらずヒロイン力を生け贄に捧げてサバイバー力がグングンと上昇していきますが、段々、その皮膚の下で動いているのは、茶色いオイルと鉄の歯車なのではないかと心配になって参りました。
 そしてその夜、光明寺邸に潜り込んできたいまひとりの男――それはジローが助けたダークからの逃亡者にして……
 「タロウ兄さん!」
 森林を防衛する巨人、タローマンである。
 …………じゃなかった。
 山火事に見せかけたダークの陰謀で殺された筈の光明寺家の長男・タロウであった!
 俺の中の内なる声がおまえを邪悪だと言っている、と突然のタロウの訪問を警戒するジローだが、兄との再会を喜ぶミツ子とマサルは、その生還をすっかり信じ切ってしまう。
 光明寺博士に対する人質としてダークに囚われていたと語るタロウの、ジローの顔も立てる大人な対応もあり、タロウが盗み出した計画書を元に新型アンドロイドの破壊工作に同行する事になったジローは、タロウと別行動中に、既に起動していた新型ダークロボットと激突。
 「ダーク破壊部隊、名付けて金色コウモリ!」
 力強い主張の一方、見れば見るほど、アリジゴクなのでは……?と思えて仕方ないのですが(まあ、角か鋏に見える部分を耳だと思えば、顔はコウモリと捉えられなくもないですが)、唯一コウモリ感を出すマントを広げてジローを宙づりにするのは、真下から映すカメラワークもあって、面白いカット。
 チェンジで脱出しようとするジローだが本日2回目のギルの笛が鳴り響き、金色コウモリの殺人テクニックが風を切って唸る! だが――
 ナレーション「勝ちを焦った金色コウモリは、冒してはならないミスをした」
 その風切り音が笛の音をかき消すと、チェンジ成功したジローは宙づりを脱出。自ら囮となってアンドロイドマンを引きつけていたタロウを助けて光明寺邸へと戻るが、その結果、タロウの負傷はジローの不審が原因ではないか、と光明寺姉弟からの信頼を失ってしまう。
 へへっ、しょせん機械への信頼など、肉親の情に比べれば紙っぺらみたいなもんなのさ……と待機状態に入るジローだが、勿論、タロウすなわち金色コウモリの変装であり、二段構えの謀略によりミツ子とマサルの信頼を勝ち得た偽タロウは、ギターの中に隠されたジローの設計図を手にすると、スリープ中のジローから取り出した良心回路をミツ子の前で破壊。
 光明寺博士が苦心して組み込んだこの良心回路が無くなれば、ダークに生まれし者は、ダークに帰る!」
 実際どこまでが脚本ベースかはわかりませんが、ここでこのフレーズが組み込まれるのは如何にも伊上脚本らしい切れ味で、宙返りから正体を現す金色コウモリだが、そこに響くギターの音色。
 なんとジローは万が一に備えてギターの中に偽の設計図を仕込む罠を張っており、偽タロウが取り外したのはスペアの部品に過ぎなかった、と丁々発止の頭脳戦から、両者は改めて激突。
 目つぶし攻撃に苦しむキカイダーだったが、逆転の投げ技から必殺コンボを決め、光明寺一家の絆を利用した卑劣な金色コウモリを葬り去るのであった。
 「卑怯な奴め! ふさわしい最期だ!」
 ジローを傷つけた事を謝罪しようとするミツ子&マサルと、そんな二人もまた傷ついたのだ、と黙って走り去っていくジローの姿が、〔いつもの〕を格好良く活用して、つづく。

◆第16話「女ベニクラゲが三途の川へ招く」◆ (監督:北村秀敏 脚本:長坂秀佳
 「ダーク破壊部隊の女ベニクラゲ! 私は幸せそうなアベックを見ると、我慢できないのよぉ!!」
 ……なんか、凄く駄目そうだぞ。
 劇中初の明確な女性型ダークロボットが出現すると、ジェラシー溶解液を吐き出し、夜景を楽しんでいたカップルを殺戮。
 傘を頭部、触手を首から下に見立て、クラゲモチーフ怪人としてはオーソドックスなデザインですが、傘の模様がダーク怪人名物のつぶらな瞳に見えて仕方ない為にまごう事なきKAWAIIを生み出しており、アンドロイドを世界中に売りさばいた末、最終的にダークがもたらすものは、KAWAIIによる世界平和なのではっ?!
 まあ、声と演技は魔女系なので、総合的には可愛くない、という新機軸を生み出してもいるのですが。
 蛍光灯などの光に反応して凶暴化すると、人間を襲って溶かすミニドククラゲを開発したベニクラゲは、諸外国の軍隊に売りつける為の宣伝活動として、都内のアベックが集まりそうな公園にクラゲを放ち、夜になればアベックは皆殺し! の作戦を立案し、好きにやらせていて本当に大丈夫なのでしょーかプロフェッサー・ギル
 ところが作戦を前にミニクラゲが外部に流出してしまい、その回収の為に水中から飛び出す、網タイツ姿の女性アンドロイドマン軍団。
 以前に、衣装は通常通りながら胸だけ膨らんでいるのがちょっと不気味な女性型アンドロイドマンが登場していましたが、今回は本格的な女性型アンドロイドマンとなり(ちなみに『仮面ライダー』第1話に登場した女性ショッカー戦闘員も網タイツ履いていたので、コスト控えめかつわかりやすいアイコンであったのでしょうか)、声も女性……なのですが、「ギル! ギル!」は録音を使っているらしく明らかに男声なので、凄い違和感(笑)
 一方、死んだ弟の遺志を継いで川の美化運動に励む女性と知り合いになった光明寺は川の汚染源が上流の建物にあると気付くが、それこそがミニドククラゲの生産工場であり、アンドロイドマンに囲まれる危機に、地面に突き刺さる真紅のギター!
 「光明寺博士、おわかりですか?! ジローです! あなたに作っていただいた、ジローです!」
 迫り来る暑苦しい男の意味不明な発言に、光明寺はそそくさとにげだした!!
 ……ええ、うん、まあ、嘘は一つも言っていないのですが……これは、まあ、逃げても仕方ないですかね……後、ジローの顔を見ると、ハッキリしないが第1話における炎上爆発の記憶が刺激されて本能的に危険を感じてしまう、などあるのかもしれません。
 ジローが助けた少年が懐に回収していたミニドククラゲは、蛍光灯を当てると空を飛ぶクラゲ、ぐらいの凄く雑な扱いを受け、ジローの腕の損傷を修理する為、後で謝るから、と少年のラジオを勝手に分解するミツ子さん(笑)
 ジローとミツ子の心の交流がしっとりめに描かれる一方で、少年の心が踵でグリグリと踏みにじられていますが、正義の為なら、ラジオの一つぐらい安い犠牲です。
 その少年は姉(光明寺と知り合った女性)と共に、汚染源に文句を言ってやる! と上流に向かったところをクラゲ一味に襲われるがジローに助けられ、咄嗟のクラゲ耳栓でギルの笛の音を封じるファインプレー。
 ゲストキャラがジローを助ける今作ではちょっと珍しい展開となり、サイドマシーンで河川敷を疾走するキカイダーは、クラゲと水中戦に。煙幕や腕グルグルや触手攻撃などがあった末に、最後はいつものコンボからデンジエンドが炸裂し、ベニクラゲは水中に散るのであった。
 女ベニクラゲは水質汚染が生み出した怪物として処理され、これからは川を綺麗しよう! とゲストキャラの持ち込んだ要素に先行きが示されるのも珍しく、光明寺とゲスト女性の交流も含めて、この後に続くかはわかりませんが、アプローチに変化の見られるエピソードとなりました。
 余談として今回、水兵コスプレで登場した半平の帽子に思い切り「大日本帝国海軍」と書いてあるのが、時代を感じるところ(旧日本軍やナチスがらみのネタは、明らかに70年代の方が緩い)。