『人造人間キカイダー』感想・第14話
◆第14話「大魔神ギンガメが三怪物を呼ぶ」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳)
見所は、2分30秒で4回のデンジエンド!
バカな……4体のダークロボットが、3分もかからずに全滅だと……?!
と、ギルが言ったか言わないか、物語は、空飛ぶ巨大なカメの甲羅が、機動隊を蹴散らしていく場面でスタート。
「ははははは、このギンガメ様に、そんな子供欺しはきかん!」
サブタイトルに仰々しくも“大魔神”と謳われた銀亀が機動隊を蹂躙し、前後の繋がりは全くなく、銀亀スゴいぜ! を示すだけのシーンにしては人数と火薬が投入されていて、けっこう贅沢。
一方、ガソリンスタンドみたいな巨大な看板が立つダークの敷地では、破壊部隊の合同慰霊祭が行われ、十三の棺が並べられていた。
「目覚めよ。勇士たちよ。おまえたちは以前の3倍の力を持って、生まれ変わるのだ」
ギルの言葉と共にキカイダーに木っ端微塵にされたダークロボット達が棺桶の中から次々と甦り、まあロボットなので部品を揃えれば再生可能なのは理屈に叶っているのですが、妙に大げさな儀式仕立てにはどうにもうこにも“呪術”の香りが漂って仕方ありません(笑)
プロフェッサー・ギルは、再び立ち上がる破壊部隊の勇士の姿に一つ一つ頷き、基本は尺埋めなのでしょうが、空気はどんどん父兄参観に。
そして13体の再生ダークロボットが出そろった時、新・破壊部隊を名乗るギンガメ(でべそ)が降り立ち、始まるダークゆるキャラグランプリ。
「ギンガメか! 先輩に対して礼儀を知らねぇ奴だ!」
「俺様がこやつを懲らしめてやる!」
誰が一番KAWAIIか、決めようじゃないか!!
「はははははは……戦え! 戦えぃ! 死ぬまで戦ってみせるのだ! 戦えぃ!」
かくして新旧ダークロボットの壮絶な死闘が始まり、14人のダーク破壊部隊、最後に生き残るのはただ1人。
可愛くなければ生き残れない!
半平がこの戦いを目撃する中、復活怪人たちは次々と銀カメの餌食となっていき、ギルは能力テストにご満悦。生き残ったグリーンマンティス・オレンジアント・ブラックホースの3体はアイメイクの濃い偽光明寺一家へと変身し、ギンガメの指揮の元、キカイダー抹殺計画へと出撃する。
そうとは知らないジローは、幼稚園児の一団を襲う銀カメを阻むと、逃げたカメを追ってサイドマシーンを走らせている途中に光明寺博士と遭遇。だがそれはカマキリの変身した偽光明寺であり、ようやく助けたと思った光明寺の襲撃を受けたところに響き渡る笛の音。
(苦しめ……苦しむがいいジロー。貴様はなまじ、人間の心を持ったばかりに、苦しまなければならん。ダークの人造人間に戻れ。ダークで生まれたものは、ダークに帰るのだ!)
今作における長坂脚本回の特徴の一つとして、笛を吹くギルに結構語らせるという点があるのですが、これによって、笛を吹くギルの姿の映像的インパクトに加え、ギルのキカイダーに対するこだわり、その邪悪な思考のありようを補強しているのは、筆の冴え。
また、今回ナレーションが「プロフェッサー・ギルの吹き鳴らす悪魔の呼び声」と称するように、ギルの語りを補う事により、ギルの笛の音とは外部からの呪詛であると同時に、ジローの内心の悪魔でもある事が強調されて、ただの約束事のピンチ演出、以上の意味を与える事に成功しているのは巧いポイントになっています。
笛に苦しむジローは偽物トライアングルに追い詰められ、BGMが軽快で、ちょっと、楽しそう……(笑)
「最後の仕上げだぁ。必殺・蟻地獄ーー!!」
それぞれ新技を見せるカマキリ・ホース・アリ、の攻撃を次々と受けたジローは遂に地中へと埋められてしまう。
ナレーション「だがジローの体を覆った砂は、同時にギルの笛の音をもカットした!」
……これは、プロフェッサー大激怒案件では。
「来いダーク破壊部隊! まとめて面倒を見るぞ!」
起死回生のチェンジに成功したキカイダーは、光明寺一家の姿を真似た卑劣きわまりないダーク破壊部隊に怒りの反撃開始。銀亀も飛来して4対1の戦いとなるがものともせず、再生ダークロボトリオは、1分の間に3回のデンジエンド!(笑)
「残るはギンガメ、貴様が相手だ!」
「俺はそいつらとは貫禄が違うぞ!」
ちょっと台詞の面白いカメのクロー攻撃に苦しむが宙返りで脱出したキカイダーは、甲羅アタックも全方位バルカンも回避すると、懐に入っての大車輪投げで起き上がれなくなった所に本日4回目のデンジエンドを叩きこみ、大魔神ギンガメは木っ端微塵に吹き飛ぶのであった。
2クール目に入って従来の5倍のパワーを持つ(と主張する)新破壊部隊が登場し、旧破壊部隊を惜しげも無く踏み台に使っての本格的キカイダー抹殺作戦だったのですが、立ち回り次第でいくらでもジローを精神的に追い込む事が出来そうな偽光明寺一家は物量作戦の前振りにしかならず、その数の優位はキカイダーに通用しないまま、特に新技も出ずに〔いつもの×4〕で片付けてしまったのは竜頭蛇尾で残念。
悪魔の笛に苦悩するキカイダーの姿こそ、時に親しい存在にさえ刃を向ける、人間の抱える善悪の二面性そのものである、といった見せ方は面白かっただけに、そこがピークになって後は消化試合になってしまったのが惜しい一篇でした。
次回――今度こそ本当の精神攻撃?!