『仮面ライダーエグゼイド』感想・第41話
◆第41話「Resetされたゲーム!」◆ (監督:山口恭平 脚本:高橋悠也)
絶体絶命の窮地に、スタンド、もとい“クロノスの力”が進化して《リセット》を発動、ハイパー無敵を時空の彼方に葬り去った檀正宗だが、その代償として奪い取った筈のゲーマドライバーが手元から失われており……
「ドライバー手に入れたっていうから来たのに、今になって無理ですとか、おたくの会社どうなってんの?」
「リセットボタンが押されちゃったんですよ、いやははは」
と意味不明だが偉そうな弁解をするも、ジョニー・マキシマとの提携交渉は決裂。
「……海外展開が白紙」
劇場版との接続要素なのでしょうが、そんな事で机を殴って呻かれても、どういう顔で見ればいいのかわかりません(笑)
一つの会社としては大きな話、ゲームの特殊性を含めて『エグゼイド』世界ではそういうもの、と捉えたいとは思っても、2016年時点で「ゲームの海外展開」を敵方の宿願、一大イベントとして扱うのは、説得力を感じるのが難しすぎました。
あと一応、国家機関から危険物扱いされている筈なのですが、その辺り、よくわからない理屈で有耶無耶にされたままなのは、とても残念。
ハイパー無敵を失った永夢らは、打倒クロノスの為にグラファイトの協力を求めようとするが、そこにクロノスが出現。
「君たちをポーズで始末することは容易い。だが今、私はひじょーに機嫌が悪い。徹底的に苦しみながら、死の恐怖を味わえ」
ポピとグラが逃げている間に永夢とパラドはXXに変身して時間を稼ぐがクロノスには手も足も出ず、第41話まで来て、賞味期限を引き延ばした当座のボスキャラが「ただの格下をいたぶる人」になっているのは、辛い。
戦力ヒエラルキーがあまりに曖昧なのはそれはそれで面白くありませんが、顔面ボディが出て以降ぐらいからの今作、戦闘における格上/格下がハッキリしすぎて、勝負のあやがほとんど生まれない(番狂わせ要素としては、レベルドレインぐらい)のは、面白みを感じにくいところ。
《平成ライダー》としてはそこで戦闘に起伏を与える工夫が、フォームチェンジだったりカードスキルだったりしたわけですが、そういった“個体の能力(スキル)差”を“複数ライダーに分割”してしまうと戦闘が一本調子になりやすく、また、同じ演し物を繰り返しても飽きられる以上、基本的には演し物をエスカレートさせていくしかないのは、作っている側としても悩みどころではあるのでしょうが。
なんとか一時撤収に成功し、パラド産の勝利のトロフィーも手に入れた事で、残るバグスターはグラファイトのみ。
飛彩・大我・ニコは、グラファイトを倒すべき敵だと位置づけ、ポピ子とパラドから共闘の申し出を受けたグラファイトもまた、「俺は俺の道を選ぶ」と宣言。
「グラファイトにも、笑顔になってほしいの」
そんなグラファイトにポピ子は自分の基準を押しつけ……
「おまえは俺の仲間だ! これからも、俺と一緒に戦ってくれよ」
パラドは1クール目に、グラファイトを体よく利用して『クロニクル』の人柱に捧げてましたよね……?
まあ、バグスター特性で復活前提だったのかもしれませんが、それを言うと、今回ここでグラファイトを攻略しても、トロフィー入手後にデータから再生可能な筈なので、悲壮感の行き先が不明。
勿論、“今ここに居るグラファイト”は、“今ここに居るグラファイト”でしかなく、パラドがそういう物の見方を出来るようになっている、とは捉えられるのですが、バグスター組の心情はともかく、展開しようとしているドラマ性とバグスターの根幹設定が噛み合っていないような。
「…………さらばだ」
グラファイトがパラドらの前から姿を消す一方、黎斗は永夢と協力しながらリセットに対抗する力を持つ無敵ガシャットを再販しようとし、貴利矢が退職金としていただいてきたプロトガシャットはリセット作用で正宗の元に戻ってしまったとの事ですが、これは、小姫のデータも復元されている……?
ここから先は、それぞれの考え方の違いから、〔グラファイト許さない組(大我・ニコ・飛彩)〕〔バグスター組(パラド・ポッピー)〕〔無敵ガシャット再販組(永夢・黎斗・貴利矢)〕に分かれて進行し、それそれのものは悪くないのですが、片方でシリアスをやると片方を極端にコミカルにする為に再販組が悪ふざけじみてしまい、好みからすると度が過ぎてげんなり。
後、これは個人的な耳の事情なのですが、ほぼ黎斗用の、エレキギターをかき鳴らすような効果音が苦手で、山口監督回は特にそれが連発されがちなのが辛い。
再販組では、文字通りに“命(残機)を削って開発する”といった辺りは今作ならではの表現で面白みがありましたが、永夢先生はその間、映像的にはベッドの上で寝ているだけであり、リセット対策したハイパー無敵を完成する為に“永夢の力”が必要、とは言うのですが、ではその“永夢の力”とは何か?については物語としての集約が一切見られず……そこでテーマやテーゼを組み立てて飛翔を飛翔を目指さなくてどうするのかと思うのですが、2クール目クライマックス(第23話前後)には見えた、そういった意識が感じられずに、積み重ねてきたテーゼが集約されるどころか、曖昧なマジックワードで安易に片付けていってしまうのは、大変残念です。
また例えば正宗には、クリエイターの成果物を横からかっさらっていく「悪徳プロデューサー」的な悪の一面もあると思うのですが、それに対する黎斗の抗う魂が掘り下げられる事もなく、全て「私こそが神だぁぁぁ」にまとめられてしまうのは勿体ないと思うし、そこでもう少し丁寧にやれば、黎斗の行動原理も補強されるし、正宗の悪も特徴付けられるしで一挙両得ではと思うのですが……この辺りは、一人の脚本家に任せてきたデメリットも出ていそうではありましょうか。
夕陽に向けて一人佇むグラファイトがやたら男前モードに入る中、その前に立つ大河と飛彩。
「貴様たちに問う。貴様たちにとって戦いとはなんだ。なんの為にその命を懸ける?」
「バグスターを残らずぶっ潰して、5年前の過去に決着をつける為だ」
「『ライダークロニクル』を終わらせて、人類の未来を守る為だ」
「過去と……未来。背中合わせの志をいだき、共に戦うとは、因果な者たちだ」
「てめぇこそ、ひとりで戦うことになんの意味がある?」
「……貴様たちが過去と未来に意味を見出すように、俺の戦いの意味は、今この瞬間にある。俺は『ドラゴナイトハンターZ』の龍戦士、グラファイト。それが戦う理由だ」
一方、大我&飛彩vsグラファイトの因縁は、上手い事言った風にまとめられ、暴れん坊から戦士の誇りを貫く男に昇格した、限界突破グラファイトとの戦闘開始。
「グラファイト……」
「……あいつ……楽しそうだな」
色々なものを削ぎ落として強引にさっぱりさせた感は否めませんが(基本的な行動目標は、人類全滅じゃー、ですし)、宗教的笑顔の押しつけに傾きかけていたポピ子とパラドが戦いを見つめて、笑顔の形は存在それぞれなのだ、と気付いてくれたのは良かった点。
CRで黎斗が死と再生を繰り返しながら開発の修羅場が繰り広げられる中(ホントもう少し、こちら側で「創作者の心」「夢を形にする」辺りのテーマを表現できなかったものなのか……)、三者の戦いが夜通し繰り広げられた末、スナイプ&ブレイブのダブルクリティカルの直撃により、遂に倒れるグラファイト。
「ははははははは……」
「何がおかしい!?」
「……最高の戦いが出来た。悔いは、無い!」
ここでトドメだけ刺しに出てくるライドニコのなんだかな感が凄いですが、更なるお邪魔虫としてクロノスが登場。
「『仮面ライダークロニクル』は攻略させない」
グラファイトめがけて放たれたニコクリティカルシュートはポーズされ、しつこく全員絶版宣言をするクロノス。
実態はともかく、印象としてはもう何度目だとなってしまい、手下を介さず、自ら最前線に立つ事により出てくる度に株価を下げるムーヴに腰までどっぷり浸かっていますが、物語が進むにつれて倒されるべき悪の格が下がりがちなのはヒーローフィクションの宿痾とはいえ、今作だけ見ても、黎斗・パラド・正宗、と三代に渡って繰り返しているのは、さすがにどうにかならなかったものなのか。
ボスキャラを次々と交代していく事で悪役の賞味期限問題を回避する筈が、誰がボスでも揃って同じような事をして鮮度を落としていく為に、かえって余計な株価まで落としている感。
「パラド、ポッピーピポパポ、道こそ違えたが、おまえ達は俺の……生涯の仲間だ! スナイプ、ブレイブ、俺に敵キャラを全うさせてくれた貴様らに……心から感謝しよう」
ひとり《ポーズ》の中で立ったグラファイトが、どどどどどどどどどどチャージから紅蓮爆龍剣を放つとクロノスを真っ正面から打ち倒し、《ポーズ》の強制解除とともにニコシュートを受けて、大爆発。
「最後に笑ったね、グラファイト」
「……おまえの生き様、見届けたぞ」
これにより全てのバグスターは攻略され、ニコらの手元には13のガシャットロフィーが集まる。
「よし、ゲムデウスを呼び出すぞ」
え、今、この場で?!
いつクロノスがら横から茶々を入れてくるかわからないとはいえ、せめてCRには連絡を取ってからの方が良いのではというか、もはやそこでひっくり返っているクロノスを総出で袋だたきにすれば暴力で勝利できそうな気もしないでもないですが……ゲムデウス召喚イベントの真っ最中に、クロノスが復活。
「何をしようと無意味だ。同じ運命を繰り返すがいい」
ボタン一発で再び《リセット》をしようとするクロノスだが、突然謎のコインが飛んでくると一同の体に吸収され、《リセット》が無効化。そして不意打ちのハイパー無敵キックを受けてクロノスは吹き飛び、前回の今回で《リセット》は「黎斗が死力を尽くしました」以外の理由なく攻略され、セーブ機能を搭載してハイパー無敵が返ってきたのだ!
…………さすがにこれは酷すぎると思うのですが、劇場版との接続要素で、相当アクロバットな無茶を要求されての苦肉の策か何かだったのでありましょうか(現状、誰も指摘していない小姫ミラクルセーブの可能性はありますが、それはそれでなんだかな感もちょっとあるので、どうなることやら)。
そしてこうなると、もはや正宗を泣いたり笑ったりできなくなるまでミミズのプールに埋めた方が楽なのでは? というところで、召喚されてしまうラスボス・ゲムデウス。
「美しい……」
色々どうかと思う展開の中、超わくわくして空を見上げる黎斗は面白かったです(笑)
「あれが……ラスボス」
どさくさまぎれにジョニー・マキシマがグラファイトの遺したバグバイザーを拾う中、ゲムデウスが出現して、つづく。
……再挑戦でここまで見てきた『エグゼイド』ですが、残念ながら作品と私の間のボタンの掛け違いが大きくなりすぎてきて、要素が多いので感想は長くなりがちなのですが、次回分からもう少しざっくり気味の出力にして最後まで見届けられればな……という感じに思っています。
第20~26話ぐらいは割と面白く見たのですが、残り話数で思わぬクリティカルヒットが飛び出さない限りは、そこが個人的ピークに。