『仮面ライダーエグゼイド』感想・第15話
◆第15話「新たなchallenger現る!!」◆ (監督:諸田敏 脚本:高橋悠也)
前回の一件を受け、「外科医には向いていないがゲーム医療には向いているかもな」と飛彩に声をかけられた永夢は、「不気味」と相変わらずの反応を見せ、物語としては、永夢に冷淡だった飛彩が永夢を認めて歩み寄りを見せた、と描きたい意図だとは思うのですが、実際には、飛彩の冷淡さの1.5倍ぐらいの濃度で永夢が暴言を放っているので、歩み寄りは相互に行われるべきものだと思います!
「変身のしすぎでガタがたが来たか……」
一方、大我は永夢の血液分析の結果を見つめ、宝生永夢がゲーム病患者であり、バグスター人格と同居している疑惑の浮上により、BAND-AIDなどに用いられる「aid(援助する・助けとなる)」に引っかけられているのかと思われた「エグゼイド」の名称の中に「イド(超自我)」が潜んでいた事が明らかになるのは、見事な仕掛け。
そのまま格好良く次のアクションに移ろうとする大我だったが、押しかけ嫁(ニコ)がやってきて、耕耘機で真っ平らにされていくハードボイルドな俺の根城!
一悶着の後、まんまとドライバーを持ち出される大我のハードボイル度が致命傷レベルまで低下していくが、永夢に対して実力行使を計ったニコに変身できるわけがなく、逆にガシャットに触れた際に体内のバグスターウィルスが活性化してしまい…………衛生省は本当にこれでいいのか、ドクター達に、今から入れる保険はあるのか!?
ニコのしゃがみ小キック連打で花家先生のハードボイルドゲージがレッドゾーンまで削られていき、探偵ADVが終了してギャルゲーが始まってしまいそうな不安が募る中、ニコの体内よりリボルバーバグスターが誕生。
永夢・大我・飛彩が一斉変身するが、何故か寸胴XXの攻撃はバグスターに通用せず、そこに不正なアカウントを削除する為、Zゲンムが介入。
エグゼイドは、一人でも協力プレイが出来るから寂しくないダブルエックスし、殴られても殴られても死にはしないが相手を倒せもしないZゲンムは、だいぶ捨て台詞が板に付いてきました。
「おまえがレーザーを口封じした理由は、エグゼイドがゲーム病ってことを知られたからだ」
XXのデータを回収したから出張の目的は果たしたのだ! と立ち去ろうとした元社長は大我に呼び止められると、永夢に隠されていた秘密を肯定。
「……宝生永夢は、世界で初めてバグスターウィルスに感染した、ゲーム病患者だ」
「初めて? ……5年前のゼロ・デイよりも前か」
「6年前――彼はあるドクターの実験台になった」
突然の佐野史郎が挿入され、6年前、ネクストゲノム研究所が宝生永夢にバグスターウィルスを投与し、未知の生命体・バグスターを生み出そうとしたが実験は失敗。実験に関わった関係者はウィルスに感染して消滅し、救出された永夢は自分が人体実験を受けた事を知らぬまま元の生活に戻ったのであった……と明かされ、タイミングやキャストを見るに、劇場版との接続でしょうか。
これまで限りなく胡散臭い灰色に描かれてきた日向審議官の改造実験疑惑は、ぽっと出のマッドサイエンティストにさらわれてしまいましたが、衛生省がこの一件を把握していないと考えるのはかなり無理がある上、少なくとも永夢がエグゼイドに変身できた時点で異常事態を把握して良い筈なので、衛生省全体の心証はむしろ真っ黒に。
また、第1話のポピ子の、天才ゲーマー・エムなら仮面ライダーになれる筈=エムがネクストゲノム実験の被害者だと知っていた、とすれば筋が通るので、やはりポピ子を締め上げて、洗いざらい吐かせるべきなのでは。
……まあそこで、マスコット的な女性キャラにする事で締め上げにくくしているのが巧妙といえば巧妙なのですが、もしこのポジションに居るのが九条だったら、いまごろ熱した鉄板の上に正座しながらコンクリートブロックを抱えているところでしたよ!
「レーザーの口を封じた割にはおしゃべりだな」
「彼がバグスターウィルスを根絶する手段を、解明しようとしていたからだ。そんな愚かな考えを持つ者は、誰であれ追放する」
黎斗の九条抹殺には更なる理由が与えられ、九条いわく、元社長と永夢には16年前の時点で接点があったそうなので、衛生省も含めて、その奥にもう一つ以上の謎が隠されてはいそうです。
社長が立ち去った後に今度は飛彩が顔を出し、やはり、戦闘終了後に皆が徒歩で帰宅しようとするとどうしても間が抜けるよね! と立ち話のコンボが発生。
永夢はCRに運び込んだニコの事を全く覚えておらずに小キック連打を浴び……この後の回想を見るに、ニコはニコで、オンラインで何度か対戦しただけの自称知り合い疑惑もあるのですが(下手すると、対戦すらした事がない)、そこに大我となにやら話し合っていた飛彩が帰還。
「研修医……おまえに聞きたい事がある。なぜおまえはドクターを志した?」
16年前、日向恭太郎に憧れたのは確かだが、その後はゲームにうつつを抜かしていた筈……と断定する飛彩は、いつ興信所に永夢の経歴を洗わせたのですか?!(特に説明はされないのですが、やっていそう)
「本格的にドクターを目指したのは、6年前の大学受験の時です」
「……6年前?!」
日向に憧れはしたものの、医者を目指すふんぎりが付かずにゲームスキルだけを上げていた事を認めた永夢の転機は――6年前。
格闘ゲーマーとしてぶいぶい言わせていた永夢は、大会の終了後に体を壊して寝込み、夢うつつの中で手術を受けたような受けていないような不鮮明な記憶が16年前の少年時代の体験と結びつき……どうやら、ゲーム大会を優勝した事で悪の組織に拉致され改造人間の被験者として選ばれる非常に古典的な主人公体験をしていたようで、良くも悪くも「仮面ライダー」概念に拘る、大森Pらしさの見えるストレートな本歌取り。
「それは本当に夢だったのか?」
ネクストゲノム研究所で受けた人体実験を、16年前の記憶が甦った夢だと認識している永夢は、一念発起。ゲームを封印して医者になる為の勉強に励んで見事に合格を果たした事を語って不穏な事実関係が繋がっていき……大我と黎斗のやり取りを鵜呑みにせずに本人に裏を取る飛彩先生、その知性を、1クール目の内に発揮してくれていれば…………あまりにも長い時差ボケでありました。
「エグゼイドは俺がやるしかない」
ハードボイルドを取り戻した花家は、CRに突然の映像回線を繋ぐと、ニコの荷物を取りに来い、という名目で永夢を呼び出し……一歩間違えると致命的なスキャンダルが勃発するところでしたがCRにツッコミを入れるものは誰も無く、呼び出された倉庫に永夢とポピ子が向かうと、既にステージが組んであっておかしい(笑)
「ちょろい奴」
大我は足場を登ろうとした永夢を蹴落とし、
「ほらやっぱりー」
大我=罠を仕掛けて待っている奴認識のポポ子さん、ホント、二人の間に昔なにがあったのですか。
「荷物はやるからガシャットを置いてけ」
高いところで大我が変身しているのに、もうあんな人ほっとこうノリで永夢を連れて帰ろうとするピピ子さん、対応がソルトすぎるのですが、ホント二人の間に昔なにがあったのですか。
ポピ子に引きずられるも威嚇射撃を受けた永夢はエグゼイドに変身し、禁断のマフラー掴み。ところがそこに何故かブレイブも参戦すると、その剣が向けられたのは――エグゼイド。
「何すんだブレイブ?!」
「悪く思うな」
……まあ、ドクターライダーズのチーム医療レベルは初期ドンブラザーズ以下なので、印象的にはむしろ、殴ったり殴られたりは日常茶飯事なのですが、「態度が柔らかくなってきたように見えたブレイブが襲ってきた衝撃」を優先するあまり、1クール目の事は半ば忘れ加減で進めようとするのが、相変わらず困ったところ。
作劇としては「ライダーバトルの理由付け」を次のフェイズに移行するに際して、以前の「理由付け」からの連結・変化が弱く、“大胆な切り替え”を好む余りに「分断」を発生させてしまっているのですが、大森P作品の流れとして見ると、後の『ビルド』はそこに手を入れようとした結果として、主人公が同じ苦悩と立ち直りのループを繰り返す事になってしまったのかも(そして『ゼロワン』ではヒューマノイド関連でまたも「分断」を繰り返すので、中間が無い)。
「邪魔するな。そいつは俺の獲物だ」
「無免許医は下がってろ」
「あー! わけわかんねぇ! 大変身!」
殴られたらノータイムで殴り返すのかと思いきや、「おちつけ」コマンドを連打するエグゼイドだが、スナイプもブレイブも話を聞かず、そこに出てきたリボルバグスターを拘束したパラドはこれを高みの見物。
ドラハンガシャットを奪ったスナイプとブレイブが寂しくない協力プレイを見せつけると、いたたまれなくなったポピ子が割って入り、ポピ子はそのアンタッチャブルさを、戦闘に介入しない事で帳尻合わせていた部分もあるので今後の棒立ちフェイズの扱いに問題が出そうな不安の種が生まれましたが、そこに更なるchallengerとしてパラドが乱入。
パラドは黎斗が完成させた新たな形状のガシャットを手にすると、落ち物パズルゲームを起動して、デュアルアップ。
「仮面ライダーパラドクス。レベル50」
凄まじいインフレと共に、頭にトサカを垂らした仮面ライダーぷ○ぷよが誕生し、ガシャットの作りといい、起動音といい、後頭部の顔といい、ダブルフォーム(の更に先? いわゆるクラッシャー部分の形状が特異なので、頭が180度ひっくり返そうな気も……)前提なのでしょうが、満を持してのパラド変身としては、大変微妙なデザイン。
パラドクスはその能力によりエナジーコインをカタログ化すると(まあ今作、バトル中のゲーム的要素の表現は上手くないので、特に凄い感は出ないのですが)、跳躍そして収縮により、
べらぼー!
べらぼー!
で、スナイプとブレイブを文字通りに一蹴(余談ですが、今回何も仕事をさせてもらえないリボルバグスターの声を務める稲田徹さんは、ゲーム『ナムコクロスカプコン』でベラボーマン役だったり)。
「やめろ!」
「なんで止めんだよ? おまえを攻撃した連中だろ」
「……誰だろうと、命は命だ。ゲームオーバーにはさせない!」
……ちょっと、間があったぞ。
「エグゼイド、俺の心を、たぎらせるなよ」
自転車アーマーを身につけたエグゼイドに対し、パラドクスはもう一つのゲームを起動して大変身し、顔が入れ替わるとムエタイボクサー風の姿にデュアルアップ。
対戦格闘ゲームのガシャットにより、仮面ライダー○ョー・東となると、LV50アッパーカットの一撃でエグゼイドを変身解除に追い込み、もう、ライダーゲージ設定は、無かった事にする方向なのでしょうか。
「いつでも相手になってやる。俺を楽しませてくれよ、永夢」
3ライダーを蹂躙したパラドが、快楽主義者の顔を強調して姿を消すと主題歌が流れ始め、激しい頭痛に苦しむ永夢。それを見つめる飛彩と大我がかわした、前半のやりとりが回想の形で描かれ……
「研修医がゲーム病というのは本当か」
「ああ。道理でエグゼイドに変身できたわけだ」
「……ゲームをやる時に性格が変わるのも、その影響という訳か」
え? どさくさ紛れに繋げようとしていますが、そこは別に、説明になっていないような(笑)
仮に告知したら、患者治すマシーンである永夢が、自らがゲーム病だったと知った時のストレスが想像もつかない、というか、アイデンティティの崩壊に直面しそう、と二人は告知せずの切除を決意していた事が、主題歌をバックに明らかになるのがさほど効果的な演出とも思えず……とりあえず次回の冒頭を確認してみたところ、今回と同じく
〔前回のあらすじ→タイトル→提供カット→本編〕
となっていたので、特殊演出というわけではなく、放映形式が変わったのでしょうか。