東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

《説得》が足りてない

恐竜戦隊ジュウレンジャー』感想・第5話

◆第5話「怖~いナゾナゾ」◆ (監督:坂本太郎 脚本:杉村升
 「倒す方法は?」
 「わからん」
 バーザの伯父貴はね、ホント、腑抜けすぎだと思うんですよ……まあ、拠点を確保し続けたけで凄いといえば凄いのですが、多分その内、全盛期の伯父貴が、肩から何本もたすき掛けにした魔法の杖を抜き放っては、ドーラモンスターを千切っては撃ち、千切っては撃つ回想シーンが描かれる筈。
 ドーラスフィンクスの変身したナゾナゾおじさんが街に出没し……坂本監督のセンスもあってなのか、どちらかというと《不思議コメディ》寄りのご町内変人路線(笑)
 前作『ジェットマン』ではメイン監督として雨宮慶太を起用しましたが、今作ではローテ2番手に《メタルヒーロー》シリーズで活躍してきた小笠原猛、3番手に《不思議コメディ》シリーズなどで腕を振るってきた坂本太郎、とこれまでの《スーパー戦隊》シリーズとは別路線の監督が入り、演出サイドでも血をかき混ぜる意図が窺えます。
 ナゾナゾに応えられなかった子供達が次々と吹き飛ばされて失踪する中、原宿に繰り出してナンパにいそしむダンがお調子者のトラブルメーカーとして足場を固めていきますが、1億数千万年ぶりの目覚めとしては、現代文明にざっくり順応している他のメンバーよりもむしろ、興味津々で遊び歩きたいダンの方が今見ると自然に見えたりもするところ。
 一方、ゲキは荒野をさまよう悪夢にうなされており、パレスでは怪人と部下と一緒にバンドーラ様がダンスに興じていた(笑)
 「子供はナゾナゾが大好きだからね。どんどんナゾナゾでやっつけてやるんだ」
 楽しい夢がバンドーラによって悪夢に一転する路線が今回も示され、バンドーラは子供を標的とする事を改めて宣言。
 「だいたいあたしは子供が大っ嫌いなんだよ! 泣くのが見たい。叫ぶのを聞きたい……!」
 古式ゆかしい魔女スタイルを貫きつつ、台詞回しの妙による独特の愛嬌が光ります。
 「でもどうしてそんなに子供が嫌いなのかな。なにかふかーいわけでも?」
 「うるさーーーい」
 造形職人が微妙に布石らしいものを置き、地球ではスフィンクスの暗躍を掴んだジュウレンジャーがナゾナゾおじさんの目撃情報を元に張り込み中。ところが、デートの約束に浮かれるダンが持ち場を離れた隙に、一人残されたボーイがスフィンクスの術中にはまって吹き飛ばされてしまい、それを目の当たりにしたダン、さすがに反省。
 「俺の責任だ! 俺が勝手な真似をしたから、こんな事に!」
 石版から解放されて浮かれてはいたものの、基本、戦士脳のダンが外へと飛び出していくと、それを止めようとしたゲキは再び悪夢の中に取り込まれてしまい……やはり、長期冷凍睡眠の副作用でしょうか。
 これはもしかして、第11話ぐらいに「実は…………はっきり言おう。君(たち)の命はいつまで保つかわからん」とか言われてしまうのではないかと危惧が募る中、敢えてスフィンクスの術中にはまって宙を舞うダンを追ったゲキ・ゴウシ・メイは、消えた子供たちやボーイが木と一体化させられているのを発見するが……
 「ここはゴルフ場予定地だ。もうしばらくすると木の伐採が始まる」
 「なに?!」
 「子供たちの遊び場なんか作ろうともしない大人たちが、自分たちの遊びの為なら平気で木を切り倒す。それで子供達を殺してしまうという寸法さ。皮肉だねぇ」
 いきなりえげつない環境破壊×風刺ネタが!
 変身するゲキ・ゴウシ・メイだが、物理攻撃無効のナゾナゾおじさん(強い)のペースにはまり、桃があっさりとリタイア。意外や1問目はクリアした黒もリタイアし、残る赤が5問目まで辿り着くと、「正義が勝つのが絶対だ!」「いや、悪が勝つのが絶対だ!」と、ここまでのトリッキーさをかなぐり捨てて、単純な殴り合いに突入してしまったのが、惜しい、大変惜しい。
 ゲキが頭脳戦で完全勝利を収めるのも、一人だけ出来が良すぎてそれはそれで面白くは無いのですが、戦闘シーンを入れるところが無かったので変身して戦闘員と殴り合いを始めるがナゾナゾは進行とか、ナゾナゾは進行しているのに赤と怪人の一騎打ちに突入させてしまうとか、“そこから出てくる新しいもの”にこそ期待していた面はあるのでしょうが、脚本も演出も、《スーパー戦隊》への不慣れさが目立ってしまいました。
 勿論、その“慣れ”こそが、よく言えば熟練の技であり、悪く言えばマンネリに繋がっていたからこそ、一度それを崩さなければならないという意識が今作には明確に見えるのですが、前作『ジェットマン』がシリーズの積み重ねを踏まえつつ「ヒーロー」の描き方に新たなアプローチを持ち込む事で《戦隊》に新しい光を当てたのに対して、今作が目指しているのは、シリーズの積み重ねを踏まえつつその語り方に関する「型破り」なのかな、と思えます。
 レッド対スフィンクスの一騎打ちが続くとあまりにもバランスが悪い事もあってか、バンドーラ様がさっくりとスフィンクスを巨大化すると、対抗して守護獣ティラノザウルスを呼び出す赤だが、まさかの合身拒否。
 こちとらタクシーじゃねぇんだよ、とティラノにぺっと吐き捨てられ、その衝撃で変身も解けてしまったゲキは悪夢で見た灼熱の荒野へと放り出され、今回も、つづく。
 第3-4話に続いて第5-6話も前後編(しかもゲキ以外はほぼ役立たず)となり、さすがにカタルシス不足が大きくマイナスに触れるところですが、次回――獣の神の降臨は、それを払拭できるのか。