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Let's go! Let's ゴーカイジャー

海賊戦隊ゴーカイジャー』簡易構成分析

 あれもこれも貯まりすぎているので、ひとまず、データだけ集めておいて総括と構成分析の叩き台にする作業をしておこうシリーズ。途中まで書いたデータが発見されたので、一気に20年ほど飛んで『ゴーカイ』編。

◇演出
 〔中澤祥次郎:10本 竹本昇:10本 加藤弘之:10本 渡辺勝也:9本 坂本太郎:8本 坂本浩一:4本〕
◇脚本
 〔荒川稔久:25本 香村純子:16本 下山健人:6本 浦沢義雄:2本 井上敏樹:1本 石橋大助:1本〕

 春映画で竹本監督、夏映画で渡辺監督、冬映画で中澤監督がそれぞれ抜けた事もあって最多演出は3人が並び、全体でも5人が約10本でほぼ均等、というのはかなり珍しい印象。
 中澤監督はパイロット版~中盤まで、そして大傑作だった劇場版『vsギャバン』に回り、3-4話で後々まで影響をもたらす爆弾を投下した渡辺監督は、夏映画を経て終盤に復帰。TV本編への参加は第21話と遅かった竹本監督ですがラスト3話を担当し、ある意味で、今作の“始まりと終わり”を描く事になりました。
 2010年代にローテの主軸に入ってくる加藤監督は、9-10話を除くと、シルバー登場編・ハリケン編・ゴーオン編・決戦ダマラス編、といずれも前後編を担当しており、方向性が明確で撮りやすい&撮影が早いと聞くのでその特徴を活かしやすい、といった辺りの差配があったのかもしれません。
 大ベテランのダディ坂本監督は、やはり浦沢先生とのコンビ回がインパクト強いですが、第13話(アイム誘拐回)の、コミカルなアクセントの付け方と、100%ヒーローでは無い市民目線の織り交ぜ方なども、らしい味でした。
 ジュニア坂本監督は、今作のテーマの一つである「ゴーカイチェンジによるバトル」とアクション重視の演出がはまり、流れを巧く作ってくれたな、と。
 東日本大震災の影響による撮影ローテの再編などもあったようですが、結果的に、80年代からの大ベテラン、90年代から頭角を現した00年代の主力、次の10年のローテ監督、と幅広い顔ぶれを抑えられたのは、今作にふさわしかったと思います。『シンケン』-『ゴセイ』の流れを考えると、体調面に問題が無ければ長石監督の参加を考えていたのだろうか、とも推測されますが、そういう点でも坂本太郎監督に入って貰えたのは良かったな、と。
 脚本は、全体の約半分を荒川さん、残り半分のうち約7割を香村さんが担当し、香村さんに任されたエピソードの内容を考えても、ほぼほぼWメインといっても差し支えない差配。
 また、原典不参加ながら非常にツボを抑えた「ボウケン」回の出来が良かった下村さんに節目の殿下退場編が任されているなど、戦隊フリークのベテラン荒川稔久をメインに据えつつ、次代への種がしっかり蒔かれているのは良い目配りでした。
 特に、感想本文でも度々触れましたが、頼れるサブライターとしての香村さんの存在は今作のクオリティを大きく底上げしてくれましたし、2010年代への大きな貯金になったな、と。
 香村脚本では「ギンガ」回や「ライブ」回など見事にはまったレジェンド回も目を引きますが、個人的には誘拐回と入れ替わり回の2本が、「定番アイデアを固有のテーマ・キャラクターと巧く接続して作品に落とし込んだ上で、セオリーに則りつつはまりがちな落とし穴を全て回避してみせる」という、“書ける”人の見本みたいな出来のエピソードで、高評価。

 メイン回(判定は筆者の独断によります)は、以下の通り。 ※()内は、コンビ回。

ゴーカイレッド/キャプテン・マーベラス
 〔2.3.5.12.20.21.28.36.47.48〕:10(4)回
ゴーカイブルー/ジョー・ギブケン
 〔4.10.11.12.22.30〕:6(4)回
ゴーカイグリーン/ハカセ
 〔3.7.19.27.32.42.43.46〕:8(5)回
ゴーカイイエロー/ルカ・ミルフィ
 〔6.10.21.23.27.34.44〕:7(4)回
ゴーカイピンク/アイム・ド・ファミーユ
 〔4.7.13.23.29.41.46〕:7(5)回
ゴーカイシルバー/伊狩鎧
 〔17.18.19.20.22.29.33.40.46〕:9(5)回

 感想本編で何度か、今作の基本設計の巧さについて触れましたが、メイン回の使い方、という点で見ても非常に良く出来ており、
 立ち上がり、一風変わった戦隊レッドである「キャプテン・マーベラスとは何者か?」を重点的に提示(2-5)
 ↓
 キャラ回一巡(2-6)
 ↓
 “らしくない”二人(緑桃)メインの『ゲキ』編(7)
 ↓
 『ゲキ編』を踏まえ、「外」の視点(獅子走)と「外めの内」の視点(緑桃)を軸に、海賊戦隊とは何か?フェイズ1(9)
 ↓
 ジョーの過去を紐解きながら語られる「海賊戦隊の始まり1」である『シンケン』編(11-12)
 ↓
 バスコ登場によって語られ『シンケン』編を踏まえた「海賊戦隊の始まり2」&海賊戦隊とは何か?フェイズ2(15-16)
 ↓
 シルバー加入編(17-18)
 ↓
 追加戦士×既存メンバー……のセオリーを通して、「海賊戦隊とは何か?」を掘り下げ(19-23)
 ↓
 そこまでの流れを集約する形で鎧を含めた「海賊戦隊とは何か?」フェイズ3(25-26)

 に至る前半の構成は、芸術的とさえいえる美しさ。
 海賊5人を先輩組(赤青黄)と後輩組(緑桃)に分けて考えると、『ゲキ』編と『ガオ』編が繋がっていて、『ガオ』編と『シンケン』編が鏡合わせになっているといえ、その統合がバスコ登場編となっているのが実に巧みですが、ルカが20話台に立て続けにメイン回が割り当てられているのは、『シンケン』編が赤青に偏って少々割を食う形になった為かも(笑)
 そこから『ゴーオン』編(35-36)までは、ゴーカイガレオンバスター誕生などを交えつつ、単独メイン回で個々のキャラの現在地を掘り下げ(アイムだけは第41話を待つ事になりますが、第29話はほぼ単独メイン回に近いかも)、最終強化×殿下決戦において、たった一つ自分だけの宝物を手に入れたマーベラスが本当のキャプテン・マーベラスになる、「海賊戦隊とは何か?」フェイズ4に到達(38)
 ――「さぁな。しかし、俺たちは本当のゴーカイジャーになったって事だ」
 また、地球における海賊戦隊の積み重ねによる変化の段階を丹念に描くと同時に、ひたすら我が道を行くバスコの暗躍、でもう一つの軸を通しているのが、クライマックスの集約に向けて、実に巧妙な作りです。
 そして、アクドス・ギル来臨による終章開始を前に、第39-40話(『メガ』編・『タイム』編)で“未来”――世界と彼らのその先――に関するエピソードを描いているのは、戦慄。
 今回、こういった形で分析していて改めて気付いたのですが、一体全体、ロジックで辿り着いたのか、野生の勘が発動したのか、誰主導なのかもわかりませんが、ここにこの2本が挟まれているのは、今作の凄みの一つ。特に『メガ』編は、香村脚本としては『ライブ』編のアンサーとなっている構造も、お見事でした。
 その『ライブ』編で個人のテーマが綺麗にまとまりすぎた為に、以後ジョーのメイン回がすっぱり無くなってしまうのですが、では存在感が無くなるのかといえば全くそんな事は無いのも、今作の大きな強みでありました。
 配分としてはバリゾーグとの決着を殿下退場編と分けて単独でジョーメイン回に出来れば丁度良かったのでしょうが、そこは一つ、レジェンド登場のあおりを受けた部分でしょうか。
 ハカセはその点、ダマラス退場の前後編がばっちりハカセ回になった事で得をしましたが、第3話から積み重ねてきた主題の到達点としては、納得の内容。
 そうすると第46話は、錯乱したジョーをアイムが止める話にすれば、緑銀に+1回するよりバランスが取れたのではという問題が浮上してくるのですが、恐らくマベアイ派の妨害工作ががががが(通信はここで途切れている)――

 ……げふんげふん。
 さて、最近、簡易構成分析をまとめてきた80年代作品とはコンビ回の数が歴然とした違いですが、第46話の緑桃銀で+1回ずつ以外では、ほぼ各一回ずつが網羅されている中でコンビが無かったのが、
 〔赤×桃・青×緑・黄×銀〕
 の3パターン。
 第2話(シンケン少年回)は赤×桃に近く、第44話(クリスマス回)は黄×銀に近いので、完全に無いのは青×緑なのですが、仮に本編の非キャラ回でねじこめそうな箇所を探すと第一候補は浦沢先生の2本なので、ジョーとハカセたこ焼き屋に弟子入りするしかなかったのか。
 改めて浦沢回(一本はレジェンド回ですが)、キャラ回でもなければ、「海賊戦隊とは何か?」を描く回でもないのに、2本ともエピソードを成立させているのが、恐ろしい(笑)
 主なイベントは、以下。

 第3話 マジゴーカイオー誕生
 第5話 デカゴーカイオー誕生
 第9話 ガオゴーカイオー誕生
 第12話 シンケンゴーカイオー誕生
 第15話 バスコ現る
 第17話 ゴーカイシルバー現る
 第26話 ハリケンゴーカイオー誕生
 第32話 ゴーカイガレオンバスター誕生
 第36話 ゴーオンゴーカイオー誕生
 第38話 カンゼンゴーカイオー誕生、殿下&バリゾーグ戦死
 第41話 アクドス・ギル様来臨
 第43話 ダマラス戦死
 第48話 バスコ死亡
 第49話 インサーン戦死
 第50話 “35番目のスーパー戦隊”誕生――「海賊戦隊とは何か?」フェイズ5

 序盤に立て続けに強化し、追加戦士分を挟んで、中盤と終盤に一つずつ、とこの時期ではオーソドックスな作りでしょうか。序盤の強化を、“宇宙最高のお宝”に近づく手段としてストーリーと密接に繋げた&新アイテムが増えるというより内部機構の展開に寄せたのは、物余り感が少なくスッキリして上手いアイデアであったと思います。
 幹部陣だとインサーン戦死のタイミングが目を引きますが、その後の宇都宮P作品を見ると、巨大化担当の女性幹部は職能ゆえに途中退場しない、はちょっと悪い意味でパターンにはなってしまったかも。
 主に巨大戦ギミックとしての“大いなる力”を充分に使い尽くした上で、皇帝との最終決戦は怒濤のゴーカイチェンジ、は今作にふさわしいクライマックスバトルでありました。