新春突発『魔進戦隊キラメイジャー THE MOVIE』感想
◆『魔進戦隊キラメイジャー THE MOVIE ビー・バップ・ドリーム』◆ (監督:山口恭平 脚本:荒川稔久)
東映マークの波しぶきをリアル海に繋げると、砂浜に転がっている充瑠・為朝・ファイア・ショベロー、という面白い導入。
「……海?」
「気がついたか、為朝!」
「俺たち、なんでここに?!」
「忘れたのか充瑠! 俺たちやられたんだ。あの女に」
あの女――
「――ようこそ、ストーンの匂いのする者よ」
腰に仮面をぶら下げ、漆黒の鎌を手にした悪夢のマエストロ・ミンジョは羊の怪物を宝路にけしかけ、指を鳴らすといきなりビル街、そして海中へと次々と居場所が切り替わる伝統と信頼の魔空空間展開。
「まさかこれ、全部、夢か?!」
「正解」
ミンジョの鎌を振り下ろされた宝路の本体は、顔に変な落書きをされた状態で椰子の木基地でうなされており、都内各地で同様の異変が発生していた!
それは、キラメイストーンの一つであるドリームストーンによって作り出された夢の世界であり、事態の解決に必要な夢の主を探し出すべく、時雨・瀬奈・小夜の3人は、姫様の王族パワーで夢の世界へと入り込むのだが、そこに待ち受けていたのは、悪夢のマエストロ・ミンジョ。
本編で重要な役割を果たした澱みの海の魔女・ヌマージョの妹であり、本編にもちらっと登場して姿を消していたミンジョは、クリスタリア陥落のどさくさ紛れにドリームストーンを火事場泥棒しており、その操る悪夢の力で、瀬奈、あっさリタイア。
アニキは万力再び、小夜は金魚すくいの金魚にされ、次々と戦闘不能に陥る中、3人の後を追ってきたジェッタ・マッハ・ヘリコが乱入すると、突然の癒やしパワーで状態異常をまとめて回復し、劇場版の勢いで適当な新スキルが次々と生えてきます(笑)
悪夢の輪投げ怪獣に青桃がスカイメイジで立ち向かい、瀬奈とマブシーナはマッハに乗り込むも地割れに飲み込まれてしまうが、気がつくとウェディングドレス姿でクリスタリア王宮に転がっており、そこに姿を見せたのは、変なテンションで駄目な感じのギャグを連覇するオラディン王。
そして、花嫁の父気分で舞い上がるオラディン王の紹介により、マブシーナのお婿さんとして現れたのは、ラグビー邪面だーーー!(笑)
今作を代表する邪面怪人としてラグビー邪面が選抜されたのは大変嬉しく、ここだけでも、割と満足。
マブシーナにトライしようとするラグビー邪面だが、天魔覆滅電光石火、カウンターのクリスタリア空手が炸裂。
ラグビー邪面がもんどり打って倒れたところに、今度は謎めいた白い帽子の少女を追いかけてきた充瑠&為朝が合流し、帽子の少女は幼いマブシーナ? 姫は羊に捕まり、緑が羊を足止めし、助け船のごとく出現した扉の先に充瑠と為朝が飛び込むと、今度はそこはヨドンヘイム。
めまぐるしい場面転換とキャラクターの入れ替わりが続く映画なのですが、一つ一つの別離がそこまで劇的でもなければドタバタ感も弱い為、今ひとつ面白さに繋がっていないのが残念なところ。
ガルザと出くわした二人が更にミンジョの攻撃を受けて変身し、
「ドリームストーンを悪用するなんて許せない! 本当は素敵な石なのに!」
は、充瑠らしい怒りのツボでした。
本編終盤の頃に公開された映画という事もあって、本編の世界観にがっちり染まっている事が前提の作りな為、およそ1年後に見ると作品の空気に戸惑う部分もここまであったのですが(『キラメイ』はこういう行動指針や解決手段で良いのだっけ……みたいな部分)、ここは凄くしっくりと、充瑠らしいと感じる事が出来ました。
しかし奮戦むなしく、夢を好き放題に操るミンジョの前に手も足も出ない赤黄だが、突然の轟く雷鳴と共に落ちてきたのは、巨大な……ケ。
続けて4つの巨大カタカナが落ちてきて、並んだ文字は、ケ・ル・キ・メ・ラ。
……そう、つまり今こそ、充瑠の心! 為朝の脳! 時雨の顔! 瀬奈の足! 小夜の手! 魔進のボディと5人の長所を、クリスタリア錬金術の秘法により一つに融合合体した新生魔進戦隊・キメライジャー誕生の時!!(約2年越しの伏線回収)
「そうか……そういう事か!」
「おい! どうした充瑠?」
今こそ自分がキラメイストーンに選ばれた理由を知った充瑠の脳内に、白いキラメイストーンから宇宙的叡知が流し込まれ…………たりはせず、充瑠が気付いたのは、落ちてきた文字が伝えようとした、本当のメッセージ。
それは――「キラメケル」。
「俺は煌めける! ひらめキーング・スペシャル!」
突然、絵筆を手にしたキラメイレッドは線路……かと思ったらハシゴを描いて実体化すると、それに昇って夢の世界の空に亀裂を描いてひっぺがし、ミンジョの意のままだった空間を、強制解除。
「ドリームストーンはキラメイストーンの仲間、だからここでは、俺だって無敵だ!」
やはり、白いキラメイストーンから宇宙的叡知が流し込まれて既に手遅れ感も漂いますが、充瑠と為朝を繰り返し助けていたのは完全に支配下に置かれていなかったドリームストーンの意識の一部であると説明され、つまり充瑠がストーンに対する上位権限を持つ白ストーンの浸食を受けている事を利用して、ドリームストーンの意識をバックドアに使って、上位コードによる書き換えを行う、いわばドリームハッキングといったところでしょうか。
世界の支配者となった赤は、中型ファイヤを作り出して放水攻撃を仕掛け、この劇場版では魔石たちが割と活躍。更に舞台が一面の花畑に移ると中型ショベローを召喚し……「おまえがこっそり大切に育てていたこの花畑、今から根こそぎ開墾して、ピーナッツ畑に変えてやるぜーーー!!」とかするのかと思ってドキドキしましたが、普通に打撃で一蹴。
ひとまずミンジョを撃退した赤黄は、事態解決の為に改めて夢の主を探す事になるが、そこに今度は三日月ヘルムを外したガルザがふらふらと現れ、ひらめ黄色。
「ようやくわかったぞ……この夢の主は、ガルザ! おまえだ!」
「そうか! だから王様が、あんなに辱められてたのか!」
……う、うん……王様はなんか、いつもあんな感じだったような記憶もしなくもなく……。
夢の世界は主を示すそのもの、というマブシーナの残した言葉から、地球・ヨドンヘイム・クリスタリア、更には幼いマブシーナの姿まで全てを知っている容疑者はガルザしか居ない! とイエローは指摘し、ミンジョの呼び出しに応じたガルザがまんまと罠にはめられ、羊の不意打ちを受けて夢の世界の主にされる事で自身も夢の世界に閉じ込められていた事が発覚し…………そこまでぼんくらでしたっけ、ガルザ(笑)
ガルザについては本編で明かされる真相があまりに残念だったので、この時点のガルザをどんな目で見ればいいのか大変悩ましいのですが、寝こけているガルザの中から現実世界へ戻ったミンジョは、夢の世界に囚われている人々をガルザごと抹殺しようとその鎌を振り上げる。
危うく劇場版で下克上による謀殺、という巨大なブーメランを食らうところだったガルザだが、博多南に起こされた時雨・瀬奈・小夜が駆けつけると、結果としてはガルザの命を助けつつ、ドリームストーンを回収。
これにて顔に落書きされていた人々は次々と目を覚まし、さすがに怒りのガルザがミンジョを締め上げると背後で脈絡なく大爆発が巻き起こり……そう、屈辱を受ければ受けるほど盛り上がる悪のMパワー――それこそ、邪メンタル!!
爆発には多分に山口監督の趣味を感じますが、ど派手な爆発、そして火花の中を歩み去って行く姿の映像的格好良さでガルザの株価を強引に引き上げたのは、本編クライマックス直前の公開という事で、良いフォローであったと思います(そもそも、フォローが必要な状況にして良かったのだろうか、はさておき)。
ドリームストーンの力で巧く立ち回った筈が、まさかの閃きハッキングからガルザの怒りを買い、結果として自らの首を締める事となったミンジョは配下を召喚するが、そこに正直、存在を忘れそうになっていた昭和の男がワンダーアライバル。
更に充瑠と為朝も復帰して――キラッと参上! カラッと解決!!
「魔進戦隊!」
「「「「「「キラメイジャー!!」」」」」」
フル名乗りを挟んで広い空間に移ると、ドローン撮影を交えてか上下左右を幅広く使った主題歌バトルに突入し、改めて、好きな主題歌。そして、キラメイブルーはアクション的には本当に格好いい。
なお女帝は劇場版でも、踏みつけた戦闘員を足で盾に使う外道バトル見せました(笑)
「私は成り上がる! 必ず、ヨドン軍の頂点に立つ!」
一応、ミンジョの動機についても触れられ、なんとなく余り物感の止まらないシルバーにはミンジョとのマッチアップが用意されると、体を霧状にするミンジョの関節技に苦しみつつも、ドリル一発範囲攻撃で大脱出。
残り5人は連係攻撃で羊を追い詰め、クランチュラに応援を求めたミンジョが夢の世界で溜め込んでいた闇エナジーを受け取ると、自らが邪面となって、巨大羊と合体。
「抱き合わせの怪獣と合体する、私の覚悟を見なぁ!」
……本編でどう称していたか覚えていませんが、「怪獣」と言ってしまって良かったのでしたっけか、それ(笑)
呼ばれて飛び出て魔石たちがロボットへと変形し、かつてヌマージョの毒に封印されていたザビューンにより、ミンジョとヌマージョの関係の説明を入れると、キラメイジン・キングエクスプレスサメ・ドリラーが揃い踏み。
そこにドリームストーンが助力を申し出、ひらめキーング!
充瑠のイメージをドリームストーンの力で拡大する事で、夢と想像のコラボレーション・ドリームジャンボ宝くじキャノンが誕生し、キラメイジンとドリラーがそれを発射。
「へっ! いい夢見ろよ羊野郎!」
丸まった羊に回避されたかと思われたVサメキャノンだが、弾道が変化して後部上方からVの字というよりエッエッエーーックス! と羊に突き刺さり、クリスマスにはシャケを食え! アデュー~!
かくして悪夢事件は解決し、ミンジョから解放されたドリームストーンは、 クリスタリア王族に仕えるなんてまっぴらごめんなので 旅に出ると宣言し、最後は、必殺・ダンスが始まればオチがつくメソッド(笑)
充瑠の寝間着に始まって、今作の内容にあやかったキラメイダンス劇場版スペシャルバージョンとなり、万力を頭にはめて踊るアニキ、格好いいよアニキ……!
超ノリノリで踊るクランチュラさんの横で、そっぽを向きつつ足でリズムを取ってしまうガルザの図は安定のおいしさで、あなた達は本当に仲が良いな……!!
・公開日が本編ラスト直前
・前作コラボのお題が無いので本編組織の格を侵害する大がかりな敵は出しにくい
と悪条件の並ぶ今作、コラボ映画がそれほど好きなわけではないのですが、“コラボしておく”事で立つ言い訳もあるのだな、と改めて気がつきつつ、
・ヌマージョの関係者がボス
・ザビューンに焦点が当たる一方、王様フェニックスは居ないような扱い
・夢の世界で放り込まれるのが夏祭りの縁日
といった辺りを見るに、夏映画の素材をそのままスライドした感じでしょうか。
本編では不自然に消息の途絶えていたミンジョの存在を拾いつつ、華麗なテクニックで障害物を擦り抜けるのではなく物凄い勢いでなぎ倒していく作りで、これならいっそ全力でコスプレ祭に振っても良さそうなところでしたが、ラグビーや万力など序盤の印象深いポイントを持ち込んでくれたのは嬉しく、ボーナストラックとしては尻上がりに楽しめた映画でした。