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年末コスモス

ウルトラマンコスモス』感想・第62-63話

◆第62話「地球の悲鳴」◆ (監督:市野龍一 脚本:増田貴彦 特技監督鈴木健二
 ヘルズキング2世事件の副産物として培養に成功するカオスキメラだが、ムサシは今や、その使用によるカオスヘッダー殲滅にも疑問を抱き始めていた。
 「あいつは気の優しい、優しすぎるぐらいの男だ。エスカレートしていく戦いに、気持ちが追いついていかないんだろう」
 いまいち出自のわからないキャップ、惑えるムサシの鏑矢諸島参りを許可した視点は軍人のそれですが……この辺り今作、“主人公の所属組織を軍隊的組織から離した”試みは面白かったものの、そこかしこで手癖が出て結局は軍隊的組織と大きく違いの無い描写になってしまったのは、惜しまれるところ(それが防衛軍の極端化にも繋がってしまいましたし)。
 「戦いが始まったら、もう悩んだり迷ったりはできない。……うまく、自分の気持ちにけりを付けてくれればいいんだが」
 ムサシは久方ぶりにリドリアスにお悩み相談するも答えは出ず、数日後、大量のカオスキメラを搭載したキメラミサイルが完成。カオスヘッダーの出入り口となっているP87ポイントへの総攻撃を前に、チームアイズはその障害となりうるカオスウルトラマンを誘い出し、キメラミサイルの試し撃ちをする事を決める。
 「でも、どうやって誘い出すんですか?」
 「コスモスだよ。……コスモスを囮にするんだ」
 対カオスヘッダーの為なら、これまで人類と手を取り合って戦ってきたコスモスを囮にする事も辞さない……とも取れる刺激的な台詞をドイガキは発し、
 「え? でも、どうやってコスモスを呼ぶんですか?」
 「怪獣だよ。……怪獣を餌にするんだ」
 ドイガキは、人の心を失った!……という事はさすがになく、コスモスが発しているのと同じ波長の信号を出す事で、コスモス出現を偽装しようというのであった。
 「これで……本当に戦いを終わらせる事が出来るんでしょうか? ……カオスヘッダーは、進化を繰り返しています! 一度は倒しても、また蘇って――」
 「ムサシ! おまえの気持ちはわかるよ……けど、僕たちは戦うしかないんだ。その度その度戦って、カオスヘッダーに打ち勝つしかないんだよ!」
 ……以下、話半分程度に読んでいただきたいのですが、今作の背後にある時代性のメモとして書き留めておくと、前回が「血を吐きながら続ける悲しいマラソン」への意識が強かったと思われるエピソードだった事を踏まえると、今回のこの台詞は「アメリカ同時多発テロ事件以後」の世界への意識が強く窺え、根っこにある危機感は同様ながら“全面核戦争の恐怖”の時代から、“対テロ”の時代を捉えたアップデートが見えてくるのかな、と。
 ……で、その見立ての延長で次作にあたる『ネクサス』を捉えると、『ネクサス』は、「9.11」の存在を隠蔽した上で、あらゆる「テロ(恐怖)」を水面下で壊滅させる事にした(故に必然的な破綻を抱えた)世界の物語であったのだな、と今更ながらに。
 ……この手の見立てを持ち込むのは(専門的にやるならともかく)、ある意味ではなんでも引きずり込んでしまえる危うさがあり、与太話スタンスとしてはこれ以上は深入りしませんが、発表順で考える事で見えてくるものもある、と改めて思った次第。
 コスモス囮作戦によりカオスヘッダー反応が捉えられたその時、地中から突如として怪獣ドルバが出現して、囮電波の発信機を破壊。チームアイズはカオス会長をつり出す筈がカオス怪獣と戦う羽目に陥り、油断していた1号機が撃墜されたタイミングで、カオス会長が重役出勤。
 「まさかこっちの作戦を読んでたんじゃ!」
 「ドルバが囮だったって事?!」
 「なんて卑怯な」
 どの口がそれを言うのか(笑)
 人を呪わば穴二つ、罠にかける筈がまんまとかけられたアイズは、カオス会長の攻撃により虎の子のキメラミサイルごとテックスピナーを失っていまい、迷えるムサシはコスモスに一つの映像を見せられる。
 「地球に来る前、私はある星を、カオスヘッダーの脅威から、守ろうとした」
 「守ろうと……した?」
 それは、カオスヘッダーによって生態系を変えられた死の星の姿、コスモス敗北の記憶。
 「だから私は救いたいのだ。この地球を。この地球だけは、なんとしても」
 ここに来て、コスモスが“地球へ来た理由”が語られるのですが……うーん…………今作の持つ要素を素直に組み立てると、
 〔チームアイズの怪獣保護活動は比較的順調・そこにカオスヘッダーが現れて困難が増す・カオスヘッダーを追ったコスモスが地球へ来てムサシに助力〕
 が一番、カオスとコスモスのバランスが取れて“ウルトラマンの説得力”があったと思うのですが、敢えてそれをせずに来たものが、ここに来て結局コスモスの口からカオスヘッダーとの因縁が語られるのは、少々困惑。
 話をまとめる為にギリギリで出してくるならば、もう少し早めに固めておいた方が良かったのではないかな、と。
 これまで語られざるコスモスの本心を知ったムサシは変身し、カオス会長を蹴り飛ばすと怪獣から早速カオス成分を除去。コスモスを援護しようとしたスピナー2号機が撃墜されたその時、苦戦するコスモスの姿を見つめていた怪獣が、カオス会長へと必殺のロケット頭突き!
 更に防衛軍機が駆けつけてカオス会長に攻撃を仕掛けると、地上では懐かしの怪獣掃除人ナガレ・ジュンヤがミサイルランチャーを構え、防衛軍謹製のキメラミサイル(共同作戦の為に、キャップがデータを送る布石あり)がクリティカルヒット
 弱点属性の直撃を受けて硬直したカオス会長にコスモスはウルトラカラテバーストを叩き込んで勝利を収め、かくしてチームアイズと防衛軍共同によるカオスヘッダー殲滅作戦が本格始動する事になるのだが……ムサシはその歓喜の輪に背を向ける。
 「ムサシ! ……どこへ行くの?」
 以前からそこはかとなく好意を見せる節はありましたが、この終盤、アヤノが折に触れムサシを気に懸ける姿が描かれているのは、おいしい描写。
 「……ドルバを鏑矢諸島へ連れて行く」
 「……ムサシ! おまえの言う、“何か”ってのは見つかったのか? ……吹っ切れムサシ! 迷ってたら戦えない! カオスヘッダーを倒さなければ、俺たちの未来はないんだ!」
 「…………本当に、それしか無いんですか? …………本当にそれしか」
 ムサシの煩悶を、別の普遍性ある命題――「血を吐きながら続ける悲しいマラソン」――と重ねる事で説得力を引き上げる(同時に、命題そのもののアップデートも図る)のは《ウルトラ》シリーズとして巧い仕掛けで、戦う事への惑いを抱えたまま、つづく。

◆第63話「カオス激襲」◆ (監督:根本実樹 脚本:大西信介 特技監督:佐川和夫)
 「迷ってるのムサシだけじゃないよ? ……私だって。……みんなだって」
 カオスヘッダー殲滅作戦の準備が着々と整うトレジャーベースに、P87ポイントにほど近い小惑星で発見された鉱物が持ち込まれ、ムサシ友人の宇宙パイロットが再登場。こういった、サブキャラの継続登場は嬉しい仕掛けです(そして今見ると、高橋一生氏の起用法が超豪華な事に)。
 その鉱物は異星文明の記録媒体であり、ドイガキと吉井の手によりカオスヘッダーに関すると思われる文書の解読が急ピッチで進められる中、カオスヘッダー殲滅作戦の概要が決定。 ダイナマイト カオスキメラを満載した10トントラックもといテックブースターを、カオスヘッダーどもがたむろしているP87事務所に往生せいやーーーーーとぶちまける事となり、その鉄砲玉として、キャップ自らが志願。
 「これは俺たちの本当の任務じゃない」
 「え?」
 「俺たちの本当の任務は、怪獣たちを守る事だった筈だ」
 チームアイズの本義が語られて、チームアイズの描写が結局は軍隊的組織になってしまっている事へのアンサーが、最終作戦におけるキャップの行動原理となるのは、お見事でした。
 「カオスヘッダーさえ倒せれば、俺たちは本来の任務に戻れる筈だ。その為にも俺が、P87ポイントに攻撃に行かなければならない」
 ことカオスヘッダーが出てくるとタマの取り合いになるのは本意ではなかったのだ、と遅まきながらフォローが入り、これ以上、子供らに迷惑はかけられん、ケジメはワシがつける、とオヤジの覚悟を知ったムサシは、カオスヘッダーとの戦いを終わらせる決意を固める。
 そして作戦決行当日――ムサシ機とフブキ機を護衛につけたテックブースターの出撃寸前、狙い澄ましたかのように毒々カンガルー怪獣が出現すると、P87事務所より放たれたカオスヘッダー汚染を受け、カオス化。
 ……前回からの展開を考えると明らかに、トレジャーベース内部にカオス会のスパイが潜り込んでいますが……誰だ?
 「エリガルを救え! それが俺たちの、チームアイズの本来の使命だ!」
 キャップはムサシ機とフブキ機にエリガルの方へ向かうよう命じ、大事の前に小事を切り捨てる事を良しとしたカッパキノコ回のやらかしのリカバリーを図り、「戦争がみんなを狂わせている」的な理由付けにより、最終章に急ピッチで、床や壁に空いていた穴の補修工事が行われていきます。
 ところがフブキとムサシが出撃した直後、P87事務所から続けて放たれたカオスエネルギーが、鏑矢諸島のバリアを吹き飛ばし、防衛軍の戦闘機をなぎ払いながら、トレジャーベースへとダイレクトアタック!
 まさかのカチコミ返しを受けたSRCは、トレジャーベース全域がシステムダウンし、テックブースターが出撃不能に陥ってしまう。
 事態の急変を知らないムサシとフブキ(“怪獣を救う為”のキャップの指示が、結果として二人をカオス会の封鎖の外へ出す事になっているのが、巧い流れ)はエリガルにカオス抗体弾を撃ち込むが、不用意に近づきすぎたフブキが本日もさくっと撃墜され……それこそ、本格的な軍事組織ではない事の表現だったのかもしれませんが、チームアイズは従来シリーズと比べてもよそ見や油断による被撃墜が多い印象で、最終章に至っても、迂闊。
 「コスモス……頼む!」
 コスモスの体調を気遣いつつもムサシは変身し、両腕は凶悪な鎌で、両肩から蒸気を噴き出すカオスエリガルはなかなかの見栄え。
 組み付きからの毒ガス攻撃に苦しむコスモスはエクリプスすると秘拳・毒ガス封じを放ち、怪獣の体組成を変更する事で毒ガスを放てない体質にすると(何それ怖い)、カオス成分の除去に成功する、のだが……
 「コスモス……おまえは、人間のために、怪獣の、体を変えた。われわれが、われわれの為に、怪獣を変化させるのと、どこが違う……? その、どこが、悪いぃぃぃーー?!」
 切除されたカオス成分が顔のような形にまとまると当然のツッコミを入れ、ウルトラマンコスモスとカオスヘッダー、両者の抱える類似性に触れられるのですが、コスモスが怪獣の体質変換までしたのが初めてに近い気がする無理筋感に加えて、コスモスとカオスヘッダーを対比させるならば、やはりもう少し早く仕掛けてほしかったところです。
 カオスヘッダーには当初から、作品コンセプトからすると別に出したくはないのだけれども、年間トータルの悪役的ポジションとして求められたので仕方なく配置しておいた、みたいな雰囲気がありましたが(実際どうだったのかわかりませんが)、その持てあまし感をどうにか劇中に落とし込もうとして、だいぶ強引になってしまった印象。
 物語としての取捨選択はあったのでしょうが、年間のまとまりを考えると、あまりにもギリギリになってしまった感があります。
 「コスモス……どこまでも……どこまでも我々の邪魔を……」
 「なんだよこの声は?!」
 「……まさか、カオスヘッダー?」
 「コスモス、おまえが憎い。我々の秩序を乱す、ウルトラマンコスモス!」
 トレジャーベースを乗っ取ったカオスヘッダーも一つの知性と意思を示し、地球人類からは「カオス」扱いされているけど、カオス会にはカオス会としての「秩序」があるのだ、と名前の意味を逆転する事によりカオスヘッダーの憎悪を強烈に突きつけてきたところで、つづく。
 この最終章に入ってから、脚本間のキャッチボールが行われながら諸々の穴を埋めていく構成になっており、カオスヘッダーなら皆殺しにしていいのか? チームアイズが戦いに前のめりすぎないか? など今作の抱えてきた諸問題に対して、「カオスヘッダーとの抗争が我々を狂わせてきた」のであり、何故、時に拳に訴えてでもこの戦いを終わらせなければいけないのかいえばそれは、チームアイズとしての正道に戻る為なのだ、というのはアイズの在り方としてまとまりの良いアンサーとなりました。
 前回、チームアイズだけが人の業の外に居るわけではない、としてきたのに続いて、今回は、戦いに葛藤するムサシだけが正しい心を持っているわけではない、としてきたのも良かったポイント。
 一方で、全体の構成として見ればウルトラヤクザとカオス会の因縁提示が遅すぎたり、穴の存在そのものはやはり自覚していたのか……と少々もやっとする部分も出ましたが、最終的にムサシが“コスモスを超える答”を見つける可能性が出てきたのは、共生ウルトラマンを一種のメンターとしても置く構造への一石として、期待したいところです。
 ――決戦はラスト2話!