(※今回の日記タイトルは『超獣戦隊ライブマン』より大教授ビアス様の台詞なので、深い意味ありげなCV:中田譲治@耽美調で脳内再生をお願いします)
『機界戦隊ゼンカイジャー』感想・第38話
◆第38カイ!「ご先祖様だョ!大霊界」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:香村純子)
カラフルではクリスマスの飾り付けの真っ最中で、そういえば、パーティ好きだったねジュラン……と初期設定が振り返られて強調されるのが、不幸の前振りにしか見えないのは、警戒しすぎでありましょうか(笑)
12月12日(放映日の翌日曜日)は介人の誕生日、とこちらは明確に前振りが行われ、セッちゃんのトジテンド反応感知は、アギトみたいにきゅぴーーーんと来る事が、第38話にして初判明。
慌てて出撃した介人たちが目にしたのは、カキ……ではなく、頭部はミカン、胸には伊勢エビ、武器は紅白の剣、となんとなくおめでたそうな、イジルデ配下のショウガツワルド。
そして、盆提灯をモチーフに目の縁取りが胡瓜と茄子(精霊馬)をかたどった、バラシタラ軍団のボンワルド。
「クリスマスだっつーのに、盆と正月が一緒にくんじゃねぇよ!」
はいジュランさん、まともなツッコミ早かった。
「いやー、ばったり、そこで出くわしたもんで」
「協力して、戦う事にしたボン」
二人のワルドは仲良く肩を組み、壁王様の差し金による、共同作戦でもなんでもなかった(笑)
「盆パワー解放!」 「正月パワー解放!」
ところが、両者が同事に放ったワルドパワーは衝突して相殺されてしまい、世界そのものの力を展開して法則をねじ曲げるワルド怪人の能力を考えると、これは納得。
問題は、何故このタイミングでそれを見せてきたのか、になりますが、この先の展開の伏線なのか、ただ単に、「盆と正月が一緒に来たよう」をやりたかっただけなのかは、今作では後者が普通にありそうなので判断が難しい(笑)
「ご先祖様、お帰りなさいボン」
金・紫・父が勢揃いしたところで、乱戦の隙を突いた盆ワルドが改めて単独でパワーを発動すると、煙に巻かれた人々のご先祖様が現世に実体化し、ジュランの曾祖父サンジョ、ゴールドツイカー一家の先祖ピラート、そしてステイシーの母リセが出現(地獄)。
お盆で亡き母登場、といえば
「しかしまさか……大和がお姉ちゃんそっくりの人と付き合ってるとはなぁ」
(『動物戦隊ジュウオウジャー』第24話「よみがえる記憶」(監督:竹本昇 脚本:香村純子))
が忘れがたいわけですが、ステイシーは母の手を引いてパレスに戻るとバラシタラに直接抗議に向かうも、盆ワルドを倒さないと霊は消えないが、盆ワルドを倒したら反逆行為とみなす、と軽くいなされてしまい、やはり殺るなら上司の許可を取る前に、ですね!
「色々な世界の女を妻にしてきたが、霊はまだなのでアル」
生前の記憶と人格をそのまま持つらしい霊体母は、息子に対するバラシタラの態度に憤るが、余裕綽々のバラシタラはその肩に手を伸ばそうとしてステイシーに払いのけられ、息子に対する挑発の割合が大きいとは思いますが、破壊力の高いダメ人間ぶりを見せつけてきました(笑)
考えてみるとバラシタラ〔強い・享楽的傾向・息子(王子?)との軋轢〕、割とラスボス属性なのかも。
アース-45では、先祖とのやり取りを通して「トジテンド王朝に逆らうキカイノイド」「海賊行為を一時休止中の海賊」の姿がそれぞれ浮き彫りになるのは成る程面白い仕掛けで、それらがややコミカルに描かれる一方、これまで生死不明だったステイシー母の死亡が明らかになり、ジュラン曾祖父の死因はトジテンド王朝への不敬罪による首ちょんぱ、といった闇が覗くのは、『ゼンカイ』らしいところです。
「ご先祖との交流、あったまってるなー」
「ここで再び、俺の仕事ボン! 盆パワー、レベルアーップ!」
タコ焼き屋と墓参りの一幕を挟んでほのぼのさせてから毎度ながらのワルド仕様でフェイズ2が発動すると、瞳を紅く輝かせた先祖の霊たちによる盆踊りが強制的に全世界を覆い尽くし……じゃなかった、先祖の霊たちが次々と子孫に物理で襲いかかり、今回は随分と直接的。
「ボンワルドが動いたか」
バラシタラから離れる為に再びアース-45へ戻り、連れだって歩いていた母に背後から短刀で切りつけられるも素早く身をかわすステイシーが格好良く、介人達は、ジュラン曾祖父の執拗な攻撃を受けながら、盆ワルド&それを護衛するハカイザーの元へ。
「身内を操って襲わせて……卑怯全開。絶対倒す!」
ジュラン曾祖父を交えたコミカルなフル名乗りと揃い踏みからバトルに突入し、スーパー白はハカイザーとマッチアップ。
一方、フリントを足蹴にするゴールド先祖に激怒したゾックスはツーカイザーに変身して立ち向かい……本来なら、介人(友)との「約束」を優先して、実質的に「海賊」を捨てているゾックスの、在り方の変化(本人の中での、優先事項と落としどころの付け方とか)に、もっと焦点を当てても良さそうなところではあるのですが、介人と連動している都合があるといえ、物語の取捨選択として、ゾックスは完全にステイシーに食われる形に。
基本的にゾックス、海賊云々よりも「家族最優先」のところでキャラクターを立ててきたのですが(身内への情が厚いアウトロー、と連動はしていますが)、海賊行為や海賊としての心性は割と棚上げしてきたのが終盤の地雷にならないかは少々不安な部分。
年明けぐらいに、SDトジルギアを材料にした取引を持ちかけられる……なんてのは、如何にもありそうですが。
「どうしておまえがそんなに怒る?」
「わかるんだよ! 俺も今、父ちゃんと戦わなきゃなんないから!」
盆ワルドの能力に怒りを見せるゼンカイザーは獅子奮迅でハカイザーを足止めし、そこでステイシーに思い至るのが、らしいところで良いところ。
「父ちゃん! いや、ハカイザー! ステイシーの居場所は、わかる?!」
それはそれとしてステイシーへの介人の対応は、時に度を超えて甘く物語に歪みを生んでしまってはいますが、上手い落としどころに辿り着いてほしいものです(そういった帳尻合わせとして、ステイシーには自爆系の香りは漂いますが……どう転ぶにせよ、一度「死ぬ」シークエンスは必要かも、とは)。
襲い来る母から逃走するステイシーだったが、振り切っても振り切っても目の前に現れる母に追い詰められ(ここだけホラー演出)、頭上に振りかざされる短刀。
「さあステイシー、お母さんと一緒にいきましょう?」
どちらかというと、これがやりたかったキャストか、と納得と同事に振り下ろされた短刀が突き刺さる直前、スーパー白が身を挺してカバーリングし、ステイシーを床ドン(ドン?)。
「なぜおまえまで僕を助けた……?」
「……ステイシーも、お母さんも、こんなの絶対悲しいからだよ!」
共に駆けつけたハカイザーが悪霊母を取り押さえている間に、残ったキカイノイド組が盆ワルドを袋だたきにし、これは、仲間を想うハカイザーの気持ちを利用した薄汚い策略というやつなのでは。
「あー悪いなひい爺さん。俺がそっちに行くのはもうちょい後んなるわ」
ゼンカイジュランが曾祖父を取り押さえている間に、幽体離脱キック・箒アタック・肉球キックの連続攻撃からお面バスターが炸裂し、ビルの屋上で使うと反動の結果がスリル満点ですが、今回はあまり後ろには飛びませんでした。
「ハカイザー! ステイシーのこと、よろしく!」
これにて悪霊と化したご先祖様たちは消滅し、ステイシーをハカイザーに任せたゼンカイザー(「手段」としてハカイザーの名を呼びつつ、その中の父を信じている)は戦場に舞い戻ると、ゴールド先祖との戦いが消化不良に終わった金と合体してゼンカイジュウオーに。
「俺は200歳まで生きる!」
「だったら、俺は……!」
(201歳まで生きて後方から見守り続ける!)……とは言いませんでしたが、ゼンカイジュウオー合体シークエンス時の介人とゾックスのやり取りは、二人にお任せ(丸投げ)しているっぽく見えますがもう一つしっくり来ない事が多く、これは声をあてる経験を積んでいる声優さん達とは、ちょっと勝手が違うのかな、と感じるところ。
毎週フルCGバトルは恐らく予算的に出来ない都合と、出番の分散として、だいたい交互に登場する全力全開王と全開獣王ですが、全力全開王の登場後はどうしても獣王に格落ち感がある上、全力全開を出せば金が余り、全開獣王を出せば赤黄桃青が余ってしまうのは、苦しさを感じます。
赤黄桃青は介入可能ですが、それをするとジュウオーの存在感が薄まってしまうのがますます苦しく、昨季に引き続きどうも、「玩具の狙い」と「物語の狙い」が噛み合っていないというか、積極的に噛み合わせる事を企図したであろう今作でもそうなってしまったのは、一体何が悪いのか。
全開獣王のデザインやアクション自体は嫌いではないのですが、フルCGでこれまでにない大胆な画を放り込んでくる全力全開王戦と比べると、バンク必殺技で押し切る形にしかならないのも盛り上がりにくくなってしまい、年末に全力全開痛快ピラミッド王とかひねり出せませんか。
「トジテンドって、ジュランのひいお爺さんの時代から、酷かったんだねぇ」
「だから僕らも、あれが当たり前だって、思い込んじゃってたね」
「んー」
「そうですねぇ」
「でもよ。だからこそ、ちゃんと倒して、俺らの時代で終わりにしようぜ。それこそが、ご先祖様たちへの供養なんじゃね?」
巨大盆ワルドは挿入歌に乗せたツインブレイカーで撃破され、カラフルに戻った介人たちはクリスマスの飾り付けを再開。
閉じた価値観に支配された世界が、別の世界と繋がる事で変わっていくのを前向きに捉える姿は今作全体の構造と共鳴し、過去と現在を交差させながら未来へのビジョンを語る形で終盤戦へ向けて一つギアを上げてきましたが、その変化は、孤独の殻を破り始めた青年の身にも、更なる形で訪れようとしていた。
「どうした? 大丈夫か、ステイシー」
「……なんでもない」
「そっか。話なら……いつでも聞くぞ。仲間なんだから」
悲痛な面持ちのステイシーは、肩に置かれたハカイザーの手をどけると、背を向けて歩き出す。
(僕はハカイザーと五色他介人に、バラシタラと同じ事をしているのか? …………あの憎き父親と同じ事を……)
肉親の別離と戦い……その状況を作り出すどころか積極的に保とうとしている己の行為をステイシーは噛み締め、第36話において、己の欲望の為に誰かのものを奪おうとする事で明確な「悪」の道に踏み込んだステイシーがそれに“気付く”ステップを踏んでくれたのは、ステイシー軟着陸に向けては、希望の出てくる材料。
ご先祖様の登場と悪用を通して「過去と現在(と未来)」「家族の問題」といった要素を連動させて、作品全体の構造を補強してきたのは、香村さんがさすがのテクニックでした
一方トジテンドでは、イジルデを呼び出した壁王様が、先々代大王の体の一部(見た目は、ハカイザーの角部分っぽいパーツ)を手にしていた。
「これを使って、ハカイザーを育ててみんか?」
イジルデさえ驚き怯える、“先々代大王の体の一部”とは何を意味するのか? いよいよ、ボッコワウス大王とは何者か、について触れそうな気配が出てきたところで、次回――これから本当のサプライズをお見せしよう。
……予告映像は終始楽しげでしたが、クリスマスより前倒しされた正月と、誕生パーティでゼンカイジャーを待つものに戦々恐々です。
余談:割と定期的に、霊界ネタをやる気がする東映特撮ですが、「大霊界」といえば、『機動刑事ジバン』第24話「ようこそ!!大霊界へ」(監督:岡本明久 脚本:高久進)が、
突然「何を隠そう。僕が機動刑事ジバンなんだ」と根拠も意味も不明な告白を始める先輩刑事、脈絡なく挿入される大霊界のイメージ映像、「大霊界を見た途端、俺は死にたくなった」と宣いジバンと心中を図る怪人ジサツノイド……
と、出来が良いとは言いがたい『ジバン』全編でもトップクラスに意味不明のエピソードで(意味はわかるが出来の悪いエピソードは数ありますが、この回は、本当に意味がわからない)、未だ忘れがたいエピソードです。