東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

五十嵐兄弟は叩いて直す

仮面ライダーバイス』感想・第14話

◆第14話「司令官は…デッドマン!?」◆ (監督:上堀内佳寿也 脚本:木下半太
 最近めっきり存在感の薄くなっていた銭湯が久々にフォーカスされ、さくらも学校へと通い、嵐の前の静けさとして崩壊の予感を孕んだ日常が描かれるのですが、特にさくらの学生生活については、ライダー変身前に見せておいてほしかったかな、と。
 学園描写は手間がかかるので、そこに空手道場を代入していたのでしょうが、日常の大きな部分を占めるピースが欠落したまま仮面ライダーになってしまった事で、“何のために戦おうとしているのかよくわからない子”になってしまった感。
 大二が狩崎らとフェニックス内部の裏切り者について話を進めている頃、デッドマンズでは、生け贄の選定儀式の前には自由行動~という事になり、初期から居るアミーゴトリオはともかくとして、劇中で大してインパクトのある悪事をしたわけでもない二人が雑に生け贄本命候補にされているのが、復活前からギフ様の株まで下げて、大変不安を募らせます。
 灰谷はさくらの学校に乗り込んで真正面から嫌がらせを敢行し、まあ、元々よくわからない人だったのですが、更によくわからない人に。
 一輝を襲うカンガルー弁護士の方は方で、肉をむさぼり食う乱暴者、という月並みな描写かつもはや新キャラになっているので、改めてキャラクターとしてのインパクトをつけ直す方針としてはわかるのですが、後でちょっとした問題を生む事に。
 そもそも、「悪魔の力で欲望を満たしたい」と「ギフ様の生け贄になりたい」は全く違う話なので、生け贄候補に「生け贄候補でーす」と言ってはいけないというか、散々好き放題した後で「あなたはもう、後戻りできない生け贄でーす」と宣告する、ある意味で普通の見せ方の方がむしろ残酷なインパクトがあって良かったのではと思うのですが、工期が迫っている都合により、メゾン・ド・ギフ様は、耐震工事そっちのけで建築が進められていきます。
 とはいえ生け贄問題に関して、“ギフの花嫁”としてデッドマンズに育てられてきたアギレラの中では全く矛盾が無いのは伝わってきますし(ただ、作劇としては間に入る人が居た方が無難だったかなと)、カルト教団としての悪の組織の描き方は、時にヒーローサイドがカルト的な閉鎖性を孕む危うさを考えた時に、「五十嵐家」との対比として面白いスパイスなので、上手く転がってほしい要素。
 銭湯も学校も襲撃状況はコミカル成分多めに描かれ、序盤に対する反応が演出に反映されてくる頃なのかなとは思われますが、“学校をデッドマンズが襲撃”に現実味を感じられていない、と解釈するにしても、ほぼ素で笑っているようにしか見えないモブクラスメイトとか、変身する為の言い訳としても表向きは友人を見捨てて「急用」でその場を去ろうとするさくらとか、トイレのおふざけとか、「混乱状況の中で生まれる笑い」というより「緊張感を破壊する笑い」になっていて、話に大変、没入しにくい事に。
 なんとか、さくらを魅力的なキャラにしよう、という模索は窺えるのですが、その結果が、自分で「かっちーーん」と言う子になったのは、出力ミスなのでは……。
 一方、狩崎の部屋を盗聴していた若林は隠し倉庫へと侵入するが、それは裏切り者をおびき出す為に狩崎が仕掛けた罠であり、大二・門田・狩崎に囲まれる。
 「司令官……なんでデッドマンなんかに……」
 「……なんの事だ?」
 「とぼけるな! あなたが裏切ったせいで多くの隊員が犠牲になってるんだ!」
 私情もありつつ、仲間のことを思って感情を爆発させるのが、門田さんのいいところ。
 ……まあ、全体のバランスとしては、大二の好感度上昇に繋げた方が良かったのでは?? 感は激しくしますが。
 某仁良課長みたいになってきた灰谷に対してさくらは友人たちの前で変身し、弁護士デビルに「おまえは人の気持ちがわからない日本一のエゴイストだ」となじられたリバイは急に物凄く動揺し……いや以前にも、ニュアンスは違いますが、母親から「人の気持ちがわかるようになりなさい」と言われていたよーな。
 その上で、カゲロウの主張を「おまえは悪魔だから、全部デタラメに決まってる」と切って捨てていたよーな。
 さくらにしろ一輝にしろ、過去の事件で関係のあるキャラと絡めているようで、上述したようにどちらも実質新キャラなので因縁の燃焼に無理が生じており、スカイベースの方では門田さんは若林を尊敬していた! が無から発生し、納得は出来る範囲なのです、それやるならもう少し仕込みが無いと効果が弱く、とにかく段取りの悪さが目立ちます。
 戦いに身が入らないリバイは、「そのままでいいんじゃね。お節介で何が悪い。エゴイストで何がいけないんだよ」とバイスに言われて立ち直り、両者の関係性がホント雑に積み上げられていく上に、前回今回と、棒立ちで会話するヒーローをダメージを受けているわけでもないのに生暖かく見守る敵のシーンが、さすがに多すぎでは。
 「バイス……俺を殴れ!」
 からハンマー、はちょっと面白かったですが、
 「俺は、俺だ!」
 叩かれた衝撃でスタート時点に巻き戻ってしまい、本当にそれで良かったのか。
 「そういうところが、不愉快なんだよ!!」
 ……気持ちはちょっと、わかります(笑)
 もはや今作十八番といえる、「通り一遍の台詞を置いてそれらしくする」だけなので一つ一つの言葉に厚みが全く生まれてこない、がまたも肝心なところで発動しましたが、すっかり世話女房なバイスも一応悪魔なので、「一輝は一輝の好きにやればいいんだよ」には含むところがありそうというか、含むところがあってほしい。
 バリッとリバイは氷河期武装で弁護士デビルに猛攻を浴びせると、組体操の精霊を3体同事召喚し、120%唐突な新機能で今回もバイスの存在そっちのけ。
 それでも決めポーズには一緒に収まろうとする姿が面白みといえば面白みですが、段々、“男を駄目にする連れ合い”みたいなポジジョンになってきたバイスの明日はどっちだ!
 弁護士デビルと灰谷デビルは、それぞれバイスとジャンヌに撃破されるもオルテカとフリオによって身柄を回収され、一方、スカイベースでは……
 「……俺には……撃てません」
 「……門田。……おまえは……真面目だな。――そんなおまえに、教えてやろう。絶望的な、真実をなぁ」
 苦悩の末に銃を下ろした門田を羽交い締めした若林が豹変すると、本物の若林は第1話の入学式の間にカメレオンデビルに殺害されていた事が判明し、成り代わった偽若林が、目と歯を剥いてグラシアーースと高笑い。
 圧倒的な戦闘力で門田と大二を制圧したカメレオン若林に、狩崎は今こそ筋トレの力を見せ……ずにお目当てのギフスタンプを放り投げ、いったい、何のための罠だったのか(まあさすがに、発信器ぐらい仕掛けていそうですが)。
 尊敬する若林の死に門田は慟哭し、フェニックスパートのドラマに大二が全く関わってこない事にもビックリしますが、これもまた、門田さんの退場フラグなのでありましょうか……不安。
 デッドマンズベースでは、カメレオン・灰谷・弁護士の3人が生け贄として認められるが、オルテカの口から、最後の生け贄はアギレラ自身である事が明かされて、つづく。
 デッドマンズ周りの巻き方から如何にもでしたが、ああまたそういう構成なの……? という感じになってきて、果たして誰が消えて、誰が生き残るのか。
 それがスリリングでドラマチックかというと、なるようにしかならないだろうから、年明けに新展開となるなら、そこで捨てたものより得たものが多ければいいけど……ぐらいな気持ち。
 悪の組織の賞味期限問題(話が進めば進むほど必然的に株が下がりがち)は特撮ヒーロー物につきまとう課題であり、その一つの解決手段ではあるのですが、過去の例を見る限りでは、今の鉱脈をあと数十メートル掘り進めば金脈にぶつかったかもしれないのに、この鉱山は廃鉱だ! とあっさり新天地に移住した結果、目新しさはあるけどろくな物が採れなくなる事が多い印象。
 無論、そういった過去作の問題も踏まえて思わぬ展開にしてくる可能性もまだありますが、次回、デッドマンズのパーティに、東映名物サプライズなカチコミ。
 若林のオジキの弔い合戦じゃぁ!!