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遠くの星から来た理不尽

ウルトラマンコスモス』感想・第55話

◆第55話「最終テスト」◆ (監督/特技監督:村石宏實 脚本:武上純希
 ナレーション「その日は、ムサシ隊員にとっても、ヒウラキャップにとっても――そして、人類にとっても、未来が試されるテストの日になったのです」
 ムサシは「怪獣との共生」についてのレポートをヒウラに課され、そのヒウラはサワグチ女史に呼び出され、第44話以来の村石&武上で、ヒウラ×サワグチに一つの決着が付くと共に、第7話で登場したガラモンぽいのの背後関係が描かれる事に。
 「互いに息を潜めて生きていく事が、おまえの言う、理想的共生、て事になるのかな?」
 「そうですよね……もっと、互いに助け合って生きていけるんじゃなきゃ、意味が無いですよね」
 「ああ。でもきっとなにか、道がある筈だ。それを探すのが、今回のテスト問題だろ?」
 より前向きな関係に向けて道を模索するムサシだが、鏑矢諸島に飛来した謎の光球が、ちょっとアナクロな異星人衣装の少女の姿となると、今はピグモンぽいのに接触し、それを止めようとしたムサシも拘束されてしまう。
 「ガモランは人類に課せられたテスト問題よ」
 「……テス、ト?」
 「この星の文明が危険かどうか測定する為のテスト」
 これはテストなので侵略活動ではありませーん、と宣言する銀河共和同盟からの試験官だが、テストだったら生体兵器による破壊活動が正当化されるわけではないので、丸め込まれるなムサシ!
 「力には力を持って制するしか、地球人は方法を持っていない。それでは、文明人とは言えないわ」
 地球文明の成熟度を測るのにイレギュラーなコスモスの動きを封じた試験官は、再び怪獣兵器と化したガモランを市街地へと送り込み、先制攻撃で街を蹂躙しながら、殴り返してきたら野蛮人認定しようと待ち構えている理不尽さと基準の押しつけが、実にアナクロな先進高度宇宙文明感満載です。
 試験官少女の衣装など見るに、意識的に、“ちょっと古めのSF(円谷感)”をやりたい意図だったと思われますが。
 ガモラン攻撃の決断を迫られるチームアイズだが、人と怪獣の共生の答えとして、攻撃以外の手段を提案するフブキは、鏑矢諸島から借りてきた同族を戦場へと投下し………………あの、これは……
 人質
 というやつなのでは。
 戦闘機の下部ハッチがぱかっと開くとそこから吊り下げられるミニ怪獣の姿といい、拘束されたまま(風船を取り付ける都合ですが)ぼてっと地面に転がる姿といい、画が最悪すぎて、地球人の心証が……!
 そして、ガモランがミニ怪獣に気を取られている隙に背後からレーザーワイヤーを引っかけ、力には卑劣な策をもって当たるのが、正しい文明人の対応ですね!!
 そのままガモランを宙吊りにして運ぼうとするアイズだが、転んだミニ怪獣を見失ったガモランが暴れ出してしまい、試験に成果を出した後の不測の事態とみなした試験官がムサシを解放して、コスモス出現。
 「後は頼むぞ、コスモス」
 不在のムサシを代弁してみたり、あっさりとコスモスに後を任せたり、フブキの芝居は完全に、ムサシ=コスモス認識でやっている感じ(後アヤノも怪しい)。
 ガモランの破壊光線を回避したコスモスは、洗脳装置にウルトラ張り手を叩き込むと、コロナ……はスキップしてイクリプスし、ガモランを沈静小型化。
 試験官は「共生不可能とも思える怪獣と手を取り合おうとしている」から合格! と飛び去っていき、この言い方を額面通りに受け止めると、怪獣と共生している惑星の方が希少事例の疑いが強くなるのですが、やはりテストのポイントは「正面から殴り合わずに頭を使う」事だったのでは……。
 あとムサシ、
 「試験は合格だったんだ……」
 と、理不尽を笑顔で受け止めすぎで、この人達、主張と思想性はともかく、やっている事はノワール星人の同類なので、これが諸先輩方だったら、「本当に必要な文明の姿を教えてやるぞゴラァ! ウルトラ一家のメンツ潰して小指で済むと思っとんのか!」と相手の母星に乗り込んで以下略するレベル。
 ムサシ拉致と怪獣出現の緊急事態に、すっかり忘れていたサワグチ女史との約束の場に急ぐヒウラだが、女史の姿はそこにはなく…… 既に機上の人となったサワグチが空港職員に託していたメッセージを受け取ったヒウラは、サワグチがジェルミナ3に赴任する事になり、数年の間、地球を離れる事を知る。
 (行くべきか残るべきか……あなたの心を試す最終テストのつもりでしたが、大学時代と同じ、やっぱりヒウラちゃんは落第点でした)
 「抜き打ちテストかよ~……そりゃないよサワグチくーん」
 (P.S 次に地球へ戻るとき、もう一度テストをやりなおします。テストを受ける気があるなら、女心をお勉強してそのチャンスを待ちなさい)
 「……ハイ!」
 ヒウラは追試に闘志を燃やし、なんだかんだヒウラキャップにだだ甘なサワグチ女史であった、でつづく。
 以前にも書きましたが、ヒウラを別の角度から見せられる点でサワグチ女史は割と好きなゲストキャラだったので、キャリアのある女優さんを配していた事により、随所に挟み込む空港で待っているシーンだけで雰囲気を出しながら、未来へ繋げた着地点は結構良かったです。
 構造的には、一歩間違えると以前の「奇跡の花」回の二の舞になりかねないところでしたが、「女史との約束は気になるが、人生の肝心な所で部下と仕事を選んでしまう男」(だから女史もヒウラを嫌いになりきれない)のが、戦場と空港の距離を離す事で上手く成立しましたし、そこにムサシも巻き込んで、冒頭に「テスト」のキーワードで全て一つに関連づけてしまうのは、武上さんがベテランの技。
 共生テーマについては、最終盤への引きを作りつつお茶を濁した部分も出ましたが、テーマ偏重になりがちな『コスモス』にしては珍しく、ミニモン大作戦によりテーマ云々と離れた所で変な面白さが飛び出したのは、個人的には好み(笑)
 次回――今度の挑戦者は、地球最強の力士だ!