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伝説の樹の下で待っているのは誰か

仮面ライダードライブ』感想・第43-44話

◆第43話「第二のグローバルフリーズはいつ起きるのか」◆ (監督:石田秀範 脚本:三条陸
 真影の工作で計画の中断していた、国家防衛局の対機械生命体部隊、特殊状況下防衛センターも稼働を始め、ロイミュードは、いよいよ残り22体――進ノ介は、チェイスから霧子への恋愛感情を問われ、激しく動揺していた。
 「ない! 絶対ない!」
 と執拗に否定するも、脳細胞はオーバードライブ。
 (……あぁー……今、繋がった……)
 霧子のイベントCGがタイプ:ラブコメで進ノ介の脳裏を駆け巡り、
 (……俺って、 Mだったんだ 霧子に惚れてたんだ。……ずーっと)
 進ノ介と霧子に関しては序盤から相棒関係をきっちり組み込んでいたので、三条脚本にしては唐突感は薄く、収まるところに収まった感じではありますが、チェイス問題の解決後、霧子の存在感がしばらく薄くなっていたのは、惜しまれます。
 「変装するならともかく、メガネとハンカチから離れないといけないのでは?」
 「うるさい! 君にはわからないかもしれないが、これが私の、アイ、デン、ティティーなんだーーー!」
 逃走中のブレンはメディック率いる死神ミュード部隊に包囲されるも、3ライダーが乱入する混戦となって、死神ミュード部隊を雑に撃破。メディックは姿を消し、ブレンは毒霧を放って逃走を続け、進ノ介たちは蛮野がロイミュードの主導権を握っている事を知る。
 ベルトさんの推測によれば、4人の超進化体が揃った時に起きるのは恐らく、全世界の完全な同時静止。
 ようやく、「第二のグローバルフリーズ」について詳細が語られるのですが、とにかくこれが曖昧すぎた事で、ロイミュードの大目標が話を引っ張るミステリーとして機能せず、それにともない進ノ介サイドの対応も場当たり的なものに終始してしまったので、もう少し早めに明かすか、せめて情報を小出しにして推測の面白さを散りばめてほしかったところ。
 「剛、聞いてくれ」
 「……なんだよ?」
 「俺は霧子を愛しているようだ。霧子は誰を愛していると思う?」
 教習所ではチェイスの豪速球に剛が茶を吹き、捜査中のトライドロンでは進ノ介からの恋愛相談にベルトさんが煙を噴いていた。
 「そういう事を、私に聞くかね?! 私、ベルトだよ?! しかも、研究一筋で、生涯、独身だったんだぞ!」
 ついでに、人の心とか無いですしね……。
 「でも嬉しいよ、進ノ介。君が人間的な悩みを私に打ち明けてくれて。始めてじゃないか?」
 進ノ介父の問題で暴走気味だった時も、特に相談しませんでしたからね! というか、課長とベルト野郎が色々知っていたのにだんまり決め込んでいたのでそういう空気じゃ無かったですからね!
 「……そうかもな?」
 「ふふ、なんだか、回路が、暖かい。私は家庭を持たなかったが、家族と一緒に居ると、こんな気持ちになるのかもしれないね」
 ……まあ、父の問題が解決したからこそ、というニュアンスがあるのかもしれませんが、進ノ介とベルトさんの仕事以外の部分での心理的接近は、せめて3クール目ぐらいにはやっておいて欲しかった所であり、今回、もう少し早くから仕込んでおいてくれればな……という要素が次々と投入されて、困惑します(笑)
 メディックを救う手立てを見つけようとするブレンは中央情報局に潜入し、グローバルフリーズの日、そこで出会った人間をコピーしていた事を思い出す。
 「そうか……全てこの青年の模倣だったのか」
 もとよりロイミュードが、素体とした人間の感情や執着を肥大化させる傾向は繰り返し描かれていましたが、強い自我を確立していたと思い込んでいたブレンが、自分が何者なのかを悟る寂しげな表情と言い方は良く、こういう奥行きが! もっと色々と欲しかったわけなのですが!!
 「イエース。ロイミュードの心など――」
 「クリム・スタインベルト?!」
 「全て、コピーの産物に過ぎないよ」
 そこに黒づくめのクリムとゴルドドライブが現れ、蛮野の支配下にあった004は密かにクリムをコピーし、その頭脳により影で様々な開発活動を行っていた事が判明。
 ブレンを追うバンノドライブを止める進ノ介は、コピーガードしたシフトカーで変身するが、フォーミュラ砲を召喚されたハートがカバーリング
 「ハート! 馬鹿な! 何故そんな奴をかばうんだ?!」
 ……いやでも別に、銃口そらす必要は無いのでは?(笑)
 「盾になれと命じられれば、今は、そうするしかない。メディックの、為だー!」
 ハート様は咆哮し、終始、横でよくわからなくうろちょろしていた霧子が広範囲爆発に巻き込まれて、つづく。

◆第44話「だれがハートを一番愛していたか」◆ (監督:石田秀範 脚本:三条陸
 いきなり特殊状況下防衛センターが稼働して戦いの規模が大きくなるのは、『アギト』や『ファイズ』最終盤の悪いところを参考にしてしまった感がありますが、りんなが開発した試作型ぴこぴこドライバーにより、課長は仮面ライダー純に変身。
 「特別な資質の無い者でも、これで仮面ライダーになれるんですよ」
 ……むしろ、特別な資質が必要な事を、今始めて聞いたのですが。
 まあ、進ノ介と剛のフリーズ効かない案件がありますし、剛は適格者として育成されていたような話だったので、そういうものがあったという事なのでしょうが……ますます進ノ介に対する騙し討ち感が酷い。
 仮面ライダー純は途中で行動不能になるギャグで片付けられ、進ノ介から見舞いの花束やケーキの数々を押しつけられたチェイスは、病室で霧子にも豪速球のストレート。
 「もういい。答はわかった。俺は知っている。人は時に、悪意ではない嘘をつく。…………これが失恋、というものか」
 出会う人みな撃ち殺す勢いのチェイスは、激しく狼狽する霧子の様子に本心を悟り、病室を後にしながら無表情のまま涙を流すのは良かったです。
 (だが、この胸の痛みがむしろ誇らしい。人間に近付けたような気がする。俺は霧子を愛している。だから、彼女の愛を守るために戦おう。人間が未来へと紡いでいく、その絆こそが――愛だ)
 よーーーーーーーーーーーーーやく、「プロトドライブとしてのプログラムがそうだったから」を上書きするチェイスの“戦う理由”が形になり、長い、長かったな、チェイス……長すぎて、主題がどこか消えてしまっていたな、チェイス……。
 一方、何やらメディックの体の秘密に気付いたブレンは逃走を止めてバンノに服従を誓い、土下座。
 「ブレン……おまえだけは……俺を裏切る事は無いと信じていたのに!」
 「私は賢いのですよ。……あなたと違って。あはははははは!!」
 004の開発した制御装置――大怪球フォーグラー……じゃなかった、シグマサーキュラーを手に、いよいよ第二のグローバルフリーズを起こそうと蛮野一味は動き出すと、“約束の地”と思われる湖畔で、シグマサーキュラーに向けて4人の超進化体のエネルギーを放射。
 それを食い止めようとする3ライダーは004以下のロイミュードに阻まれ、遂にシグマ球にエネルギーが充填されてしまうが、それはその場で第二のグローバルフリーズを起こすものではなく、超進化体のエネルギーを吸収して蛮野が自由に扱う為の装置であり、更にその余剰エネルギーが、メディックに目がけて逆流していく!
 基本的にバンノドライブが薄っぺらいので何をやっても盛り上がりが薄いのが大前提としてあるのですが、シグマサーキュラーも余剰エネルギーの発生と逆流も、物語の構造上の美とほど遠く、メディックを命の危機に陥らせる為だけに壁から都合良く生えてきた舞台装置でしかないのが本当に残念。
 故に、蛮野がまたこんな酷い事をしているよ! とリアクションされても、ロイミュードを道具としか思ってないの今更だしな……とますます空虚になり、とにかく、細部と全体の一致も、散りばめてきた要素の結合もなく、ハリボテと床の穴だらけの舞台で、芝居のテンションだけが高い事に。
 「私は幸運だ! 今、全ての流れが、私に味方している!」
 膝を付いたままバンノは勝ち誇り、とにかく、その場の全員が地面でジタバタしながら会話している状況設定が物凄く間抜けなのですが、途中で逆流したエネルギーを自らにスライドさせたブレンが、大爆発。
 「なぜですの?! あれほど貴男に、酷い仕打ちをした、私の為に……」
 「知りたいのはこっちですよ。あんなに妬んだあなたを……多分、貴女の一途な想いに、共感したからかな」
 「……ブレン」
 「それに、ハートが一番愛している仲間は、貴女だ。彼の笑顔を、取り戻したかった」
 親愛なるハートの為、自らが犠牲となってメディックの洗脳を解除したブレンは錆びた金属の粒子となって消え去り、激高したドライブらは残りの雑魚ミュードをまとめて撃破。
 「俺はロイミュードに同情なんて、しない! そう思ってたけど、今は、超あったまにきてるぜ!」
 狂ったように笑い続ける金ドライブを守ろうとするからではあるのですが、それはそれとしてロイミュードは殲滅だーなのは、作品設定の陥った限界を感じさせられます。
 チェイスに至っては無言で斧を振るうばかりなのですが、本人としてはロイミュード陣営時代は洗脳の記憶以外無いのかもしれませんが、やはりここの糸も残してげておいた方が良かったよなーと。
 「泊、進ノ介……こいつだけは、お前に倒させない」
 「……ハート」
 「蛮野は、俺が倒す」
 3ライダーが金ドライブを囲む中、立ち上がったハート様が垂れた前髪で片目を隠しながら凄むのは格好良かったです。
 だが、湖畔にドライブたちを集めたのは最初からバンノの罠であり、シグマ球を手にしたバンノは電磁フィールドでドライブらの動きを封じ込めると、自らはさらっと飛翔。
 「私に従わない者は、全てこの場で消えてもらおう! さらばだクリム! 仮面ライダー! ロイミュード達!」
 004の自爆にドライブ一同が巻き込まれ、高笑いするバンノドライブは真の“約束の場所”を目指し、つづく。
 ブレンが王の腹心の道を貫いて退場し、真の巨悪が登場してロイミュード側に感情移入させる作りに食傷を感じてしまうのは、今後の諸作を見ている為でタイミングの問題もありますが、肝心の巨悪の薄っぺらさと、作品構造における美の欠落は、極めて残念。
 次回――うーん……。