『ウルトラマンコスモス』感想・第35話
◆第35話「魔法の石」◆ (監督/特技監督:原田昌樹 脚本:川上英幸)
街中で不審な行動をするカワヤを見かけ、法に触れる前に身柄を確保するシノブとムサシだが、カワヤが追いかけていたのは同僚の右田医師であり、その右田が訪れたのは、不気味な雰囲気の赤い館――
「超人になった?!」
キャッチボールをしていた右田が160キロの豪速球を投げたり、数日で新薬を開発してしまったり……急に脅威的な能力を発揮し始めた事をカワヤは語り、
「あいつは俺の一番弟子だからなー。ちょっと心配なんだよ」
「突然の能力の開眼によって」
「自分の地位が奪われる事が……」
「そう。またトばされちゃうよ俺。離れたくない」
「トばされて」
コミカルな一幕を挟み、再び右田を追ったカワヤは赤い館の中に招かれるが、面接試験で不採用。代わりにシノブが潜入する事になり、「マイスゥイートエンジェル」と手の甲に口づけしようとしたカワヤ、今回はちゃんと腕を極められました。
全体的にレトロ風味の描写と展開で、もしかすると作品として、地球怪獣登場エピソードは『コスモス』独自路線を取る分、侵略異星人エピソードは古典に寄せる、といった方針があったのかもしれません。
概ね、今作の異星人、地球に対して理不尽ですし(元来そういう部分があるわけですが、地球における「人間」の行為を「侵略者」に投影している要素はありそう)。
シノブの入手した情報により、右田らが崇めるようにしていたラグストーンと呼ばれる石から放たれた波動は、人間の脳の眠っていた部分を目覚めさせて運動神経や学習能力を引き上げる一方で、感情を司る部分の脳波を吸収している事が判明。つまり石の波動を受け続けた人間は超人的な能力を発揮する代わりに、やがて機械のように自由意志を失ってしまうのだった!
これは効率的な奴隷集めなのではないか、と推測したアイズがラグストーンの元に向かうと、ストーンは巨大な怪獣と化し、それを操っていたUFOが出現。
強烈なぶちかましでコスモスを吹き飛ばした相撲怪獣はコロナの必殺光線すらはじき返し、ギャラクシースモウに苦しむコスモス。土俵際に追い詰められたコスモスだが、カワヤのアドバイスを受けてルナに戻ると、怒りと相反する感情を注ぎ込み……つまりこれは、オコリンボール(『ウルトラマン80』第20話に登場する怪獣。凄くシリアスかつ日本中が大規模な被害を受けるエピソードなのに、何故かこの名前)の生き残りだったのか。
「愛だよ、愛」
挿入歌が格好良く入って、それを見上げるカワヤは呟き……この人、出会った女性を次から次へと口説くが全て本気、という大変タチの悪いタイプだ。
吸収した人間の感情を失ってバラバラになった相撲怪獣を回収したUFOは飛び去っていき、ひとまず平和を取り戻す地球圏。ラグストーンに操られて気絶していたリーダーが病室で目を覚ますとベッドの脇にはカワヤの姿があり、感謝の念から思わず両手を握りしめたリーダーは、その場面を見舞いに来たムサシとアヤノに目撃されてしまう。
リーダーに重い失恋話を作った責任を感じてか、カワヤの初登場以来、リーダーとカワヤ医師を接近させようという闇の組織の勢力が活動を続けているのですが、ムサシが気楽に「お似合いですよー」という一方、「似合わない」と拒否反応を示すアヤノの汚物を見るようなカワヤへの視線と嫌悪感が、大変リアルです、はい。
怒りん坊事件とは別に、新型テックサンダーの開発と試験、アヤノとフブキの将棋対決の一コマ、その光景に何かを閃くドイガキ、と今後の布石が挟み込まれたのを、全体のテンポと雰囲気を崩さずにキャラに愛嬌をつけながら描いてみせるのは、原田監督の腕。
…………しかしSRCは、新型戦闘機の開発よりも、捕獲装備の改良に予算を使った方がいいと真剣に思うのですが。
次回――なぜ、今作の妖怪系怪獣デザインは、やたら気合が入っているのか(笑)