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妖刀ひらめく

地球戦隊ファイブマン』感想・第37-38話

◆第37話「人間大砲!」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 5文字縛り傑作選に是非入れたいサブタイトル(笑)
 謎の黒アーマーに追い詰められる黒黄桃。星川家伝のスピンキックさえ弾き返すそのアーマーの正体は、実験強化装備を身につけた青だったが、戦闘テスト中にアーマーが火花をあげ……
 「危ない!」
 のところでサブタイトルが入るのが、冴えます(笑)
 アーマーの爆発に巻き込まれた青が変身解除級のダメージを受けて地面に倒れると、弟妹たちの悲痛な叫びは滝壺に吸い込まれ……科学の進歩の為には、犠牲が不可欠なのだ。


 「なにが反重力ベルトだよ?! もー!」
 「私たちを殺す気?!」
 「ごめん! ……今度こそ、必ず」
 「え!? まだやる気かよ?! 冗談じゃないぜ。御免だぜ俺は!」
(『電撃戦隊チェンジマン』第19話「さやかに賭けろ!」)

 「健、大丈夫か?」
 「……冗談じゃないぜ兄貴。こいつのどこがスーパー結晶の新合金なんだよ。……おまけに重くて、動けやしないし。こんな役、もう二度と御免だからな!」
 「……ん? あ! 待て、健! 失敗の原因がわかったぞ! ほら、これを見てくれ! ここに不純物が混ざってる」
 肉親を肉親とも思わぬ非道な人体実験に怒り心頭の健だが、根が科学の人=東映ヒーロー時空では自動的に頭にマッドが付く人達と限りなく紙一重な学は弟の様子に全く気付かず……くしくも今回、第35話と対をなすような構造になっているのですが、学兄貴がこんな実験を繰り返していたとしたならば、ソロでレイドボスに立ち向かわせたい気持ちになっても、仕方ないような気はしてきました(笑)
 「ファイブマンも落ちたもんだな。……そんなもんに頼って強くなろうなんて、だいたい俺はそういう根性が気に入らねぇんだよ」
 「健、それは違うぞ」
 学は、シュバリェの脅威に対抗する為に出来る事は全てやるべきだと語り……ここ数話の流れを受け、運命共同体としての性質が強かった星川兄妹の間に意見の相違からの不和を描き、兄妹の関係性に凹凸とそこから生まれる陰影を付けると共に、これまで取り上げていなかった“シュバリェへの対抗手段”を持ち出す事で説得力を付加してグッと物語の精度を上げてくるのは、さすがの腕前。
 シュバリェ登場後の立て直しが軌道に乗り始め、第一期(スタートから中盤まで)・第二期(諸々の迷走期)を経て、いわば第三期に入ったといえる『ファイブマン』ですが、この腹筋の強さには、当時のスタッフの地力の高さが窺えます。
 「それならなおの事、体を鍛え、もっと技を磨くべきだぜ!」
 最後に物事を解決するのは、筋肉!
 ファイブテクターの開発を進めようとする4人+アーサーに健は背を向け、第35話では、兄妹から不信任を突きつけられた学が一人で戦う事になったのが、今回は兄妹の姿勢に不満を抱く健が一人で離脱する構図に。
 「父さんと母さんに貰ったこの体に、不可能はないぜ!」
 バックボーンの提示として鮮やかな台詞と共に独り山ごもりして修行に打ち込んでいた健だが、そこに現れる如何にも硬そうな合身銀河闘士・サザエマジロギン。
 ドルドラ自慢の銀河闘士には青の攻撃が一切通用せず、4人が駆け付けると即座に「気をつけろみんな!」と青が声を掛ける事で、筋トレのメニューを巡る対立はあったものの、それははそれこれはこれ、と第35話の失点もカバー。
 だがファイブマンは、サザエの吐き出した剣と盾を身につけて強化されたザザ&戦闘員に手も足も出ず、真っ向から壊滅の危機に。
 やむなく赤は、最後の切り札としてスーツのリミッターを解除すると捨て身の突撃を仕掛け、ここまで上手く転がしていただけに、秘密兵器がかなり唐突になってしまったのは勿体なかったですが、いざとなったら学アニキは(実質的な)腹マイトを辞さない点は、凄く説得力がありました(笑)
 基本、ゾーンを倒した後の未来志向を持っている戦隊なので特攻精神は薄めなものの、最悪の場合はバルガイヤーにさえ乗り込めれば刺し違える準備は出来ているところを見せつけた学の攻撃により、さすがのサザエマジロも大ダメージを負うが、その代償として瀕死となった学を健らは発見。
 「あの時、ファイブテクター作りに協力していれば……兄貴をこんな目に……すまん! 兄貴ぃ!」
 ドルドラさんはすかさずゴルリン32号を召喚し、Aパートにしてサザエ巨大化。
 すかさずファイブロボが召喚されるが、巨大サザエには超次元ソードも通用せず、続けてスターキャリアが発進。だが、SFロボの拳さえサザエには軽々と受け止められ、必殺のスーパーベクトルパンチも……腕、もげた(なおこれが、衝撃の伏線)。
 「巨大サザエマジロギン! そろそろお返しをしておやり!」
 ドルドラさんは、絶好調だと、こちらも見ていて楽しいのが、いいキャラだなと思います(笑)
 「念願の1000個目の星、今こそシュバリェが、メドー様に捧げましょう!」
 「おお! 遂に永遠の命をうる時が来たか」
 バルガイヤーでの一幕を挟み、サザエの猛攻を受けたSFロボは海中に投げ込まれ、損傷箇所から浸水。3作目にしてパターン化に見えてしまう難点(長期シリーズ物の宿痾)の出ていたスーパー合体ですが、スーパー化しても完敗、というスパイスが盛りこまれる事に。更にサザエの追撃を受け、本日2回目の全滅の危機に陥るファイブマンだが、意識不明の学が譫言で口にした「ファイブテクター」の言葉に、健がひらめキーング(最近、文末に凄く便利な事に気付いてしまって……)。
 「兄貴! ファイブテクターを俺に任せてくれ。兄貴……ファイブテクターの、ファイブテクターの、パワーを見せてやるからな」
 鍛え上げた筋肉を駆使し、単独で海面まで浮上した健(コックピットに意識不明の学を運び込んでいるので全員が脱出できない事情は設定されているものの、普通に泳いで脱出できたのは、ピンチ台無し感が強くなってしまい惜しい)はマグマベースへ向かうと、アーサーが完成させていたファイブテクターを受け取り、装着。
 肩・腕・脛に、追加装甲を身に付ける形となり(肩の模様で胸のVマークが延長)、今時の「スーパー化」と比べるとだいぶシンプルですが、名前からも「プロテクター」のイメージかと思われ、当時のローラスケートやスケートボードのブームの反映でしょうか。
 「今に見てろー!」
 誰にともなく新装備をアピールした青は、なんとか地上に戻ってくるもサザエの攻撃に倒れたSFロボに近付くと、ジェットナックルの発射口に潜り込む。
 ……え。
 ……い、いや、次回予告の映像でバッチリ見ましたが、それでもなお、え?
 「文矢!俺を撃て!」
 「兄貴! 無茶な事を!」
 「あの時兄貴は体当たりで俺たちを守ってくれた。――今度は俺の番だ!」
 次回予告の衝撃映像通りに、ファイブテクターを身に纏った青は自らを弾頭とし……凄く、初期星川兄妹です(笑)
 ここに、第一期『ファイブマン』と第三期『ファイブマン』が奇跡の融合を見せ、
 「今だ!」
 「あ~~~! 健兄貴ー!」
 南無三、と文矢がスイッチを押し込むと、射出の瞬間に学が目を覚まし、復讐と狂気を乗せた青い光弾と化したファイブブルーは、巨大サザエを貫通。
 今、知恵と勇気と筋肉が、宇宙最硬の合身銀河闘士を打ち破るのであった!
 「勝ったぞ!」
 ファイブテクターを信じ、勝利を掴み取った青は凱歌を上げ、発射されたロケット青の姿を、半死半生の状態ながら目を逸らさずに凝視している学、目を背けるも爆発音で顔を上げる文矢、文矢の声でようやく顔を上げる数美&レミ、それぞれの反応の違いが、非常に秀逸。
 今回、Bパートはほぼずっと、生身の星川兄妹の芝居がコックピットの中だけで展開する大胆な変化球なのですが、意識不明の学、奮闘する弟妹、瀕死の学に寄り添い続ける数美、と限定された空間だからこその兄妹の描き分けが効いていて、とても良かったです。
 「兄貴! やっぱりファイブテクターは凄いぜ!」
 「……いや、人間大砲なんて健、おまえじゃなきゃ出来なかった事さ!」
 科学技術ばかりではなく、それを扱う人間自らの心身の健やかさも大切なのだ、と“科学は使う者次第”の普遍的なテーゼが変奏曲で盛りこまれて、巨大怪人を文字通りの体当たりで粉砕するトンデモ展開を脚本と演出の豪腕で劇的に押し切り、テクター姿の青がしゃきーんとポーズを決めて、つづく。
 前作『ターボレンジャー』でも展開の定番崩しが積極的に試みられていましたが、半分で赤が戦線離脱・Bパートは芝居重視の巨大戦、という変則的状況の二段重ねで巧みにドラマを盛り上げ、学と健が方針の違いで衝突 → 弟妹の為に捨て身の行動に出る学 → 学不在の状況で後悔を胸に奮闘する健、と突っかかり役&肉体派の健が、危機的状況下で次兄として踏ん張る姿への焦点の当たり方がスムーズで、構成の冴え渡るエピソードでした。
 あと、敵幹部の自信作が本当に強かった、のもちょっと一ひねりでしょうか(笑) ドルドラさん、基本的には有能。
 第32話で井上敏樹、第35話で藤井邦夫が見せてきたものを受けた曽田博久が、復讐と殺意に満ちた最初期『ファイブマン』と、シュバリェ登場後にネジを巻き直し始めた現『ファイブマン』を「狂気」で接着し、新装備登場編をこなしつつ作品全体を最終ステージへと引っ張り上げる離れ業を見せ、こういう事をやってくるから、つくづく曽田先生は侮れません。
 …………ところで、どう考えても出番の筈マの字さえ呼ばれずに終わったマックスマグマですが(SFロボが収納されないと起動できないとはいえ、チャレンジさえ試みられない)やはり変形合体時に居住空間が大惨事になるので、使用禁止令が出たのでしょうか。

◆第38話「偽兄弟先生」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 「僕たちの分校に、兄弟先生がやって来てから一週間経った。はじめは夢でも見てんのかと思った。でも夢じゃない。本当に東京から、あの噂の兄弟先生がやってきたんだ」
 ちょび髭の学?、ちょっと化粧の濃い数美?、どことなく残念な感じの文矢?、ベリーショートのレミ?、そして、やたらいい声の健?が次々と紹介され……敵幹部コスプレ回のカテゴリなのですが、これは、キャスティングの妙(笑)
 ゾーン先生たちは、跳び箱を跳べた少年に一斉に拍手と爽やかな歓声を送り、もう、ここだけで、面白すぎます。
 「このままずっと居てくれるよね? ずーっとずっとこの分校に居てくれるよね?」
 「当たり前じゃないか。僕たちは、君達の兄弟先生なんだからな」
 「約束だよ!」
 「ああ、約束だ」
 指蹴りげんまんにサブタイトルがかかるのが、鬼だ、スタッフが鬼だ!!
 昼間は優しい分校の教師、だが夜になるとギンテイジャーの顔つきは一変し、ポーズをきめて普段の姿になるのが、心なしか皆さんちょっと楽しそう(笑)
 兄弟先生を騙って分校に潜り込んだシュバリェたちの目的、それは校舎の地下に埋もれている、銀河の毒貝・アンモナイトンを掘り出す事にあった。“動く細菌兵器”と呼ばれ、シュバリェと共に数々の星を滅ぼしてきたアンモナイトンだが、ある時、移動中に乗っていたUFOが故障。そのまま行方知れずとなっていたのが地球で発見されたものの、故障したUFOに爆発の危険がある為、分校に潜り込んだ上で慎重な掘り出し作業を進めていたのだった。
 田舎の分校に潜入するにあたって、わざわざ星川兄妹になりすますのは策士策に溺れるといった感がありますが、案の定、たまたま山を訪れたツーリング中の文矢がビリ矢先生を目撃。挙動不審なビリ矢先生とBARCELONAジャケットまで用意したガロブ先生の失策によって偽物作戦がバレてしまった上、子供達の目の前で馬乗りになってガロブ先生に暴行を加えようとしていた文矢が、地下の掘削現場に入り込んでしまう。
 「ギンガマン!」
 黒は掘削部隊と戦い始め、その音を誤魔化す為に、エレクトーンを弾くザザミ先生と、合唱する幹部たちの図が、面白すぎます(笑)
 地下では、黒が暴れた事でアンモナイトンが外へと脱出。生き埋めにされるもファイブテクターにより助かった黒はマグマベースに連絡を取り、アンモナイトンを乗せたゾーン戦闘機を赤マシンが追って、久々のドッグファイト
 戦闘機は撃墜するも、シュバケン先生とアンモナイトンは走って海へと向かい、シュバケン先生を慕う少年がずっと走って追いかけてきているのですが、戦闘機に乗せた意味、は(笑)
 いよいよ銀河ペスト菌をばらまくべく海へとダイブするアンモナイトンだが、間一髪、これも走って追いかけてきた文矢がギリギリでそれを阻止。だがタイミング悪く、少年もまたそこに追いついてきてしまう。
 「そうだね。いけないね……約束を破っちゃ!」
 約束を訴える少年を抱きしめたシュバリェは、正体を現すと少年を人質に取って容赦なく悪を突きつけるが、コスプレを見せつけるドル美先生(ドルドラさん、何かにつけいちいち楽しそうに芝居してくれるのが、凄く好きです)らの妨害をくぐり抜けた学たちが合流すると初手から全員テクター装備のファイブマンに変身。
 テクターファイブマンは、なんとシュバレーザーを跳ね返し、前回時点では判断保留していたのですが、これがもう完全に、今に至る「スーパー化」のはしりと認定して良さそうです。
 「そんな馬鹿な!」
 シュバリェが焦りを見せた間に人質を救出し、なにぶん、学瀕死・酸欠で全滅寸前・人間大砲!の試練をくぐり抜けた末に手に入れた強化モードなので、抜群の説得力(笑)
 「兄妹戦士の力、見せてやる!」
 テクター装備のVファイブマンは強化された打撃でアンモナイトンに連続攻撃を決めると、「必殺! ファイブテクター!」を放ち、炎のビクトリー魔球と化した赤がアンモナイトンに突撃して大勝利。
 ブラザーコンビネーション → アースカノン → スーパーファイブボール → 必殺! ファイブテクター!
 と個人技での撃破を除き4代目のフィニッシュ攻撃を手に入れたファイブマンですが、バズーカ無効から特に強化を考えたわけではないがなんとなく生まれた新必殺技(オマージュネタ)、が使われたり使われなかったりしている内に、何故か単独必殺攻撃が新たに誕生してしまい、どうも、トドメが落ち着きません。
 まあ、この辺りも、巨大戦同様、一本調子になるのを避ける工夫の一つであったのかもですが。
 シュバリェの野望を打ち砕いた5人は、本物の兄弟先生として分校の子供たちの為に授業を行い、シチュエーションはかなり強引なものの、星川兄妹になりすますゾーン幹部の圧倒的な面白さと、教師要素を改めて拾っての爽やかなオチは良かったです。
 第4クールを前に、曽田先生がとうとう波に乗ってきたのは好材料で、次回――うーうーん……こ、これは、どっちだ? い、井上敏樹、か……?!(藤井先生と二択)