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ウルトラマンコスモス』感想・第30-31話

◆第30話「エクリプス」◆ (監督:根本実樹 脚本:大西信介 特技監督:佐川和夫)
 一番面白かったのは、新フォームで叩きのめしたカオス星人を、ハイテンションのあまり味方怪獣の足下へ投げ飛ばしてピンチを演出し、素で慌てるコスモス。
 ウルトラマンコスモス敗北! の衝撃は地球を震撼させ、防衛軍が実体カオスヘッダーと戦う為にアイズに作戦協力を求める一方、コスモスを甦らせようとするムサシは、ゴンの手助けにより、溶けたスライムのようなコスモスを発見。幼なじみ兄弟とアヤノの手を借りながらコスモスに太陽光線を浴びせ……何話か前で「アヤノ隊員」呼びだったのに、また「アヤノちゃん」呼びに戻っているのが、どうも残念。
 コスモスを復活させるだけのエネルギーが遅々として集まらない中、実体カオスヘッダーが出現し、無差別攻撃を開始。大悪魔といったデザインはシンプルに格好良く、防衛軍とアイズ戦闘機が迎撃を開始するが、それをものともしないカオス星人は、ふにゃコスモスの元へと近付く。
 迫り来るカオス星人にムサシとアヤノが踏みつぶされそうになったその時、ヒーロー登場で二人の窮地を救ったのは、まさかのリドリアス!
 皆既日食の薄闇に包まれた中での闘いは迫力があり、カオス粒子を浴びてしまうリドリアスだが、その体内には前々回の毒ガス怪獣と同じくカオス抗体が生まれており、怪獣&アイズvsカオスヘッダー、の共闘はなかなか盛り上がる流れ。
 いよいよ世界が暗黒に包まれる中、目を覚ましたアヤノは、ふにゃコスモスを目にし……
 「不思議……どうして私にも、コスモスが見えるんだろう?」
 多分、臨死体験ですかね……。
 「怪獣を守りたいという夢があるからだよ。夢を見続ける勇気があれば……ウルトラマンはきっと見える」
 「……光……コスモスに、光当てなきゃ」
 立ち上がるアヤノだがふらりと倒れてしまい……これはあれかアヤノが新たなウルトラマンに!
 「……アヤノちゃん、君の勇気を貰う。そして……」
 アヤノを地面に寝かせたムサシの視線は、カオス星人に立ち向かう怪獣とチームアイズ、地球に生きる命へと向けられ……アップテンポではない雄大なBGMが、雰囲気を盛り上げて良かったです。
 「……そして、みんなの勇気も。……コスモス、聞こえるか? 僕の心が届くか?」
 (ムサシ……君の心が見える。あの時君と分離したのは、君の命が危なかったからだ)
 「コスモス。今僕は、あなたに光をあげられない。だけど、それでもあげられるものがあるとしたら……」
 ムサシの手にした石が光り輝くと、皆既日食の向こう側から黄金の光がムサシの元へと降り注ぎ、ムサシはその輝きをコスモスへと照射。
 「コスモス!!」
 二人は再び一体化し、復活したコスモスはリドリアスに回復魔法をかけると拳を握ってコロナを発動するが、怒りの鉄拳も虚しく、カオス星人の怒濤のビーム攻撃に追い詰められてしまう。

 ――それでもあげられるものがあるとしたら……それは、みんなから貰った優しさと強さ、そして――勇気!

 だがその時、ムサシの心だけではない、混沌に立ち向かう命の光がコスモスに集い……皆既日食の終わりと共に、エウレカ! 無限の輝きをまとって新たな姿へと変貌したコスモスは……なんか、声が、野太くなった。
 青をベースに、銀・赤・金のラインが左右対称に入った新生コスモスは、肩アーマーめいた模様と両腕を軽く広げた構えから、スマートだったこれまでよりも幾分逞しい印象となり、力を越え優しさを越え拳を越え花を越え、教えてやるぞカオスヘッダー……最後にものをいうのは、筋肉!!
 魔境を抜け、真なる悟りへの一歩を踏み出したコスモスは、空手のイメージと思われる構えから、パワフルな格闘スタイルで正拳突き、更に嵐のような連続蹴りを浴びせ、カオス星人を圧倒。怒濤のビーム攻撃も逞しい大胸筋で全て弾き飛ばし……とにかく、声が野太い。
 ウルトラカラテ(コスモスの修得するスペース鶴拳と、ムサシの学んできた空手が組み合わさった新たな武術)により果敢にカオス星人を攻め立てるコスモスだが、勢い余ってリドリアスの近くにカオス星人を投げ飛ばしてしまう会心のア○ルムーヴをキめ、青か?! 青い部分が悪いのか?!
 「リドリアスを盾にするつもりか!」
 だが、安心したまえ地球の諸君!
 「コスモス何する気?!」
 鍛え上げた筋肉は大抵の問題を解決するのだ!
 全身のストレッチパワーを右の拳に集めて放たれたコスモス渾身の一撃は、リドリアスを貫いて背後のカオス星人だけを木っ葉微塵に粉砕し、これぞ、秘拳・太陽が呼んでいる。
 「優しさと強さが、あの、光線の中で一つになっているのか」
 コスモスの秘拳は、リドリアスを浸食していたカオス粒子、そして実体化したカオスヘッダーのみを消滅させ、ここにコスモスは、新たな力を得て復活するのであった。
 ……正直、3話をかけた敗北・再起編としては、集約点としての“みんなの勇気”の説得力が今ひとつでしたが、「(怪獣を守る)夢を諦めない勇気」と「カオスヘッダーを撃破する力」が実は繋がっていないのが『コスモス』の苦しいところ。
 勿論、目の前の事象レベルでは、「カオスヘッダーを倒す事で怪獣を守る」は成立していますし、夢へ向かうハードルを越える為の力の一つとして解釈は出来る範囲ですが(逆に言えばカオスヘッダーは「障害物」でしかない)、今作がここで掲げた「夢を諦めない勇気」が目指しているものは、カオスヘッダーの遙か先にあると思われ、入力と出力がズレているというか、本来はカオスヘッダーを倒す為とは関係のない力で、もののついでにカオスヘッダーを吹っ飛ばしたような据わりの悪さを感じます。
 で、恐らく、スタッフ(脚本の大西さん)もその釣り合いの悪さは自覚している雰囲気はあり、ちょっとずつ嘘をつきながら、ひとまず形を整えたような印象。
 この問題をクリアするには、現状ランダムイベントでしかないカオスヘッダーさんを、ムサシ(チームアイズ)のネガとして確立しなくてはならないと思うのですが、『コスモス』という作品がそちらへ進みたいのかも含めて、後半戦を楽しみにしたいと思います。
 新フォームそのものは、ある意味で揺らぎであった2モードを統合したスーパーモード感があってヒロイックですし、強化アーマーとか新必殺武器の無い時代、最後に頼れるもの己の筋肉、という身も蓋もない感じは好き(笑)
 次回――ゴ、ゴーーーン?!

◆第31話「ゴンを救え」◆ (監督/特技監督:村石宏實 脚本:武上純希
 OPにカラテフォームが追加され、ピグモン(ガラモン)ぽいの、ダダっぽいのに続き、クレージーゴンぽいの、も武上さんが担当。好きでやっているのか、オマージュ要素込みを頼まれているのかはわかりませんが、タイミング的に、『ガオレンジャー』のクライマックスは、もう書き終わっていたのかは、気になります(笑)
 宇宙から飛来したカオスヘッダーの直接攻撃からムサシをかばったクレバーゴンがカオス化してしまい、凄まじく凶暴な顔つきになると、巨大化。巨大ゴンはエネルギー確保の為に駐車場を襲撃して次々と自動車を体内に納めていき、元ネタのクレージーゴンオマージュでありますが、クレバー時代から、あからさまに邪悪だった右腕、役に立つ。
 「やめろ……やめるんだぁ!」
 制御チップをカオスヘッダーに支配されたゴンには親友ムサシの声も届かず、頼みのコスモスも「信頼と勇気」ゲージが足りない、と出社を拒否。人工知能を致命的に損傷する危険を冒してでも、ゴンに向けてカラテを放つ事が出来るのか……苦悩するムサシに、カワヤは臨床医時代、難病の友人から極めて難しい手術の執刀を依頼された過去を語る。
 「情けないが……逃げちまった」
 どうしても勇気が出なかったカワヤは手術を他の医者に頼み、友人は助かったが、臨床医を辞めて研究医療の道に進む事を選ぶ。
 「俺は臨床医として、奴の信頼を裏切っちまったんだ。あの時、手術をする勇気があったなら……まあ、今更後悔しても、遅いけどな」
 「……信頼と、勇気」
 問題児カワヤの再登場に戦々恐々としましたが、悩める若者に自らの格好悪い部分を明かしてアドバイスできる大人は三枚目の役どころもはまって大変良かったです。
 ……まあ、先日のやらかしが精算されるわけではありませんが、ひとまず、女性キャラと接触しなければ、通報しなくて済みそう。
 (君の勇気だけが友を救える。勇気だけが……勇気だけが)
 必要なのは、コスモスの奇跡に頼り切る事ではなく、相手を信頼し、奇跡を起こす為に勇気を持って一歩を踏み出す事――ムサシは今度こそコスモスに変身すると、クレイジービームに対してノーガードで進んでいき、前回のキーワードだった「勇気」を補強。
 (エクリプスの力を、コズミューム光線を集中させ、何事も恐れず、最大のパワーで、撃ち込め)
 フォーム名と必殺技について珍しく(?)ウルトラマンの方から自己申告があり、ネックハンギングされながらも思い出に訴えかけたムサシは、動きを止めたカオスゴンを前に、フォームチェンジ。
 ナレーション「今、ウルトラマンコスモスは、優しさから強さへ、そして、勇気のモード、エクリプスへ変身するのだ」
 筋肉、それは勇気!
 とナレーションさんからも解説が入り……やはり前回、ちょっと苦しい、という意識はあったのでしょうか。
 優しさと強さがいい感じにブレンドされると勇気、というのもよくはわからないのですが、優しさと強さをどちらも捨てず両手に持って明日(夢)へ向かって踏み出す力を、「勇気」と名付ける、といった具合で、コスモス蝕は、バイオチップの中に取り憑いたカオスヘッダーへと勇気の秘拳を一点集中し、見事にゴンを救う事に成功するのだった。
 「ありがとう、ゴン。君は身を以て僕に教えてくれたんだね。……信頼と勇気の、大切さを」
 クレバーゴンの元ネタであるクレージーゴンが登場するのが『ウルトラセブン』第38話「勇気ある戦い」で(カワヤの過去エピソードが手術絡みなのも原典由来でしょうか)、オマージュとしては、してやったり、といったところでありましょうが、今作のターニングポイントにおけるテーゼの補強をオマージュ回でやってしまうのが、00年代以降の《ウルトラ》シリーズにつきまとう、武器と同時に悪癖の萌芽といった感はあり。
 ただ、劇場版に出てきたらしいクレバーゴンを、ムサシの心の友としてTV本編の物語の中に改めて落とし込んでくれたのは良かったです。
 次回――また防衛軍が雑な悪役にならないといいですが……。