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不備は無い

仮面ライダーアギト』感想・第44-45話

(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第44話「開かれる過去」◆ (監督:長石多可男 脚本:井上敏樹
 「この日……」
 「……なに?」
 「……この日は、俺が姉さんと最後に会った日でもあるんだ」
 風谷伸幸死亡事件の日……姉との待ち合わせに向かい、路上で倒れている伸幸を発見した翔一は、近くに居る筈の姉を心配して現場を離れていた事を真魚に説明。だが翔一は姉とは会えず、戻った現場には既に警察が到着しており……記憶と記録を付き合わせた二人は、風谷伸幸の務めていた大学と、沢木雪菜の通っていた大学が同じである事を知り、伸幸が残したゼミの写真の中に、雪菜の姿を発見する。
 一方、突然爆破能力を持つ謎の青年にあらゆる攻撃をかわされるギルスだが、青年が食あたりで苦しむ隙に、木野を連れて逃走。木野を真島くんに預けると謎の青年について注意するべく翔一の元へと向かうが、翔一と真魚は北條の元へ向かっており、すれ違い。
 翔一の記憶の回復と共に、序盤から散りばめられていた要素が一気に繋がっていき、わかってみれば(大抵の事はどうという程でもない)……なのですが、「記憶喪失である」事と「アギトとして戦える」事を密接に繋げてきた事により、翔一くんが真実へ至る情報をせき止めていた事にヒーローとしての意味を持たせ、“ヒーローフィクションにおける謎解き”として成立させているのが、実にお見事。
 ミステリもサスペンスもコメディも、井上敏樹より上手く書ける人は居るでしょうが、それを“ヒーローフィクションとして成立させる”手腕に関しては、やはり時代随一の才人であろう、と思います。
 警察に向かった翔一と真魚は、風谷伸幸殺害事件を調べる北條と面会し、これまで集められてきた数々の証拠品を示す役回りが北條さん、というまさかの曲芸飛行(笑)
 ……どうしてそうなったの?!
 (戦闘中の負傷離脱により前回はアバンで声だけ、今回は全く出番なしの氷川くんに、何やらメタな事情があったのかもですが)
 翔一を探し回る涼は、白フクロウ、更に青ワシの襲撃を受け、錯綜する伏線回収の合間に、ギルスのアクションを挟み込む形で進行。
 「こっちに、来て……」の声は翔一により雪菜と確認され、ビデオテープをリーディングした真魚の目に浮かんだのは、アギトに変身する雪菜の姿!
 「違う! ……雪菜が! 君の姉さんが人を殺す筈がない! 風谷先生は……俺が……俺がやったんだ、この手で」
 警察を飛び出した翔一は沢木邸に向かうと、雪菜と共に写真に写っていた沢木を問い質すが、沢木は雪菜=アギトによる、風谷教授の殺害を否定。
 ある人物の過去が明らかになった時、事件関係者の繋がりが見出されるのはミステリの常道といえますが、ミステリ的には「あかつき号事件とは如何なる結び目なのか」と「風谷伸幸殺害事件こそ結び目だった」の二重プロットといった構造となり、北條は、風谷伸幸の殺害犯はアギトであった、と断定する。
 「これが、どういう事かわかりますか? アギトは必ずしも、我々の味方では無いという事ですよ。人間にとってアギトは、アンノウン以上の脅威になるかもしれません」
 ボールを目的地まで運んだ……と思ったら、即座に別の会場に蹴り込んだーーー! が最近の北條さんの得意技ですが、頭はいい・性格には難がある・故にちょっとねじ曲がったものの見方をする・高い自尊心のあまり気宇壮大な事を言い出しがち・結果として大ハズレしても問題なく許される、ととっても便利。
 「翔一くん……ここに居られないのは、真魚の側に居られないのは、私の方だ」
 「先生が? なんで、そんな……」
 「真魚の父親を……伸幸兄さんを死なせたのは……この私なんだ!」
 落ち込む翔一から「沢木雪菜」の名を聞いた美杉教授の爆弾発言が飛び出すが、肝心のところできゅぴーんが発動し、涼の元へと走る翔一。
 だが一足遅く、ギルスも腹部を貫かれてアギトの力を強奪され、変身した翔一アギトは、白フクロウをまさかの正拳一発で撃破。
 「貰いますよ。君の、アギトの力を」
 謎の青年の力により、翔一アギトもまた紋章の力を逆転されて火あぶりにされ、激動と混乱の中で、つづく。

◆第45話「閉ざされる未来」◆ (監督:金田治 脚本:井上敏樹
 涼は決死のダイブでアギトを炎の中から救い、たとえ力を失っても、人間として出来ることを見せてくれたのは好み。
 謎の青年(襲われる側からすると本当に謎ですが、自ら前に出てきた事により「アンノウン」との同質性が明確になった感はあり)がまたも食あたりを起こしている内に逃走した翔一と涼は、リムジンに拾われ、沢木邸へ。
 「あれは……人ではない。――力そのものだ」
 沢木の口から、同一にして正反対でもある白と黒の謎の青年、自分は黒い青年の使徒となるもアギトを守る為に裏切った事が語られるが、姉・雪菜が、真魚の父を殺害したかもしれない事実に揺れる翔一は、アギトの力への拒絶を見せる。
 悩める真魚ちゃん、傷つく翔一くん、甦る氷川くん……だが、氷川には何やらパンチドランカーの症状が出始め……さあ皆さんご一緒にぃ……ライダーシステムに不備は無い!
 翔一は木野の元へ向かうがアドバイスを拒否され、街には毒針を放つヤマアラシアンノウンが出現。
 「俺……木野さんみたいになりたかったんだ。木野さんみたいに強く……木野さんみたいに優しく」
 真島くんは木野への憧れを吐露し、翔一くんが記憶を取り戻した事を切っ掛けに、“力”に振り回されてきた人々それぞれの、更なる内面が(翔一くんや風谷教授なども含めて)さらけ出されていく、という構成。
 「あの最後の日、兄さんは私に言った。自分の手で超人を作ってみせると。……だが、その直後に……」
 美杉教授の爆弾発言は、兄を止められなかった事への自責の念によるものであり、回想映像が回想映像な為、ここに来て真魚父が、ジニアス風谷みたいな事に!
 ……考えてみると風谷教授が人が好さそうなの、回想真魚ちゃん視点だけですしね……と不穏な火種が次々と投げ込まれ、風谷伸幸から、真魚の持つ超能力について聞かされていた美杉教授は、“全てを忘れる事”で、真魚を守ろうとしていたのだった。
 「沢木雪菜……彼女も被害者だった。そして彼の方も……彼女の後を追って、自ら命を絶ってしまうとは……」
 何かと空間を飛び越え気味だった沢木哲也(真・津上翔一)は既に自殺している事が示唆され、雪菜の恋人がそのまま生きているのは心情的に据わりが悪かったので、納得が行きます。
 翔一は真魚を探しに街へ飛び出し、翔一を放っておけないと立ち上がる涼に沢木は万感の想いを込めて翔一の事を頼み、沈思黙考にふけっていた木野が己の心の命ずるままに立ち上がり、それぞれの行動が一つに合流していくのは、今作にしては珍しく正攻法で格好いい流れ。
 ワシアンノウンに襲われた翔一は変身するが、真魚からの拒絶に拳の意味を失って無防備に攻撃を受け、涼の制止も間に合わず、謎の青年にアギトの力を奪われてしまう。
 一方、G3-Xでワシと戦う氷川は、視力の異常により危機に陥り、いい病院を紹介してくれたんじゃないですか木野さーん?! で、つづく。