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ルナに向かって打て

ウルトラマンコスモス』感想・第23-24話

◆第23話「ルナ対ルナ」◆ (監督:北浦嗣巳 脚本:荒木憲一 特技監督:佐川和夫)
 謎の怪電波の発信源を追って大学に潜入捜査を行っていたムサシとフブキは、任務を忘れて女子大生にフラフラ引き寄せられていた……かと思えば、なんの脈絡もなくキャンパスの怪談に話が飛ぶとドッペルゲンガー騒動が持ち出され、全体的に、話の繋ぎが雑。
 人間に擬態可能な宇宙生物(小さな芋虫状)が、研究室に確保されてしまった小型隕石――のように見える宇宙船に向かう道中で意図せず引き起こしてしまった騒動の真相は、関係者の誰にも悪意はなく、宇宙生物は仲間の元へ戻りたいだけだった、という“ちょっといい話”をストレートに描きたくなかったのか(或いは単純に尺が余ったのか)、オカルト研究会などを巻き込んだコメディとしてプロットが膨らまされているのですが、あっちこっちにカメラを飛ばした結果、物凄くテンポが悪くなってしまいました。
 宇宙生物が一定方向へのベクトルを有している事を考えると、恐らくはドタバタ喜劇を企図していたのかと思うのですが、肝心のスピード感に欠けるので笑いの要素が場面場面のオーバーアクション頼りになってしまい、不発。
 特に宇宙生物が巨大怪獣化してしまうくだりは、ドタバタ騒ぎがエスカレートした末に……という狙いだったと思うのですが、そこまでノンストップどころか、事あるごとに一時停止を繰り返してきた為に勢いが全く足りず、喜劇として成立せず仕舞い。
 脚本時点からコメディで行こうとしたのなら計算不足だし、演出時点でコメディに仕立てたのだとしたら味付けのミスに思えて、どうも今作の北浦回とは波長が合いません。
 ルナvsルナのシンクロした動きからウルトラ団子2001など殺陣は見映えがしましたが、サブタイトルが全て、みたいなエピソードに(その上で、サブタイトルが本当にクライマックスバトルだけを示していて、エピソード全体を包んでいるわけでもないので、バトルその他、という印象を強めてしまう事に)。

◆第24話「ぬくもりの記憶」◆ (監督/特技監督:原田昌樹 脚本:右田昌万
 突如として信号機が停止、交通事故を思わせるクラクションでホワイトアウトし、カット変わると地面に倒れていた少年が目を覚まして、身を起こす姿が不穏なピアノのメロディと共に描かれるのが、面白い掴み。
 少年は、信号機の上に立つ悪魔のような生物を目にすると、その額から剥がれ落ちた水晶を手にするが、救急車を呼ぼうと慌てるドライバーの前に転がっていたのは、車に轢かれた、少年自身……? そして怪獣は見る見るうちに巨大化し――2週間後。
 奇跡の休暇が取れたらしく、地元である神流市で友人と待ち合わせていたアヤノは、道行く人々に「怪獣だよ! ねぇ怪獣が居るんだ!」と呼びかけるも、その存在を一顧だにされない少年を目撃する。
 「ちょっと君。悪ふざけはやめなさい!」
 「あんた、俺が見えるのか?」
 「はい?」
 そこにアヤノ友人がやってくると少年は姿を消し、アヤノは神流市で2週間前から、大規模な通信障害が発生している事を友人から教えられる。チームアイズでは、神流市上空において電磁波が吸い寄せられる謎の怪現象が発生している事が観測されており、その拡散の為に出撃するムサシとアヤノだが、作戦に失敗。
 電磁波の中心に怪獣が居る事を知る謎の少年は、アヤノにだけ見える事が判明し、神流市を巡って少年・高杉純を探し当てるアヤノだが、純は2週間前に交通事故に遭って以来、意識不明であった――。
 こういったエピソードは、“見える”“見えない”のすれ違いを引っ張るやり方もありますが、今回は早めに種明かしをしつつ、そこにムサシを自然と絡めていけたのは良かったな、と。……まあムサシの、アヤノちゃんを一人で放っておくと何をやらかすかわからないから僕がしっかりしなきゃ、的な目線は目線でどうか、の問題はありますが(笑)
 「ねえなんで私にだけ君が見えるの? ……前に、会った事ある?」
 アヤノが生き霊純と再会すると、ある夏の日、少女時代のアヤノが迷子の純に声をかけていた過去が明らかになり……何度目だ、夏の思い出(3回目)。
 『コスモス』、放映開始が7月で今回の放送は12月なのですが、撮影時期と放映時期に開きがあったのか私服アヤノがノースリーブだったりする事もあって、なんだか“ずっと夏”のイメージが付きまとう世界です(秋口に放映された10話ぐらい前に夏休み争奪戦イベントが起きたりもしているわけで……)。
 ピアノアレンジを背に、迷子の純少年と少女アヤノがED曲を口ずさみながら歩き……歌詞にヒーロー名が入っていなければ、劇中世界の有名ソング扱いとして、メタ度は薄れるところ。
 生き霊純との約束でアヤノが病室で謎の水晶を手に入れる一方、電磁波の収束を図るアイズだが、それにより悪魔怪獣が実体化してフブキ-ムサシ機が墜落し、チームで決めた作戦なのに、拡散が失敗するとムサシとアヤノが何故か身内から物凄い勢いで罵倒されたり、電磁波の異常集積自体が危険だ、という話だったのに、拡散に失敗したから今度は収束だ、と始めたり、電磁波周りの作戦行動は、えらく雑で残念。
 気絶したフブキを機外に横たえたムサシはコスモスに変身すると、なんかこいつ性格悪そうだな……と、コロナを発動し、サマーソルトキックは迫力満点。
 「コスモス! そいつをやっつけて!」
 そこにアヤノ機が飛んできて……初心者マーク、ついてる(笑)
 個人的に波長が合うのも含め、映像で“見せる”事の巧さはやはり光る原田監督ですが、イゴマス回を始め、ルナ-コロナの使い分けに関しては、いまいちピンと来なかったのか、もしかしたら設定そのものがあまり好きでは無かったのか、妙に雑なのは気にかかるところ。
 「時の娘」回では話の流れで見る側に上手く納得を生んでいましたが、今回に関しては初手からコロナもアヤノの言葉に力強く頷くのも今ひとつ理由不足のまま、怪獣に飛び蹴りを決め、ウルトラ族の血が騒ぎます。
 生き霊純に促されてアヤノが謎の水晶を射出するくだりがコミカルに描かれるのは、どうも『コスモス』全体の方向性という感じですが、水晶を飲み込んでしまった怪獣は弱体化。いやに軽妙な音楽で、殴る蹴るの暴行を加えたコスモスは、後ずさりしながら飛び去る怪獣に背を向けると(個人的にはあまり好きではないですが、シリーズ定例感)背後から怒濤のビーム騙し討ちを受け、怒髪天を突くブチギレリーゼントバーストで木っ葉微塵に吹き飛ばすのであった。
 「じゃあ俺、帰るから」
 生き霊純は姿を消し、アヤノが病院を訪れると意識を取り戻していた純だが、生き霊時代の記憶は特になく……けれど、握った手が幼い日の記憶を甦らせ、EDパートで子供時代の母親との再会が描かれると、
 「また迷子になっても、アヤノが見つけてあげるー!」
 「うん!」
 「きっと見つけるからー!」
 とアヤノの約束が今に繋がっていた事が明かされるのは、脚本と原田監督十八番の演出が綺麗にはまって、美しい着地。
 そんな思い出にひたるアヤノの背後から、「アヤノちゃーーん!」とダッシュで駆けてきたムサシがすげなくされて、オチ(笑)
 ……うん、ムサシは、それぐらいの目に遭っても、仕方が無いと思うな!
 そこからラスト、良かったね、的なムサシの微笑までを収め、好感度の上がる形で締めたのも、綺麗なオチでした。
 対電磁波の作戦周り、ひたすら謎のままだった水晶、バトル中のコミカル描写など、ところどころ引っかかる部分はあったものの、原田監督の演出好きとしては、丁寧な映像の作りで、楽しめる一本でした(コックピットでマニュアルをめくり始めるアヤノとか危うい描写ですが、総合点で、それらを飲み込んでなおプラスに見られる面白さが、好みの部分、といいましょうか)。