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「おまえが、おまえが、可愛かったからだ!!」

『機界戦隊ゼンカイジャー』感想・第18話

◆第18カイ!「いのち短し、恋せよゼンカイ!」◆ (監督:山口恭平 脚本:香村純子)
 「介人くーん、花恋ちゃんと昔なにかあったりなかったりするの?」
 「ないよ」
 買い出しの帰りに、中学時代の同級生・花恋とバッタリ出会った介人はジュランの問いに即答し、あ、そこでジュランが何を言いたいのか、みたいなのはわかるのか(笑)
 「恋愛だよ恋愛。恋の話」
 「なんと、恋愛ですか。まだまだ不勉強な分野です。教えて下さい!」
 「ならばこの私が教えてやる、レンアイ」
 タイミング良く木の後ろから姿を見せた アラカワ レンアイワルド(弓に矢をつがえたキューピッドの姿を顔に見立てる好デザイン)がアイシアローを空に向けて放ち、とにかく戦闘開始。
 「私いわく、恋とは突然落ちるもの!」
 回避能力に優れた恋愛ワルドに蹴り飛ばされた赤が途中合流した黄を下敷きにし、見つめ合ったその時……始まる恋もある。
 ……始まるな。
 今日もおっとり刀で現着したよほほいは、歌声に惚れたギタリストに押し倒され……
 「――おもしれー女」
 意図的にやっているのでしょうが、もはやメタギャグですねこのフレーズ……。
 「いいぜ。……幾らでも歌ってやる」
 「めろきゅ~ん」
 変身途中で戦線離脱してしまったゾックスを呆然と見送っている内に恋愛ワルドに逃げられてしまうゼンカイジャーだが、ふと周囲を見渡すと世界は、目と目が合って10秒でカップルが誕生するアラカワトピアならぬラブコメ無法地帯と化しており、OP映像にもハートマークが飛び交ってめろめろきゅ~~~ん。
 「ゲゲが作戦の指揮をした事が、いい刺激になったようだな。なぁ、ゲゲ」
 「そ……そう、か、な……」
 「ん?」
 トジテンドでは上機嫌なボッコワウスに対してゲゲが微妙な反応を見せ、今回の作戦に困惑しているのか何やら別の要素なのかは今回のところは不明瞭(相変わらず、ゲゲの反応にバラシタラがしっかり気付いている描写が手堅い)。
 敵の特殊能力にまんまと引っかかる事に関してはもはや安定感の出てきたゼンカイジャーでは、カラフルに戻ったジュランとガオーンが、きゃっきゃうふふの真っ最中で、ブレーキ皆無で笑わせに来ます。
 「ガオーンと、ジュランがこんなに素直に仲良く……」
 ちょっとニュアンスが違うような……
 「これが恋というものですか! 興味深い!」
 ブルーンは平然とそれを受け入れ、ちょっと何かの歯車がズレていたら、今頃トジテンドで、イジルデの忠実な腹心になっていたのではないか。
 「そっちはどうだった?」
 「あーんな腑抜けた兄貴、見たくなかったぁ……」
 ゾックスを追いかけたフリントは、ギターの彼女に甘い言葉を囁く兄の姿にショックを受けて落ち込んでいたが、優しくなぐさめてくれたマジーヌと恋に落ち、真っ当に絡めても面白そうなこの二人をここで繋げてしまったのは(赤黄と違って、ダメージの少ない組み合わせを意図したのでしょうが)勿体ない気も少々。
 続けてブルーンが、本好き繋がりから花恋と外へ飛び出していき、残った介人はパフェに夢中。色々ダメそうな店内を、暖簾の隙間からそっとサトシが覗いていた。
 一方、恋愛ワルドが恋愛パワーの出力を上げると恋の喜びは恋の苦しみへと変わり、嫉妬に悶えたり些細な事で喧嘩をするカップルが続出。ブルーンも花恋との行き違いから砂浜ダッシュを決めるが、セッちゃんが恋愛ワルドの居場所を特定してゾロゾロ大移動するのは、如何にも雑。
 ワルド怪人の間が抜けているのは毎度の事にしても、恋愛ワルドの作戦行動に今作なりの合理性が薄く、物語の中で起きる状況に対するキャラクターのリアクションを描くのではなく、キャラクターの過剰なアクションを描く為に物語の流れを伴わない都合の良い状況を放り込む形になってしまったのは残念。
 きゃっきゃうふふを描いた後に、嫉妬に燃える姿を見せる、のは発想としてはそれは面白いでしょうが、そこに物語としての流れが構築されていないので、解決方法は、セッちゃんが敵を発見したのでみんなで殴りに行く、という要素の連動性もなにもないものになってしまうわけで……断絶・断絶・断絶になってしまっていて、美しさがありません。
 それはそれとして、介人たちが去った後のカラフルをステイシーが訪れ、恋愛カオスと全く関係なく、 無駄 スタイリッシュ登場を決めるだけで滅茶苦茶面白いサトシ、凄いよサトシ……。
 「私は学びました……恋愛なんて苦しい事は、するものではないと! レンアイワルド……あなたは必ず倒します!」
 かつてない怒りに燃えるブルーンはその憎しみの矛先を恋愛ワルドへと向け、変則パワーで失恋戦隊が揃い踏み。
 ブルーン怒濤の連続ピッカーさえヒラヒラかわす恋愛ワルドに対して、セッちゃんのフィーリングで鳥人戦隊ジェットマンのギアを用いると、突如として“最終回の再現ドラマ”が始まり、某役を割り振られた恋愛ワルドは、チンピラ役のブルーンにドスピッカーされ…………うーーーん、ナイフでなくて小型ピッカーから攻撃の際に大きくなるとか、正気を取り戻すと白いベンチの上に座っていて困惑するとか、面白い部分もあった事はあったのですが、個人的には、一線を越えた内輪ネタ・度を越した悪ふざけ、という印象。
 シリーズ通して、セルフオマージュやセルフパロディの要素は定期的に持ち込まれていますが、今回のアイデアに関しては、元の作品どうこうは抜きに、“面白さの種類”が、私の楽しめる範囲からは大きく逸脱してしまいました。
 「一つの恋が終わり、また次の恋ー!」
 振り回され通しでいいところ無しだった金が海賊船のオーラを背負い、白と並んでダブル必殺により吹き飛んだ恋愛ワルドが巨大化すると、恋愛パワーによって3大ロボを恋の下僕とする大技を放つが、三つ股疑惑の発生により敢えなく散り、とことん、有効活用しにくい能力でありました……。
 花恋はゼンカイジャーを引っかき回した事に謝罪をすると、ブルーンの事はこれといって気にかけずに去って行き、カオスの中に真の心の交流があったわけでもなんでもなく、カオスの中で生まれた“ブルーンの”恋心だけは本物だった、というのも、美しさが足らずに不満のあるオチ。
 ゲストの使い方も中途半端というか、さして恋愛の負の面を出さないうちにブルーンが失恋ダッシュを行うとフェードアウトしてしまい、ブルーンの空回りが面白いわけでもなければ、そこにフォローを入れてゲストの可愛げを上乗せするわけでもなく、これだったらもっと暗黒面を出した方がキャラクターとしても活きて面白かったと思うのですが、撮影(見せ方)そのものに事務所の意向などで制約があったのではないか、とでも邪推したくなります。
 前半の恋愛カオスは恋愛カオスで楽しめましたが、そのドタバタ劇と最後の悪ふざけに力を入れすぎて“物語”がおざなりになり、『ゼンカイジャー』として重要な、“世界を越えた人と人との繋がり”の部分がすっ飛ばされてしまったのは非常に残念。それは、双方向でこそ、魅力になるわけで。
 ひたすらカオスを楽しむ回、というならば、クライマックスは再現ドラマなどではなくオリジナルの面白さを構築してほしかったと思いますし、今作に限った話ではありませんが“ここまでやっちゃう(過去の伝説的最終回をそのままパロディしてしまう)自分たちがクール”みたいな手前味噌な酔い方が一番危険な方向性だと思っているので、あまりこの方面には加速してほしくないアプローチ。
 初めての失恋を自覚したブルーンが、花恋に貰った蝶ネクタイを見つめていた頃、カラフルでおやつを堪能していたサトシは五色田一家の写真を目にして介人の両親に視線が向き……想定された布石を丁寧に置いてきて、ホント偉いなサトシ!!