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「はははは、デビルアクマだぁ」

『機界戦隊ゼンカイジャー』感想・第17話

◆第17カイ!「ぬぬっとオカルト同好会!」◆ (監督:山口恭平 脚本:香村純子)
 うーん……
 〔学校の怪談の噂あり → どうやらワルド怪人の能力が原因らしい → ぬか喜びさせやがって許すまじトジテンド! → ジュランがちょうど透明化光線を喰らった → ジュランがオバケのふりをして誤魔化そう → やったー!〕
 が、まるで腑に落ちないのですが、どちらも本物のオカルトでは無いことは共通しているのに、透明ワルドの能力だと駄目で、透明ワルドの能力で透明になったジュランによる芝居だとOK、という思考経路にはどうにも納得しがたいものが。
 オカルトスポットの探検そのものがハズレの付きまとう行為でありますし、周囲に理解されないオカルト趣味のたち子を喜ばせたい、という主旨と気持ちはわかるのですが、前者のガッカリが許せないあまりに、後者の嘘を善行として全面肯定してしまうのは、香村さんにしてはちょっと珍しいレベルの失策だったのでは。
 それならまだ、
 〔馬鹿にされるオカルト研究会 → 透明ワルド出現 → ジュランが透明に → これでオバケのふりが出来るんじゃね? → ありがとうジュランおじちゃん! → オバケ大作戦(並行してワルド撃破) → え? ピアノは弾いたけど、人体模型は触ってねぇよ〕
 みたいな流れの方が一芝居打つ事に納得しやすかった感。
 それはそれとして、
 「音が欲しいんだよ! お・と・が!」
 が今回のお気に入りです(笑)
 マジーヌと子供達が怪談の噂で盛り上がっていた頃、買い出し帰りに、透明な何かに盛大に躓くフリント。街の様子がおかしい事に気付いたゾックスが、トウメイワルドと相対してチェンジ・ツーカイすると妹と弟も踊り出し、考えてみると妹さんは、どうして兄が踊り狂わないと変身できないシステムを開発したのか(笑)
 透明ワルドの透明トラップに引っかかり、なかなか戦いの主導権を握れない金の元へお留守番組だった赤黄が駆け付けると、形勢不利と見たワルドはスケスケビームを放ち、赤とフリントがスケスケに。
 この事態に金が血相を変えて取り乱すのが、行動原理であると同時にアウトローキャラの憎めない愛嬌になっているのが、巧いところです。
 混乱に乗じて逃げ出す透明ワルドだが、パレスで作戦報告を受ける壁王様は苛立たしげに指先で机を叩きまくり、徹底した嫌な上司ムーヴで器の小ささをアピールしてきますが、厚みか、壁の厚みが足りないのか。断熱ハニカム構造にリフォームした方がいいのか。
 「今度のギアも、面白そうだねー。折角の侵略だもん。楽しまなくちゃ」
 「おおおっ、そうだなー、ゲゲ。儂もおまえを見習わんと」
 だが、前回の言葉通りにゲゲが取り持つとコロッと機嫌を直し、床下に収納(笑) 戦隊の首領ポジションらしいといえばらしいですが、この姿が本体なのかも含めて、王様もかなり謎の多い存在です。
 「……ふん、本当にボッコワウス様の機嫌が持ち直したなぁ」
 「ああ。気に食わん鳥だが、こうなればこちらも、うまいこと利用するまででアル」
 一方、透明ジュランによるオバケ大作戦を進行中のゼンカイジャーだったが、周囲から見えないジュランが、学校に向かっている途中にトラックに跳ね飛ばされてイセカイトピアに転生……こそしなかったものの、派手な水柱をあげて池に飛び込む大アクシデント。
 マジーヌと子供たちの為、透明ワルドが再出現する前にオバケ大作戦を実行しようとするジュランは懸命に池から這い上がり、衝突ダメージを負ってふらつきながらも透明ジュランが学校へ向かおうとする様子を、フリーマーケットの商品が地面に散らばる事などで表現するのですが、ダメージによる不可抗力の面はあるにしても、他人の売り物を立て続けに地面にばらまいたり、カップルを突き飛ばしたりの周辺被害を当のジュランが完全無視、は感じが大変よろしくなく、やりたい映像演出に飛びついて、表現の繊細さを欠いてしまいました。
 深読みすると、ジュランにも(誰しもが)そういう面がある、という事なのかもしれませんが、“マジーヌと子供達の為”に一直線になるあまり他人に迷惑をかけてもお構いなし、なのはゾックスやガオーンの行動パターン(ガオーンはそこまで酷くはないですが……)と重なってしまい、ジュランの新たな一面を引き出すよりも、ジュランの特性を薄める形になってしまっているのも残念。
 また、ワルド怪人に引っ込まれると手の打ちようがないのは毎度の事とはいえ、誰一人として透明ワルドを捜索しようとせずに(金に丸投げして)全員でオバケ大作戦にかかり切りになってしまうのもゼンカイジャーらしからぬ部分があり(行動は多少お馬鹿なりに、世界を守る事に関しては真摯な戦隊なので)、実際に透明ワルドによる結構な被害が出てしまうなど、この一連のシーンは“大雑把なようで意外と繊細”な今作の作風に対して、山口監督のノリが悪い方向に転がった感(冒頭に触れたように、今回は話の構成にも疑問を感じますが)。
 なんとか学校に辿り着くジュランだが(この時点では表向きすっかり元気、なのも、先程の池の周りで迷惑を被った人達の立場は……となって、総じて目配りに欠ける描写)、金が透明ワルドと交戦を開始した事で学校探検は再びお流れとなり、スケスケジュラン&マジギレマジーヌと共に、フル名乗りで揃い踏み。
 完全透明での名乗りに「これ大丈夫?!」と自分でツッコむジュランと、「呪いのパワー――ゼンカイマジーヌ」の変化球は、面白かったです。
 マジーヌ呪いの五寸釘攻撃からサンバルカンの力でアタックして透明クダックを壊滅させ、残った透明ワルドは赤桃コンビ攻撃でお疲れサンバルカンから、フィニッシュバスターで大全壊。
 ところが巨大透明ワルドにスケスケビームを食らってゼンカイオーの片側(赤)だけが透明になってしまい、頭部が半分欠けた巨大ロボという、割と気持ち悪い姿に。ブルマジが参戦して障害物無効の飛行攻撃を仕掛けると、前回出番をかっ飛ばされた超力痛快王も出撃して、滅多打ち。
 自ら透明化して窮地を乗り切ろうとするダイ透明だが、ぬぬぬマジーヌで降らせたカラフルな雨により姿が浮かび上がったところに超力ピラミッドバーストの直撃を受けて、よほほーい。
 この間、分離した透明ジュランは学校に向かうとピアノを弾くなどして子供達を喜ばせており、オカルト同好会の学校探検もキラッと解決。ところが…………で、ジュランとの通信が途絶した頃、トジテンドパレスではサトシ、じゃなかったステイシーが回想ムービーに浸っていた。
 「僕はいったいどうしたいんだ……」
 果たしてその望みは、手柄を上げて父親を見返す事なのか、それとも……運命的な出会いに揺れ、このままではコウモリでしかないステイシーが羽ばたける明日はどこにあるのか?! で、つづく。
 個人的にはステイシーには、ポンコツ悪役道を貫いてほしいところはあるのですが、なにぶんヤツデさんという超強力磁石と接触してしまったので、マイルド路線へのルートが大きく開けた感がありつつ、一端トジテンドを離れ新しい被り物を用意して、
 「闇の使者……ダークサトシ」
 みたいな路線でも問題ありません!
 エピソードについては引っかかる部分が多かったのですが、「善意」も「嘘も方便」も踏まえた上でなお、ワルド怪人の能力をこれ幸いと利用して子供たちに嘘をつく事を主要キャラが揃ってオールOKしてしまう、には納得できる理由付けが弱かったかな、と。
 また、カメラを向ける尺は無かったとはいえ、フリントの透明化がゾックスの動機付けにしかならなかったのも、物足りない点でした。それをギミックで終わらせずに最後まで有機的に連動させて使い切ってこそ“真に面白い脚本”だと思いますし、香村さんにはそれが出来る力量があると思っているので。
 どうでもいい余談ですが、今回の日記タイトルの為に、過去の怪談回からインパクトのある台詞を探した際に、候補に選ばれたのが以下。

 「うらめしましてございます」
 「……ハムスターが口を聞いた」
 「あらゆる次元を乗り越え、俺は遂に、死の世界をも制覇したのだ!」
 「霊界において肉体の力は一切無力! 強靱な精神の戦いじゃ! これに負ければおまえの魂は破壊される!」
 「2人を血祭りに上げ、日本中を幽霊でいっぱいにするのだ!」
 「さあ! 野球やろうぜ!!」

 ……無駄に甲乙付けがたくて困りましたが、最終的に選んだのは、『ジャッカー電撃隊』第17話から。何を言っているの……感が、『ジャッカー』らしくて好きで(笑)
 次回――大変カオスの予感。